2024年・第213通常国会
- 2024年5月8日
- 憲法審査会
憲法壊す政治改めよ
○山添拓君 日本共産党を代表し、憲法に対する考え方について意見を述べます。
憲法審査会は、改憲原案や改憲発議を審査するための国会の機関であり、議論を進めれば、いや応なく改憲案のすり合わせに向かいかねません。
日本共産党は、国民世論が改憲を求めない中、審査会を動かすべきではないと繰り返し主張してきました。五月三日の憲法記念日を前にした共同通信の世論調査では、国会で憲法改正の議論を急ぐ必要があるかという問いに、急ぐ必要はないと答えた人が六五%でした。国民の声に逆行し、国会が改憲ありきで進むことは許されません。
にもかかわらず、岸田総理は、自らの総裁任期中に改憲を実現したいと繰り返し、通常国会冒頭の施政方針演説では、条文案の具体化を進め、議論を加速するとまで述べました。行政府の長が国会審議の進め方に介入し、憲法尊重擁護義務に反して改憲論議を国民と国会に押し付けるなど言語道断です。
総理の発言には、内閣支持率が低迷する中、改憲をアピールすることで自らの求心力を確保したい意図が見え隠れします。政権延命のための最悪の政治利用です。毎日新聞の世論調査では、岸田総理在任中の改憲に賛成は二七%と総理の就任以後最も低くなり、逆に反対は五二%と最も高くなりました。総理の思惑が国民に見透かされています。
もとより、こうした総理の姿勢に乗じて、とにかく改憲を急げとあおるのも極めて不当です。
四月二十八日、三つの衆院補選で自民党がいずれも議席を失う結果となったのは、裏金事件をめぐる国民の厳しい審判にほかなりません。政治資金規正法は、政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支報告を求め、政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする法律です。この間明らかになった自民党の裏金事件は、主要派閥が長年にわたり政治資金パーティーの収入を裏金化してきたという組織的で継続的、そして悪質な犯罪行為であり、国民を裏切るものです。
憲法前文は、日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動するとしています。裏金議員の弁明は、裏金を不正に使ったことはないと根拠もなく語るばかりで、選挙犯罪に使われた疑いさえ拭えません。現在の議席は公正な選挙の結果によるものとは言えない可能性が否定できず、正当に選挙された国会における代表者に値しないのではないかとの批判を免れません。民主政治の土台を揺るがす事態を招いた法律を守れない議員に改憲を語る資格はありません。
自民党は、いつ誰がどのように裏金システムをつくり、何に使ってきたのか、洗いざらい明らかにするべきです。政倫審での知らぬ存ぜぬ、秘書に任せていたとの弁明と、事実の解明もなく行われた形ばかりの処分による幕引きは断じて許されません。国会がその役割を果たし、関係者の証人喚問を始め、真相解明を行うべきです。改憲論議について審議の進め方にまで口を挟む総理が、裏金事件の真相解明となると、国会のことは国会でと逃げ回るのは余りにも身勝手です。
憲法を変える議論ではなく、憲法、とりわけ九条を壊してきた政治を改める議論こそ焦点です。
歴代政権は、専守防衛を主張し、攻撃的兵器は持たない、海外で武力行使をしない、軍事費はGNP比一%程度、国際紛争を助長する武器輸出は行わないなど、曲がりなりにも平和国家としての縛りを設けてきました。
ところが、岸田政権は、安保三文書を閣議決定し、敵基地攻撃能力の保有を解禁し、軍事費はGDP比二%以上へ増額を進め、最新鋭の戦闘機を含めて殺傷兵器の輸出まで解禁しようとしています。日米首脳会談では、自衛隊と米軍をシームレスに統合し、事実上、米軍の指揮下に自衛隊を置く事態まで容認しました。米国のエマニュエル駐日大使は、岸田政権は二年間で、七十年来の日本の安全保障政策の隅々に手を入れ、根底から覆したと評価しましたが、まさに根底からことごとく踏みにじっています。ウクライナは明日の東アジアかもしれないと言い、平和のためには軍事的抑止力の強化しかないかのように描き、危機に乗じて大軍拡を進めています。
しかし、抑止力の向上を理由に軍事力を強めれば、相手も対抗し、結果として脅威を高める安全保障のジレンマに陥ることは明らかです。戦争をさせないための外交戦略こそ必要です。
日本共産党は、先日、東アジアの平和構築への提言を発表しました。ASEANと協力し、東アジア規模で平和の枠組みを発展させる提案です。アメリカか中国かという分断と対立、排除ではなく、地域の全ての国々を包摂する枠組みで対話と協力を進めるAOIP、ASEANインド太平洋構想は、日本も支持するASEANの方針です。そうである以上、対中包囲の軍事ブロックづくりではなく、たとえ紛争があっても戦争にさせない地域にする、徹底した外交努力を尽くすことが九条を持つ日本の責任です。
裏金作りの腐敗にまみれ、憲法を壊し、平和も暮らしも脅かす自民党政治は終わらせるしかありません。憲法を生かし、命と暮らしを守り、人権と民主主義を実現する政治へ転換する決意を述べ、意見表明とします。