2021年・第204通常国会
- 2021年4月27日
- 法務委員会
法務委員会で、不動産や法人の証明書発行など、登記の窓口業務の民間委託について質問。
- 要約
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- 法務委員会で、不動産や法人の証明書発行など、登記の窓口業務の民間委託について質問。2006年、定員合理化方針のもとで民間委託されましたが、昨年52の競争入札のうち23で不調。 経費削減ありきでは、行政サービスの質の維持向上はできないと指摘。 大臣も「不調の要因を分析し対応したい」と答弁。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日は、法務局の乙号事務に関して質問をいたします。不動産や法人の証明書発行、登記簿や地図の閲覧などを行う業務のことです。
登記の申請手続は甲号事務と呼ばれます。これに対して、証明書の関係は乙号事務とされています。利害関係者しか閲覧できない書類があったり、証明書の内容について説明を利用者から求められたり、あるいは、そもそも証明書を正しく発行するということ自体についても知識と経験を要する業務です。
二〇〇六年に、公共サービス改革法、いわゆる市場化テスト法の対象となり、民間に開放され、四年ごとに競争入札が行われています。二〇二〇年十月からの四年分について、昨年二月から入札が行われました。資料を御覧ください。
全国五十局あり、手続としては五十二の入札でした。ところが、そのうち二十三で不調となり、二度目、三度目でも決まらず、新潟と鳥取では随意契約で従来の会社が受託を継続すると、こういう例もありました。これほど不調が多いのは初めてのことです。
大臣に伺いますが、なぜこんな事態を招いたと認識していますか。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員の方から御説明をいただきましたが、この乙号事務につきましては、法務局におきまして登記簿等の公開に関する事務でございまして、平成十九年度に民間競争入札の対象となってから対象登記所を順次拡大をいたしまして、二十年度入札以降は、一部の小規模登記所を除く全国の登記所におきまして包括的民間委託に係る入札を一斉に実施しているところでございます。
令和元年度の一般競争入札、全国五十局、うち二十七局落札、二十三局不調と。不調二十三局のうち、再度の公示、入札につきましては、今御指摘いただいたとおり再度公告入札を行ったところでありますが、二局については落札されておりません。この二局につきましては従前の委託契約期間を令和三年三月末まで延長するとともに、改めて入札を行った結果、いずれも落札されたと、こういう経緯でございます。
多数の局におきまして複数回にわたりまして入札が不調となったということ、乙号事務の円滑な委託業務の開始に影響を与えかねないものでございまして、重く受け止めている状況でございます。
次回事業は令和六年十月からの実施ということでございますが、この入札におきましては、今回の入札結果の要因等をしっかりと検討しつつ適切に対応してまいる所存でございます。
○山添拓君 なぜかということには明確にお答えいただけなかったんですが、まあ予定価格が安過ぎて落札しなかったからと、こういうことですよね。
○国務大臣(上川陽子君) いろいろな要因があろうかと思います。五十局全体の中でどうだったのか、しっかりと検証していかなければいけない大変重要なことだと思っております。要因等の分析についてはしっかりしてまいりたいと思います。
○山添拓君 五十二のうち、前回の落札価格と比べると五十局で増額になりました。で、全体では二十八億円余り増額になったんですね。四年間の落札、入札ですので年間七億円の増額ということになるわけです。乙号事務というのは法務局の中で行われます。システムも設備も法務局が提供します。したがって、受託金額のほとんどは人件費に充てられるべきものです。
ところが、資料二枚目を御覧ください。民事法務労働組合のハローワークの調査です。求人票によれば、例えば東京では時給千七十円、大阪九百六十四円、福井八百三十円、秋田七百九十二円などとなっていました。多くの法務局で最低賃金水準なんですね。要するに、最賃分の引上げすらままならないような予定価格だったと。だからこそ不調を招いたわけです。
法務省は、こうした賃金実態については承知されているんでしょうか。
○政府参考人(小出邦夫君) お答えいたします。
乙号事務は、委員御指摘のとおり、国民の権利の基盤である登記簿等の公開制度を担う重要な業務であると認識しておりまして、公共サービスの質を確保することが必要でございます。このような観点から、入札実施要項におきましては、委託事務の実施に当たりまして、利用者の満足度、各種証明書等の適正な作製、引渡し及び各種証明書等の交付等に要した時間について要求水準を設定しております。
他方で、入札実施要項におきましては最低賃金法を含む労働社会保険諸法令の遵守を入札手続における審査項目としておりますが、受託事業者が賃金額などの雇用条件をどのように設定するかといった具体的な事業の遂行については、労働社会保険諸法令を遵守している限りは受託事業者の判断に委ねられるべきものであると考えているところでございます。
○山添拓君 いや、最低賃金を上回っていればいいんだというような答弁なんですが、実施要項の中には、落札者の決定について考慮すべき事項として積算の妥当性、その中身として、当該単価で適切な人材が確保されるか否か、賃金額が適正か否か、あるいは労働者が当該金額で了承しているか否かなどについても見るべきだというふうにあります。
ですから、最賃水準になっているかどうか、これ把握されているわけですね。
○委員長(山本香苗君) 小出民事局長。すぐお答えになられますか。
○政府参考人(小出邦夫君) 繰り返しになりますけれども、労働社会保険諸法令を遵守している限りは受託事業者の判断に委ねられるべきものと考えており、それに基づいて実務を運用しているということでございます。
○山添拓君 いや、お示ししましたような、こういう最賃水準の時給になっているということ、これ把握されていますかという質問です。
○委員長(山本香苗君) すぐお答えできますでしょうか。
速記を止めてください。
〔速記中止〕
○委員長(山本香苗君) 速記を起こしてください。
○政府参考人(小出邦夫君) 労働社会保険諸法令を遵守しているかどうかということについて、それに重大な違反があるかどうかということについては把握しているということでございますので、最低賃金法違反であるかどうかについては把握しているということでございまして、そこの水準が具体的にどの程度なのか、最低賃金をどの程度上回るのかということについては具体的には把握していないということでございます。
○山添拓君 把握していただきたいと思います。
元々は、民事法務協会が受託し、正規職員だったんですね。しかし、市場化テストの経過で千四百人が職を失いました。
労働組合が行った職場アンケートに五百人以上が実態を寄せています。非正規雇用が九七%、雇用期間は三か月と六か月で合計五二%、一年だという人は三五%でした。五十歳以上が七割を超え、勤続十年以上が四割近かったのですが、手取り賃金十五万円未満という方が七五%でした。知識や経験が豊かな方も含めて低賃金です。九割が将来不安を抱えているといいます。不当な雇い止めや団交拒否など、労使紛争も起きているといいます。
大臣に伺いますが、登記事務の重要性に照らして、このような働き方というのは果たして妥当と言えるのでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 先ほど民事局長の方から答弁させていただいたところでございますが、入札の実施要項につきましては、最低賃金法を含めましてのこの労働社会保険諸法令の遵守、これを入札手続における審査項目としている状況でございます。受託事業者がその後、賃金額などの雇用条件をどのように設定するのかといった具体的な事業の遂行に関することでございますが、これは労働社会保険諸法令を遵守している限り、受託事業者の判断、これに委ねられるべきものと考えております。
○山添拓君 最賃を上回っていればそれでよいというような話に聞こえるわけですが、これ、ほとんどが女性の職場なんですね。これでは続けていけないという悲鳴も上がっています。これ、改めるべきだと思うんです。
民間競争入札の根拠とされた市場化テスト法では、サービスの質の維持向上と経費の削減を求めています。この間、四年ごとに三回の入札が行われてきましたが、国が乙号事務を実施していたときの経費と比べると、二〇一二年度は四十二億円余りの削減、一六年度は四十億円余りの削減、二〇年度は三十八億円余りの削減ということで、削減はしているんですけど、その削減幅はだんだん減ってきているんですね。
乙号事務の場合に、サービスの質を維持向上しようと思えば、職員を定着させ、知識や経験を蓄積し、能力を発揮していただくこと以外にはないと思うんです。しかし、経費の削減を進めようと思えば、人件費を削ることになります。今でも最賃水準の働き方ですが、これ、更に削っていくということになるんでしょうか、法務省。
○政府参考人(小出邦夫君) 繰り返しで恐縮でございますが、労働社会保険諸法令を遵守している限り、どのような賃金を設定するかというのは受託事業者に委ねられているところでございます。
○山添拓君 その委ねているだけでは立ち行かなくなるのではないかという指摘をしているんですね。
総務省に伺います。
市場化テスト法では、競争入札を継続するかどうか、四年ごとに監理委員会が評価を行っています。二〇一九年にも市場化テストを継続することが適当であるとの判断を行っていますが、乙号事務は、一般入札を始めた二〇〇九年から既に十五年経過することになります。テストの期間というのはもう終わっていると思うんですね。監理委員会として、テストを終了させる、そういう判断することもできますね。
○政府参考人(渡部良一君) お答えいたします。
公共サービス改革法第三十三条の二によりまして、法務大臣は、不動産登記法等の特例として、登記所の特定業務を官民競争入札又は民間競争入札の対象とすることができるとされてございます。
官民競争入札等監理委員会は、官民競争入札等の実施に当たりましては中立かつ公正な立場からそのプロセス全般に関与するものでございますが、特に法律の特例を講じて官民競争入札等の対象とし、民間事業者が実施することを可能としました特定公共サービスにつきましては、官民競争入札等を実施するかは法務省において判断いただくことになると思います。
○山添拓君 いや、監理委員会が、継続することが適当という判断をしているんですね、評価としてしているわけです。だったら、継続することは適当でないと、こういう判断も監理委員会としてし得るんじゃありませんか。
○政府参考人(渡部良一君) お答えいたします。
お尋ねの前回の評価に際しましては、法務省から提出されました、平成二十七年度登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)の民間競争入札に係る委託業務の実施状況についてという報告書に基づき判断してございます。同報告では、公共サービス改革法に基づく民間競争入札を実施することによりまして引き続き公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図ることとしたいとの意向が示されておりまして、官民競争入札等監理委員会におきましても、市場化テストを継続することが適当であると評価をしております。
○山添拓君 では、大臣に伺います。
乙号事務は登記実務において欠かせない業務です。入札が不調になって先行きが定まらないということはあってはならないと思います。市場化テスト法の下で、これ以上経費の削減ありきと、そういう競争入札を続けていけば、賃金はせいぜい最賃水準です。非正規雇用で不安定で長く続けることのできない職場となって、知識や経験は継承されていかないだろうと思います。市場化テストの対象から外すという判断を法務省としては行うべきじゃありませんか。
○国務大臣(上川陽子君) 今回の、多数の局におきまして複数回にわたりまして入札が不調になったということ、このことにつきましては、乙号事務の円滑な委託業務の開始に影響を与えかねないと、こういうことでございまして、今回、その次回のこともございますので、今回の入札結果の要因等の分析をしっかりとした上で適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
この乙号事務につきましては、これまで公共サービス改革法に基づきまして、包括的な民間委託、これを実施してきたところでございますが、何といっても公共サービスの質の確保が重要でありますし、また、経費の削減を実現すること、これができているという状況でございますので、引き続き民間競争入札の対象としていくべきものと考えているところでございます。
今、この原因、どういう要因であったのかということについてはこれからしっかりと検討をしてまいりたいというふうに思いますが、いずれにしても、受託事業者によりまして労働社会保険諸法令の遵守、これにつきましても大変重要なことでありますので、入札の機会等を通じて適切に確認をしてまいりたいというふうに考えております。
○委員長(山本香苗君) 山添拓君、おまとめください。
○山添拓君 時間ですので終わりますけれども。
全国あまねく提供されるべき公共サービスだと思うんですね。登録手数料は全国同じなのに窓口業務の賃金は格差があってよいというのも変な話なんですよ。元々、これは政府が公務員の削減を進めていく中で行われたものです。政府による雇用破壊、これを続けるのはいいかげんやめるべきだということを指摘して、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。