2025年・第217通常国会
- 2025年4月8日
- 外交防衛委員会
JICA法改正案 「ODAの利益優先の国際支援への変容招くおそれ」/トランプ関税 撤回もとめよ/JICA法改正案 反対討論
○山添拓君 経済界からの要求も受けたものなんですよね。
○政府参考人(石月英雄君) 今回のODA、法改正につきましては、先ほど申し上げたとおり、ODAが直面する国際社会の環境変化等々に即しまして、ODAの費用対効果を最大化していくという観点から行うものでございますが、本法改正の検討に当たりましては、外務省として、特に改正内容に関係の深い経済界、金融業界、またNGOといったステークホルダーから意見聴取を行ったところでございます。
各団体からは、本法改正に対しておおむね好意的な意見が寄せられたと認識しております。特に開発途上国の金融面での発展、また複雑化する社会環境課題解決への貢献、こういったものへの期待が寄せられたと、また無償資金協力の迅速化についても歓迎する声が多かったと考えております。
○山添拓君 経団連の提言書などでもODAの使い勝手の向上を求めるということが記されております。
私は、民間資金、否定されるものではないと思いますが、しかし、それは収益性が必然の要求となります。本来、途上国の貧困削減や社会開発の支援を目的とするODAは、収益性ではカバーできない分野や課題、そういうところでこそ求められるものだと思います。ODAに民間資金の投資リスクを軽減する役割を担わせることは、結果として利益優先の国際支援へと変容することを招きかねないと思います。
資料をお配りしていますが、日経新聞の記事で、先進国から途上国へのODA、総額は増加傾向ですが、ウクライナ支援に多くの資金が充てられ、サハラ以南アフリカなど最貧国への支援が相対的に圧縮されているという指摘があります。資金の削減は、緊急に支援を必要とする数百万人の子供に手を差し伸べる活動を制限する、こういうユニセフ、ラッセル事務局長の言葉も紹介しております。大臣の認識を伺います。
○外務大臣(岩屋毅君) 近年、確かにウクライナ支援へのニーズというのが高まっているということは事実だと思いますけれども、それ以前に、OECDの統計によりますと、二〇二一年と二〇二三年の実績を比較しますと、世界全体での後発開発途上国向けの援助額の援助全体に占める割合が約二六%から約一九%に減少しております。また、同時期の我が国のこの後発開発途上国向け援助につきましても、援助額全体に占める割合が約二四%から約二一%に減少していることは事実でございます。ただ、援助額全体の実績が増えておりますために、額としてはほぼ同水準の実績額、約四十二億ドルですが、となっております。
今後とも、我が国の開発協力は、人間の安全保障の考え方を基本にして、人道支援を始め後発開発途上国向けの協力に引き続き積極的に取り組んでいきたいと考えております。
○山添拓君 国際的には、日本など先進国に対して、ODAの支出額をより増やすように求められてきました。政府は、先ほどもありましたが、厳しい財政状況などを理由として、効率化が必要だと言い、民間資金の動員を進めてきましたが、それはODAが本来果たすべき役割を変容させかねないと思います。今日はリスクの話が多数ありました。それもうなずける点があります。私どもは法案には賛成できないという点を申し上げたいと思います。
〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
トランプ関税について伺います。
ルールを無視して一方的に関税引上げを通告した、乱暴で不当な措置です。石破総理は、昨日決算委員会で、我が党の山下芳生議員の質問に、トランプ大統領に事実認識の誤りを正し、措置の撤回も求めると答弁しました。
大臣に伺いますが、総理は昨夜の電話会談で誤りを指摘して撤回を求めたのでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 昨日の総理と山下御党の委員の話は非常にかみ合っていたというふうに私も思って拝聴しておりましたけれども、総理は、具体的な詳細に至るやり取りは首脳間の外交上のやり取りですので控えさせていただきたいと思いますが、一連のその米国の関税措置に対して極めて遺憾だという趣旨のことを伝えた上で、今後はお互いに交渉担当の閣僚を決めて協議をしようと、幅広い協力関係をその中で、ウィン・ウィンの関係を築いていこうという話をしていただいておりますので、具体にわたって指摘されたかどうかは別にして、米国の措置に対して極めて遺憾だという意は伝えていただいているというふうに承知をしております。
○山添拓君 遺憾と言っていても駄目だとさっきおっしゃったじゃないですか。やっぱり撤回を求めると国会で言ったからには、第一声できちんと言っていただく必要があるかと思うんですよ。
トランプ氏からは国際経済においてアメリカが現在置かれている状況について率直な認識が示されたとも石破総理は会見で述べています。その説明というのは、政府にとって納得のいく説明だったんでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 納得がいくかどうかという評価をするのは控えたいと思いますけれども、私どもは、そういった措置について極めて遺憾だということを申し上げているわけでございます。
○山添拓君 結局、遺憾遺憾の繰り返しなんですね。言うべきことを言わずに、聞きおくだけという態度に私には聞こえます。
今指摘、榛葉委員からもありましたけれども、関税率を国によって差別してはならないという最恵国待遇、これはWTO協定の基本的な原則の一つかと思います。また、一方的な措置の禁止も協定上明示されてきました。大臣は先ほど、WTO協定との整合性について疑念があると、そういう認識を示されましたが、協定との整合性について米国の側はどう説明しているのでしょうか。また、説明がないのだとすれば説明を求めるべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(岩屋毅君) 米国側がそのことについて言及をされたとは承知をしておりません。交渉担当閣僚も決まったことでございますし、それらのことも含めて、これから米側としっかりと早急にやり取りをしていくということになると思います。
○山添拓君 何だか頼りないんですけれども、今の時点で整合性に疑念があるわけですよね。ならば、そのことを伝えた上で、少なくともまず米国側の説明を受けるべきだと思うんですよ。いかがですか。
○国務大臣(岩屋毅君) 言えば解決するなら言うだけでいいんだと思いますけれども、なかなか、(発言する者あり)いやいや難しい交渉になろうかと思いますので、もちろん交渉の過程を通じてですね、我が方がどう考えているかということは当然伝えることになると思いますし、その上で、どうすればお互いにとってウィン・ウィンの関係を築けるような協力になっていくかということを議論をしていくということになろうかと思います。
○山添拓君 言わずに済まして何とかなるような、そういう関係じゃないと思いますよ。
外務省に伺いますが、過去日本政府が関税の引上げによるWTO協定違反を理由に紛争解決の申立てを行った実績を御紹介ください。
○政府参考人(小林出君) お答え申し上げます。
関税措置いろいろございますが、直近で日本が相手国の関税措置に対してWTO紛争解決制度に申し立てた事例は、例えば二〇二一年の六月、中国に対して、同国が二〇一九年七月に日本製ステンレス製品、具体的にはステンレス熱延鋼板、それからコイル等でございますが、これに対するアンチダンピング措置として追加関税を賦課したことについて、WTO協定との整合性に懸念を有して協議要請を実施しているところでございます。
それから二〇一九年五月、インドに対しては、同国が二〇一四年以降WTO協定上無税を約束している情報通信技術、これに関する製品を対象に関税を引き上げた措置について、WTO協定との整合性に懸念を有し、協議要請を実施してございます。
○山添拓君 米国に対しても行ったことがありますね。
○政府参考人(小林出君) はい、ございます。
かつてバード修正条項というものがございまして、これに対して措置を行ったケースがございます。
○山添拓君 そして、従来申立てを行った事例と比べて、今度のトランプ関税の対象や規模、どうだと認識していますか。
○政府参考人(小林出君) 今回のトランプ関税については大変重大な影響を及ぼすものであるというふうに認識しておりまして、極めて遺憾に思っております。
○山添拓君 過去と比べても著しく対象は広くて規模は大きい、しかも合理性も認められないだろうと思います。ですから、整合性に疑念どころか、協定違反はもうはっきりしているんだと思うんですね。
そのことを、しかし、言えば解決するものでないと言って言わずに済ませようということでは、(発言する者あり)あっ、言うんですね、言うとおっしゃっているから言っていただこうと思いますが、やっぱりそれは、初めから言うべきことを言わずに来たということの問題を問われると思うんです。
トランプ氏は貿易赤字を理由としています。二四年の対日貿易赤字額六百八十五億ドルを輸入額の千四百八十二億ドルで割って百を掛けると四六%と、まあそんな説明がされております。ただ、事はそう単純ではないと思うんですね。
財務省に伺いますが、例えば日本のデジタル赤字、この現状を御説明ください。
○政府参考人(渡邉和紀君) お答え申し上げます。
御質問のありましたデジタル赤字につきましては明確な定義はございませんが、サービス収支のうちデジタル関連の取引を多く含む項目でありますコンピューターサービス、著作権等使用料、専門・経営コンサルティングサービスの収支を合計したもので議論されておりまして、近年赤字が拡大しております。例えば二〇一九年は三・八兆円の赤字であったところ、二〇二四年には六・七兆円の赤字となっており、この五年間で二・九兆円拡大しているところでございます。
○山添拓君 このマグニフィセント・セブン、グーグル、アマゾン、アップル、マイクロソフト、テスラ、メタ、エヌビディアなど、巨大IT企業は多くが多国籍展開しています。これらの企業が日本で上げた収益は必ずしも全て日米間の収支に反映されているわけではないかと思いますが、そういう認識でよろしいでしょうか。
○政府参考人(渡邉和紀君) そのとおりでございます。
○山添拓君 つまり、米国にはグローバル企業の巨額の利益が流れ込んでいるわけです。同時に、今日トランプ氏が主張している貿易赤字というのは、米国自身が取ってきた産業構造の転換の結果でもあるかと思います。各国に新自由主義的な国際経済秩序を押し付けながら多国籍展開し、安い労働力で利益を上げて、国内で高収益のIT産業に傾斜する。結果、米国内での格差と貧困が広がることになりましたが、それはもとより米国自身の責任です。にもかかわらず、それを他国との貿易戦争によって解消しようなどというのは言語道断だと思うんですね。大臣、そういう認識はお持ちですか。
○国務大臣(岩屋毅君) 言いたいことは私も山ほどあるのでございますけれども、やっぱりこれから交渉を通じて何とかこの局面を打開していかなければいけないというときでございますので、是非、意のあるところをお酌み取りいただければ有り難いと思います。
○山添拓君 言いたいことは言った方がいいと思いますが。
石破総理は、日本が米国に対して巨額の投資を行って雇用の創出にも貢献していると説明し、他国と同じように扱うことは認められない、だから措置を見直しを求めるということもおっしゃっております。
これ、日本だけ良ければいいということになるんでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) それは決してそうではないと思います。
石破総理のお考えも、やっぱり国際交易というものがしっかりとあってこそそれぞれの国の国益がある、日本の国益もあるというお考えだと、私はそのように思っております。
○山添拓君 私は、その御発言は大事だと思います。国益、国益ということをおっしゃいますが、日本の中小企業ももちろん中国とも東南アジアとも多くの貿易関係があり、経済的な結び付きがあります。そういう中で、むしろ、日本さえ良ければよいと、そういう態度で臨んでしまえば、日本の経済を冷え込ませることにもなりますし、いや、そもそもアメリカの側は、相手の国が不公平な関税や非関税障壁を完全に是正したときのみ交渉する余地がある、こういう認識を示している中ですから、日本さえ良ければよいという姿勢では、これはやっぱり足下を見られることにもなりかねないと思うんですね。大臣もこれはそういう認識でしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) 私はやっぱり、この種の関税措置といいますか関税戦争といいますか、一般的に関税戦争に勝者はいないという言い方もありますけれども、最終的には果たして米国経済にプラスになるんだろうかという、個人的な私の思いですけれども、そういう疑念も抱いておりまして、したがって、今やこれだけ経済がリンクしている国際社会の中にあって、一国のみが良くなる、繁栄をするという、そういうことはあり得ないというふうに考えているんですね。
したがって、まずは日米の間でしっかりと協議をいたしますが、やっぱりこの公正で自由な貿易体制というものが全ての国を利するということをしっかり日本は説いていかなければいけないんだと考えております。
○委員長(滝沢求君) 申合せの時間が来ておりますので、まとめてください。
○山添拓君 はい。
我が党は、WTO体制を始め、新自由主義の下での貿易ルール、自由貿易ルールには反対をしてきました。これは、経済主権を脅かすものだと、そして多大な犠牲を強いるものだという観点からです。しかし、そのルールを米国自身が否定していると。今、自由貿易のルールそのものの行き詰まりがはっきりしたと言うべきだと思います。
私は、それに日米同盟絶対で付き従ってきた日本政府も反省をすべきだと思うんですが、今、国内での雇用と営業を守る対策とともに、経済主権、食料主権を守る新たな公正な貿易ルールを主導すべきだということを指摘しまして、質問を終わります。
―――
○山添拓君 日本共産党を代表し、JICA法改正案に反対の討論を行います。
本法案は、途上国への資金流入について、民間資金がODA、政府開発援助を上回っていることを理由に、途上国への投融資に際して、民間資金が直面する採算面のリスクをJICA、国際協力機構の投融資により肩代わりさせることで、更なる民間資金の動員を図ろうとするものです。
ODAは本来、途上国の貧困削減や社会開発の支援を目的とするものであり、いかに効率的に利益を上げるかという観点で投資する民間資金では手が届かないところへの支援こそが求められます。日本を含む先進国によるODA支出は増額が求められていますが、外務省は厳しい財政状況を理由に、ODAの一層の効率化が必要だとして民間資金の動員を強調してきました。
経団連の二〇二四年十月の提言書は、アフリカなどを今後発展が予想される国や地域とし、民間資金動員の触媒機能の強化などODAの使い勝手の向上を求めており、本法案はこうした経済界の要求を踏まえた措置でもあります。
ODAに民間資金の投資リスクを軽減する役割を担わせ、結果として利益優先の国際支援への変容を招きかねません。また、無償資金協力事業に関して、JICAから相手国政府を介さず企業への直接支払を可能とすることは、途上国の要請に基づき実施するODA事業において取られてきた相手国政府を通じた支払という仕組みを変えるものであり、要請主義の原則にふさわしいとは言えません。
以上、討論とします。