2019年・第198通常国会
- 2019年2月27日
- 資源エネルギー調査会
全道停電の教訓、大規模集中型から分散型電力への転換について
- 要約
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- 資源エネルギー調査会で参考人質疑。北海道の全道停電の教訓から、大規模集中型から分散型への転換を求め、参考人は「同発電所が全道の半分を担っていたのは大きすぎた」と。再エネ導入の遅れについて「新しいテクノロジーに対し、日本も早くルール変更しようという議論が欠けている」と陳述。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日は、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
昨年九月の北海道胆振東部地震では、全道が停電するブラックアウトが起き、大規模集中発電の災害に対する脆弱さが露呈をしたかと思います。当時の電力需要量の半分を苫東厚真石炭火力発電の三基が一手に供給をし、三基とも停止をしたことで、結果として全道停電を引き起こしました。
私はここから二つのことが言えると思います。一つは、電力の安定供給のために、大規模集中発電には課題があり、分散型への転換が必要かつ有効と言えるのではないかということです。もう一つは、原発頼みのエネルギー政策との関係です。原発は震度五程度の地震で自動停止をいたします。もし泊原発が稼働中に地震が発生すれば、地震そのものによる損傷がなくても原発が緊急停止し、全道停止に至るリスクが大きかった可能性が指摘されています。分散型とは対極の大規模集中発電である原発は、電力の安定供給という点で決してほかより優れているとは言えないのではないかと考えます。
この二点について、大山参考人、安田参考人のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(大山力君) 北海道の話でいうと、確かに非常に大きな、苫東厚真という、半分を担っていたという問題があったかと思います。それについては、やはり北海道の全需要に対する比率から考えるとちょっと大き過ぎたんじゃないかなというのは私も感じているところでございます。
そういう意味では、分散か集中かって一かゼロかではないと思いますので、そこまで集中するのはちょっと問題があるかもしれないけれども、全部を分散してやるというとこれもまた難しい話かなというふうに思いますので、それはやっぱりバランスを保ちながらやる必要があるだろうなと。本州で考えれば、何万キロワットという意味で同じ大きさの発電所が止まったとしても、全体に対する割合は随分小さいので、北海道の集中に比べればまあ分散に近いという面もあるかと思います。
あと、原子力発電の場合は、事故を起こしたらもう話になりませんので、地震があったら安全のために止まる、これももうもちろん当然の話であって、そうすると、それは逆に言うと、そのためにブラックアウトするかもしれない、これはもちろんおっしゃるとおりで、それを起こさないようにする対策は、運用面での対策を含めてしっかりやらなきゃいけないのかなというふうに思っています。
ですから、苫東厚真に比べて泊が動いていたときは楽になるなんということはなかったのは確かだと思っております。
○参考人(安田陽君) じゃ、私の方からもお答えいたしたいと思います。
まず、北海道のブラックアウトに関しましては、電力広域的運営推進機関から詳細な報告書が出ておりまして、結果的に、石炭火力三基が集中していたことが原因ではないという結論になりました。石炭火力三基が短時間のうちにダウンをしたというのは事実ですけれども、それ以外に送電線四か所が地震動によって瞬間的にダウンをしておりまして、そこが原因だったと様々なシミュレーション結果からも明らかになっております。
ですので、一般論として大規模集中型よりは分散型がいいという多くの御意見があるというのは理解できますけれども、北海道のブラックアウトとは全く問題が別だということは是非科学的な観点から御認識いただければと思います。
その上で申し上げますと、分散型電源も、分散型になればなるほどブラックアウトに強くなるかというとそうでもなくて、別の問題も発生します。結局のところ、私が先ほど意見陳述のときに申し上げましたように、新しいシステムを、新しい技術を導入するには、ルールを新しくしないとそこのところで難しい問題が発生してしまう。分散型電源になれば何でもバラ色だではなくて、分散型電源もやはり課題はありますし、ただ、それは乗り越えられない課題ではなくて、日本の技術力をもってすれば乗り越えられるんですけれども、そこに法律とかルールが伴わないと、隙間、ギャップが開いてしまって、いろいろな問題が発生する。
結局のところ、ルール、制度、そこのところをしっかりしていくというのが重要になるんじゃないかと思っております。
○山添拓君 ありがとうございます。
安田参考人に加えて伺いたいんですが、安田参考人始めとする研究チームが二〇一七年の十月に明らかにされた送電線の空き容量の問題ですが、昨年策定されたエネルギー基本計画では再エネを主力電源にと、こう掲げながら、実際には再エネの新規参入を阻む入口での入場制限が生じておりました。
安田参考人は、送電線への入場制限は技術的問題ではないとされて、空き容量がゼロだという電力会社の決定方法について客観性や透明性があるかどうか、これを疑問視されているかと思います。情報開示や基準設定の在り方について、現状ではどのような問題があり、それを制度的に解決するためには何が必要だとお考えでしょうか。
○参考人(安田陽君) ありがとうございます。
本日、意見陳述では述べなかったことも御質問いただいて、大変ありがとうございます。
送電線空き容量問題、私がいろいろ公開されているデータを基に分析したところ、空き容量がゼロだと言われているところでも空いているじゃないかという問題提起をさせていただきました。これは、じゃ、空き容量がないというのはうそなのかとか、そういった報道もありましたけれども、これもやはりルールの問題です。従来のルールに基づいて計算をすると空き容量はないということになりますので、これも科学的な結果です。
新しいルール、例えば欧州でやっている、アメリカの一部でやっているそういったルールを適用したら、いやいや、まだ使えるところはありますよということになります。ですから、どちらかがうそをついているとか間違っているではなくて、新しい技術に合わせて新しいルールを作っていくことになります。
もう少し詳しくよろしゅうございますでしょうか。
分かりやすく例え話で御説明しますと、今のルールは、水の中、水を通すパイプがございまして、そこに十台ぐらいポンプがつながっているとすると、ポンプが十台一斉に全部運転したらパイプが破裂してしまいますよね。だからもう入りませんという状況です。ところが、ポンプが全部十台一斉に動くということはほとんどあり得なくて、太陽、風力、火力、原子力、様々に特性が違いますので、では、実際に流れている量を測って、あるいはシミュレーションとか予測して、それで決めたらどうですかと。そういったきめ細かいセンシング、それからシミュレーションの技術を使って予測をする、そういったことが海外では多く取られています。
そういう新しいやり方にすると、従来のルールでは空いていないと言われていたものが空いているようになるという形になりますので、そういう御理解をしていただけると有り難いと思います。
○山添拓君 ありがとうございます。
続いても安田参考人に伺いたいのですが、世界的には再エネが大きく促進されているにもかかわらず、日本ではエネルギー基本計画で二〇三〇年度の再エネ目標が二二から二四%と、世界的に立ち遅れていると思います。私どもは、その最大の要因は、原発や石炭火力に固執をし、再エネの割合を増やそうとしないことにあると考えております。安田参考人は、日本で再エネの導入促進が阻まれる最大の要因は何だとお考えでしょうか。
先ほどのお話の中で、ヨーロッパなどではコストとともに便益が意識をされて投資も促進していると、こういう指摘もされておりますが、日本でそういった便益や外部コストが考慮されない、あるいはされにくい、その問題の背景には何があるとお考えでしょうか。
○参考人(安田陽君) 今、再エネが入らない原因の中に原発や石炭のことを取り上げていただきましたけれども、私自身は、どの電源がいいですとかどの電源が悪いですという意見は実は持っておりません。
何を基準に考えているかというと、やはり先ほど申し上げました外部コストが低いこと、それからベネフィットが出ること、であればどの電源でもよい。あるいは、そうなるようにどの電源も様々な技術革新をしなきゃいけない、それから、それに合わせてルールを変えていかなきゃいけないということになります。
そうしますと、日本でなぜ新しい技術である再生可能エネルギーが入らないか。これは例えて言うのであれば、日本でなぜ携帯電話やスマホが全然入らないんでしょうか、現状では入っていますけれども、そう言うのと同じです。世界中、よその国がいろいろ血眼になって開発しているそういった投資物件に対して、なぜ余り新しいテクノロジーに関心を払わないかというのは、単純に、やはりルール変更を、ルールメーキングをみんなでしましょう、国民レベルでというところが少し議論が少ないように思えます。
ですので、誰がどの電源が好きだというのではなくて、共通のルールで、様々な考え方があっていいんですけれども、それで、その中でルールを作りましょう、しかも新しいものに対して早くルール変更しましょう、そういう議論が残念ながら日本にはちょっと欠けているんではないかなと私自身は考えております。
○山添拓君 ありがとうございました。