山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2018年・第196通常国会

資源エネルギーの安全保障について質疑

要約
  • 日本共産党の山添拓議員は、中東情勢に詳しい保坂修司・日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事に、トランプ米大統領によるエルサレム首都認定宣言は国連決議違反の暴挙で「撤回すべきだ」として、各国政府が批判するなか、公式に批判しない日本政府の姿勢を示し、意見を求めました。
  • 保坂氏は、首都認定は中東和平への「大きな脅威」だと批判。「日本政府の対応に関しても不満に思う部分がある」と語りました。

 

参考人:日本エネルギー経済研究所 保坂修司氏

東大公共政策大学院教授 芳川恒志氏

東大名誉教授 浦辺徹氏

○会長(鶴保庸介君) 原子力等エネルギー・資源に関する調査を議題といたします。

「新たな時代に向けた我が国の資源エネルギー像」のうち、「我が国の資源エネルギー戦略」について調査を行うに当たって、本日は「資源エネルギーの安全保障」について参考人から意見を聴取いたします。

御出席いただいております参考人は、一般財団法人日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事保坂修司君、東京大学公共政策大学院特任教授芳川恒志君及び東京大学名誉教授・内閣府SIP「次世代海洋資源調査技術」プログラムディレクター浦辺徹郎君でございます。

この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げたいと思います。

本日は、御多用のところ本調査会に御出席をいただきまして誠にありがとうございます。

皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

議事の進め方でございますが、まず保坂参考人、芳川参考人、浦辺参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

なお、御発言は着席のままで結構でございます。

それでは、保坂参考人からお願いいたします。保坂参考人。

○参考人(保坂修司君) 日本エネルギー経済研究所の保坂と申します。よろしくお願いいたします。

私がお話しするのは、中東というエネルギーの本質、本筋から若干離れている部分だとは思いますけれども、しかし、非常に重要なポイントになるのではないかと思っております。(資料映写)

いわゆるエネルギー安全保障を考えるとき、恐らく多くの人たちは、一九七三年のいわゆる石油ショック、オイルショックを思い浮かべるのではないかと思います。第四次中東戦争をきっかけに中東産油国が石油武器戦略を発動したため、石油価格が一気に上昇し、いわゆる狂乱物価あるいはトイレットペーパー騒動が起こったり、あるいは中東産油国が日本に石油を売らないといったことまで出てきまして、日本中がパニックになりました。我が国のエネルギー政策はこの年を境に大きく変貌したと言っても過言ではないと思います。

現在の我が国における石油や中東の位置付けは、一九七〇年代のそれとは大きく異なっております。しかし、依然、中東は我が国のエネルギー安全保障上重要な位置を占めておりますし、地政学的なリスクを抱える地域として認識されております。

中東というのは、非常に、地理的な概念というよりは、むしろ政治的、文化的な概念でございます。見る人によって伸び縮みしまして、エネルギー業界で言うところの中東と、日本における一般的な中東の範囲はかなり異なっております。こちらがエネルギー業界で言うところの中東になりまして、我々が考える中東よりも大分狭い範囲になっていることが分かると思います。よく言うエネルギーの中東依存度といった場合の中東と、それから我々が考える中東と、領域的にかなりずれている点は注意が必要ではないかと思います。

中東が大きな問題になるのは、単にエネルギー供給源というだけではなく、宗教あるいは民族といった軸で考えると、中央アジアあるいは東南アジアなど、政治的、宗教的、文化的、経済的にも影響を及ぼしていくということが言えるからではないかと思っております。

我が国は、サウジアラビアとUAEからだけでも石油の約六割を輸入しております。その他の大口の輸入元も多かれ少なかれ中東ということになります。一方、天然ガスに関しましては、オーストラリア、カタール、マレーシアなどから多く輸入しております。石油と比べると若干多様性はあるとは思いますが、ここでもやはり実は中東の役割というのはかなり大きなものがございます。

先ほどお話ししました中東依存度という問題なんですけれども、石油の中東依存度は現在約八七%というふうに言われております。ただ、実際には、サウジアラビアやUAEなどいわゆるGCC六か国、それにプラスしてイラン、イラク、この八か国がほとんど全てになります。ほかの中東の国からの輸入は本当に微々たるものにすぎません。他方、天然ガスの中東依存度は約二四%。しかし、これにインドネシアとかマレーシアあるいはブルネイといったイスラムという宗教を通じて中東と深く結び付く国々を含めますと、実は六割近くを占めることになります。これをイスラム依存度というふうに言ってもいいかもしれません。石油で見た場合、石油のイスラム依存度は九割に達します。

中東の重要性は、単に資源国というだけではなく、その資源を運搬するシーレーン上の要衝が含まれている、これも非常に大きな問題点になっています。例えばイランとオマーンの間のホルムズ海峡、ここには石油の約八〇%、天然ガスの二五%が通過しております。ここが封鎖されれば日本やアジア諸国は深刻な影響を受けることになります。そのほか、例えばバーブルマンデブ海峡、スエズ運河、ジブラルタル海峡、こういった地点は、日本の海運、貿易にとって極めて重要なチョークポイントとなっておりまして、それだけでもこの地域の安定が日本経済にとって不可欠であるということは理解できると思います。

一方、日本の対中東貿易を見ますと、エネルギー輸入の面で重要なことは言うまでもありませんが、輸出市場でもそれなりの地位を占めていることが分かると思います。ただ、中東市場での日本のプレゼンスは残念ながら徐々に下がってきております。代わって、中国などアジア諸国が貿易面で大きな地位を占めつつあるというのは御存じのとおりだと思います。

他方、中東の地政学的リスク、これがこの地域に内在する多数の国際紛争に起因しているということは言うまでもありません。中東の抱える諸問題の中でも、中東和平、すなわちパレスチナ問題、これが古くから最も中心的なテーマとなっております。前述のとおり、この問題がきっかけとなって石油ショックが起きたわけですので、このときの中東産油国の石油武器戦略、これが多くの石油関係者、エネルギー関係者のトラウマになっていることは間違いないと思います。

また、現代のテロ問題、これの多くも中東を根源としております。一九九〇年以降、イスラムあるいはジハードの名の下で犠牲になった日本人の数は既に六十人を超えております。こうしたことからも、我が国の中東進出あるいは対中東投資をちゅうちょさせる大きな原因になっているわけです。

そのほか、クルド問題あるいはイランの核問題、また民主化、あるいは人権の問題、これも非常に重要なポイントになっております。

中でも、我が国のエネルギー安全保障にとって頭の痛い問題がサウジアラビアとイランの対立になります。サウジアラビアはスンナ派のアラブ、イランはシーア派のペルシャ、したがって両者の対立は必然であると。こういった宗教対立、あるいは民族対立、あるいはイデオロギーの対立に原因を求める論調は少なくありません。もちろんこれは一面真理をついたものではありますが、実際には、一九九〇年代から二〇〇〇年代初めまで、両国関係は実は極めて良好でした。

それが、二〇〇三年のイラク戦争をきっかけにアラブ諸国でシーア派やあるいはイランの影響が増加すると、両者の関係に亀裂が生じてきます。サウジから見れば、イランからイラクを経てシリア、レバノンと、ちょうどシーア派が多数派を占める、あるいはシーア派が重要な地位を占める国がサウジの頭を押さえ付けるようになっております。こうした状況をしばしばシーア派の三日月と呼んでおります。

また、二〇一五年以降は、イエメン内乱でイランがイエメンのシーア派勢力を支援しているとされまして、サウジアラビアはシーア派から四方を囲まれるという状況になっております。そのような中、二〇一六年一月にサウジはイランと断交し、以来、両国は子飼いのメディアを使って非難合戦を続けております。

日本は、サウジから石油の三〇%以上を輸入しております。また、イランは中東の大国であり、石油のみならず天然ガスでも潜在的に日本のエネルギー安全保障上中核になり得る存在でございます。この二つの国が対立し続けることは、当然、日本にとってプラスではありません。この二国は、単に当事者同士だけでなく、周辺諸国をめぐっても激しく対立しておりますが、中東の二大資源強国、この対立がこうした域内紛争の解決を遅らせていると言ってもいいと思います。

もう一つ重要なポイントは、昨年六月、サウジアラビアとUAEなど四か国が同盟国であるはずのカタールと断交しました。サウジとUAEの二国だけで日本の石油輸入の約六割を占めております。また、カタールは日本の天然ガス輸入で重要な役割を果たしております。東日本大震災で日本の原発が止まったとき、カタールから急遽大量の天然ガスを輸入したのは記憶に新しいと思います。

この対立も日本にとっては深刻な問題でございます。前述のサウジ、イラン関係でもそうでしたが、このサウジ、UAE対カタールの対立でも、例えば米国はサウジ側支援を明確にしております。しかし、日本はこの両陣営と長く良好な関係を構築しておりました。また、石油、ガスの両面で我が国にとって重要な国であることは言うまでもありません。米国のように簡単にどちらか一方を支持するということは日本にはできませんし、またそうすべきであるとも思いません。

中東産油国、より具体的に言いますと湾岸産油国は、いずれも大きな経済力を持っており、域内、域外で単なる政治力だけではなくて経済面でも強い影響力を発揮しております。仮に、それらの国々が政治的に混乱し、石油やガスの輸出に支障が出れば、日本だけでなく様々な国に悪影響を及ぼすことになります。もちろん、湾岸産油国が直面するのはそうした政治的な紛争だけではありません。もっと根の深い、彼らの政治、経済あるいは社会システムそのものに根差した問題が彼らの未来に暗い影を差しているというふうに言うことができると思います。

湾岸産油国の政治社会構造は、しばしばレンティア国家と呼ばれます。天然資源を海外に輸出して、その収益を国庫に入れて、そこから福祉や教育など政府サービスや公務員の人件費を捻出する、そういったシステムになるんですけれども、特にGCC諸国では、所得税もなく、歳入の大半を石油あるいはガスからの収入が占めております。よく知られておりますように、湾岸産油国はこうした収入を背景に豊かな福祉国家を実現いたしましたが、それもこれも石油があればこそということになります。

しかし、この石油に依存するシステムというのは極めて脆弱で、例えば油価が下がれば一気に財政赤字になってしまいます。何よりも、石油は有限であり、いずれ枯渇いたします。また、近年の地球温暖化などで化石燃料に対する批判が高まっていることを考えますと、枯渇するよりも前に使われなくなる可能性が高いということも言えます。

石油業界では、つい最近まで、石油供給がピークを迎える、つまり石油の生産が徐々に減少していくという議論が盛んでしたけれども、近年では、むしろ、石油はどんどん使われなくなる、石油の需要がピークになるんだという議論が盛んになっております。私の所属する研究所の試算では、二〇三〇年ぐらいから油価は低落していくというふうに予想しております。しかも、湾岸産油国では人口が増加しており、必然的に国内エネルギー消費も拡大します。となると、これまで輸出に回していた石油やガスを国内で消費しなければならず、本来外国に売って収益を得ていたはずの資産まで食い潰していくとなってきます。そうなると、主たる産業が石油しかない湾岸産油国は危機的な状況に陥ってしまうわけです。

そこで、産油国の多くは新たな対策を立てることになりました。具体的に言いますと、経済を多角化したり民営化することで非石油部門を増強する、あるいは補助金をカットして歳出を減らすと、こういった対策ですね。ただ、産油国である湾岸諸国の安定は、日本のエネルギー安全保障上、依然として重要であることは言うまでもありません。さらに、湾岸諸国の安定は、中東域内、域外の安定にとっても不可欠でございます。

日本のエネルギー安全保障における湾岸産油国の重要性は、石油が一次エネルギーの中核を占めている限り変わりません。したがって、その間、湾岸産油国が日本を含むエネルギー消費国に安定的あるいは持続的に資源を供給するシステムが必要であり、そのために我が国はどうすればいいのかということが問われることになります。

まず一つは、中東諸国が抱える様々な紛争で仲介や調停の役割を積極的に取るという点でございます。サウジやイラン、UAEやカタールなど、対立する勢力と友好的かつ深い関係を維持している日本だからこそできることがあるのではないかと思います。

もう一つは、中東産油国の脱石油依存のプロセスを支援していくことです。我々の試算では、二〇五〇年頃まで石油は重要なエネルギーであり続けます。ただ、そのときになって産油国が石油依存をやめようとしても、時既に遅しということになります。その前から、産油国を石油依存体質からソフトランディングさせていく必要がございます。

例えば、サウジアラビアは、二〇三〇年をターゲットにサウジ・ビジョン二〇三〇というプログラムを発表しております。既にサウジアラビアとは、日・サウジ・ビジョン二〇三〇という形で、日本がサウジの構造改革を支援していくことで合意しております。似たような枠組みでどれだけほかの産油国の脱石油依存に貢献できていくかということが一つの鍵になっていくのではないかと思います。

もちろん、石油依存を下げ、中東依存を下げていくことは重要ですが、少なくとも化石燃料が使われなくなるまでは安定供給を維持する必要があり、そのためには中東との緊密な関係を維持していく必要があります。一方、産油国側ではアジアへの輸出依存度が増してきています。近年の中国あるいはインドの中東におけるプレゼンスの拡大には目をみはるものがあります。

当面の間、こうした域内の強力なライバルと競合して日本が安定的なエネルギー供給を確保するためには、日本のうまみを生かした独自の対中東関係の構築が必要だというふうに考えられます。そのためには、上流権益の確保も必要ではないかと思います。ここでも中国は日本の強力なライバルになっております。日本はかつて失敗しましたアラビア石油の権益更新、この失敗をきちんと分析して、その失敗を次に生かす必要があるのではないでしょうか。サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコのIPOも、その意味では検討課題と言えるでしょう。

また、産油国の人口増とエネルギー消費増に対処するため、産油国の省エネあるいは再生可能エネルギー分野での協力、こうしたものは日本の得意分野でもあり、大きな可能性を含んでおります。既にサウジなどとは協議が進んでおりますけれども、化石燃料から水素を製造するプロジェクト、これは既存の石油産業のインフラをある程度利用できることからも、中東産油国とウイン・ウインの関係を構築し得る有望な分野と言うことができます。

いずれにせよ、エネルギー安全保障のために石油依存度や中東依存度を下げることには意味はありますが、その結果、中東における日本のプレゼンスを下げてしまっては、かえって逆効果になってしまうと私自身は考えております。

私の意見は以上のとおりでございます。

ありがとうございました。

○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。

次に、芳川参考人にお願いいたします。芳川参考人。

○参考人(芳川恒志君) ありがとうございます。

御紹介をいただきました芳川と申します。おはようございます。よろしくお願いいたします。

私は、本日は、我が国の取るべきエネルギーミックスの在り方について、これを十五分で話せというふうに言われていまして、到底私の能力を超えるものですから、本日はこのようにお話を申し上げたいというふうに思っております。先生方は高い立場から、高い視点から政府のエネルギー政策についてアドバイズをされ、御指導をされるというお立場から、このエネルギーミックスを検討するためにどういうことが基本になるのかということを、その基本的な要素、私が考える重要な基本的な要素はどういうことかということをお話をしていきたいと思っております。(資料映写)

ただ、資料は以下の三部構成になっております。

まず最初が、基本的なこととは何か、それを幾つか解説をしております。

それから二つ目が、これは、我が国のエネルギー政策、エネルギーの構造を見るに当たって、これを現実に当てはめるとどういうことかということを十五ページ以降、解説をしております。

最後に、ちょっと私、後でも申し上げようと思うんですけれども、グローバルな視点が非常に重要だということから、昨年の末に発表されました、国際エネルギー機関、IEAの毎年の著作でありますワールド・エナジー・アウトルック最新版を日本語版を付けております。これは、事務局長のファティ・ビロルの代わりにグールドさんという課長が来て発表したものをそのまま付けさせていただいております。

以上申し上げた上で、今、保坂さんがおっしゃったことも言及しながら、ちょっとお話を進めたいと思います。

それでは、お話を十五分でさせていただきたいと思いますけれども、私が重要だと思うこと、このようなことであります。

ちょっと二つ目から申し上げますと、この三つのE、今お話があったエネルギー安全保障、環境、それから経済性、経済成長であります。この三つのEがすごく大切だと。特に福島以降はセーフティーが重要だということで、三つのEプラスSという議論もありますけど、伝統的にはこの三つのEのバランスを上手に取っていこうというのが基本中の基本であります。あらゆるエネルギーに関する著作、特に政策に関する著作はこのことが頭の当然の前提として入っておりますので、これを強調したいと思います。

その二つ目が、一番最初になりますけれども、エネルギーというのは、今の三つのE等々を含めて様々なこと、安全保障とか外交とか健康とか様々なことにタッチをするんですけれども、特に最近のCOP以降、COP20、パリ協定以降は、このエネルギーとCO2の排出問題がすごく強調をされてきます。それをちょっと最近のトレンドとして強調をさせていただきたいと思います。

あとは、このエネルギー政策といって、政策が全てが解決するんじゃなくて、やっぱり市場と対話しながらエネルギー政策を進めていくことが極めて重要だということと、そのためにも価格指標を絶えず注目していくことが大切だし、そのためにもその価格を上手にファンクションさせることが重要だと。ここに書いてあります、ゲット・ザ・プライシーズ・ライトということと、下にちょっと出てきますエビデンス・ベースド・ポリシー・メーキング、これ、私がOECDで勤務していたときに、二つ非常によく言われた標語みたいなものであります。だから、正しくそのマーケットでプライスは反映されるように、それに注目していこうと、こういうことであります。

それから、特に、また繰り返しになりますけれども、パリ協定以降はイノベーションということがすごく強調されています。エネルギー政策と地球温暖化政策とこのイノベーションというこの三つの輪っかが、できるだけこれを同じように解決していこうというのが世界的なトレンドであります。

それから、あと、ここまでが私が今日特に強調したい四つの話でありまして、もし時間がありましたら、政策ツールの問題、特に炭素税をめぐる問題、割とずうっと日本だけやや特殊な議論をしておる話が一つ。それから、いろんな時間軸、この温暖化問題も含めると非常に長い時間軸の中で物事を見ていく必要がありますよということと、やっぱりグローバルの視点が重要ですよと、こういうことをちょっと強調して、各論を時間の許す限りお話を申し上げたいと思います。

まず、この六ページを御覧をいただきたいと思います。

もう皆さんよく御存じで、こんなこと知っているよということだろうと思います。ただ、改めて申し上げたいと思います。エネルギー政策の基本は、この安定供給、エネルギーセキュリティーと、環境性、特にCO2の排出、温暖化ガスの排出問題です、それから経済性、経済成長にいかに貢献していくか、この三つの輪っかをできるだけ大きくバランスを取っていくということであります。

この発想は、特に一個一個、例えば石炭は経済性はいいけれども、安定供給はいいけど環境性は悪いとか、そういう議論とともに、より以上に、将来のエネルギーミックスを考えるときに全体としてどういうふう、この三つができるだけ大きくなるにはどうしたらいいのかということを考えるときに特に重要になります。

一個一個ちょっと見ていくと、この安定供給、エネルギーセキュリティーというのは、保坂参考人もおっしゃったように、日本のエネルギー供給構造、グローバルなエネルギー供給構造を見て、これまでは、まあ今もそうですけれども、中東依存度が高いじゃないかとか自給率が低いじゃないかと、こういう議論になってきています。今日はちょっと詳しくお話しする時間が多分ないと思いますけれども、このワールド・エナジー・アウトルックを見ますと、世界はすごい変わっています、すごい変わっていますよと。それは、一次エネルギー供給から電力の安定供給になっているんですよと、こういうとば口に我々は立っていますよということが言われています。したがって、このエネルギー安全保障の問題も、中東依存度ももちろん重要ですけど、電力の安定供給ということがより重要になっているぞと、こういうこともちょっと踏まえていただきたいというふうに思います。

それから、この環境性ということについては、CO2、温暖化ガスの排出問題なんですけれども、これも今のSDGの議論を踏まえますと、この中に、CO2排出だけじゃなくて、いわゆる中国で話題になっています、いわゆる環境問題なんかももちろん重要だということになっていますし、この最後の経済性のところは日本だと電気料金の問題等々に還元していくということになります。

これ一ページめくっていただくと、ちょっと私がまとめてみたんですけれども、従来のエネルギー政策は、三つのEといいながら、むしろこの二つのE、特に安全保障と経済性、これが中心に議論されてきて、特に、どうでしょう、二〇一六年までの例えば十年ぐらい、この安全保障と経済性が特に強調されてきていると思います。こう御覧いただいたように、ロシアも米国も自らの安全保障と競争力を特に重視してやってきたんです。私は、特にパリのCOP以降、少しずつ風向きは変わってきているかなという感じがちょっとしています。環境という問題、特にCO2、温暖化問題が重要性が増してきていますし、これを競争力とくっつけて、セキュリティーとくっつけて議論しよう、特に中国、そういうことになってきているんじゃないかなという気が実は強くしています。

最後にちょっと書きましたけれども、このドイツの例、脱原発、二〇二二年全部原子力はやめますということですけれども、FITでどんどんリニューアブルを進めていますが、彼らは産業用の電気料金は比較的安く、家庭用は比較的高く。これは、彼らのよって立つ産業をサポートし、同時に、何というんですか、国民所得も高いので、意識の高い消費者に割と負担を寄せていっている、それを支える消費者がいると、こういう前提になっています。

日本は、私、ちょっと最近来た私に対するビルを持ってきたんですけれども、先生方もエネルギーの御専門の先生方ですからこれよく御覧になると思うんですけど、私の、これ実は東京ガスでやっているんですけれども、私の場合は、電気も。七千四百円です、電気料金。そのうちの再エネ促進賦課金、お幾らだと思いますか、大体。七百二十八円です。一割、大体一割。これがどんどんどんどん将来増えていくんじゃないかと、こういう議論ですね。これFITのレベルの問題ですけれども、こういうことにもちょっといろいろと御注意をいただくといいかなというふうに思います。

ちょっと戻ります。

今、三つのEの話をしたんですけれども、繰り返しになりますけれども、パリ協定以降、やっぱりグローバルな課題、経済成長、エネルギー消費と温暖化問題って重要じゃないかということがすごく言われています。

ちょっと振り返ると、非常に古い話なんですけれども、人類が東アフリカで、ホモサピエンスが出てきてずっと、十万年前ですか、それから産業革命まで、これがエネルギー消費ですね、産業革命が終わってぐらいから消費がどんどん増えています。これが一八〇〇年ですから、ここぐらいから化石燃料の消費とともにこうやって増えているということ。

これちょっとまず頭に入れていただいて、その上で、GDPとエネルギー消費と、済みません、これCO2です、CO2排出量、大体同じように、大体、リーマン・ショック、同じようにこれが伸びているというのがよく分かると思います。これは、GDPの対エネルギー消費あるいはCO2の弾性値がほぼ一定だということになります。今の課題は、経済成長は当然したい、しかしCO2の排出は削減しようということになっていて、この間を切りましょう、デカップリングしましょう、こういう議論なんです。これをしないと地球がどんどん温暖化していきますと、こういうことであります。

そのためにはどうしたらいいのかということであります。一つはちょっと、もう一回戻りますと、済みません、すごく端的に言うと、これを切るためには一番有効なのは省エネする、つまりエネルギーを使わない経済構造をつくっていく。このエネルギー消費とCO2の関係を切るためには、保坂先生もおっしゃいましたけれども、化石燃料を使わないようにすると、こういうことであります。こういうことをこれからしていきましょうというのが世界の流れになってきています。

ちょっと時間も押してきていますので、この辺を全部飛ばして、ここだけ最後にお話をしたいと思います。あとは御質問いただければというふうに思いますが。

これは、実はいろんな似たようなグラフが世の中にあるんです、特にパリ協定以降ですね。これはIEAが作った割と有名な四五〇ppmシナリオ、二度シナリオというやつです。二度というのは、世紀末において地球の平均気温の上昇が二度以内に収まるように大気中のCO2濃度を管理しましょうと、こういう目標です。いつから二度か御存じでしょうか。冒頭申し上げた産業革命前です。人類がそんなにCO2を排出していなかった時代に比べて二度上昇にとどめましょうといったあれです。これがざっと言うとCOPで日本も含めてコミットした、措置をとった場合のルートです。これがあらまほしき二度にするためのCO2の排出です。こんなにギャップありますよと、こんなにギャップありますよと、このまま行くと二度どころでは済みませんということです。

日本もそのためには温暖化対策計画を閣議決定しておられますし、そのためには二〇三五年二六%減、二〇五〇年八〇%減、これをコミット、ディクレアしておられるわけですけれども、このぐらいのことを達成するためにはイノベーションが必要だと。冒頭申し上げたように、エネルギー政策と温暖化政策とイノベーション、この三つを統一的に実施するような政策環境をつくっていくということであります。

したがいまして、三つのEを達成しながらこの新たなファクター、イノベーションも含めて、皆様方に問題意識を持っていただいて日本国をリードしていただきたいというのが私の最後のメッセージであります。

大変失礼しました。ありがとうございました。

○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。

次に、浦辺参考人にお願いいたします。浦辺参考人。

○参考人(浦辺徹郎君) 浦辺でございます。

私の方は、エネルギーではなくて鉱物資源の、特にまた海洋の方の鉱物資源についてお話しさせていただきます。(資料映写)

お話を始める前に、去年の九月に大変いいニュースがありました。これは、JOGMECさんが沖縄の千六百メーターの海底から海底熱水鉱床の鉱石を揚げることができた、この揚鉱というのはこの生産プロセスの中で最も難しいところでございますが、それの連続揚鉱に成功したという大変明るいニュースがございました。これでその生産に一歩近づいたということになります。

今日はそれに関して、周辺の状況から今海でどういうことが起こっているか、ちょっと広範にお話をしたいと思います。

この地図は、日本のEEZを地球の上にプロットした図でございます。非常に大きいということがお分かりいただけると思います。EEZの下を大陸棚というふうに言いますけれども、これは非常に日本の管轄線が認められた国土のようなものでございますので、これをどうやって管轄していくのか、これは非常に大きな問題でございます。その一つのやり方として、資源それから環境というもので調査をしていくわけでございますけれども、今回、SIPの次世代海洋資源調査技術という中で、こういうものをなるべく安く早く効率的にやる方法が開発できたということで、それについてもお話をしたいと思います。

この広い日本のEEZ、大陸棚でございますけれども、どういう資源があるかというのがこの図でございまして、まず沖縄、伊豆、小笠原の海底熱水鉱床、それから赤で書いておりますコバルトリッチクラスト、それから青山先生がやっておられるメタンハイドレート、そういうふうなものがございます。これらはいずれも非在来型資源でございまして、この開発にはいろんな技術的な開発が必要でございます。

特に、今日は鉱物資源の話でこの三つのことをお話ししたいと思います。まず海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、それからマンガン団塊でございます。このほかにも幾つかの海底資源というのは知られているわけでございますけれども、経済性という意味ではこの三つが代表的なものなので、今日の話はこの三つに限らせていただきます。

これを表にしてみますとこうなります。

マンガン団塊というのは、平らな海底の中にゴルフボールから野球ボールぐらいの大きさのものでございまして、コバルトリッチクラストというのは、露岩、海山の露岩をべたっとアスファルトのように十センチぐらいの厚さで覆っているものでございます。この二つは鉱物組成なんかが非常によく似ておりまして、冷たい海水から百万年に三ミリ程度、千年に三ミクロンずつという非常にゆっくりしたスピードででき上がる、そういうものでございます。それに対しまして、海底熱水鉱床というのは、海底火山、海底火山には、海洋が割れて広がる大洋中央海嶺というものと、日本のような、日本の周辺海域のような海底の島弧の火山という二つの場所が大きいんですけれども、これに伴って三百度ぐらいのお湯、温泉が湧いて、その熱水から沈殿をする、全く違うメカニズムのものでございます。

どこにあるかということですけれども、公海の底、延長大陸棚でやってみますと、マンガン団塊は八〇%以上が公の海、コバルトリッチクラストは半分半分ぐらい。これちょっと数字が間違っていて、八五と書いてありますが五八の間違いでございまして、申し訳ありません。基本的には、このコバルトリッチクラストと海底熱水鉱床は、先ほどの図にもありましたように、EEZ内の資源であるというふうにカテゴリーを分けることができます。

資源量、このノジュールが一番大きい、それから一桁下がってコバルトリッチクラスト、更に一桁下がって海底熱水鉱床ということになりますので、これは海底熱水鉱床は小さ過ぎるのかなということもありますけれども、熱水鉱床の資源量というのはこの大洋中央海嶺のもののみで六億トンでございます。島弧のものはまだ統計がありません。それから、島弧の中には、海底面に露出していない、活動を止めている潜頭性鉱床というのがあって、これが非常に大きな資源量に寄与してきますので、これを探す方法が今までなかった。それをSIPでつくることができたということでございます。

それと、もう一つ特徴、これらの特徴は、ここに主要金属、随伴金属、いろいろと書いてございますけれども、それぞれタイプによって違いますが、非常に多種多様な鉱物が、金属が含まれている多金属型である、いずれの三つも多金属型という特徴がございます。

その金属、どういうものが必要なのか。これ、OECDが、今年、現在及び二〇三〇年に重要鉱物、クリティカルメタルというのを予想しています。こちら、左側の図は、日本に必要なものと世界に必要なもの、大体比例をしていて、例外もありますが、そういうものです。それから、右側の図は、基本的には、あと何年、今の知られている埋蔵量で、生産量で割って、あとどれぐらいもつかということで、一番足らないのがアンチモン、一番足りているのがレアアースというふうな図が出ております。

これを図にしてみますと、こういうふうになります。縦軸は、要するに代替が利かない、そういう特殊な金属の性質によって利かないもの、リスクが高いものが上、それから、横軸は地政学ですね、ある特殊な国にしか産しないということで、リスクの、上の方が高い、右の方が高いということでございます。ここに赤や青で印が書いてございますけれども、これは、赤は海底熱水鉱床に出てくる金属、青はコバルトリッチクラストに出てくる、入っているものでございまして、これが、見てみますと、大体そういうふうなものがカバーされている、量のことはちょっとまだあれでございますけれども、カバーされているということで、こういうものを開発してはどうかというふうな機運が高まっているという状況でございます。

じゃ、それは本当に経済性を持ってできるのか。これは悲観論と楽観論があります。悲観論で見ますと、量的に、先ほど量のことを申しましたけれども、年間の使用量からいいますと、金属によりますけれども、多いもので十年分とか、少ないものだと数か月分というぐらいしか入っていないということで、余り量的には重要でない。それから、そういうものはできない。ただ、ナショナリズムとか、そういうふうなものがあるので、それは考えなくちゃいけないというふうな悲観論がございます。ただ、経済性というもの、これがやれるということが分かればどおっとスタンピードで入ってくるだろうと、そういうことも悲観論の中で予測しているわけです。経済性は海底熱水鉱床が一番いいだろう。それから、マンガン団塊とコバルトリッチクラストは採算ぎりぎりということですけれども、海底熱水鉱床の場合には、基本的には日本を含めた太平洋島嶼諸国というものが対象になるだろうと、中央海嶺ではない。

〔会長退席、理事渡辺猛之君着席〕

楽観論は、それの反対でございます。この海洋経済、ブルーエコノミー、ブルーグロースというものの中では、膨大なそこに新しい経済フィールドがあるんだという指摘があります。その根拠になっているのは、一番下ですね、海底油ガス田の開発のスピード、それから、最近でいいますと、いわゆるシェールガス、シェールオイルの開発のスピードを考えますと、技術というものができた途端に膨大な進化があるんだということが楽観論の根拠になっていて、真実は恐らくこの間にあるんだろうと思います。

それで、これは陸上の結果でございます。この青の線は、ずっとこのところ見付かっている、これはウランなんかも入っていますけど、基本的には希金属とベースメタルと思っていただいて間違いないんですが、ずっとコンスタントに鉱床が見付かってきていると。これは左軸で見ていただくんですが、最近、このブルーのラインがほぼゼロに向かって物すごいスピードで下がっている。これが大きな構造的な変化ではないかという見方が進んでいます。

お金の面で見てみますと、赤は、これは探査に掛けたコスト、五千億円ぐらいですね。これは得られた鉱床の価値、この間では大体二・三倍ぐらい、五千億掛けても一兆何千億は見付かっていると。ところが、最近の十年ではその比が五分の一になって、掛けたお金の〇・四七ぐらいしか見付かっていないと。

こういうのがたまたまなのか大きなトレンドなのかという議論がありますけれども、これが大きなトレンドであろうということが心配されていて、そうすると、この年間一兆円ぐらい使われている探査費が海に向かうのか向かわないのか。今は向かっていませんけれども、それを主導できるのかどうかというのが大きな問題になってきます。

ここで、そのためには技術開発が必要です。民間の資源開発、この資源の開発というのは、民間において商業化されて初めて資源となるわけでございますので、そうすると、探査技術、探査の実施、こういうふうな様々な技術がございます。探査技術、これから申し上げますが、うまくいっている。それから、採鉱技術は、先ほど最初のスライドでお見せしたように、日本が世界のトップを走っている。それから、選鉱製錬、これは余り話題には上らないんですけれども、JOGMECさんが非常に綿密な調査をして、今パイロットプラントができております。

それで、あと重要な政治的な課題としては、事業への投資、それから芳川先生もおっしゃいました環境影響評価、そういうふうなもの全てやっぱり政策的に主導していただければいいのではないかというふうに思います。

次に、その探査のことについてお話しいたします。

これはSIPでつくりました統合海洋資源調査システムというもので、広い海域、先ほども言ったような広い海域から、足の速い船であるとか自律型海中ロボット、AUVと言っているようなものをたくさん使ってだんだん絞り込んでいく。最後は、海底設置型のような、余り機動力はないんだけれども情報が得られるようなもので絞り込んでいくと、こういうふうなシステムでございまして、これは技術移転が民間に済んでおります。それから、高効率、低コストで陸上の探査とほぼ同じぐらいの価格でできるような、そういうふうな技術開発がSIPでできたということでございます。

その実例です。これは、こちらは黄色いものが映っていますが、これは海上を走るロボット、この赤いのが何台か映っていますが、これは海中を潜って様々なセンサーを積んで海底の探査をするロボットです。複数のロボットを同時運用することによって、コストを大幅に下げることができる。

そして、どういうデータが得られるかというと、例えば、船上からのデータだと地形図ぼやっとしているわけですけれども、AUVからの地形図だとこういうふうに凸凹がはっきり見えます。この凸凹一つ一つが海底熱水鉱床であるということで、こういうものの重要性がはっきりするわけでございますが、先ほど申しましたように、海底面に出ているものは見えるが、海底面下のものも見えるというのが今年の成果でございます。

これは久米島西方域で、こういうところにへこみがあるわけですが、これを自然電位という非常に単純な物理探査の方法をやりますと、この濃いブルーの異常帯が周りの緑色の中から出てきます。これは、いろいろやってみますと、確実にほぼ海底面上にある、海底面下にしか見えない、そういうものにかかわらず、きちんとアウトライン、平面的な分布が非常にきれいに見えてきました。さらに、精査で音波探査をして、断面図、ここの断面図ですけど、断面図を見ますと、上に堆積物があり、その下に赤で示した鉱石があって、その下に変質帯があるというふうなことがはっきり分かってきた。これで三次元的な分布も分かるということが、船の調査でこういうふうなシステムを使うと分かるということになってきたわけです。

さらに、この分布、熱水鉱床の分布でございます。日本がここでございますけれども、西南太平洋ですね、太平洋の島嶼諸国にも同じようなものがあるということがこの図から分かります。

ですので、結論としては、我が国のEEZには非常に大きい、それからたくさんの資源がある。それから、経済的な現実性が大分見えてきた。それから、海洋調査産業による資源調査というものが陸上の探査とほぼ比肩できるぐらいのことが出てきますので、是非こういうところに日本が先鞭を取っていくべきではないか。それから、JOGMECが生産の技術についてはうまくいっている。それで、まず最初に我が国の大陸棚の資源調査を実施すべきではないか。それから、その技術を太平洋の島嶼諸国にも応用することによって海洋及び資源の安全保障につながると、そういうふうなことを考えております。

今日はどうも御清聴ありがとうございました。

 

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。三人の参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。

まず、保坂参考人に伺いたいと思います。

今日のレジュメ、資料の中にも中東地域の安定はエネルギー安全保障にとって決定的な重要性という言葉もありまして、エネルギー自給率六%と言われている日本ですので、省エネの徹底や再生可能エネルギーの本格的な導入、自給率を高めていくことが必要ですけれども、依然として中東地域から輸入する石油に依存する状況というのは続くのだろうということだろうと思います。

そういう中で、中東情勢への日本の関わり方が問われてくると思いますが、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都とする認定をする方針を示したことに関して御意見を伺いたいと思っています。

日本共産党は、トランプ政権の方針というのは国連の諸決議に反する、問題の公正な解決や中東の平和と安定に逆行する暴挙であって、速やかに撤回するように求めています。

国連総会が昨年十二月二十一日に緊急の特別総会を開いて、エルサレムの地位を変更する決定は無効で、撤回されるべきという決議案を百二十八か国の圧倒的な賛成多数で採択をしましたが、この問題でトランプ政権の世界への逆流というのが異常なものではないかと思っています。

各国はこの問題でアメリカを批判する中で、日本政府は総会決議には賛成をしましたが、首相や外務大臣が公式の声明を出していないと。中東和平に重大な障害を持ち込んで地域の緊張を高めるこのトランプ政権の行動を正面から批判できないと。言わばトランプファーストというような異常な外交姿勢ではないかと考えますが、このエネルギー安全保障への影響も含めて、参考人はどのようにお考えでしょうか。

○参考人(保坂修司君) ありがとうございます。

私自身、専門がアラビア語でございまして、私も、そのアラビア語の先生の一人がパレスチナ人だったということもありまして、この問題につきましては必ずしも公平中立な立場になり得ないかもしれないんですけれども、やはりトランプ大統領のエルサレム承認発言あるいは大使館の移転発言というのは、中東和平そのものにとっても大きな脅威であったというふうに私自身も考えておりますし、また同時に、日本政府の対応に関しても、やはり不満に思う部分はございました。

ただ、その一方で、中東和平そのものが完全に頓挫している、停滞しているという状況は間違いございません。したがいまして、トランプ大統領の発言そのものに関しましては納得できる部分というのはほとんどないんですが、これがある意味呼び水となって、新しい形で中東和平に多くの人たちが関心を持ってくれるのであれば、それはもしかしたらプラスに働くのかなというふうに考えております。

以上です。

○山添拓君 ありがとうございます。

もう一問、中東の情勢に関わって伺いたいんですが、ISなどの過激集団によるテロ、これはいかなる理由があっても許されません。テロをなくすための国際社会の協力が必要ですけれども、アメリカやフランスやイギリスやロシアがISに対して軍事作戦行ってきたのは逆にこのテロを世界中に拡散させてきたのではないかと。そもそもISの台頭というのは二〇〇一年のアフガニスタン戦争や二〇〇三年のイラク戦争がつくり出したもので、テロと戦争とが悪循環にしかならないということもはっきりしているのではないかと思っています。

この点では我が党は、テロを根絶するために三つの点が大事だと、国際社会一致して取り組むべきだと提唱をしています。一つは、国連を中心として法の裁きを基本にテロ組織への資金や人や武器の流れを断つと。そのために国際的な協力を行う。もう一つは、貧困を削減し教育を改善する、テロが生まれる根源を除去すると。そして、三点目に、テロを特定の宗教や文明と結び付けるのではなく、異なる文明間の対話と共存の関係の確立に力を尽くすという点です。

テロをなくすためには、軍事一辺倒ではなく非軍事の対応を基本に据えるべきであり、そこでこそ日本が役割を発揮できると考えますし、また、先ほどの保坂参考人の意見陳述の中でも、日本への評価について言及がありましたが、この辺りについて御意見ありましたら伺えますでしょうか。

○参考人(保坂修司君) ありがとうございます。

確かに、対IS対策としまして、今現在軍事作戦もいまだに継続中であることは間違いないと思います。私、個人的には軍事作戦が不要であるというふうには考えておりません。ただ、その一方で、今先生が御指摘のとおり、軍事作戦のみでの解決というのはこれもあり得ないというふうに思っております。その辺りで日本が対応できる、あるいは貢献できる分野というのは様々な形であると思っておりますが、ラッカあるいはモスルというISの拠点が陥落した以降、ヨーロッパあるいはアメリカ国内においても様々な形でテロが頻発しております。

そういった対策として、過激化した若者たちのリハビリテーションであったりとか、あるいは社会への再統合ですね。テロリストの多くは何らかの形で社会から阻害されている人たちが多いですので、そういう人たちを社会に再復帰させるためのプログラム、こういったものにおいて日本が貢献できる分野というのは様々な形であるんではないかと思いますし、また情報収集あるいは、テロ情報のですね、収集分析その他において日本が各国政府と協力しながらやっていくことも必要ではないかというふうに思っております。

以上です。

○山添拓君 大変ありがとうございました。

続いて、芳川参考人に伺いたいと思います。

最近の報道なんですが、欧米の機関投資家が、化石燃料やたばこのように環境や健康への負荷が高い企業から投資の引揚げを相次いで表明しているということが報じられていました。世界の投資家の間で、環境社会、企業統治を重視する投資、ESG投資と言うそうですが、これが広がっていることによるもので、欧米の市場で投資撤退が広がっていると伺います。

二〇一六年にはノルウェー政府の年金基金が、中国電力や北陸電力などの電力六社について石炭火力発電の比率が高いということで資金を引き揚げたということも報じられていました。もちろん、ESG投資、こういう観点からすると、福島第一原発事故の収束だとか原因究明が進まない中で原子力発電やその事故がもたらす環境ですとか社会への影響というのも計り知れないものだろうと思います。

それから、先ほど少し御指摘もありましたが、投資という点でもむしろ再生可能エネルギーへの投資が史上最高になっているという話も伺います。エネルギー戦略やエネルギー安全保障を考えるに当たって、こうした世界経済の面からも石炭火力や原子力から再生可能エネルギーへ、こういう流れが大きく働いていると考えますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。また、その変化に日本の政治や経済が対応できていないところがあるんではないかと思うのですが、御意見を伺えますでしょうか。

○参考人(芳川恒志君) 御質問ありがとうございます。

おおむねというか、世界のトレンドとしては、資料の二十四ページをちょっと御覧をいただければ、いきたいと思います。これはまたIEAのワールド・エナジー・アウトルックの抜粋ではありますけれども、これまでの二十五年と次の二十五年を比べたものです。濃い部分、グラフの濃い部分が中国で、薄いところがグローバルです。これを下の記述を御覧をいただくと、低炭素エネルギーと天然ガス、さっき御質問ございましたけれども、世界のエネルギー需要増の八五%だと。で、石炭はマイナスに、中国がマイナスになってきてどんどん風が吹かなくなってくると、こういうトレンドであります。

おっしゃったように、グローバルなビジネスも、私、実は時間があれば御紹介しようと思ったんです。私ちょっと先月に出張に行ったときフィナンシャル・タイムズを見ていて、全くおっしゃったとおりなんですけれども、一月十日の水曜日のフィナンシャル・タイムズの社説で、グローバルな保険屋さんが石炭火力をする人たちから引き揚げているというような記事が載っています。これが恐らく、やや強調、ヨーロッパのことですから強調されていますけれども、特に石炭火力、石炭発電についてはネガティブな投資行動に出るということがちょっと世界のトレンドになっています。これは事実であります。原子力を含めてそうかということまではちょっとあれしていませんけれども、少なくともさっきのCOP21の動きからしてこういう、石炭についてはそういうことになっているのはそのとおりであります。

ただ、日本政府が、これも非常に重要ですけれども、高効率の石炭発電について非常に高い日本国が技術を持っているものですから、それを、何とかそれで世界に貢献したいというのは分かりますけれども、そこのどういう折り合いを付けるかというのは結構、おっしゃるように大きな課題ではないかというふうに考えております。

以上です。

○山添拓君 終わります。ありがとうございました。

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