2024年・第213通常国会
- 2024年6月4日
- 外交防衛委員会
紛争助長の武器輸出 憲法にもとづく平和国家の立場投げ捨てるもの/次期戦闘機共同開発条約承認案に対する反対討論
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
米国バイデン政権は五月、イスラエルに砲弾や戦闘用車両など総額一千五百五十億円以上の武器を売却する方針を議会に通知しました。サリバン大統領補佐官は、ラファへの本格侵攻に反対を表明しつつ、イスラエルに武器は送り続けると述べています。米国のこうした姿勢がイスラエルのガザへの攻撃を支援しているのではないかと本会議で質問をいたしましたが、答弁がありませんでしたので、外務大臣の認識を改めて伺います。
○外務大臣(上川陽子君) 第三国であります米国とイスラエルの関係につきまして、日本政府として逐一コメントすることにつきましては差し控えさせていただきます。
その上で、六月の二日に発出した私の談話のとおり、我が国として五月三十一日にバイデン大統領が述べたイスラエルとハマスの間の人質解放や停戦をめぐる交渉に関するイニシアチブを強く支持しており、全ての当事者がこの機会を捉え、全ての人質の解放と持続可能な停戦の実現に向けて着実に取り組むよう強く求めるところであります。
最近におきましても、私からカッツ・イスラエル外相との電話会談で働きかけを行ったほか、昨日のG7議長国でありますタヤーニ・イタリア副首相兼外務国際協力相との電話会談におきまして、両国間及びG7での連携で一致をしたところでございます。
○山添拓君 コメントを控えるという答弁自体が私は極めて不誠実だと思いますし、はなからダブルスタンダードですよ。
北朝鮮のロシアへの武器提供は強く非難するとおっしゃったんですね、北朝鮮のロシアへの武器提供。しかし、米国のイスラエルへの武器の提供については、コメントを差し控える、いや、それどころか、むしろ米国の対応について評価しているというような答弁でした。これ、大問題の姿勢だと思うんですね。
ロシアはウクライナへの侵攻を自国民保護の特別軍事作戦と称しています。イスラエルも自衛権行使といってガザ攻撃を続けています。侵略であれ、自衛の名目であれ、武器の輸出は国際紛争を助長します。その認識が問われていると私は考えます。
資料をお配りしておりますが、法制局長官に伺います。政府は武器輸出禁止の三原則等を二〇一四年、防衛装備移転三原則に大転換しました。その後の二〇一五年の当委員会で、横畠長官が、武器輸出を制限するのは国際紛争の助長を回避するためだと答弁しています。今も変わりはありませんか。
○内閣法制局長官(近藤正春君) ただいまのお尋ねでございますけど、資料の方でこの横畠長官の答弁の中には関係省庁の説明を引いた部分と当局の判断の部分が入っておりまして、ちょっとそこは混在しておりますので正確に申し上げますが、外為法令等の運用基準を定めたものでありまして、それ自体が憲法上の問題ではないというのが関係省庁の説明を踏まえた当局の判断でございまして、この憲法上の問題ではないというところにつきましては現在も変わっておりません。
それから、国際紛争を助長することを回避するようなことなどは、憲法の定める平和主義にそぐうものであるというところの見解は、その時点におきます外国法令の運用に関する関係省庁の見解がこうであるという事実を述べた部分であると理解しておりまして、現在の考え方については、正確を期すためには関係省庁にお尋ねをいただきたいと思います。
○山添拓君 その時点の。じゃ、今は変わっているとおっしゃるんですか。国際紛争の助長を回避する、だから武器輸出を制限すると、法制局長官が述べたことなんですよ。その時点の認識にすぎず、今は変わっているとおっしゃるんですか。
○政府特別補佐人(近藤正春君) その時点における、まさしく当時の、二十六年四月一日に閣議決定された防衛装備移転三原則が決められた頃の関係省庁の考え方を聞いており、それについて御説明したということで、現時点、変わっている変わっていないということについて私どもの方からお答えするということではないという理解でございます。
○山添拓君 いや、内閣法制局の最新の答弁例集にも、これ載っているんですよ。
変わったんだったらいつ変わったんですか。
○政府特別補佐人(近藤正春君) 答弁例集というのは当局の見解だけを載せているものではございませんで、参考となる答弁でございます。
例えば、私ども、最近拝見しておりますと、令和五年六月二十一日に関係省庁が当委員会に提出した資料におきましても、防衛装備移転三原則と憲法の平和主義の精神に関して、それと類似するような趣旨を含む内容が記述されているというふうには理解しております。
○山添拓君 国際紛争を助長しないという言葉を、政府はこの間、かたくなに避けております。法制局の答弁例集には載っていますが、今の長官の答弁によれば、法制局まで揺らいでいるようなお話でした。
一方で、外務大臣は、平和国家としての立場は変わらないのだと、この間、繰り返し答弁されています。変わらないとおっしゃる以上は、武器の輸出による国際紛争の助長を回避する、この立場も変わりありませんね、外務大臣。
○外務省 総合政策局長(河邉賢裕君) もちろん、平和国家としての立場といいますか、考え方は変わらないということだと思います。
○山添拓君 平和国家としての立場は変わらないというその意味を聞いています。
武器の輸出による国際紛争の助長を回避する、この立場に変わりはありませんか。(発言する者あり)
○委員長(小野田紀美君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(小野田紀美君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(河邉賢裕君) お答え申し上げます。
我が国は、戦後一貫して平和国家としての道を歩んできてございます。それで、専守防衛に徹して、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本原則を堅持してきてございます。
その上で、憲法の平和主義の精神にのっとった防衛装備移転三原則に記載しておりますとおり、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念及びこれまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持していくということとしてございます。
○山添拓君 ですから、武器の輸出による国際紛争の助長を回避すると、これは歴代政府が述べてきた立場なんですが、それ、今述べられませんでしたね。これも捨てたとおっしゃるんですか。
○政府参考人(河邉賢裕君) 繰り返しになりますが、防衛装備移転三原則に記載しておりますとおり、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念、平和国家としての歩みを引き続き堅持していくというふうにしております。
○山添拓君 防衛装備移転三原則には国際紛争の助長回避という言葉は削られたんですね。
今も一度もおっしゃらないですね、皆さん。その立場はもうないんですか、外務大臣。
○政府参考人(河邉賢裕君) いずれにしましても、移転につきましては、防衛装備移転三原則等に基づいて、個別の案件ごとに移転先を厳格に審査し、移転後の適正管理も確保することによって、平和国家としての基本理念を堅持していく考えでございます。
○山添拓君 いや、これではこの条約の審議は続けられないと思いますよ。国際紛争の助長を回避と、この方針変えたとおっしゃるなら、そのことを述べられるべきだと思うんですよ、正直に。しかし、おっしゃらない。
一方で、内閣法制局の答弁例集にはそのまま残っていて、法制局の長官の答弁として、国際紛争の助長回避、これは一四年の防衛装備移転三原則に変わった後の答弁ですから、その関係については整理をして当委員会に提出いただきたいと思います。
○委員長(小野田紀美君) 後刻理事会で協議いたします。
○山添拓君 武器の輸出が国際紛争を助長するという認識すらお持ちでないような今の答弁だと思います。それは憲法に基づく平和国家としての立場を投げ捨てるものだと言わざるを得ないと考えます。
条約の審議ですのでその内容についても伺わなければなりませんが、三十八条について聞きます。
GIGOの職員について、訴訟手続免除の特権を認めています。法務省に伺いますが、背任や収賄などの嫌疑があっても、日本の捜査機関は捜査や訴追できないということでしょうか。
○法務省 大臣官房審議官(吉田雅之君) 条約の解釈は外務省の所管でございますので、法務省としてはそれを離れて認識を述べることは困難でございますけれども、外務省からは、お尋ねの背任、収賄等の場合を含めて、個々の事案については個別具体的に判断することになるという趣旨を伺っておりまして、法務当局としてもそのように認識しております。
○山添拓君 特権・免除ですから、外務省、伺いますけど、捜査できるんですか。
○政府参考人(河邉賢裕君) まず、条約の大前提といたしまして、GIGO及びその職員には、接受国の法令尊重義務が課せられるとともに、裁判の正当な実施を容易にし、特権・免除に関連する濫用の発生を防止するため、接受国当局と協力する義務が課せられてございます。
我が国といたしましては、GIGO及びその職員が適切に任務に当たるよう、イギリス、イタリアとも、共に監督していく考えであります。
○山添拓君 いや、特権・免除との関係を伺っているんですけどね。条約の中身についても、このように、そのまま御説明にならない。
私は、例えば参考人としてGIGOの職員に事情聴取をしようと思っても、あるいはその内容に基づいて法廷で証言を求めるに当たっても、求めようとしても、守秘義務があるからといって拒まれるだろうと思います。特権が及ばないということで明示されているのは自動車事故ぐらいですよ。これでは闇を暴くことはできないと考えます。
私がこれを指摘するには理由があります。英国は、一九八五年から段階的にサウジアラビアと武器売却の契約を結んでいます。ユーロファイター七十二機の売却もこれに含まれます。二〇〇三年、英ガーディアン紙は、英国の軍事大手BAEシステムズがサウジ王室への巨額の賄賂で契約を取っていたという疑惑を報じ、二〇〇四年、重大不正捜査局、SFOが捜査を始めました。賄賂は十億ポンド、当時で約二千三百億円を超えるとされました。
ところが、二〇〇六年十二月、突然捜査が打ち切られました。法務長官は国益を守るためと説明し、当時のブレア首相も、サウジアラビアは英国にとってテロ対策や中東情勢の面から非常に重要な国だ、捜査の進展で悪影響を及ぼすのは国益に反するなどと述べています。
外務大臣に伺います。
BAEシステムズは次期戦闘機の共同開発に参加します。重大な不正の疑惑について英国政府がなぜ放免したのか、確認されましたか。
○国務大臣(上川陽子君) 御指摘の報道は承知をしております。また、平成十八年、二〇〇六年でありますが、十二月十四日に英国重大不正捜査局から発出されました調査中止決定に関するプレスリリースにおきまして、法の支配を維持する必要性とより広範な公共の利益とのバランスを取る必要があった旨言及されていると承知をしておりますが、第三国の国内事情に関わる事項でございまして、我が国としてコメントすることにつきましては差し控えさせていただきます。
○山添拓君 つまり、不正の疑惑があってもお構いなしなんですよ、既に。
二枚目の資料を御覧ください。
BAEシステムズのハーマン・クラーセンディレクターは、数百機の売却が見込まれる。これ、手ぐすねを引いて次期戦闘機の開発に臨んでいます。林駐英日本大使は、四月二日、BAEシステムズの工場を訪問してクラーセン氏の説明を受けたといいます。条約の国会審議の前から前のめりで、そして汚職や腐敗には目もくれない。私、採決には断固反対ですから、しかし時間がもうありません。
最後に、防衛大臣にどうしても伺っておきたいと思います。
大臣は、軍需産業に幾らパーティー券買ってもらっているんですか。
○防衛大臣(木原稔君) 私の政治資金につきましては、関係法令に従い適切に処理し、そしてこれまでも公表しております。
○山添拓君 いや、公表されていないので聞いているんですよ。次期戦闘機の開発に参加する例えば主要な三企業、買ってもらっているのかいないのか、お答えにならないですか。大臣規範では、関係業者との接触に当たって国民の疑惑を招くような行為をしてはならないとされていますよ。次期戦闘機の受注企業に買ってもらっていないなら、そう断言されるべきじゃありませんか。
○国務大臣(木原稔君) 個々の政治団体、あるいは私個人の政治活動に関するお尋ねについては、現在、政治の、政府の立場としてお答えすることは差し控えますが、いずれにしましても、関係法令に従いまして適切に処理をし、そしてこれまで公表しております。
○山添拓君 もう始める前から真っ暗ですよね。
私、軍事分野というのは、とりわけ政官財の癒着が深刻なものだと思います。次期戦闘機の共同開発、生産、輸出は、憲法に基づく平和国家としての在り方を壊し、政治と金の闇を一層深いものとするもので断じて容認できないと、このことを指摘して質問を終わります。
○山添拓君 日本共産党を代表し、次期戦闘機共同開発条約、GIGO設立条約の承認に反対の討論を行います。
反対理由の第一は、戦闘機の輸出容認で日本を武器輸出大国へ大転換するものだからです。
政府は、一九六七年の武器輸出三原則、七六年の政府統一見解を通じて全面的な武器禁輸を表明し、国会は、八一年、憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえ、衆参両院の全会一致の決議でこれを確認するに至りました。武器輸出禁止は国是にほかなりません。
その後、政府はなし崩しに緩和を続け、二〇一四年の防衛装備移転三原則で武器禁輸そのものの大転換まで行いました。それでもなお、法制局長官が述べたように、武器輸出による国際紛争の助長を回避するための規制を設け、殺傷兵器の輸出はできないとしてきたのです。次期戦闘機の輸出に当たり三つの限定、二重の閣議決定などと歯止めを装いますが、全て与党の密室協議に委ねられており、何の制約にもなりません。憲法の平和主義を踏みにじり、立憲主義を破壊する暴挙であり、断じて容認できません。
第二に、日本とNATO加盟国による次期戦闘機の共同開発と同志国への輸出、配備は、地域の緊張関係を一層高めることにつながるからです。
GCAPは、日本が米国以外のNATO諸国と初めて行う戦闘機の共同開発であるとともに、NATO加盟国のインド太平洋地域に対する安全保障上の関与の強化の一環と位置付けられます。
米国が対中戦略に基づき進める排他的な枠組みに沿って同志国への輸出、配備を進めれば、軍拡競争が避けられず、軍事対軍事の悪循環を一層加速することになるのは明らかであり、認められません。
第三に、次期戦闘機はAI技術を用いた無人機との連携が目指され、そのために米国との共同研究まで合意していることです。
撃ち落とされても人が死なず、人的被害を軽減する無人機による攻撃は、戦闘行為のハードルを下げかねません。開発競争ではなく規制こそ必要です。
第四に、際限のない開発費を要することです。
政府は、昨年度までで既に三千六十六億円、二〇二七年までの五年で七千七百億円もの予算をつぎ込むとしますが、総額は示せず青天井です。軍事分野では特に政官財の癒着が深刻ですが、本条約には防止策がないばかりか、むしろGIGO職員について訴訟免除を定めており、認められません。
憲法に基づく平和国家の立場を投げ捨て、武器を売り歩き利益を増やすのは、死の商人国家への堕落との批判を免れません。大軍拡ではなく、対話に基づく外交でこそ平和構築を図るべきであることを強調し、討論といたします。