2017年・第193通常国会
- 2017年4月4日
- 国土交通委員会
不動産特定共同事業法案 不動産投資の規制緩和推進に反対
- 要約
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- 「不動産特定共同事業法」の審議で、複数の投資家から出資を募り、不動産に投資する「不動産特定共同事業」の規制緩和に対し、投資家に被害が起こる可能性を指摘し、土地や不動産を投機の対象とすることに反対した。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
不動産特定共同事業法は一九九四年に制定された法律です。不動産投資を小口化し、売買や賃貸による収益を配当して投資家に還元する不動産証券化の手法だとされています。
大臣に伺いますが、この法律によって不動産特定共同事業を営む事業者について許可制を取り、投資者に対する情報開示など行為規制を行うことになった経緯とその趣旨は何でしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 不動産特定共同事業法でございますが、平成三年頃に不動産の小口化商品を販売する事業者が倒産をし、投資家被害が発生をしたことから、不動産特定共同事業を営む事業者に関しまして、宅地建物取引業の免許、一定の資本金等の参入要件、不当な勧誘の禁止等の行為規制、定期的な業務報告や立入検査等の監督等の規定を定めまして、その業務の適正な運営を確保することにより投資家の利益の保護を図るとともに、不動産特定共同事業の健全な発達に寄与することを目的といたしまして平成六年に制定されたものでございます。
○山添拓君 今、平成三年頃にと冒頭おっしゃったんですが、これの、一九九一年頃ですが、突然そういう事態が起きたということではないわけですね。バブル期に経営基盤が脆弱な事業者が増えて、そしてバブル崩壊によってこうした事業の中で被害が発生したんだと。こういう反省から規制がしかれることになったものだと思います。
ところが、その後、九七年には特例投資家という制度で投資家保護を目的とした規制が一部緩和をされ、さらに二〇一三年には特別目的会社、SPCによる特例事業制度をつくったと。これは、事業者が行う他の事業が不振となった際に不動産特定共同事業に影響が及ぶのを排除するものだと説明があったんですが、逆に不動産特定共同事業が傾いた場合には、投資家に対する保護はこれはSPCの責任の限りになる、言わばトカゲの尻尾切りを可能にするようなものでもあると。また、許可制から届出制にする大幅な規制緩和でもありました。今度の改正法案は、一連の規制緩和を更に推し進めるものとなっている点で問題があると考えています。
この法案、二〇一六年八月二十六日付けで発表されました不動産投資市場政策懇談会制度検討ワーキング・グループの報告書に沿って作られておりますが、この報告書では、小規模事業の特例を創設するに当たって、許可要件を緩和することが適当である、あるいは資本金要件等の財産的要件、業務管理者等の人的体制要件等において適切な許可要件を設定すべきと書いておりました。
なぜこの法案では、今度の法案では許可制そのものをやめて五年更新の登録制としたのでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) 現行の不動産特定共同事業につきましては、事業者が行おうとする事業の内容に応じまして、事業者の財産的基礎あるいは人的構成について裁量を持って審査する必要があり、行政が裁量を持って審査できる許可制となっているものと考えております。
一方、今回の小規模不動産特定共同事業につきましては、出資総額などの事業規模に制限が設けられる、そういう事業でございますので、その範囲内での事業を行うために必要な財産的基礎や人的構成を有するか否かを確認すれば足りるということでございまして、許可と比べ裁量性の低い登録制としたということでございます。
また、大規模な事業、規制のない大規模な事業を行うことができる事業者と小規模特定共同事業のみ行うことができる事業者、これを許可業者と登録業者ということで区別するということは、投資家にとっても分かりやすくなるというふうにも考えられているところでございます。
今回の法改正では、登録は許可とは異なり五年ごとの更新制という制度も導入してございます。定期的に事業者の業務状況を審査して不適格業者の排除を図ることができる制度とするなど、投資家の保護を徹底をしているというところでございます。
○山添拓君 裁量の幅が狭くなるんだと、登録するかどうかは裁量の幅が狭くて、要するに、申請があって、形式的に要件を満たせば基本的には受け付けるということになりますから、悪質な業者を排除するための重要な参入規制である許可制を緩和するものだということは指摘しなければならないと思います。
小規模不動産特定共同事業については、空き家、空き店舗の再生・活用事業によって地方創生につながるのだと。古民家を宿泊施設にするとか、あるいは舟屋をカフェにした、こういう事例が紹介をされています。ただし、投資総額は一億円までとされておりますので、再生だけではなく、新築についても一部は対象となり得るかと思います。
一般の金融投資でも投資判断というのは難しいわけですが、不動産の再生・活用事業において、投資者が見通しを立てるということは困難があります。事業者が投資者に提供する情報については、法律には詳細な定めはありません。事業計画の内容はもちろんですが、空き室の発生や賃料の下落、あるいは物件の価値の下落などで収益の分配がない、あるいは損失が発生するというリスクがあるということなど、具体的にはどのように情報提供されるんでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) 小規模不動産特定共同事業者の情報提供義務につきましては、既存の許可業者と同様に、広告や契約締結前のリスクの説明、財産管理状況の説明などの情報提供を投資家に対して行わなければならないということとしてございます。
さらに、この改正に合わせまして、事業者に対する監督指針でございます不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項につきまして、この内容の充実を図り、高齢者であるか否か、投資経験がどれぐらいあるかなど、顧客属性に応じた適切な勧誘、広告や事業内容の説明の在り方などについて具体的な指針を示すこととしております。
○山添拓君 今聞いている限りはまだ抽象的な中身だと思うんですが、この事業は小規模な宅建取引業者に担わせることを予定していますが、その多くは投資運用業務に精通しているわけではないということも併せて指摘をしておきたいと思います。
国交省に改めて伺いますが、この五年程度の間に不動産特定共同事業に関して行われた行政処分の事例について、どのように把握をされているでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) 五年以内の実績といたしまして、不動産特定共同事業者に対する業務停止命令処分は三件行われております。東京都によるものが一件、大阪府によるものが二件でございます。
○山添拓君 東京都の例でいいますと、二〇一二年の八月二十二日付けで、都市綜研インベストバンク株式会社に対して、不動産特定共同事業に係る業務の一部停止三十日間、それから指示の行政処分が行われています。
これは、法律の二十四条一項に定めている重要事項説明書面で最近五年間の賃料収入などの実績を書くべきとされているところ、一年半分の実績であることを隠していたとか、これから賃貸するために過去分が不明であるのに予定額のみ記載していると、こういう投資判断をする上で重要な点で違反があったというような事例があります。この件は意図的になされたものかどうかまで認定はされていないんですが、参入要件を緩和すれば悪質業者の参入も更に懸念されると思います。
国交省は先ほど来の説明で志ある資金とおっしゃるんですが、詐欺的な資金集めの手法として使われることも十分あり得ると考えられます。国や都道府県が行う行政処分の事例について、国交省は、これ一覧にして公表するというようなことを考えるべきではないでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) これらの処分につきましては、現在のこの不動産特定共同事業法、この法律の規定に基づきましてそれぞれ公告がされているというところであると承知しております。
○山添拓君 ですから、それを国交省が一覧にして当事者に対して提供するということを検討されるべきではないかと思います。
この法律、不動産特定共同事業者が海外不動産を国内で販売する場合の投資についても適用はされますでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) 日本国内において締結される不動産特定共同事業契約につきましては、不動産の所在地にかかわらず本法の規制が及ぶことから、海外不動産につきましても不動産特定共同事業法の適用対象となります。
なお、現在までのところ、海外不動産についての実績はございません。
○山添拓君 二〇一三年に東京都の消費者被害救済委員会が扱ったある事例では、七十歳代の男性がカンボジアの三十平米のアパートを購入するように繰り返し勧められて、断ったんですが、名義だけでも貸してほしいと懇願をされたと。仕方なく名義貸しを了承しましたところ、後日になって、トラブルが生じたから代金の一部を代わりに支払ってほしいと、こう言われて百五十万円の立替えに同意をしたと。よく確認すると、立替金のつもりだった支払はカンボジアのアパートの三平米を百五十万円で購入したということになっていたんですね。この契約では、共有持分を取得して賃貸させると同時に、共有部分で運営されるレストランの収益の分配も規定されておりまして、不動産特定共同事業に当たるわけです。この件は詐欺まがいのものですが、海外投資の事例となりますとますます当事者にとっては判断が難しくなるかと思います。
プロ投資家向けの事業においては、今度、約款規制を廃止し、機関投資家などスーパープロ投資家が事業参加者となる場合には許可を不要とする制度になっています。金融商品においては、プロ向けファンドだと銘打って簡便な届出制を悪用して、投資経験の乏しい高齢者などをターゲットに押売をする事例が相次いだんですが、今度のスーパープロ向けの事業において、一般投資家が投資することが可能になるケース、これはあり得るんでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) まず、プロ投資家向け事業を行う事業者はプロである特例投資家のみを対象として事業を行わなければならず、プロ向け事業の投資家は、不動産特定共同事業契約上の地位を特例投資家以外の一般投資家に譲渡することが法律上まず禁止をされております。
また、適格特例投資家限定事業につきましては、適格特例投資家のみを対象とするため、許可を受けることなく届出で事業を開始できるものといたします。そのため、適格特例投資家限定事業者が一般投資家を相手方として事業を行うことは法律上禁止をされているわけでございます。したがいまして、経験のない高齢者のような一般投資家はプロ向け事業やスーパープロ向け事業に投資することはできないということになるわけでございます。
○山添拓君 規制の外側で個人から金をだまし取る無届けの悪質業者が増える、こういう可能性も指摘をされているところです。金商法上そういう経験があるわけですから、その反省を踏まえるのであれば、この不動産特定共同事業についてもあえて許可制を緩和する必要はないと言うべきだと思います。
最後に伺いたいんですが、二〇一三年の法改正では、民間資金の導入を促進し、建築物の耐震化、老朽不動産の再生を進めるものだとされていました。法改正で十年間で五兆円の新たな投資が行われるんだと、こううたっていたんですが、現時点で、大臣、どのように総括をされているでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 不動産特定共同事業法におきましては、平成二十五年の改正によりまして、地方の老朽化ビルの再生事業などでの活用を念頭にいたしまして、特別目的会社、SPCを活用した特例事業を創設したところであります。
特例事業につきましては、平成二十五年十二月の施行以来三年間で特例事業者数が三十四社、事業の投資累積額が約八百億円に達しているところでございます。この特例事業につきましては、小松市、札幌市など地方都市でのプロジェクトが半数近くになるなど地方での活用実績が上がっておりまして、民間資金を活用して地域の不動産の再生を進め、地域活性化につなげるという法改正の狙いは着実に実現をしていると考えられます。
委員御指摘のとおり、平成二十五年改正時には十年で五兆円という目標を立てたところでありますが、これは様々な仮定を置いた上で設定をされたものでございます。現状は目標から乖離しているところでありますけれども、今後とも、少しでも目標に近づけるよう、引き続き努力をしていきたいと思っております。
いずれにいたしましても、民間資金を活用して地域の不動産を再生をし、地域の活性化を着実に進めていくことが重要なことだと考えております。
○山添拓君 不動産投資をこれ以上あおることのないようにしていただきたいと思っております。
以上で終わります。