2018年・第196通常国会
- 2018年5月9日
- 資源エネルギー調査会
エネルギー基本計画骨子案について質問
- 要約
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- 第5次エネルギー基本計画の案策定にあたり、原子力等のコスト検証、モデルプラント試算を行わず、原発を廃止した場合の電力料金の想定もしていないことが明らかに。原発ありきの姿勢を改め、再生エネを中心に据えた計画の見直しを求めた。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
政府は、四月二十七日、エネルギー基本計画の骨子案を明らかにいたしました。私は、この調査会でもその内容に沿って説明をいただくべきだ、また資料も配付いただくべきだと考えまして、その旨もお伝えしましたが、そうはなっておりません。
まあ、そのことはひとまずおきまして、この骨子案では、二〇三〇年、再生エネルギー二二%から二四%、原発二二%から二〇%などとする電源構成の目標は前提とされています。四月十一日の本調査会で、大島参考人は、これは順番があべこべだと指摘をされました。本来、多面的な評価で経済性評価を行い、基本計画を策定し、その上で需給見通しを策定すべきであるのに、二〇一五年のエネルギーミックスに合わせて基本計画を立てています。しかも、二〇一五年以降、パリ協定や福島原発事故費用の増大、東芝の経営危機、高速増殖炉「もんじゅ」の開発からの撤退など、原子力政策の根幹に関わる重大な事態が幾つも起きています。
エネルギー庁に伺いますが、基本計画の骨子案策定に当たって、原子力を取り巻くこうした変化の評価、経済性の評価、あるいはモデルプラントの試算というものは行われたんでしょうか。
○政府参考人(小澤典明君) お答えいたします。
コスト検証につきましては、二〇一五年、これは外部有識者の下で、原子力、再エネ、こういったものを含めまして、資本費、運転維持費、政策経費、社会的費用など、そういったものを総合的に費用として含めて、建設から廃炉までのライフサイクルで計算したいわゆるモデルプラント方式というものでその当時行いました。で、現在、そういった中で、原子力については当時のコスト検証の際も感度分析というものを行いまして、その考え方に基づいて、福島事故費用などが仮に増加しても、その後の状況を踏まえましても、原子力については引き続き低廉な電源というように考えてございます。
こうした状況でございますので、今回も、直近、その二〇一五年のコスト検証から構造的に大きなことが変わっているわけではないということでございますので、改めてコスト検証を行っているわけではございません。
○山添拓君 行っていないわけですね。
政府の従来の試算は、原発のコストはキロワットアワー当たり十・一円、しかし、大島参考人が独自に試算した結果では、設計段階から安全性を高めるための建設費や事故リスクの対応費を適切に評価すればキロワットアワー当たり十七・六円程度になるとされています。逆に、再エネは世界的なコスト低下が見られますが、これも反映されていないわけです。にもかかわらず、例えば二月二十日の基本計画の審議では、委員の一人から、原子力より再エネのコストの方が安いというのは明らかに間違っている、こういう意見が述べられるまでになっている。事実を踏まえずに原発ありきの不誠実な政治をいつまで続けるのか、指摘せざるを得ません。
大島参考人からはまた、原発の再稼働と電気料金の関係についても指摘がありました。関西電力が原発を再稼働した際、確かに電気料金が下がりました。全部再稼働すれば更に下がると。しかし、原発をゼロにすれば、それでも原発の維持費が下がるために、再稼働する以上に電気料金が下がる計算になると。これは関電の資料に沿った試算として紹介をされました。
経産省に伺いますが、原発ゼロの場合の電気料金を想定したことがありますか。
○政府参考人(村瀬佳史君) お答え申し上げます。
原発をゼロにした場合といったような想定はしてございませんけれども、先ほど御指摘いただきました大島先生の試算で申し上げますと、特定の電源を廃止した場合、その電源に代わる、その電源に掛かる費用は確かに減少するわけですけれども、同等の供給力を維持するために別の電源によるコストが掛かるわけでございますので、このコストも考えますと、必ずしもそのコストが下がった分で電気料金が下がるといったようなことにはならないのではないかと、このように考えてございます。
○山添拓君 試算していないのになぜそんなことが言えるんですか。いいかげんなことは言わないでください。
電力事業者だとか経済界というのは、原発再稼働しないと電気料金が上がると脅しのように言っています。ですから、多くの国民が再稼働なしには電気料金下げられないと思い込まされているわけですが、しかし政府は、原発を廃止する、あるいはゼロにする、その場合に電気料金がどうなるかについて検証していません。やっぱりこれは国民に知らせるべきだと私は思います。
エネルギー基本計画の骨子案では、原子力について、優れた安定供給性と効率性があるとし、重要なベースロード電源と位置付けています。原子力や石炭火力を電源構成の基礎と据え、再エネも含めて他の電源は補完的な位置付けになっていると言えます。
二月十四日の本調査会で諸富参考人は、再エネを中心とする分散型の電力システムへの移行で再エネの変動性を補うように火力発電などを調整することが可能だと指摘をされました。また、広域の系統運用で再エネの電力を利用することも可能だと。日本でいえば東北や首都圏や中部電力、関西電力がカバーしているエリアというのは、ヨーロッパでいえば一国レベルの人口や電力消費量に相当する。北から南まで気候も天候も様々です。ですから、ヨーロッパのような電力融通を日本の国内で行うことも可能だと指摘をされています。
これは西銘副大臣に伺いますが、ベースロード電源という考え方そのものを改めて、再エネを中心に据える方向を目指すべきではないでしょうか。
○副大臣(西銘恒三郎君) 現行のエネルギー基本計画でも、再生可能エネルギーは最大限導入する方針であります。また、現行の基本計画では、原子力や石炭火力をベースロード電源と位置付けておりますが、これは、原子力や石炭火力などのベースロード電源、次にはLNGの火力などのミドル・ピーク電源、そして再生可能エネルギーをうまく組み合わせて、3EプラスSを同時達成することが電力供給上は重要であると認識をしていることであります。
ベースロード電源をイメージするときに、真夜中に、真夜中、人間が寝ていても、例えば信号機の電力が動くとか、あるいは夜、工場稼働している電力が動くとか、そのようなところをイメージすると、再生可能エネルギーで夜発電ができなかった部分をカバーするには安定的な原子力や火力等も必要ではないかという認識であります。昼夜問わず継続的に稼働できる電源のことをベースロード電源とイメージした方が理解しやすいのかなと思っておりますが、具体的には、地熱、流れ込み式の一般水力、石炭のほか、原子力についても、ベースロード電源という、位置付けているところであります。
再エネが大量導入されますとベースロード電源が不要になるとの見解があることは承知をしておりますが、現実では、再エネ導入が進むドイツやデンマークの事情を見ても、石炭を始め、ドイツの場合ですと、ベースロードの比率が六九%、原子力一四%、石炭四四%という数字等も出ておりまして、ベースロード電源に依然として依存をしている状況になっております。
また、再エネが大量導入されると、出力変動を調整するために火力発電を多く活用することが見込まれますが、そうしますと、温室効果ガスの削減が進まないという課題に直面します。仮に水素、蓄電池などの技術革新が起こりますと、再エネの大量導入により、ベースロード電源の機能を果たしつつ、同時に脱炭素化も追求できる可能性を秘めているというふうにも考えておりますが、現在の技術を前提にしますと、コストが大きく跳ね上がり、低廉な電力を供給することができなくなると理解しております。
経産省のエネルギー情勢懇談会では、こうした可能性も含めて、二〇五〇年に向け、脱炭素化のあらゆる選択肢について活発な検討を行い、提言をまとめたところでありまして、それに基づいてエネルギー基本計画に反映していこうと引き続きしっかりと進めてまいりたいと考えております。
以上です。
○山添拓君 骨子案では、二〇三〇年段階ではベースロード電源ということを記しているんですが、二〇五〇年では記していないんですね。それは、先ほどおっしゃったように、不確実性だとか様々これから確定できない要素を踏まえてそういうことになっているのかと思いますが、しかし、二〇三〇年でベースロード電源だとしているために、この先、三十基もの原発を稼働させる目標になっています。そして、稼働すれば元を取るためにその後も続けると言うんでしょう。やっぱり二〇五〇年を見据えて、あるいはその先も見据えたエネルギー戦略を考えるのであれば、二〇三〇年の位置付けも当然変わってきてしかるべきだと思います。
そのことを最後に申し述べて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
以下、討論内容
日本共産党の山添拓です。調査テーマである「我が国の資源エネルギー戦略」にかんして、意見を述べます。
どの世論調査でも、原発再稼働反対は国民の揺るぎない多数派です。
福島第一原発事故による広範囲でいまなお続く深刻な被害、放射能汚染がもたらす社会的に容認しがたい原発事故のリスクを、多くの国民が共有しているからにほかなりません。原発に必ずしも否定的でない参考人も含めて福島事故後の人々の「気持ち」を尊重する意見が出されたように、日本のエネルギー政策を考える際、この民意を無視することは許されません。
約2年にわたった「稼働原発ゼロ」により、日本社会が原発ゼロでやっていけることは実証されており十分現実的です。再稼働は必要ありません。しかも再稼働すれば、わずか5年あまりですべての使用済み核燃料貯蔵プールが満杯になります。核燃料サイクルも破綻するなか、「核のゴミ」問題を先送りに、再稼働を進めるのはあまりにも無責任です。
この国会には、立憲民主党、日本共産党、自由党、社民党が共同し、無所属の会の一部議員も賛同して、原発ゼロ基本法案が提出されています。
稼働原発を停止し、再稼働を一切認めない原発ゼロを掲げる、国会史上初めての画期的な法案です。福島事故の収束すら見通せないなか、事故を二度と繰り返さないためには、原発ゼロの政治決断こそが求められます。我が党は、原発ゼロ基本法成立のために全力を尽くす決意であり、委員のみなさんにもご賛同いただくことを心から呼びかけます。
ところが政府は、第5次エネルギー基本計画の骨子案においてなお、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけ、「原子力政策の再構築」として「人材・技術・産業基盤の維持・強化」をうたうなど原発に固執しています。
2030年に電源構成の22〜20%を原子力に担わせる計画では、停止中の原発の再稼働では足りず、40年を過ぎた老朽原発の運転延長を含め30基もの運転が必要となり、その後を見据えた建替や新設も考えられます。しかしそのことは明記しない、姑息なやり方です。
調査会を通じて、原発ありきの姿勢が政策決定を歪めている実態も、改めて浮き彫りになりました。
多面的な評価で経済性評価も行い、基本計画を策定し、その上で需給見通しを策定することが求められるにもかかわらず、骨子案は2015年のエネルギーミックスを前提としており、順序があべこべです。新設原発に求められる安全対策費用や事故対応費用の増大を考慮せず、一方で再エネの世界的なコスト低下について十分検証することなく、「再エネは高い、原発は安い」と吹聴しています。原発ゼロで電気料金が下がる可能性を検証せず、国民に対して示そうともしていません。
事業者は、補助制度がなければやらないという原発です。イギリスへの原発輸出では事故に備えて日本政府が債務保証まで行う始末であり、経済的競争力はありません。
それでもなお原発に固執するのはなぜか。電力事業者、メーカー、財界・大企業の利益を最優先する政治の姿勢に原因があることは明らかです。
再エネは、変動性電源ではあっても不安定電源ではありません。系統を活用し、広域的な電力融通を行えば、安定的に電気を供給することは可能です。原子力や石炭火力などのために系統容量を温存するのではなく、再エネを最大限受け入れる体制を整えるべきです。再エネを中心に据え、再エネが増えれば既存電源が出力を絞る、ヨーロッパなどでベースロード電源という考え方そのものが変質している事実を受け止めるべきです。
再エネは燃料費がかからず、いったん設備が整えば限界費用ゼロの電源です。国産資源で富の流出を防ぐことができる利点も踏まえて、積極的に国際戦略として位置づけ資源開発を進めるべきだという参考人の指摘に、私も賛同するものです。
原発ゼロを決断してこそ、成長産業としての再エネ事業ももっと後押しし大量導入により脱炭素化への道が開けることを強調し、意見とします。