2024年・第213通常国会
- 2024年4月19日
- 本会議
日米軍事同盟 危険増す 首相の訪米報告質す
○山添拓君 日本共産党を代表し、岸田総理の訪米報告について総理に質問します。
総理は九年ぶりの国賓待遇での訪米でした。米国はその理由をどう説明しましたか。
前回は二〇一五年四月、安倍元総理が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した翌年でした。今年の日米首脳共同声明は、GDP比二%への軍事費増額、敵基地攻撃能力の保有決定、統合作戦司令部の設置、防衛装備移転三原則と運用指針の改定を米国が歓迎するとしています。国賓待遇は、安保三文書の閣議決定で米国に都合の良い安保政策の大転換を進めた御褒美だったのではありませんか。
最大の焦点は、米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化を一層進め、日米軍事同盟の歴史的大変質をもたらそうとしていることです。
共同声明は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させるとしています。
シームレスな統合とは何か。防衛大臣は十六日の外交防衛委員会で、日米が共同対処等を行う場合に、陸海空及び宇宙、サイバー、電磁波など、様々な領域での作戦や能力をシームレスに連携させていく必要があるという趣旨だと述べました。共同対処という以上、日米の部隊同士が文字どおり一体化するということではありませんか。
米インド太平洋軍司令官アキリーノ氏は三月二十日の米下院公聴会で、我々が持つ同盟国及びパートナー国との力強いネットワークは、長期にわたる競争において最も重要な非対称のアドバンテージだと述べ、対中国で、米軍の優位性は同盟国の存在であると公言しています。自衛隊は、事実上米軍の指揮下で、あたかも米軍の一部隊のように扱われるということではありませんか。
トマホークを始め敵基地攻撃能力の運用は日米共同作戦が前提です。標的の探知、追尾、攻撃による効果の判定など自衛隊単独では困難であり、情報収集とその分析能力で圧倒的な米軍との共同が不可欠だからです。
自衛隊と米軍が日米共同作戦計画の策定を進めていると報じられます。今回の共同声明における合意は、日本の敵基地攻撃能力保有に伴い共同作戦計画が進展したことから必要となったのではありませんか。
米国の軍事シンクタンクCSISは昨年六月、退役海軍少将マーク・モンゴメリー氏の論考を発表しています。日米の部隊協力は、一九七〇年代には互いの衝突回避というパートナーシップだったのが、二〇一〇年代までにはよく調整された関係となり、統合部隊の側面を現し始めているとし、自衛隊と米軍ほどの高い相互運用性を備える国は地球上にないとまで評価しています。その上で、米国は、今後五年間に直面する事態で中国を抑止し打ち負かすことができない、日米が統合され、かつ効率的な指揮統制を図ることが侵攻の抑止に大きな効果を持つなどとあおっています。共同声明に言う統合も、こうした評価と狙いに基づくものですか。
米国は、米国が中心となり同盟国と関係を結ぶハブ・アンド・スポークから、米国の同盟国同士の連携を強める格子状の同盟へと変容を迫っています。軍事的な同盟関係をネットワーク化し中国と対峙しようとする米国に、日本も同調するのですか。
米英豪の排他的な軍事枠組みであるAUKUSと先端軍事技術で日本が協力すれば、地域における軍事的緊張と対抗を激化させ、悪循環を招くのは明らかではありませんか。
今年の外交青書には、中国との関係について、双方が共通の利益を拡大していく戦略的互恵関係の推進が五年ぶりに明記されました。対話を重ね、共通の諸課題については協力する関係を掲げながら、米国主導の軍事ブロックづくりに加担し、圧力を強めるのは矛盾ではありませんか。答弁を求めます。
共同声明は、抑止力の強化を繰り返し強調し、日米で兵器の共同開発、生産を進めるために日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議を開催すると宣言しています。優先分野に掲げるミサイルはどのような性能を想定したものですか。日米から輸出することも検討しているのですか。新たなミサイルの開発、生産が抑止力を高めるとする根拠は何ですか。
日米は二〇〇六年度から迎撃ミサイルSM3ブロックⅡAを共同開発し、昨年納入され、イージス艦への配備が進められています。SM3を含むミサイル防衛システムの導入は二〇〇三年末に決定されました。以後今日まで、ミサイル防衛予算の累計は幾らになりますか。日米合作でミサイル防衛強化をやみくもに進めた結果、地域の緊張関係を一層高める現状をもたらした事実をどう認識していますか。今後も続けるなら、果てしない予算を注ぎ込み、終わりのない軍拡競争となるのは明らかです。やめるべきです。
共同声明にはまた、米海軍艦船などの日本の民間施設での共同維持整備が盛り込まれました。米国は、なぜこんなことまで要求しているのですか。米海軍長官のカルロス・デル・トロ氏は二〇二二年十二月の講演で、損傷を受けた艦船でも迅速に戦闘に復帰できるよう、可能な限り戦闘地に近い場所で修理する必要があるなどと述べています。中国との戦闘を念頭に、米軍の戦闘継続を支えるために日本の民間企業をも動員するつもりですか。答弁を求めます。
共同声明は、米国の拡大抑止を引き続き強化するとし、次回の日米2プラス2の機会に拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう求めるとしています。突っ込んだ議論とは何を期待しているのですか。日本に米国の核兵器を置くことの検討を求めるなど断じて認められないと考えますが、総理の認識を伺います。
四月二日、米軍横田基地にB52戦略爆撃機が通告なく飛来しています。拡大抑止だと言い、こうした核戦力の運用を拡大強化させるつもりですか。
総理が、広島出身を語りながら核兵器禁止条約に背を向け続け、核抑止力論にいつまでもしがみつくのは到底許されないことを指摘いたします。
日米同盟の抑止力を理由に、沖縄辺野古新基地建設を唯一の解決策として強行すると明記したことに断固抗議します。総理は、沖縄県民多数の意思が辺野古新基地建設に反対であることをバイデン大統領に伝えましたか。
普天間基地の米軍オスプレイが傍若無人の飛行を続けています。事故による運用停止の解除後、日米で合意した午後十時以降の離着陸は何回ありましたか。騒音防止協定違反をやめるよう求めましたか。そもそも事故原因すら明らかにしないことに、沖縄を始め全国から抗議の声が上がっています。運用停止と撤去こそ求めるべきではありませんか。
首脳会談のファクトシートに記された環境問題に関する協力とは何ですか。米軍基地由来と見られる有機フッ素化合物、PFASの問題について、基地内での調査と対策を求めましたか。米国環境保護局は、総理が訪米中だった四月十日、法的強制力を伴う飲料水の規制値を決定しました。日本の目標値の六倍厳しい値です。米国の基準を在日米軍基地でも適用させますか。答弁を求めます。
首脳会談や米国議会の演説ではにかむ総理の様子からは、日米軍事同盟の下で現にある国民の苦難に寄り添う姿勢は全く見受けられません。それどころか、軍事的対抗を強め、一層の危険と負担をもたらす同盟関係の大変質へ突き進んでいます。
今必要なことは、地域の全ての国々を包摂する対話と協力の枠組みをつくり発展させる、外交による平和の創出であることを強調し、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 山添拓議員の御質問にお答えいたします。
米国からの国賓待遇での招待理由についてお尋ねがありました。
昨年十一月の米国サンフランシスコで行われた日米首脳会談において、バイデン大統領から、国賓待遇での公式訪問の招待を受けました。その理由についてお答えする立場にはありませんが、今回の公式訪問の発表に際し、米国政府は、日米同盟の永続的な力強さなどを強調する訪問になるだろうと述べていたと承知をしております。
今次訪問では、安全保障協力のみならず、経済、地域情勢、人的交流など多岐にわたる分野についての議論を通し、日米両国が幅広く深い信頼と重層的な友好関係で結ばれており、このかつてなく強固な友好・信頼関係に基づくグローバルパートナーとなっていることを確認いたしました。
このことからも、米国に都合の良い安保政策の大転換を進めた御褒美にほかならないとの御指摘は当たりません。
日米間のシームレスな統合及び自衛隊と米軍との一体化についてお尋ねがありました。
日米首脳会談においては、日米が共同対処を行う場合に、様々な領域での作戦や能力を切れ目なく緊密に連携させていく観点からシームレスな統合を可能にするため、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上することで一致をいたしました。
このように、日米間で様々な能力の発揮のため緊密な連携を図ることは当然ですが、自衛隊の全ての活動は、主権国家たる我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われること、また自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動すること、何ら変更はありません。自衛隊の指揮については、法令で定められているとおり、日本国内閣総理大臣が最高指揮官として自衛隊を指揮監督することに変わりはありません。
さらに、日米ガイドラインにおいて、自衛隊及び米軍の活動について、各々の指揮系統を通じて行動すること、また各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われること、これらが明記されており、こうした点は日米間の共通の認識となっております。
よって、日米の部隊同士が文字どおり一体化し、自衛隊は事実上米軍の指揮下で、あたかも米軍の一部隊のように扱われるといった指摘は当たりません。
日米間の合意と日米共同計画についてお尋ねがありました。
日米首脳会談においては、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上することで一致をしましたが、これは日米ガイドラインの下で策定することとしている共同計画の策定状況とは関連したものではありません。共同計画の策定状況は、緊急状態、緊急事態における日米の対応に関わるためお示しできませんが、いずれにしても、日米ガイドラインの下で日米が行う全ての活動は、それぞれの憲法、国内法令、国家安全保障政策に従って行われます。
部隊レベルを含む自衛隊と米軍の連携についてお尋ねがありました。
御指摘の論考については承知しておりますが、政府として他国の民間シンクタンクから公表されている論考の内容の一つ一つについてコメントすることは差し控えるべきであると考えております。
いずれにせよ、日米首脳会談においては、日米が共同対処を行う場合に、様々な領域での作戦や能力を切れ目なく緊密に連携させていく観点からシームレスな統合を可能にするため、日米それぞれの指揮統制の枠組みを向上することで一致したところであります。
同盟のネットワークと中国との対話についてお尋ねがありました。
今般の日米首脳会談では、力又は威圧による一方的な現状変更の試みは世界のいかなる場所であれ断じて許容できず、同盟国、同志国と連携し毅然として対応をすることを再確認するとともに、日米豪、日米韓、日米英など日米を基軸とした地域のパートナーとの協力を進めることで一致をいたしました。
また、国際秩序の根幹が揺らぎ、地域の安全保障が一層厳しさを増す中、AUKUSの取組はインド太平洋の平和と安定に資するものであり、これが地域の軍事的緊張を高めるとは考えておりません。
なお、先進能力分野に係るAUKUS第二の柱に関する協力については、今後、まずはAUKUS側において具体的な検討が行われることになると承知をしており、日本としては、AUKUSのこうした動きも見ながら、今後、協力の在り方について検討をしてまいります。
これらと同時に、中国との間では、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていくというのが私の一貫した方針であり、これらはお互いに矛盾するものではないと考えております。
そして次に、ミサイル防衛についてお尋ねがありました。
新たに開催する日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、DICASにおいては、協議する対象にミサイルの共同開発及び共同生産が含まれ、今後具体的に検討される予定ですが、第三国への移転は想定しておりません。こうした装備の共同生産は、相互運用性の向上や即応性、継戦能力の確保といった観点から、抑止力の強化に資するものであると考えております。
また、ミサイル防衛、このBMDシステムに係る予算については、平成十六年度から令和六年度までの二十年間で単純に合計して約四兆円を計上してきております。この二十年間で北朝鮮は、我が国の上空を通過したものも含め、弾道ミサイル約百九十発以上を発射していることから明らかなように、BMDシステムは我が国の安全を確保する上で不可欠なものであって、地域の緊張関係を一層高める軍拡競争となるとの御指摘は当たらないと考えております。
次に、米軍艦船の共同維持整備についてお尋ねがありました。
我が国周辺に展開する米軍艦船が、維持整備のために米国本土に戻ることなく日本国内で維持整備を行うことができる場合、米軍の即応性を高め、抑止態勢の強化に資するものであると考えております。御指摘の米国政府高官の発言意図についてお答えする立場にはありませんが、こうした取組は特定の国との戦闘を念頭に置いたものではありません。
拡大抑止についてお尋ねがありました。
今般の日米首脳会談では、我が国の安全と繁栄を守り抜くため、米国の拡大抑止を強化することの重要性を改めて確認し、二国間協力を更に強化していくこと、また、この観点から、次回の日米2プラス2の機会に拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう、日米それぞれの外務・防衛担当閣僚に求めることで一致をいたしました。
これを踏まえ、日米拡大抑止協議及び日米2プラス2でのやり取りのような様々なハイレベルでの協議を通じ、拡大抑止の強化に向けた取組を引き続き進めていきます。その上で、非核三原則を堅持するとの方針に変わりはありません。
また、従来より述べてきているとおり、核兵器禁止条約は核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておらず、唯一の戦争被爆国の我が国としては、核軍縮の現実的な取組に核兵器国を関与させるよう努力していかなければなりません。国民の生命、財産を守り抜くため、現実の安全保障の脅威に適切に対処しながら、核兵器のない世界に向けて、現実的かつ実践的な取組を継続、そして強化してまいります。
普天間飛行場の辺野古移設及び米軍オスプレイの運用についてお尋ねがありました。
首脳会談におけるやり取りの詳細は控えますが、今回の日米共同声明において、両国は、辺野古における普天間飛行場代替施設建設を含む沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施に強くコミットしていること、これを確認しています。
また、普天間飛行場に所属する米軍オスプレイについては、防衛省による目視情報によれば、飛行停止を解除した本年三月十四日から四月十七日までの三十五日間、午後十時から翌朝六時までの時間帯に合計二十七回の離着陸を行ったことが確認をされています。
政府としては、これまでも米軍に対して日米合同委員会合意である航空機騒音規制措置の重視をするよう求めてきており、米側からはこの合意に基づき周辺地域への影響を局限する運用に努めているとの説明を受けておりますが、引き続き合意の遵守、これを求めてまいります。
我が国における米軍オスプレイのサイビは、災害救援や離島防衛を含む我が国の安全保障にとって重要な意義を有し、抑止力、対処力の向上に資するものであり、米軍オスプレイの配備撤回を求める考えはありません。
環境分野での米軍との協力についてお尋ねがありました。
御指摘のファクトシートにおける記述は、在日米軍の安定的な駐留のため、環境に係る協力を含む日米間の継続的な連携が重要との認識を日米間で改めて確認したものでありますが、これ以上の詳細については、外交上のやり取りであり、お答えを差し控えます。
なお、米国環境保護庁が公表した飲料水中のPFASに関する規制値の在日米軍施設・区域における取扱いについては、日本政府として予断を持ってお答えすることは困難です。(拍手)