山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2018年・第196通常国会

建築基準法改正案 耐火性に関する安全規制の緩和を批判

要約
  • 10日の国交委員会で耐火性、防火性規制の緩和などを内容とする建築基準法改正案について、日本共産党以外の賛成多数で可決成立しました。空き家の転用を進めるためというが、山添議員は需要があっても安全に関する規制を安易に緩和すべきではないと批判しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。

今回の建築基準法改定案は、糸魚川市の大火やアスクル倉庫の火災などを受け、建築物の安全性の確保が必要だとする一方で、空き家が増えているのでその転用を促し、既存ストックの活用を進めるなどとするものです。

初めに確認をいたしますが、建築基準法に定める建築確認や、あるいは防火、耐火規制は何を目的とするものか、大臣、御答弁ください。

○国務大臣(石井啓一君) 建築基準法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図るため、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低限の基準を定めたものであります。この最低限の基準のうち、防火環境の規制については、火災による倒壊防止、在館者の避難安全確保、市街地における延焼防止などの観点から、建築物の規模、用途、立地に応じて部位ごとの構造、設備等に関し、例えば耐火構造とするなどの一定の対応を求めているところであります。

一方、建築確認制度は、建築物が建築基準法で定める基準に適合していることについて建築主事又は指定確認検査機関が確認するものであります。

基準への適合性を担保する仕組みとしては、事後チェックで明らかとなった不適合を是正させる方式と、着工前に計画の適合性を審査する方式が考えられますが、事後チェックでの不適合について是正を求めた場合大規模な改修工事が必要となるなど社会経済的に大きな損失をもたらすおそれのあるものについては、着工前にその計画を審査する建築確認の仕組みを採用しているものであります。

○山添拓君 御丁寧に説明いただきましたが、生命、身体の安全を確保するということが根底にありますし、しかも、それを事前にチェックするというのが建築確認の仕組みだということでありました。

今日、資料を一枚お配りしておりますが、現在、三階建ての戸建て住宅を他の用途に転用する場合、例えば飲食店、旅館や福祉施設など特殊建築物として使う場合には、耐火構造、耐火建築物とする必要があります。

現行法でこのような規制となっているのはなぜでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 現行制度においては、不特定多数の者が利用する物販店舗や飲食店など、多数の者が利用する福祉施設や宿泊施設などについては、三階建て以上の場合、耐火建築物とすることを義務付けております。これは、三階建て以上の場合は在館者の避難に時間が掛かることに配慮をし、避難が完了するまでの間、建築物内での延焼や建築物自体の倒壊を防止するため、耐火建築物とすることを求めているものであります。

なお、この規定は昭和二十五年当時からのものでありますが、当時は三階建ての戸建て住宅は数が少なく、三階建てであれば規模が大きいものという前提の下、基準が定められたものと考えられるところであります。

○山添拓君 不特定多数者が利用する場所であるからこそ、生命、身体の安全のために特別な規制がしかれてきたということです。

我が党は、空き家対策として、建築物を住宅以外の用途へ転用することを含めて活用することが必要だと考えますが、そのような事情があるとしても、安全に関する規制を単に緩めてよいということではない、こう考えております。

今回、三階建てで二百平米未満の場合、壁や柱を耐火構造とする改修は不要とされ、代わりに宿泊施設や福祉施設など就寝用途の場合には必要な措置をとるものとされています。火災時に短時間で避難できるように警報装置などの設置を求めるというものです。

そこで、伺いますけども、二百平米未満の住宅で三階部分をいわゆる民泊として使う場合、これは就寝用途として宿泊施設と同じような扱いにするんでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 住宅宿泊事業法に基づく届出住宅につきましては、家主が不在である場合や宿泊室の床面積の合計が五十平米を超える場合は、宿泊者の安全を確保するための措置として、非常用の照明装置や自動火災報知設備の設置などの措置を求めております。さらに、宿泊者が三階以上の階を利用する場合には、ホテル、旅館を三階建てとする場合と同様、現行制度では耐火建築物とすることを求めております。

今回の改正法案により、三階建てで二百平米未満の戸建て住宅等をホテル、旅館に転用する場合には、在館者が迅速に避難できる措置を講ずることを前提に耐火建築物等とすることを不要とすることに伴い、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅の基準についても同様の見直しを行う予定であります。

○山添拓君 確認ですが、そのように政令改正をするということなんですね。

○国務大臣(石井啓一君) 省令でそのような措置をする予定であります。

○山添拓君 民泊法においては、民泊は宿泊施設ではなく住宅とされております。ですから、民泊法の場面では対象となりませんし、今回の法案の説明にも今おっしゃったような説明はありませんでした。しかし、民泊こそ不特定多数人が利用し就寝する施設でありますし、また住宅からの転用も容易に想定されるものだと言えます。違法民泊も多い中で、こうした位置付け、きちんと行われることが最低限必要であると指摘をしておきたいと思います。

さらに伺います。

耐火構造を求めない代わりに要求する警報装置などは政令で技術的基準を定めるとされています。警報が鳴ったら三階でもすぐ逃げられるのかというと、就寝中ですから、ちょっとパニックになっている時間とかもありますので、本当にすぐ逃げられるのかという問題ありますけども、そもそもこの技術的基準を満たしているかどうかは誰がどのように判断をするんですか。

○国務大臣(石井啓一君) 今回の改正法案によりまして、既存建築ストックの有効活用を図るため、延べ面積二百平米未満の小規模な建築物に係る防火関係の規制の合理化と併せて二百平米以下の用途変更に係る確認手続を不要としておりますが、基準への適合義務は引き続き課されることとなります。この場合、基本的には建築主の責任により用途転用の際に求められる措置を講じることとなりますが、建築士が関与した場合には、当該建築士が基準への適合性を判断をし、必要な措置を講じることとなります。

なお、生活困難者等の住まいにつきましては、本年三月二十日に厚生労働省及び消防庁と連名で通知を行いまして、ケースワーカーの戸別訪問時に防火安全対策等のチェックを行い、課題のあるものにつきましては、地方公共団体の関係部局間で情報の共有化を行うこととしております。

さらに、用途変更後に基準適合が図られていないことが明らかになった場合の特定行政庁による是正指導の徹底や、関与した建築士に対する厳正な処分の実施、定期報告制度を活用して定期的に警報設備等の設置状況をフォローすること等を通じて、用途変更後も基準に適合した安全な形での活用を推進し、ストックの有効活用と安全性確保の両立を図っていく所存であります。

○山添拓君 基本的には所有者任せということなんですよ。建物の所有者の責任だとおっしゃいました。

定期報告の制度も御紹介いただきましたが、これも、所有者や管理者が一級建築士などに状況調査をさせて、その上で自ら自治体に報告するというものですから、やっぱりこれ結局、所有者任せということになるんですね。

先ほど鉢呂委員からの質問に対して大臣は、規制緩和ではないかという指摘に対して、安全性の水準を引き下げるわけではないという御答弁をされましたが、これでは、必要な措置を求めるといっても、その実効性がないと言わなければならないと思います。結局、耐火構造の規制を緩和するだけのものだ、その実効性、果たして保たれるのかと。

厚生労働省との関係、言われましたけれども、例えば、消防局や保健所や福祉行政の側で建築基準法の違反をチェックするような仕組みは法律上はないわけです。政令に落とし込むような技術的な基準あるいは省令ですね、そうしたところまで福祉部局が果たして確認できるのか。これは大いに疑問だと言わなければなりません。

ところで、国交省の、今日もお配りしております資料では、戸建て住宅等の福祉施設等への用途変更に伴う規制の合理化とか、あるいは他用途への転用による非住宅としての利用を推進、転用する場合の規制の合理化などと記されております。しかし、改定案の二十七条を読む限り、これは転用の場合に限られないんですね。三階建てで二百平米未満の飲食店や宿泊施設、福祉施設を今後新築する場合にも建築確認や耐火構造は不要となるということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 今回の改正案では、三階建てで延べ面積二百平米未満の小規模な建築物であれば、火災初期においては用途による燃え広がり方の差が小さいことから、在館者が迅速に避難できる措置を講じることで、耐火建築物とすることを不要とすることとしております。これは、新築の場合であっても避難安全性が確保される点において変わりはないことから、今回の改正法案における合理化の内容は、新築、既存を問わず適用されることとなります。

なお、新築の場合は引き続き建築確認の対象といたします。これは、用途変更の場合は構造関係の規定など用途によらない基準については従前の用途で適合していればよいこととなるため確認の必要がありませんが、新築の場合は全ての規定を確認する必要があるためであります。

○山添拓君 耐火構造は新築の場合も不要になると。

では、なぜ国会に対する説明資料にそのように書かないんですか。私たちが説明を受けた資料では、あたかも転用する場合だけの規制緩和のように書かれているんです。なぜそのように記されないんですか。

○政府参考人(伊藤明子君) お答え申し上げます。

今回の基準の適用につきましては、先ほど大臣が御説明させていただいたとおり、火災初期においては用途による燃え広がり方の差が小さいということでやらせていただいているわけでございますが、より効果が高いものとしては用途転用の場合に使われる場合が多かろうということで、そういうことを御説明させていただいたわけでございます。

新築につきましても、当然こういうことをやられる方はないわけではないと思いますけれども、そのようなものについて、より費用対効果がいい形でやられる現場の状況を考えますと、そういう実態が多かろうということでございます。

○山添拓君 やっぱり空き家の活用だと言えば反対する声は少ないだろうというような、そういう考え方の下に、実際の法案がもたらす効果を説明しないというのは、ちょっとこれは立法府での議論を軽視するものだと私は指摘したいと思います。

この間、二〇〇八年十月に大阪市浪速区の個室ビデオ店で発生した火災や、あるいは二〇〇九年三月に群馬県渋川市の老人ホームで発生した火災、二〇一〇年三月に札幌市の認知症高齢者グループホームで発生した火災などを契機に、建築基準法の防火・避難関係規定に関するフォローアップ調査が行われてきました。

今年三月三十日に発表された最新の調査でも、未届けの有料老人ホームの調査対象件数は千五百一件、違反件数は六百二十件、是正済みは三百件に上りました。この調査対象は、二〇〇九年四月の緊急点検の時点では三百九十二件、違反件数二百五十一件だったとされておりますので、調査の対象も違反件数もどんどん増えていてもう追い付かないと、是正率が前年より下がっているぐらいの状況です。あるいは一万件を超える認知症高齢者グループホームについては、二〇一四年の調査を最後にフォローアップもされなくなっている状況です。

大臣に最後に伺いますが、総務省が二〇〇八年に設置した小規模施設に対応した防火対策に関する検討会の中間報告では、小規模福祉施設の現地視察に参加をされた委員の意見として次のように紹介されています。特に、既存転用のタイプのものは一般住宅と変わらない形態、このため、住み心地も一般住宅に近いが、防火安全対策を講じる上では構造上の制約も大きい、例えば、二階建ての戸建て住宅を転用する場合、二階からの避難経路は屋内階段のみ、こういう声が記されています。

住宅の転用を促せばこうした例は更に増えることが予想されますし、しかも、外形上は転用されたかどうかも判別が付きにくいです。建築確認を受けずに、耐火構造も求められず、法案が予定するような必要な措置がとられるかどうかも分からない、こういう施設を更に増やして、安全を確保する、保障するという仕組みはあるんでしょうか。大臣、お答えください。

○国務大臣(石井啓一君) 基準への適合性を担保する仕組みとして、事後チェックでの不適合について是正を求めた場合、大規模な改修工事が必要となるなど社会経済的にも大きな損失をもたらすおそれのあるものにつきましては、着工前に計画を審査する建築確認の仕組みを採用しているところであります。

今回の改正法案によりまして用途変更の円滑化が図られることになる小規模な建築物につきましては、そもそも、用途の別により構造上の安全基準は変わらないこと、今回の改正法案による防火基準の合理化により警報設備等の設置による改修のみでの対応が可能となることから、本法案に基づく建築確認手続の合理化により、事前の確認を行わないこととしております。

なお、平成二十七年に厚生労働省と連名で地方公共団体に発出した通知におきましては、高齢者福祉施設の許認可に際して担当部局から建築部局に対して情報提供を行う体制の確保を依頼しており、また、本年三月二十日付けの通知においても、生活困難者等の住まいに関し、同様の対応を求めたところであります。

今後とも、建築部局といたしましても、関係部局との連携を図り、安全性に問題のある福祉施設等の把握に努めてまいりたいと考えております。

○山添拓君 時間ですので終わりますが、安全性が脆弱な共同住宅などで多くの人が命を落とすケースが後を絶ちません。先ほど来御紹介ありますように、今年一月の札幌市の共同住宅の火災でもそのことはありましたし、その原因や背景の徹底的な検証こそが求められます。小規模であっても、命の安全に関わる規制の安易な緩和はやめるべきだということを指摘して、質問を終わります。

ありがとうございました。

○国務大臣(石井啓一君) 失礼いたしました。

先ほどの答弁で修正をさせていただきたいと思いますが、住宅宿泊事業における措置は、省令ではなく告示でございました。訂正をさせていただきます。

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