2017年・第193通常国会
- 2017年3月15日
- 予算委員会
政府の働き方改革 過労死ライン合法化を批判
- 要約
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- 政府の働き方改革で、残業時間の上限規制を安倍首相が「月100時間未満」を裁定したことについて、過労死ラインを容認するものであることを批判。
- 厚生労働大臣告示で認められた「月45時間」の例外も、健康障害を防止する医学的根拠があることを示し、例外の例外を作らず、大臣告示を法規制化をすべき、と迫った。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
働き方改革の焦点である残業時間の上限規制に関わってお伺いします。
労働時間の原則は、一日八時間、一週四十時間です。三六協定による時間外労働はあくまでも例外です。例外的に認められる残業時間の上限は、一週十五時間、一か月四十五時間、一年三百六十時間とされている。
これに対して、二月十四日の働き方改革実現会議で示された事務局案はどのような内容でしたか。
○国務大臣(加藤勝信君) 二月十四日に言わばたたき台として示させていただいた事務局案においては、三六協定により週四十時間を超えて労働可能となる時間外労働時間の限度を月四十五時間かつ年三百六十時間と法律に明記をする。そして、これを上回る時間外労働をさせた場合には特例の場合を除いて罰則を科することにしております。臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意をしなければ、月四十五時間、年三百六十時間を上回ることはできないわけであります。
かつ、労使が合意をして労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない年間の時間外労働時間を一年七百二十時間としております。
一年七百二十時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、労使が合意するとしても、最低限、上回ることのできない上限を設ける、これが事務局案の内容でございます。
○山添拓君 大臣告示の倍にも上る残業時間を許容しようとするものです。
さらに、三月十三日には経団連と連合とが上限規制の合意をしたと報じられています。どのような内容での合意でしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 三月十三日に労使が合意をされたということの中身でございますけれども、時間外労働の上限規制の原則は月四十五時間かつ年三百六十時間とした上で、一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合の上限については、年間の時間外労働は、月平均六十時間、年七百二十時間以内とする。休日労働を含んで二か月ないし六か月平均は八十時間以内とする。休日労働を含んで単月は百時間を基準値とする。月四十五時間を超える時間外労働は年半分を超えないこととすることを労働基準法に明記し、罰則付きで実効性を担保するとしております。
また、一時的な業務量の増加がやむを得ない場合であっても、労働時間の延長を可能な限り短くすることで合意したものと理解をしております。
それ以外に、三六協定の必須記載事項として、月四十時間を超えて時間外労働した者に対する健康・福祉確保措置内容を追加。特別条項付き三六協定を締結する際の様式等を定める指針に時間外労働の削減に向けた労使の自主的な努力義務を盛り込むこと。
なお、加えて、勤務間インターバル制度を労働時間等設定改善法等に盛り込むことや、過労死等を防止するための対策などについても盛り込むことが内容とされております。
○山添拓君 二か月から六か月の平均月八十時間、あるいは一か月百時間というのはいわゆる過労死ラインです。これで過労死をなくすことができるんだ、健康を確保し、人間らしい働き方となるんだ、こう考えているんでしょうか。加藤大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) これまでも、いわゆる過労死認定基準をクリアする健康確保を図りつつ、ワーク・ライフ・バランス、あるいは女性や高齢者が働き得る環境、こういったことを基本原則として議論をさせていただいているところでございまして、そういった流れの中で、先般、三月十三日に労使としての合意内容が示された。これを踏まえて、この働き方実現会議において、今月末を目途に取りまとめます実行計画に向けて議論をしていただくと、こういうことでございます。
○山添拓君 お答えになっていないです。これで過労死をなくせるとあなたは考えているのか、こう伺っています。
○国務大臣(加藤勝信君) 過労死の認定基準ということがございます。それをクリアする健康確保という観点から含めて議論をさせていただいている、こういうことでございます。
○山添拓君 全くお答えになっていないと思うんですね。
電通の過労自死事件で亡くなった高橋まつりさんのお母さんは、全く納得できません、人間の命、健康を守るルールにこのような特例が認められていいはずがありません、繁忙期であれば命を落としてもよいのでしょうか、こう述べています。
塩崎大臣、このお母さんのコメントに対してどう思いますか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今回、労使が時間外労働の上限規制についての合意がなされたわけでございますが、まず第一に、時間外労働の上限規制につきましては、これまで様々な議論が特に労政審で行われてまいりました。結論的には合意点が見付けられないで法律にはできなかったと、こういう歴史があって、その中で今回は、この月四十五時間、年三百六十時間という時間外労働の上限を法律に明記をするという初めてのことを行うわけで、歴史的な改革であるというふうに私どもは思っています。大きな前進だというふうに思っております。
今回、過労死をなくしていくという強い決意は、まさにこの労使合意がなされて、法律に罰則付きで入れ込んでいくということが合意をされたことが大変大きな意味だというふうに思っておりますので、過労死をなくしていくという私どもの、政府としての目標でもありますから、これは当然のことながらやっていくということで、また、これは実行計画、働き方改革実行計画をこの三月末に向けてまとめ上げていくわけでありますので、実現会議でしっかりとこの労使合意も含めて議論をしていきたいというふうに思っております。
○山添拓君 答えていないですね。
過労死の御遺族の思いにどう応えるのか。安倍総理も、まつりさんのお母さんに面会して涙したと報じられていました。実効性のある対策をと求められて、何としてもやりますよと応じていたんです。その結果がこれなんですか。大臣、もう一度。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今回、先ほど加藤大臣から御説明申し上げたように、この労使の合意でも、単に時間の問題だけではなく、例えば勤務間インターバルについても努力目標で、努力義務で決めて法律に書き込んでいこうということも決め、またメンタルヘルス対策についても、そしてまたパワーハラスメント防止についても、労使間で、労使を交えた、政府と一緒に多分行われることになるのだろうというふうに思いますが、検討の場を設けて、高橋まつりさんのような事件がまた起きてしまうようなことが絶対ないようにしていこうという決意を、労使、そしてまた私ども、今政府としても更に力を入れていこうということでございます。
○山添拓君 塩崎大臣は、まつりさんのお母さんに面会されたんですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 私自身はお目にかかったことはございません。同じイベントに参加をしたことはございます。
○山添拓君 まず大臣自身が御遺族の気持ちに率直に向き合うことが不可欠だと思います。
過労死防止法では、過労死の防止のための対策を効果的に推進することが国の責務とされています。にもかかわらず、過労死ラインを許容し合法化するなど、とんでもないことだと言わなければなりません。なぜ、今の大臣告示にある一週十五時間、一か月四十五時間、一年三百六十時間、これを上限規制の基準としないのか。加藤大臣、塩崎大臣、それぞれ御答弁いただきたい。
○国務大臣(加藤勝信君) 委員おっしゃっておる大臣告示、もう御承知のことでおっしゃっているんだと思いますけれども、今おっしゃった数字自体は一つの告示として出されておりますが、特別条項を入れればそれを超える労使協定ができると、これが今の現状なわけでありまして、それをいかに抑制をして時間外労働を規制していくのか。そして、その中で、先ほど申し上げました健康確保、さらにはワーク・ライフ・バランス等をどうやって実現をしていくのか。
そういうことで議論をしてきたわけでありますし、そして、やはりこの問題、先ほど塩崎大臣からもありましたけれども、労政審等でも議論されながら答えが出なかった、これに対して答えを出していかなければいけないということで、労使にはまたその合意の形成をお願いをして、先ほど申し上げた労使合意が出てきたところでございまして、我々としては、先ほど申し上げましたけど、それをベースにこれからしっかり引き続き議論をさせていただいて、三月末に実行計画の形で出していきたいと、こう思っています。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の労使合意では、時間外労働の上限規制は月四十五時間かつ年三百六十時間、これを原則としておりまして、一時的な業務量の増加がやむを得ない場合に限って一年七百二十時間などの特例を認めるということになっています。このように、一か月当たりの時間外労働時間の限度は原則あくまでも月四十五時間であって、臨時的な特別の事情がある場合に該当すると労使が合意をしなければこれを上回ることはできないということになっています。さらに、労使合意では、特別の事情により特別条項を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要であるということも確認をされております。
私ども厚生労働省としても、この合意を踏まえて、三月末までに実効性のある計画を取りまとめていきたいと思っております。
○山添拓君 今、七百二十時間という数字が出ました。年平均で月六十時間。六十時間ですよ。臨時的でも特別な事情でも何でもないじゃありませんか。本来の原則というのは一日八時間、週四十時間、残業は禁止なんです。その例外が月四十五時間であり、年三百六十時間だと。例外の例外を認める必要はありません。例外は大臣告示に一本化すべきであり、これを法規制化すべきではないか。加藤大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) いや、繰り返しになりますけれども、大臣告示は先ほど申し上げたような仕組みになっているわけであります。それをベースに、やはり現場、労働の現場に精通をしている労使の方々にしっかり議論をしていただいて、そして実態を踏まえながら実効性のある中身として今回労使合意の中身を我々に提示をいただいたということでございますので、これを踏まえて、先ほど申し上げた三月末の実行計画に向けて更に議論を重ねていきたいと思っております。
○山添拓君 そもそも現行の大臣告示で月四十五時間、年三百六十時間、こう規定されているのはなぜなのか、塩崎大臣、お願いします。
○国務大臣(塩崎恭久君) 月四十五時間、年三百六十時間の根拠だというふうに思いますが、この御指摘の時間数につきましては、昭和五十七年に制定をされました、現行の大臣告示の前身に当たります適正化指針というのがございました。この中で、当時の時間外労働の実態などを踏まえて週十五時間、一か月五十時間などの目安が定められたところであります。その後、三六協定の一層の適正化を図って、労働時間短縮を進める労使の自主的努力を促進する観点から、審議会における議論を経て、平成元年の改正によって年四百五十時間の時間数が追加をされまして、さらに、平成四年の改正で、現行と同じ時間数である一か月四十五時間、一年間三百六十時間に時間数が引き下げられたものと承知をしております。
○山添拓君 なぜその時間なのか、これ御答弁ください。
○国務大臣(塩崎恭久君) さっき申し上げたように、その当時の働き方の実態などを踏まえて、なおかつ健康確保の在り方を考えてこのような時間に定められたというふうに理解をしております。
○山添拓君 残業時間が四十五時間を超えると健康に対してはどのような悪影響があるのか。二〇〇一年の脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会の報告書ではどのように結論付けていますか。
○政府参考人(山越敬一君) お答え申し上げます。
御指摘の報告書でございますけれども、この中では一日七から八時間程度の睡眠ないしそれに相当する休息を確保できる状態が最も健康的であるなどに着目をいたしまして、疲労の蓄積と脳・心臓疾患の関係について医学的知見に基づいて検討した結果が取りまとめられたものでございますけれども、ここでは、その一日七から八時間程度の睡眠時間が確保できる状態は一か月おおむね四十五時間の時間外労働に相当し、このおおむね四十五時間を超える時間外労働が認められない状態では、この業務と脳・心臓疾患発症との関連性が弱いと報告されております。
加えて、このおおむね四十五時間を超えて時間外労働が長くなるほどその関連性が徐々に強まるとされておりますけれども、この段階で業務と発症の関連性が強いとされているものではございません。
○山添拓君 改めて伺いますが、一日七から八時間の睡眠が必要だということの根拠としてこの報告書では何と言っていますか。
○政府参考人(山越敬一君) お答え申し上げます。
この報告書では、一日七から八時間程度の睡眠時間が確保できる状態が最も健康的であるということに着目して出されているものでございます。
○山添拓君 もう一度お答えください。
一日七から八時間の睡眠を取れなければどうなるんだと言っているんですか。
○政府参考人(山越敬一君) この報告書では、一日七から八時間程度の睡眠が確保できる状態が最も健康的であるというふうにしているわけでございます。(発言する者あり)
○委員長(山本一太君) 山越労働基準局長。
○政府参考人(山越敬一君) お答え申し上げます。
この報告書では、長時間労働や睡眠不足による疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせまして、その結果として血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させることを踏まえて報告されているものと承知をしております。
○山添拓君 そうなんですよ。最も健康的で疲労の蓄積を解消させるためには一日七から八時間の睡眠時間が必要だと、その睡眠時間を確保するには残業はせいぜい月四十五時間だと、こう言っているわけです。
大臣告示が一か月四十五時間だとしているのも労働者の健康確保のためだ、このとおりですね。
○国務大臣(塩崎恭久君) 時間外労働に係る大臣告示、今御指摘をいただきましたけれども、当時の時間外労働の実態や働く方の健康確保の観点を踏まえて審議会での御議論を経て定められたということを私は申し上げましたけれども、その際の議論の根底には今御指摘のような健康への配慮というものがあったというふうに理解をしております。
○山添拓君 厚生労働省の、二〇〇六年、過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置、この中では、今の二つの関係、どう説明していますか。
○政府参考人(山越敬一君) お答え申し上げます。
御指摘をいただきましたこの事業者が講ずべき措置でございますけれども、この中では、時間外・休日労働時間が月四十五時間を超えて長くなるほど業務と脳・心臓疾患の発症の関連性が強まるとの医学的知見が得られている、このようなことを踏まえて、事業者は、三六協定の締結に当たっては、限度時間やその例外である特別条項について定めるものであります限度基準告示に適合したものとなるようにすることを定めているものでございます。
○山添拓君 月四十五時間を超える残業は労働者の疲労を蓄積させるんだと、健康に悪いんだと、この医学的な知見を踏まえて、だから大臣告示に適合するように、明確に書いているわけです。
同じ文書で、事業者に対してはどのように要請していますか。
○政府参考人(山越敬一君) お答えを申し上げます。
この委員が御指摘になられました講ずべき措置の中では、三六協定に関しまして、事業者に対しまして、月四十五時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合であっても、事業者は、実際の労働時間を月四十五時間以下とするように努めるものと定められているところでございます。
○山添拓君 改めて伺いますが、労働者の健康確保のための四十五時間という規制だと、厚労省が前提としている。塩崎大臣、よろしいですね。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今局長が答弁したとおりでございます。
○山添拓君 お答えになっていないと思いますが、もう明らかだと思います。
大臣、じゃ、もう一度お答えください。大臣自身そのことをお認めになりますね。
○国務大臣(塩崎恭久君) さっき申し上げたように、健康を考慮してこのような大臣告示がなされたというふうに理解をしております。
○山添拓君 一方で、今度の七百二十時間というものの根拠は何なのか。加藤大臣。
○国務大臣(加藤勝信君) 二月十四日の働き方改革実現会議に示させていただいた、一年七百二十時間としているその考え方でありますけれども、平成二十年の労働基準法改正において、子育て世代の男性を中心とした長時間労働を抑制し、仕事と生活の調和が取れた社会を実現する観点から、月六十時間以上の時間外労働を五割以上の割増し賃金の対象としたところでございまして、この事務局案ではこのときの考え方を基に、こうした一年七百二十時間ということを提出したところでございます。
○山添拓君 事務局案は月六十時間とは書いてないんですよ。年七百二十時間とあるんですよ。逆じゃないですか。
○国務大臣(加藤勝信君) したがって、それをベースに、年間でいうと七百二十時間、月平均で六十時間ということで事務局案を出させていただいたところであります。
○山添拓君 では、なぜ月の上限六十時間としないんですか。
○国務大臣(加藤勝信君) それは、先ほど申し上げた、単月ないし二か月から六か月平均については別途労使において御議論いただくということで、この段階では、トータル一年七百二十時間という数字を提出をさせていただいたと、こういうことでございます。
○山添拓君 六十時間が一定の数字だと言いながら、しかしそれ以上の数字を許容すると。
先ほどもう明らかになったように、月四十五時間というのは医学的知見に基づくものです。一方で、七百二十時間という総量はまともな根拠がないということだと思います。
脳・心臓疾患の労災認定基準では、労働時間の評価についてどのように定めていますか。
○政府参考人(山越敬一君) 脳・心臓疾患の労災認定基準でございますけれども、この中では、時間外労働時間と脳・心臓疾患の発症の関連性につきまして、まず一か月当たりおおむね四十五時間を超える時間外労働が認められない場合は業務と発症の関連性が弱いこと。それから、一か月当たりおおむね四十五時間を超えて時間外労働が長くなるほど業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる。ただ、それだけでは業務と発症の相当因果関係があるとは判断していないところです。それが、発症前一か月間におおむね百時間、又は発症前二か月ないし六か月にわたって一か月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合になりますと、この関連性が強いと評価しているところでございます。
○山添拓君 八十時間や百時間は、おおむねこれを超える残業があれば、原則として労災と認めるという基準です。八十時間以下なら労災とは認められないというものではありません。
トヨタ自動車の二次下請で働き、三十七歳で亡くなった三輪敏博さんの労災認定を求めた裁判で、名古屋高裁が今年二月二十三日に判決を下しました。どのような内容でしたか。
○政府参考人(山越敬一君) 御指摘の判決でございますけれども、発症前一か月間の時間外労働が、労働基準監督署が認定した約八十六時間に加えまして、一つは休憩時間が確保できていなかったこと、それから休日労働があることなど、ほかにも労働している時間があることなどの要因を考慮されて、百時間を超える時間外労働に相当する過重な労働負荷を受けたものと評価できるとして、相当因果関係が認められるという判断がされたものと承知をしております。
○山添拓君 国が不支給だと決定したものを取り消す判決だったわけです。これは、いわゆる過労死ラインに時間数としては達していないとされた事案です。判決は、直前一か月の約八十六時間の残業について、それだけでも脳や心臓の疾患に影響が出る程度の過重な労働負荷であるとし、心停止の主要な要因は過重な時間外労働だとしています。
塩崎大臣、国はこの判決に対して上告をしたんでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘をいただいたこのトヨタの判決につきましては、判決結果を受け止めまして上告しないことにいたしまして、事務方には速やかに労災保険給付を御遺族に行うように指示をしたところでございます。
○山添拓君 救済が認められたということは、御遺族のその後の生活にとっても極めて重要なことだと思います。
一か月百時間を下回る時間外労働でも過労死は起こるのだと国も認めているではありませんか。なぜ、これから百時間もの時間外労働を許容しようというんですか。塩崎大臣。
○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の労使の合意は、あくまでも時間外労働の上限時間は月四十五時間、そして年三百六十時間、これが原則であって、それに対して、例外的に一時的な業務量の増加がやむを得ないという場合の時間として、トータルとして、今まではいわゆるこの三六協定の特例が青天井だという御批判を受けてきた。
そういう中で、七百二十時間という年間の上限を設けて、なおかつ、年、月で、六回だけということで、今度この七百二十時間の中で、百時間、八十時間のことについては先ほど加藤大臣から御答弁申し上げたとおりでありまして、こういうようなことで設けたわけでございますので、私どもとしては、この労使合意にもございますように、月四十五時間、そして年三百六十時間にできる限り近づけるような形で特例であってもやるようにということが合意を見られたものだというふうに理解をしているところでございます。
○山添拓君 過労死の現実から完全に目を背けるものだと思います。
資料でお配りしていますが、実際に過労死や過労自死で労災認定された方の残業時間がどのぐらいだったのか、厚労省の資料を基にグラフにしたものが五ページ、六ページのグラフです。
残業時間別の労災認定の件数、五年間の平均で示しています。脳・心臓疾患による過労死事案では、残業時間八十時間から百時間で認定された方が四十八・四人と突出をしています。全体の約半数が百時間以下で認定されています。間違いありませんね。
○政府参考人(山越敬一君) 委員がお示しなされました資料でございますけれども、これは、発症前一か月間を評価期間として労災認定した件数と、発症前二か月から六か月間を評価期間として労災認定した件数を合わせて計算されているものだと思います。
その上で、一か月から六か月間の評価期間中の時間外労働時間数を評価期間の月数、これは一か月から六か月がございますけれども、それで割った一か月当たりの時間数ごとの労災認定件数ということであれば、おおむね数値のとおりになるというふうに考えております。
○山添拓君 労災認定されているのは、現実にある過労死の氷山の一角にすぎません。辛うじて認定に至ったうちの半数にも及ぶ働き方、これを合法化していく、到底容認できないことだと思います。
この間、経団連の榊原会長は、月百時間は妥当な水準だと言い、労使の合意形成ができなければ無制限に残業できる状況が続くと連合に対して譲歩を迫ってきた。政府は、労使の合意、現実には経団連が納得する内容でなければ残業時間の上限規制を導入しないということなんでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 基本的に、労働に関する議論というのは労働政策審議会で合意をもってつくられてきている、そしてそこでは労使同数で議論をしていただいている、そしてそういう状況の中で、先ほど申し上げた、これまでもこの時間外いろいろ議論があったけど結論が出てこなかった、こういう背景がある中で、今回、総理を議長として経済界、労働界のトップ、有識者が入っていただいた、そこでしっかり議論をして答えを出していこうと、こういうことであります。
○山添拓君 月百時間を受け入れるか、それとも青天井の残業をそのままにするか、二者択一を迫った結果でしかないじゃありませんか。
○国務大臣(加藤勝信君) いや、したがって、今、先ほど申し上げた状況の中で、現場をよく知っておられる労使の皆さん方に、実効性があり実態を踏まえた、こうした答えが出るように御議論をお願いをして、今般労使で合意をいただいたと、こういうことであります。
○山添拓君 経団連と連合が合意したからといって、過労死ラインの合意を政府が容認するなど、過労死をなくすべき政府の責任を放棄するものじゃありませんか。
○国務大臣(加藤勝信君) ですから、先ほど申し上げているように、現状がどうであるのか、それに対して、今青天井と先ほどお話もありましたけれども、それをどういう形で規制をし、その中で健康確保などの目的をどう実現するかということでこれまで議論をし、そして最終的には労使の合意ということがなければ具体的に前に進んでこない、これはもう我が国の仕組みがそうなっているわけでありますから、それを踏まえた上でしっかりとした議論を総理からもお願いをして、そして労使間でかんかんがくがく議論していただいた形でつくり上げてきていただいたのが先ほど御説明した労使合意ということであります。
○山添拓君 現状とおっしゃいました。経団連の役員企業にはどういう実態があるか。
しんぶん赤旗の調査では、会長、副会長企業十七社のうち十六社で月八十時間を超える時間外労働を認める三六協定があり、最長はNTT東日本の百五十時間、月百時間以上が八社、一日に延長できる残業時間は、八時間以上十三社、十時間以上十社、十五時間という企業もありました。所定労働時間と合わせれば、一日に二十二時間以上も働かせることが可能になっている。榊原会長が最高顧問を務める東レは、月百時間、年間九百時間の三六協定を結んでいます。その榊原氏が百時間妥当だと述べているわけです。
八十時間、百時間といった残業を許容することは、これらの企業の多くで過労死ラインの特別条項を温存することになるではありませんか。塩崎大臣、どうですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど来申し上げているように、今回の合意ではあくまでも原則は月四十五時間、年三百六十時間であり、特例的な扱いをするとしても、この月四十五時間、年三百六十時間、これに近づけるということが原則だということを明確に合意でも言われているわけであります。
これを法律で初めて上限を設けていこうということを今やろうとしているわけでありまして、法律でやはり定めることが実効性を持つので、我々としては、やはり今まで青天井と言われるようなことで批判をされてきたような形ではない、新しい法律でもって罰則付きの上限規制をしようと、こういうことでやっと労政審の中で今まで合意できなかったものを合意を今度できそうなところまで来ているわけでありますから、これをしっかりと法律で定めていくことがやはり実効性のある長時間労働対策になるんではないかというふうに思いますし、過労死ゼロにしていく、このことが実現する一歩になるんだろうと私は思っております。
○山添拓君 特別条項あっても努力するというんですが、今でも四十五時間以下になるように努めるになっているんですよ。厚労省もそう指導するとさっきおっしゃいました。それでも過労死は減っていないわけです。だから問題となっているのに、現状を追認するのでは何ら前進でないと言わなければなりません。
過労死の認定基準における八十時間や百時間というのはどういう時間をいうんですか。
○政府参考人(山越敬一君) お答え申し上げます。
脳・心臓疾患の労災認定基準における時間外労働数は、業務と発症の関連性を評価するために算出しているものでございます。具体的には、発症日を起点とする三十日間を一か月といたしまして、発症日から遡りまして七日ごとに実労働時間を集計いたします。その中で、一週間当たり四十時間を超えて労働した時間を通算するという算定方式を取っているところでございます。
○山添拓君 法定休日に働いた分も含みますか。
○政府参考人(山越敬一君) 法定休日に労働した時間もこの算定に算入するものでございます。
○山添拓君 大臣告示の四十五時間、三百六十時間には休日労働は含まれますか。
○国務大臣(塩崎恭久君) この限度基準告示というのは、三六協定、これによって労働時間を延長する際の限度時間を定めたものであります。法定休日労働に係る時間につきましては、限度時間には含めていないというところでございます。
○山添拓君 今度の事務局案における四十五時間、三百六十時間には休日労働を含みますか。
○国務大臣(加藤勝信君) これまでの、今も塩崎大臣からお話があった点も踏まえて、年間七百二十時間の上限については休日は含まないものとして整理をされておりますし、三月十三日の労使合意においても同様の考えになっておりますが、ただ、労使合意の中で出されております八十時間、百時間に関しては、明示的に休日労働を含むということになっているところであります。
○山添拓君 加藤大臣、今後、休日労働を含む上限規制を検討していきますか。
○国務大臣(加藤勝信君) したがって、今回の労使合意においては、一月において百時間、二か月から六か月についての八十時間については休日労働を含むと、こういうふうに明示的に書いているわけでありますから、それを踏まえて議論をしていくことになります。
○山添拓君 当然のことだと思います。そうでなければ、過労死認定基準を元々の出発点にしたこととの整合性は取れないと思います。
労働基準法の一条では、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」としています。過労死を認めるような基準はこの精神とは程遠いです。
私は、弁護士として過労死事件に関わってきました。御遺族は、大事な家族を失った悲しみだけでなく、自分がもっとしっかりしていればよかった、なぜあのとき休んでいいよと言えなかったかと……
○委員長(山本一太君) 山添君、時間ですのでまとめてください。
○山添拓君 自らのことを責めて苦しんでおられます。
こんな思いを二度と繰り返さないということが政治に求められています。にもかかわらず、過労死ラインの働き方にお墨付きを与えようとする。
○委員長(山本一太君) 山添君。
○山添拓君 多くの過労死遺族や働く者の声から懸け離れています。
○委員長(山本一太君) 時間です。
○山添拓君 名ばかりの働き方改革ではなく、働く者の立場に立つルールを作ることを強く求めて、終わります。
○委員長(山本一太君) 以上で吉良よし子君及び山添拓君の質疑は終了いたしました。(拍手)
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