2020年・第201通常国会
- 2020年4月7日
- 法務委員会
法務委員会で外国法事務弁護士特別措置法について質問
- 要約
-
- 法務委員会で外国法事務弁護士特別措置法について質問。外弁法は、米国通商代表部など外圧に屈し、自由化が繰り返されてきました。本案について、外国法事務弁護士が権限外の法律事務を取り扱う懸念、職務経験要件が緩和され弁護士としての能力、資質等が制度的に担保されない問題等を指摘しました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
法案について伺います。
外国法事務弁護士とは、外国で弁護士資格を得て、日本で外国法に関する法律事務を行う者のことをいいます。法務大臣の承認と日弁連の名簿への登録が必要とされております。
大臣に伺いますが、外国で法曹資格があるにもかかわらず、日本での活動が制限されるその趣旨は何でしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 弁護士法第七十二条は、別段の定めがある場合を除き、我が国の弁護士又は弁護士法人でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを禁止をしています。その趣旨は、法律事務は他人の権利義務に重大な影響を与えるものであるため、法律に精通し、かつ厳しい職業的規律に服する弁護士等のみにその取扱いを許し、もって社会秩序の維持を図ることとしたものです。
外国法事務弁護士制度は、この弁護士法第七十二条の例外として、外国弁護士が職務経験要件等の一定の要件を満たした場合に、法務大臣の承認を得て、外国法事務弁護士として日本弁護士連合会の名簿に登録することにより初めて外国法に関する法律事務を取り扱うことができるとしているものでございます。
○山添拓君 弁護士法一条には、基本的人権の擁護と社会正義の実現を弁護士は使命とすると、こういう規定もありますが、日本の法律とその実務を知らない者が日本で弁護士活動を行うというのは権利の擁護と正義に反するおそれがあると、こういうところに趣旨があるのだろうと思います。
前回の法改正は二〇一四年の四月でした。翌年三月に本法案の基となりました検討会が設立をされて、一六年七月には早くも報告書がまとめられております。
前回の改正で、いわゆるA法人、外国法事務弁護士が外国法に関する事務のみを扱う法人の設立が認められて、これは一六年三月に施行されたばかりです。直ちに、B法人、日本の弁護士と外国法事務弁護士が社員となり、日本法を含めた法律事務を行う法人を認めるべきだという結論に至っております。資料をお配りしておりますが、そのきっかけは一四年六月の規制改革実施計画です。
法務省、伺いますが、これは誰の要望に基づくものでしたか。
○政府参考人(金子修君) 委員御指摘の規制改革実施計画には、増加する国際的な法的需要等を踏まえ、外国法事務弁護士制度に関し、諸外国の制度の状況を勘案しつつ、承認についての職務経験要件の基準等について、外国法事務弁護士の参画を得て、外国法事務弁護士制度に係る検討会を設置するとの記載がされておりますが、このような記載は、規制改革ホットラインにおきまして、民間団体から、民間団体からですね、現行の外弁法の規定に関し、この規則は日本人弁護士に適用される規則とは際立った対照を成している、日本人弁護士は弁護士として認定される前に弁護士資格取得後の経験を問われることはない、この慣行は差別的であるばかりでなく資格を取得した法域で既に弁護士として認められているのであるからほとんど意味を成さない、そうした規則を設けるのであれば外国法に基づく実務経験をどの程度積んできたのかといった点を重視すべきであり、場所にこだわる必要がないはずであるといった旨の意見が規制改革推進会議に提出されたことを踏まえてきたものと承知しております。
この民間団体が、これは民間団体の指摘なのですが、この民間団体がどのような団体なのかということにつきましては、匿名であったこともあり、法務省としては承認していないところでございます。
○委員長(竹谷とし子君) 答弁者は質疑の、質問の趣旨を踏まえて答弁願います。
○山添拓君 これ、誰かということは公にされていますよ。確認してください。
そして、委員長、これは速記止めてください。
○委員長(竹谷とし子君) 金子部長、答弁可能ですか。
○政府参考人(金子修君) 法務省として承知しておりますのは、規制改革ホットラインにおいて民間団体からの御意見だということで、承知しておりません。
○山添拓君 二〇一三年十月二十九日第三回貿易・投資等ワーキング・グループ議事概要に出ております。確認してください。
速記止めてください。
○委員長(竹谷とし子君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(竹谷とし子君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(金子修君) 先ほど申し上げたところの個別の団体名称は承知していないんですが、同種の要望が外国法事務弁護士制度に係る検討会において欧州ビジネス協会法律サービス委員会等から提出されているものと承知しております。
○山添拓君 委員長、速記を止めてください。これ確認してもらわないと。
○委員長(竹谷とし子君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(竹谷とし子君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(金子修君) この第三回貿易・投資等ワーキング・グループでの発言ということであれば、その議事概要によって確認することが可能でございます。
○山添拓君 それで、具体的には御説明いただけないのですか。
○政府参考人(金子修君) これは団体ということではございませんが、乘越秀夫外国法事務弁護士、崎村令子外国法事務弁護士が出席されて発言されているものと承知しております。
○山添拓君 今の乘越弁護士というのはベーカー・マッケンジー法律事務所ですが、外資系の大手の事務所ですね。
規制改革ホットラインへの提案というのは、職務経験要件を廃止せよというものでありました。法務省はこれに対して対応不可だと回答していたんですね。ところが、翌年の実施計画では、検討会を設置し、見直しが方向付けられております。この日の僅か一時間程度の議論でこれ結論出されているんですね。その背景には、米国通商代表部が更なる自由化を求めていることにも端的に現れておりますが、日本市場への参入を狙う米国あるいはその企業などの要望に沿うものだと言えます。
現行法では、三年以上の職務経験、そのうち一年まで日本での労務提供期間を算入できると。法案は、その労務提供期間を二年まで算入可能とするものです。
先ほども議論ありましたが、職務経験要件というのは、外国法事務弁護士の能力、資質、倫理を制度的に担保する、依頼者保護と我が国の法秩序を維持するためのものです。したがって、それは単なる労務提供ではなく、弁護士としての職務経験であることに意味があると思うんですね。一九八七年の法施行時に法資格を取得した国で五年とされていたのが、改正のたびに緩和をされてきました。
大臣、伺いますけれども、これ、職務経験要件というものをちょっと軽視し過ぎなんじゃないでしょうか。
○政府参考人(金子修君) 職務経験要件について軽視し過ぎだという御意見がございました。
もちろん、正式な資格に基づいて活動するのと労務提供とは質が異なります。しかし、現行法における職務経験要件トータルで三年というのを維持しているということで、職務経験要件を軽視しているというわけではございませんし、それから、我が国における労務提供期間につきましても、これは、若手が日本において言わばサポートをするあるいは外国法の実務についていろんな調査をするというような形で経験を積むということでも十分それは目的を達するんではないかというふうに考えております。
○山添拓君 私は、この職務経験要件というのは、単に職務をすればよいということではなく、やっぱり弁護士としての職務だと思うんですね。いろんな知識に基づいて法的なアドバイスをするとか調査をするとかそういうことだけにとどまらず、そこには依頼者との関係やあるいは交渉技術やそうしたことも含まれると思うんですよ。ですから、これを重視しなければならないし、軽視してはならない。
資料の二ページを御覧ください。例えばアメリカです。アメリカはそもそも二十二州では受入れ制度自体がありません。制度のある二十八州のうち、ニューヨーク州などでは直前の五年中三年、カリフォルニア州などでは直前六年中四年、フロリダ州などは直前七年中五年、ルイジアナ州などは直前五年中五年、職務経験要件があります。期間自体日本より長いですし、労務提供期間の算入を不可だとしている州も多いわけです。
報告書は、現行法の職務経験要件を維持することに合理性があるとする意見と緩和すべきだという意見を併記した上で、理由を付すことなく、何らかの形で緩和する可能性を検討するとしております。これは緩和ありきだと思います。
法務省、伺いますが、労務提供期間について日弁連は検討会でどのような懸念を指摘しておりましたか。
○政府参考人(金子修君) 第三回外国法事務弁護士制度に係る検討会におきまして、労務提供期間の在り方について、日本弁護士連合会から概要、次の二点のような意見が出されております。
一つ目は、現行外弁法は、日本における労務提供と原資格国における法律実務の提供とは質が異なることを前提に、職務経験要件の例外として日本における労務提供期間を算入できるとしていると理解すべきであり、これを同質に捉えて議論することは、このような現行法の基本的な制度設計に反する。職務経験要件に一定の合理性が認められるのは、これにより、資質のみならず、弁護士としての倫理にも欠けることがなく一定の期間を過ごしたことを証明するものであることからすると、これを労務提供で全てを置き換えてよいということにはならないという意見が示されたと承知しております。
○山添拓君 私は、この懸念に対して答えを出すことなく今回の法案は結論付けられていると指摘しなければならないと思います。
次に、いわゆるB法人の問題です。
これは従来から二つの懸念が指摘されており、先ほども議論がありました。外国法事務弁護士が共同経営者や従業員である日本の弁護士を介して、本来は認められない日本法に関する法律事務を扱うことにならないか、また、個々の法律事務処理の意思決定を誰が行っているのかが外部からは見えにくい、権限外の行為を行っているかどうかを確認しにくいという点であります。
検討会の報告書は、これらの懸念について、B法人という業態を取ることでその危険性が高まるとは考えられないとしておりますが、その理由が述べられていないんですね。
弁理士会からは、やはり懸念はあるんだと。さらに、今回、B法人の導入と職務経験要件の緩和によって経験の浅い外国法事務弁護士が日本に大量参入することが容易になると、そのために不当介入や意図せぬ技術情報流出の懸念が桁違いに増加すると予想される、こういう懸念が表明されました。
資料の四ページには、全国青年税理士連盟からの要望が出されておりますが、これ、外国法事務弁護士には認められない税理士業務をB法人としては行い得ることになる、これは税理士制度を根本から覆しかねない、こういう懸念も指摘されております。
大臣、これらの懸念を払拭できるという根拠はあるんでしょうか。
○国務大臣(森まさこ君) 共同法人の社員である外国法事務弁護士が取り扱うことのできる業務は外国法に関する法律事務等に限られており、日本法に関する法律事務等を取り扱うことは認めておりません。
もっとも、外国法事務弁護士が同じ共同法人に所属する弁護士が行う日本法に関する法律事務などの取扱いに不当に関与するとなれば、実質的には外国法事務弁護士が日本法に関する法律事務を取り扱うことと同視し得るため、御指摘のような不当関与の懸念についても防止する必要があると考えます。
そこで、本法案においては、外国法事務弁護士が自身の権限外の法律事務に関し、弁護士等に業務上の命令をすることや弁護士等の行う法律事務に不当に関与することを禁止する旨の明文規定を設けることとしております。そして、この規定に違反した場合には、日本弁護士連合会等による懲戒処分の対象となります。このような措置により、不当関与の懸念に手当てをされているものと考えております。
○山添拓君 今の禁止規定だけでは懸念が拭えないから一四年の改正では見送られたはずです。ところが検討会は、これ僅か六ページの報告書なんですね、こうした懸念は杞憂にすぎないと、こう言わんばかりです。この点でも、私はまともな検討がされたとは言い難いのではないかと指摘をさせていただきたい。
さらに、今、TPP協定の附属書十のAには、弁護士の懲戒基準の緩和、あるいは現行法にある在留基準の撤廃、さらには一定の期間内なら国内で登録されていなくとも外国法事務を認める規制緩和を促す、こういう内容まで含まれております。
外圧ですとか規制改革会議などで決まれば、それに従って緩和を進める、こういうやり方は改めるべきだということも指摘をいたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○山添拓君 日本共産党を代表し、外弁法改定案に反対の討論を行います。
本法案のうち、国際仲裁、国際調停の代理範囲を拡大する規定の整備については、国際私法事件の解決手段として国際仲裁が主流となりつつあることから、必要性が認められ、反対するものではありません。
反対理由の第一は、共同法人制度の導入により、日本の弁護士にのみ職務権限が認められる法律事務について、外国法事務弁護士が介入する懸念が払拭できない点です。
法律事務を特定して行われる外国法共同事業と比較して、個々の法律事務の処理に関する意思決定を誰が行っているのか外部からは見えにくく、権限外の法律事務の取扱いを外部から監視することは困難です。不当関与禁止規定があるとしても、外国法事務弁護士が日本法を扱う道を開くことになりかねません。
反対理由の第二は、外国法事務弁護士の職務経験要件の更なる緩和に合理性がない点です。
職務経験要件は、外国法事務弁護士の能力、資質、倫理の水準を制度的に担保することにより、依頼者の権利を擁護し、日本の法秩序を維持することを目的とするものです。司法制度の在り方、弁護士の職責と倫理に深く関わる問題であり、国際経済や規制緩和といった要請を優先して安易に扱われるべきではありません。原資格国における法曹資格に基づく職務と日本における資格に基づかない労務提供とは質的に異なります。日本における労務提供期間一年の算入はあくまで例外であり、これを延長し、三年の職務経験のうち二年までを法曹資格に基づかない労務提供でよしとするのは、制度趣旨に反するというべきです。
外弁法は、米国通商代表部を始め、外国弁護士の自由化を求める外圧を受け、累次にわたり改定されてきました。本法案は、規制改革会議での短時間の審議で方向付けられ、検討会で十分な議論を経ることもなく結論付けられています。事は日本の司法制度と権利擁護に関わる問題であり、なし崩しの規制緩和を認めるべきではないことを指摘し、反対討論とします。