2019年・第198通常国会
- 2019年6月18日
- 文教科学委員会
法科大学院に関する法律案について、質疑と反対討論
- 要約
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- 18日、文科委員会で法科大学院法案について質問、反対討論。本法案で新設される法曹コースは、法学未修者を含む様々な人材を法曹として養成するという基本理念からほど遠いものであり、また法学部の教育内容や法科大学院の入学者選抜方法を法律上の要件とするなどは大学の自治に介入するものと批判しました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
法曹志望者減少の理由とされます経済的負担について伺います。
二〇一五年の法曹養成制度改革推進会議決定では、経済的負担の軽減策として、奨学金や授業料減免など、給付型支援を含めた経済的支援の充実を推進するとしておりました。
この間、政府として、法学部、法科大学院生を対象とした経済的支援、これは何か行われましたでしょうか。
○政府参考人(伯井美徳君) 平成二十七年の法曹養成制度改革推進会議におきまして、御指摘のように、奨学金制度や授業料減免制度など、給付型支援を含めた経済的支援の充実が求められたところでございます。
このことも踏まえつつ、文部科学省においては、無利子奨学金の充実や授業料減免の拡充等、法科大学院生を含む大学院生への経済的支援の充実を図ってきたところでございます。
直近の平成二十九年度のデータでは、法科大学院在籍者四千七百五十五人のうち、全体の三四・一%に当たる千六百二十人が給付型奨学金や授業料減免等の支援を受けており、さらに貸与型奨学金のみの支援を受けている六百八十五人を加えると、全体の約半数、二八・五%に当たる二千三百五人が経済的支援を受けているというところでございます。
○山添拓君 それは一般的なものなんですよ。
法学部生、法科大学院生を対象にしたものは行ったのかというのが私の質問です。
○政府参考人(伯井美徳君) 法科大学院におきましては、今御説明いたしましたように、他の大学院と比較しても多くの学生が支援対象となっております。学生支援機構における法科大学院生向けの奨学金制度というのもございます。
今後とも、その授業料減免、奨学金の充実に努めてまいりたいと考えておりますし、学部生、法学部生についての経済的支援につきましては、法曹養成制度改革推進会議決定においても直接には触れられておりませんが、法学部生を含む大学生向けの給付型奨学金を平成二十九年度から実施し、さらには、今国会でお認めいただきました低所得者層への新支援制度の実施など、高等教育の修学支援の充実を図っているところでございます。
○山添拓君 こんなところで時間取らないでほしいんですが。
私のところに五月二十二日に出していただいた書面では、法学部、法科大学院生に限定して政府として新たに行った取組はございませんって書いてあるんです。違うんですか。
○政府参考人(伯井美徳君) 従来から行っているという取組でございますし、新支援制度は今国会で認められたものでございます。
○山添拓君 認めようとされないんですね。認めようとされないんですけど、そう書いていただいていますから、法科大学院生に向けて特別に行ったものというのはこの間ないわけです。
国立の法科大学院というのは、他の学部より授業料が高いんですね。国立大学の授業料標準額というのは、医学部であれ大学院であれ、年間五十三万五千八百円です。ところが、法科大学院だけが八十万四千円と一・五倍です。経済的負担の軽減というのであれば、少なくとも他学部並みに授業料を下げるということを検討されるべきじゃありませんか。
○政府参考人(伯井美徳君) 御指摘のとおり、法科大学院の授業料は国立大学年額八十・四万円と高うなっておりますが、これ、法科大学院教育の質の充実ということで、教育内容の向上に即した授業料という設定でございます。
給付型奨学金あるいは授業料減免措置の充実というのは今後とも努力してまいりたいと考えております。
○山添拓君 やるとは言われませんでした。
要するに、法曹養成のために経済的支援、給付型支援も含めて必要だと言われながら、それに特化した対策というのは政府として行っていないということなんですよね。
次の問題に行きます。
資料をお配りしておりますが、日弁連の昨年十月二十四日付け、法科大学院在学中の司法試験受験を認める制度変更に関する基本的確認事項という書面があります。下から四行目に、以下の点について十分な対応がなされないようであれば、今般の制度変更には容易に賛成することはできないとして、司法試験の受験資格は法科大学院修了者を原則とし、在学中受験を例外的な位置付けとすることを挙げています。これは単に制度上の原則、例外という問題ではなくて、運用としても在学中受験は例外的な扱いとせよと、こういう趣旨であろうと思います。
大臣、伺いますが、日弁連からも意見を聞いて了承を得たということなんですが、在学中受験というのは例外的な扱いになるんですか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 今回の改正案においては、司法試験の受験資格については、あくまで現行の法科大学院修了資格を維持した上で、それに付け加える形で法科大学院在学中の者であっても所定の要件を満たした者について受験を認めるということとしているわけでして、在学中受験資格は、法律上の位置付けはあくまで例外的なものとなっております。
○山添拓君 運用はそうなるんですかという質問です。
○国務大臣(柴山昌彦君) 今回の改正案は、法曹を志望する学生にとって、まず、法曹資格取得までの時間的、経済的負担の軽減を大きくそのニーズに沿った形で改革をしていくということでありますので、この三プラス二のルートそのものは標準的な運用とするとともに、今御指摘になられた在学中受験資格を学生にとってのオプションとして追加をし、希望する学生がこれを活用することを可能としたものであります。そのため、在学中受験資格については、この運用としては、例外的というよりは学生が自らの判断に基づいて活用するものであるというように認識をしております。
○山添拓君 例外的というふうにはおっしゃらないんですね。
日弁連の意見を聞いたということをおっしゃっているんですけれども、これは単に意見を受け取ったという形式論にすぎないだろうと思います。
当委員会で意見を伺いました内山参考人も、日弁連を代表した意見ではないということを断りつつですが、在学中受験も含めて、これは学生の選択として標準的なルートとなっていくというようなことであれば、これは賛成できないだろうと述べております。
法務省は、昨年十月の中教審では、在学中受験をまだ方針化していない、こう言っておりました。ところが、文科省は、それに先立つ九月の法科大学院協会から了承を得た、五月三十日の法務委員会で答弁をされております。この法案が法務省と文科省の共管であることをいいことに、言わばだまし討ちのように手続を進めてきたと。日弁連との関係でも、意見を聞いたと言いながら、その意見の中身は実際とは異なる。
これ、出発点は昨年七月の自民党の部会だと伺っています。法科大学院の教育に大きな影響を与える在学中受験について、中教審での議論もなく、これはもう与党の意向で解禁ありきで進められてきました。制度の検討過程として極めてずさんであります。
次に、法曹コースについて伺いますが、これは学部二年生への進級時以降に選択することとされ、学年ごとに厳格に成績評価をして、優秀な学生が法科大学院の既修者コースに進学するのが基本とされています。この厳格な評価というのは、充実した教育が行われることが前提となります。
ところが、昨年三月の中教審特別委員会の基本的方向性と題する文書では、法学部教育の充実、改善策は今後の検討課題とされて、これからだといいます。それどころか、深刻な教員不足もうかがえます。昨年四月から、専門職大学院に必要な専任教員のうち学部との兼務を大幅に増加させるという制度改正が行われて、中教審は法科大学院と法学部にこの制度を活用するように求めています。
要するに、法学教育における人材不足がこれもういかんともし難い状況だということではないんですか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 平成三十年三月の専門職大学院設置基準の改正では、法科大学院を含む専門職大学院の専任教員について、それまでは認められていなかった学部や他の研究科の教員との兼務を一定の条件の下で認めることといたしました。
これはそもそも、専門職大学院については、高度専門職業人の養成に目的を特化した大学院としての教育の質を保証する観点から、教員組織についても学部等からの独立性を求め、専任教員が学部ですとか他の研究科の教員を兼務することを認めていなかったものなんですけれども、平成二十八年八月の中教審大学院部会のワーキンググループ取りまとめにおいて、こうした制約が学部との連携や学際連携の妨げになっているというような指摘がなされ、その後、中教審の大学分科会などにおける議論を経て、先ほど申し上げたような改正に至ったところであります。
つまり、本改正は、法科大学院を含む専門職大学院について学部との連携や学際連携の促進等による教育の充実を図るものでありまして、法学分野の教員不足を解消するということを目的とした改正ではありません。
○山添拓君 しかし、結論としては、本来独立性が求められていた法科大学院について学部の教員との兼務を可能としていく、それはもう足りなくなっているということを補うためのものでしかないというのが実際であろうと思います。
この法曹コースの構想というのは、法科大学院が未修一年目に行う未修者教育を法学部に移そうというものです。法律基本科目の憲法や民法や刑法など、司法試験の必修科目を中心に一通りやるということになるんでしょう。
しかし、例えば、昨年、法科大学院未修者コースの合格率は一五・五%です。法学部出身の既修者が三四・四%であったのに対してその半分以下で、累積合格率でも傾向は同じです。未修者教育が成功しているとは言い難い状況であろうと思います。
これ、なぜうまくいかなかったのか、その分析と検証をしない限り、ただ法科大学院から学部に移してもうまくいく保証はないんじゃありませんか。
○国務大臣(柴山昌彦君) おっしゃるとおりだと思います。
この未修者教育の対象には、一部法学部出身者も含まれますけれども、本当に様々な、学部出身者ですとか社会人経験者など多様な方々がいらっしゃいます。入学時点における法学に関する知識や専門的知識などには大きな差があるのが現状です。
こうした多様な学生に対して未修教育を施すためには、やはり未修者教育の成果を共通的に把握する仕組みが必要なのにこれまでそれがなかったということ、そして個人の特性に応じた柔軟な学修メニューの提供やきめ細かな学修支援が十分ではなかったことなどが課題であります。
こうした課題に対して、これまでも中教審において検討を行い、各法科大学院が共通して客観的に進級判定をするための共通到達度確認試験の導入など、未修者教育の改善充実に取り組んできてもらいました。
文部科学省といたしましては、引き続き、この中教審において未修者教育の改善方策について具体的に御議論をいただくとともに、未修者、社会人の入学者割合や司法試験合格率といった数値目標も設定をし、継続的に把握、検証を行い、未修者教育の改善充実を進めていきたいと考えております。
○山添拓君 それでなぜ法曹コースについてはうまくいくのかというのがよく分からないんですが、法曹コースは、要するに、優秀な学生だから乗り越えていくだろうと、こういうことになるんですか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 法曹コースにおいては、法曹コース修了時の一定の成績、それから法科大学院についての既修者認定というものをクリアした形でその既修者コースに編入をするということで、さっき未修者コースにおいて紹介させていただいた、要するに質の確保ということがなされているんだろうと思います。
○山添拓君 要するに、だから法学部でどのような教育をするのかというお話はなかったんですよね。
優秀で早い段階から法曹志望を固めている者であれば、これ今でも予備試験や早期卒業で短期間に合格しているんですよね。この層を法科大学院ルートに呼び戻すということはこの法案でできるのかもしれませんが、それは総志望者全体を増やすことにはつながっていかないんではないでしょうか。法科大学院でうまくいっていない未修者教育をいかに充実したものにするのか、これを正面から検討するべきだったと私は考えます。
中教審の特別委員会の基本的方向性は、未修者教育について、コースの在り方や未修者に対する教育方法について更に検討する、純粋未修者や社会人として十分な実務経験を有する者が入学者の多数を占めるに至らせることを目指すべき、こうしておりました。
この法案は、未修者、社会人が入学者の多数になることを可能とする法案になっているんですか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 繰り返しになりますけれども、多様なバックグラウンドを有する者がその知見を生かせるようなチャンスを開くということは極めて重要だと思っておりますし、今後とも法科大学院において法学未修者を含む様々な人材を法曹として養成していくという基本理念に変更はありません。
ただ、その一方で、昨年三月に中教審法科大学院特別委員会において、未修者コースに入学する法学部出身者が約七割を占めると、本来、法学部出身者であれば既修者に行けばいいのに、未修者コースに入学しているという方が非常に多いということから、今委員が御指摘のような、純粋未修者ですとかあるいは社会人の未修者コース入学者が多数となることを目指すべきということを基本的方向性として取りまとめさせていただいております。
そして、そうした方向を踏まえて、今回の法改正においては、例えば入学者選抜の時期や方法について、未修者やなかなか平日は時間の取れない社会人に対する配慮義務を規定しており、法科大学院入学者の多様性の確保を一層推進することを目指しています。
また、この法改正と併せた改革として、未修者教育や社会人教育への支援を含むめり張りある予算配分、そしてまた、先ほど紹介をさせていただいた進級における共通到達度確認試験の本年度からの本格実施という取組を推進して、まさしく委員御指摘の未修者や社会人教育の質の保証ということにつなげていきたいというように考えております。
今後、中教審法科大学院等特別委員会において、未修者教育の改善方策について更に具体的に御議論をいただくとともに、未修者、社会人の入学者割合や司法試験合格率といった数値目標を設定して、継続的に把握、検証を行い、未修者教育の改善充実をしっかりと進めていきたいと考えております。
○山添拓君 私が伺ったのは、この法案で未修者、社会人の入学者を多数を占めるような状況にするものになっているのかということなんですけどね。
この法案の連携法第六条三項二号では、法曹コースから法科大学院への入学者選抜の方法について、文科省令で定めるとしております。この文科省令、予定されているのは、連携先の法曹コースから既修者認定試験の代わりに無試験で入学をするのを可能とするのを法科大学院の定数の二分の一まで認める、こういうものじゃありませんか。
○政府参考人(伯井美徳君) そのとおりでございます。上限二分の一を設定してございます。
○山添拓君 要するに、未修者、社会人が多数を占めるに至るどころか、法曹コースからの言わば推薦入試だけで半数まで認めると、これ多様性とは程遠いと思うんですね。学部での学びを通じて徐々に法曹志望を固めていくような法学部生や、他学部から、社会人から法曹を志していくという人にとって、いかに魅力のある法曹養成制度とするのかが問われていると思います。ところが、この法案はそこに正面から向き合おうとしないものだと言わなければなりません。
もう時間の関係でちょっと別の視点から質問させていただこうと思いますが、法科大学院において大学の自治が認められるという意義を大臣はどのように認識をしておりますか。
○国務大臣(柴山昌彦君) おっしゃるとおり、法科大学院においても、大学が学術の中心として深く真理を探求することを本質とすることに鑑み、憲法が保障する学問の自由、これが当然のことながら保障され、そして、その学問の自由の保障のために、教育研究に関する大学の自主性を尊重する制度と慣行が大学の自治として保障されると考えております。
○山添拓君 ところが、この間、法科大学院における大学の自治というのは、あってなきものにされていると思います。例えば、入学者の選抜権、誰をメンバーとするのかと。これは共通の適性試験の実施や競争率二倍を維持することが認証評価によってチェックの対象とされてきました。あるいは、教育内容の決定権。これは、コアカリキュラム、共通的な到達目標の設定や共通到達度確認試験によって制約をされます。
教員の人事権は、実務家教員として派遣をされた裁判官や検察官を成績の悪い法科大学院からは引き揚げるという形で影響を受けます。そして、補助金削減のプレッシャーで財政自主権も脅かされると。定数削減と統廃合が政策的に誘導されてきたのが法科大学院のこの間の流れであります。大学の自治、司法制度改革審議会の意見書では自主性と書かれていますが、そこに委ねられた範囲にまで文科省が、あるいは政府が踏み込んできたというのが現実じゃないですか。大臣、そこはいかがですか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 多くの法曹志望を持つ学生が安心してその法曹コースあるいは法科大学院を経て法曹を目指すということができる環境を整えるためには、やはり制度の安定的かつ円滑な運用を確保するための基準というものは必要になってくるというように思いますし、それが国として何か特定の教育内容を強制するものではないというふうに思いますので、学問の自由には抵触しないというふうに考えております。
先ほど委員が御指摘になられた事柄についても、例えばあくまで大まかな科目群ごとの必修単位数ですとか、あるいはその設置基準の問題ですとか、そういったものに関するものだと考えております。
○山添拓君 要するに、そこで学ぶ学生のためを思ってということなんですが、私は司法試験に合格をさせるための専門職大学院であるから大学の自治や学問の自由がないがしろにされてよいということにはならないと思います。
司法試験では、通説や判例を知っていることが大前提とされます。しかし、法曹として実際に向き合う事件には、新たな法解釈が要求をされる先例のない事件や過去の判例を乗り越えなければならないような事件がこれは必ずあります。法曹が通説や判例を金科玉条にして事件を処理するのであれば、現実の事件を対処して、一人一人に寄り添って、市民、国民の権利の前進図るということにはつながらないと思います。その意味で、法曹というのは、どんな立場であれ国家権力とは常に一定の緊張関係を持つべき存在であります。だからこそ、法曹を養成する法科大学院のこの権力からの独立、自治や自主性というのは重要な意味を持つと思います。
ところが、この法案というのは、そうした法科大学院が持つべき自治や自主性、それを法学部にまで広げて政府が踏み込もうというものであろうと思います。連携法の六条に、法科大学院と法曹コースを設置する大学との連携協定に関する規定を設けようとしています。教育課程の編成、成績評価の基準、法科大学院への入学者選抜の方法などを協定事項として文科大臣が認定をすると。違反した場合には認定の取消しまで予定をされています。
法学部の教育内容や法科大学院の入学者選抜の方法といった、本来それぞれの大学の自治に委ねるべき内容についてまで法律上の要件としたのはなぜですか。
○政府参考人(伯井美徳君) 御指摘の規定を設けた理由でございますが、法曹コースは法科大学院の教育を支えるものとして、法曹養成プロセスにおいて重要な役割を担うということから、法曹コースにおける教育の質の担保、あるいは法曹コースから法科大学院への円滑な接続の確保に必要であるこれらの事項について協定において定めることとし、その協定について文部科学大臣が認定するというふうにしているものでございます。
この認定につきましては、あくまでその具体的な内容は法学部と法科大学院との協議の上で定められるものではございますが、その協定内容は法曹養成に重大な影響を及ぼすこと、あるいはその学生が安心して法曹コース、法科大学院を経て法曹を目指すことができる環境を整えるということから、協定の内容が信頼できることを担保する必要があることから、文科大臣が認定をし、制度の安定的かつ円滑な運用を確保するという趣旨でございます。
○山添拓君 ちなみに伺いますが、法律において入学者選抜の方法についてまで定めるというのは、今度が初めてですね。
○政府参考人(伯井美徳君) そのとおりでございますが、その必要性を感じて規定したものでございます。
○山添拓君 必要だから何でもやっていいのかということを私は問題にしているわけです。
これ、学部教育に対する法科大学院と文科省の介入を認めていくものだと。例えば、東京の大手の法科大学院が地方の大学と連携協定を結びます。地方の大学には法科大学院がなく、法学部生を集めようと思えば法曹コースをつくりたいと。立場上、東京の大手の法科大学院が求めるままに連携協定を結ばざるを得なくなります。その大学の教育方針や理念を捨ててでも連携協定にすがることになりかねません。
この法曹コースというのは、特定のコースというものではなく、履修プログラム型でもよいとされておりますので、法曹コースとそうでない学生が同じ講義を受けるというケースも十分想定されます。そうしますと、法学部教育全体が連携先の法科大学院に合わせたものへと変容を迫られかねない。しかも、その協定は文科大臣の認定というお墨付きが必要です。
法学部生の獲得に悩んでいる地方大学の足下を見て、なし崩し的に大学の自治への介入を認めるべきではないと、このことを最後に指摘をしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
〈反対討論〉
○山添拓君 日本共産党を代表し、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対理由の第一は、法学部三年、法科大学院二年の五年コースを標準とする点です。
法学部の二年進級時以降に、法曹コースを選択し、優秀な成績を収め、法科大学院の既修者コースに進学することが中心的な道筋と想定されています。既修者認定試験を経ない特別選抜、言わば推薦入試ルートだけでも法科大学院の定員の二分の一まで認める計画とされており、法学部以外の出身者や社会人など、多様性を確保することは困難です。
反対理由の第二は、法科大学院在学中に司法試験受験資格を認める点です。
既修者コースでは入学の翌年に司法試験を受験できることとなり、理論と実務の架橋として基礎的な能力を身に付けるべき期間が受験準備に費やされ、法科大学院の予備校化を招きかねません。プロセスとしての法曹養成の中核とされる法科大学院、その修了を司法試験の受験資格とするという司法制度改革の基本理念や法科大学院制度の趣旨を投げ捨てるものと言わざるを得ません。
また、在学中受験は法科大学院における教育に重大な影響をもたらすにもかかわらず、中教審特別委員会でも議題とされず、法科大学院協会や日弁連との十分な議論もなく、法律家団体など複数の団体、個人からの反対意見も顧みず押し通そうとするものです。いわゆるギャップタームの解消が必要といいますが、文科省、法務省が行った法学部生アンケートには、そうした要望等、項目すらありません。専ら与党の提案にのみ依拠し、まともな議論すらなく、制度の根幹を揺るがす改変を進めるべきではありません。
反対理由の第三は、法学部教育への影響が十分に考慮されていない点です。
広く法的素養を身に付けることが期待される法学部全体の教育にどのような影響をもたらすのか、他方で、法曹志望者が法律基本科目について基礎的、体系的理解を得るだけの教育が確保されるのか、本法案では何ら検討されていません。また、連携協定は、法曹コースの教育課程の編成、成績評価の基準、法科大学院への入学者選抜の方法などを文科大臣が認定し、違反すれば認定を取り消されます。法学部生獲得に悩む大学の足下を見るかのように連携協定に誘導し、法曹コースのみならず法学部教育全体を連携先の法科大学院に合わせたものへと変えさせる、大学の自治を脅かすような介入を認めることはできません。
司法試験合格率の低迷、法科大学院の相次ぐ閉鎖と教育の格差の拡大、法曹の急増に伴う司法修習生の就職難、弁護士の収入減などを背景に法科大学院志願者が大幅に減少し、法曹養成はあらゆる段階で破綻を生じています。ところが、本法案は、法科大学院の志願者数が激減する原因を時間的、経済的負担という一面のみに求め、法曹養成制度全体を見渡すことなく、法科大学院と法学部だけを対象に、かつ制度趣旨にそぐわない改変を加えようとするものです。そこには、どのような法曹を養成するのかという基本理念すら見えません。法科大学院を中核とした法曹養成制度という理念や目標と現実とが乖離した原因を明らかにし、法学教育、司法試験、予備試験、司法修習という法曹養成のプロセス全体を、原点に立ち返り、国民的に幅広く議論し直すことこそ必要であり、本法案はびほう策とすら言えません。
以上、反対討論とします。