映画「ハドソン川の奇跡」ーー原題は主人公である機長の名前をとって「SULLY」といいます。アメリカではそれで通用するぐらいに知られた事件がモチーフ。
2009年1月、ニューヨークで離陸直後に全エンジン停止、ハドソン川に不時着水した航空トラブルを克明に描いていました。
私も当時のニュースを覚えています。マンハッタンのビル群への墜落を避け、かつ、乗客乗員全員が無事という結果には、驚嘆しました。
「奇跡」と呼ばれた救出劇の舞台裏を描く映画ですが、このなかでサレンバーガー機長が「42年の経験はすべてこの時のためにあった」と述べるのが印象的です。当時機長は57歳、数多くの経験がとっさの的確な判断を可能にしたのだと思います。機長だけでなく、副操縦士も客室乗務員もベテランが多い。映画からも見受けられる冷静な対応は、絶対安全が当たり前の職場の緊張感を伝えます。
私が先日国交委員会で問うたJALの事件は、安全の要となるベテラン乗務員を率先して切り捨てたものでした。
整理解雇後、労働条件の悪化などで働き続けることが困難になった職場では人材流出が止まらない。パイロットが不足し、客室乗務員では3人に1人が新人に。こうしたなかで、ドアモードの誤操作やカートの転倒など、通常では考えられない不安全事例が繰り返されているといいます。
165名の整理解雇から5年。被解雇者だけでなく、1万6000人が職場を去りました。誇りを持って臨んでいた仕事を奪われ、労働組合の団結が崩され、家族のくらしが壊され、そして乗客の安全まで脅かされるーーいま、JAL事件の根本的な解決が求められています。