2019年・第198通常国会
- 2019年4月24日
- 資源エネルギー調査会
パリ協定に基づく長期戦略案と石炭火力について
- 要約
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- 資源エネルギー調査会で、パリ協定に基づく長期戦略案の策定過程が歪められた可能性ー先進国の大勢である「石炭火力全廃」が産業界の要請で削られた問題を早速国会で追及。「様々な意見があった」と認めながら、会合の存在を秘匿し議事録の開示も拒む。重要な意思決定の不透明さは許されない。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
私からも、昨日公表されましたパリ協定に基づく温暖化対策長期戦略案について質問をいたします。
今世紀後半のできるだけ早い時期に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする、脱炭素化のために、世界的には石炭火力発電のゼロが流れであります。
長期戦略案に先立つ有識者懇談会でも座長の案として石炭火力全廃の方向性が示された時期もあったと、報道でもされておりますけれども、これは事実ですか。
○政府参考人(森下哲君) このパリ協定長期成長戦略懇談会でございますけれども、民間の有識者の方々から成る懇談会ということでございます。
都合五回懇談会が開催されておりますけれども、第四回懇談会までの議論を踏まえて座長が作成したたたき台を基に委員の間で意見交換が重ねられまして、最終的に座長の下で提言が取りまとめられたものと承知をしております。その過程でそれぞれの委員から様々な意見が表明されたと認識をしておりますけれども、個別の委員の意見についてはコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
○山添拓君 四回踏まえて五回目に案が出されたとおっしゃるんですけれども、座長は四回目にどうも次回までに私の責任でたたき台を作ると話をされていたようで、その後に公式の会合は開かれずに、そして四月二日の五回会合で提言が公表されたということが言われています。
今、会合は五回だったという話なんですが、それ以外に二回の非公式会合があった、これは事実ですか。
○政府参考人(森下哲君) 本懇談会の議論の進め方については、座長から、御自身のイニシアチブの下で委員と議論を行う旨の御発言がございました。この方針を踏まえまして、忌憚のない意見交換を行うという観点から、座長と委員との対話を通じて提言を取りまとめていただいたものと承知をしておるところでございます。
詳細についてはコメントは差し控えたいというふうに思います。
○山添拓君 いや、会合があったかなかったか、これも非公開なんですか。
○政府参考人(森下哲君) 座長より、御自身のイニシアチブの下で委員と議論を行う旨の御発言があったということでございます。この方針を踏まえて、提言を取りまとめる段階で、座長と委員との対話を通じて提言が取りまとめられたということでございます。
○山添拓君 いや、お答えになっていないと思うんですね。有識者懇談会であれば座長はイニシアチブで何でもやっていいということにはならないと思うんですね。
これは、開示をできない非公式会合と言われている座長案をまとめるに至った経過については、会合があったかなかったかも示せない、こうおっしゃるんですか。
○政府参考人(森下哲君) 先ほど申し上げましたとおり、この懇談会の議論の進め方でございますけれども、座長から、御自身のイニシアチブの下で委員と議論を行う旨の御発言がありました。この方針を踏まえて、忌憚のない意見交換を行う観点で、座長と委員との対話を通じて提言が取りまとめられております。
その経緯を公開する予定はございません。
○山添拓君 ちょっと、なぜ開示ができないのかということがその説明では全く理解できないんですね。
何か具合が悪いことあるんですか。
○政府参考人(森下哲君) この懇談会の議論の進め方につきましては、繰り返しになって恐縮でございますけれども、座長から、御自身のイニシアチブで委員と議論を行うという旨の御発言があって、それを踏まえて進められておるということでございます。そこを尊重させていただいているということでございます。
○山添拓君 これちょっと、余りにもひどいと思うんですね。先ほど江崎議員からもありましたけれども、産業界からの意向で修正されたという報道もあるところです。
経団連は、今月、日本を支える電力システムを再構築するという提言を発表しておりますが、その中では、石炭を始め化石燃料由来の電源構成が国際的に批判を浴びているとしているんですが、石炭火力の新増設を見直すということは一言も書かれておらず、これ、むしろ進めるというつもりでおります。ですから、そうした経過は、経済界からの要請で、産業界からの要請で石炭火力ゼロだという方針がゆがめられたという可能性はさもありなんということだろうと思うんですね。
会議録がないというお話だったんですが、そしてまた、その過程で様々な意見はあったんだということもお話しでした。提言についての元々の座長案とそれに対する各委員の意見、これを記したような資料、これはありますね。
○政府参考人(森下哲君) 懇談会についてはこれまで五回議論がされておりまして、それまでの間、議論の結果につきましては議事概要という形で公表もさせていただいております。その中で、様々な意見が出ているということはお示しをさせていただいているというところでございます。
○山添拓君 議事概要については承知していますけど、議事概要の後なんですよ。そこには載っていない経過なんですね、四回目の段階では座長案というのは示されておりませんから。
それ以降の経過について記した資料というものはありますね。
○政府参考人(森下哲君) 第四回の長期成長戦略懇談会で、北岡座長からは、今後の進め方であるけれども、次回までに私の責任でたたき台というかスケルトンというか、大体こういうふうな構成ではどうだろうかと、そこには皆さんの意見を全員入れると、それを踏まえた議論を一月に行う、それからもう絞り込みを始めるというのが私の原案であるが、いかがかというような形がありまして、その後、座長と委員との間で忌憚のない意見交換が行われて、その結果として提言が取りまとめられたというふうに理解をしてございます。
○山添拓君 その間の意見交換についての資料を提出していただきたいと思うんですけれども。
○政府参考人(森下哲君) その経緯を公開する予定はございません。
○山添拓君 会長、この調査会として、この調査会の「新たな時代に向けた我が国の資源エネルギー像」という調査テーマに関わっての重要な議論が国会にも示されない、これは重大な問題だと思います。民主主義のプロセスの問題ですので。しかも、石炭火力について、依存度を可能な限り引き下げることなどに取り組んでいくというこの今回の長期戦略案の結論は、石炭火力発電については僅か四行しかないんですね。
この重大な方針決定についての経過が明らかでないというのは大変問題だと思いますので、調査会としても適切に対応するべきだと思います。
お取り計らいいただきたいと思います。
○会長(鶴保庸介君) 後刻理事会で協議をさせていただきます。
○山添拓君 もう一点、原発についても伺いたいと思います。
脱炭素化のために原発が必要だということを長期戦略案でも示されています。原子力の利用を安定的に進めていく、これは、脱炭素化のためには将来にわたって原発に依存し続けると、こういうことなんでしょうか。あるいはまた、安全性、経済性、機動性に優れた炉の追求ということも書かれておりまして、その中で、高速炉や先ほどの小型モジュール炉の開発なども記されています。
先ほど磯崎副大臣からは、新増設、リプレース、これ、現時点においては検討していないというお話がありまして、政府は一貫してその答弁をしているんですが、しかし、小型モジュール炉などの開発を進めていくというのは、これ、将来的には新増設を見据えた方針を示したということになるんじゃないですか。経産省。
○政府参考人(高橋泰三君) お答え申し上げます。
エネルギー基本計画の考え方でございますけれども、今日、磯崎副大臣からも御説明をさせていただきましたように、資料でいいますと三ページ、お配りした資料の三ページでございますけれども、二〇三〇年に向けて原子力依存度を低減し、再稼働を進めていくということでございます。二〇五〇年につきましては脱炭素化に向けてあらゆる選択肢を追求していくということで、原子力についても脱炭素化の選択肢、安全炉の追求、バックエンドの技術開発に着手ということで御説明させていただいております。
また、昨年七月に決定いたしましたエネルギー基本計画におきましても、小型モジュール炉や溶融塩炉を含む革新的な原子炉開発を進める米国や欧州の取組も踏まえつつ、国は長期的な開発ビジョンを掲げ、民間は創意工夫や知恵を生かしながら、多様な技術間競争と国内外の市場による選択を行うなど、戦略的柔軟性を確保して進めるということで、研究開発の技術的課題としてはエネルギー基本計画でも研究を進めていくということを書いてございまして、そういう点について今回の長期戦略でも整理をされたものというふうに理解をしております。
○山添拓君 脱炭素化の選択肢として掲げて、そのために小型モジュール炉の開発なども、あるいは高速炉も含めて記しているわけですよ。ですから、単なる研究だけの位置付けではないだろうと思うんですね。
将来的には、新増設、今とは違った小型モジュール炉や別の形を取ることもあるのかもしれませんけれども、これを進めていくということなんですか。これは、可能な限り依存度を低減するということとも矛盾することになるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(村瀬佳史君) お答え申し上げます。
今長官から御答弁させていただいたとおりでございまして、エネルギー基本計画の中には、将来に向けて、再生可能エネルギー、水素、CCS、原子力などあらゆる選択肢を追求する野心的な複線シナリオ、これを進める中で脱炭素化に向けた取組を進めていくということになってございます。
○山添拓君 時間ですので終わりますけれども、今後の新増設について、新たな形態での新増設については否定されなかったということは重大だと思います。経団連の先ほど指摘した提言の中でも、脱炭素化のために原子力は不可欠だと、そして再稼働と運転期間の延長、新増設、リプレース、これ政策に位置付けるべきだとしております。
こういう意向を受けて、国民の原発ゼロを求める世論も無視した進め方をするのは大変問題だということを改めて指摘をして、質問を終わりたいと思います。