山添 拓 参議院議員 日本共産党

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2022年5月17日

民事訴訟法改定案への反対討論

法務委員会で民事訴訟法改定案の3回目の対政府質疑。今日で終局となり、討論の後に採決されました。日本共産党は反対。
 
期間限定裁判だけでなく、裁判のオンライン化にも懸念があります。
特に口頭弁論期日を裁判所が「相当と認めるときは」ウェブ会議でできてしまうのは大きな問題。公害事件や労働事件などで、証人尋問以外にも代理人が弁論したり当事者が意見陳述を行ったりすることで、審理を充実したものにしてきました。それを、相手方はモニター上でというのでは、弁論にならないではないか。
大臣にそれでよいのかとただしましたが、全く的外れの答弁しかなく唖然としました。
 
反対討論の原稿をご紹介します。
 
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日本共産党を代表し、民事訴訟法等改正案に反対の討論を行います。
 
第一に、法定審理期間訴訟手続(期間限定裁判)は裁判を受ける権利を侵害しうるものです。
裁判官が判決を下すことができるのは、当事者が主張と立証を尽くし、審理が尽くされ、「訴訟が裁判をするのに熟したとき」です。期間限定裁判はこの大原則に反し、期間を優先して当事者の主張・立証の機会を制限しようとするものです。
法務省は、裁判の勝敗より時間と費用を優先したいという企業法務のニーズがあるといいます。しかしそれは、裁判を権利と正義の実現から経済合理性優先に歪めるものと言わなければなりません。しかも法案は、企業法務に限定しているわけでもありません。
当事者双方の主張や証拠が明らかで争点が少ない事案なら、あらかじめ期間を定めなくとも迅速に審理を行うことは可能です。「審理計画」の仕組みを活用することもできます。
また、期間限定裁判による判決は、「判決において判断すべき事項」を当事者双方と確認し、その事項のみを記載すれば足りるとされ、部分的で簡略な判決となります。粗雑な審理で出された簡易な判決が蓄積されることは、これを先例とする将来の国民の自由と権利を後退させるおそれがあります。
消費者事件、個別労働事件は対象外とされていますが、当事者間に証拠の偏在や資力の差があるケースは多々あり、懸念は払しょくされません。
 
第二に、当事者の意思に反してオンラインによる口頭弁論が強制されるおそれがあります。直接主義、口頭主義、公開主義の原則に照らして、裁判関係者が一堂に会する場面は重要な意味を持ちます。法案は、裁判所が「相当と認めるとき」は当事者が異議を述べてもウェブ会議等で可能としており、裁判を受ける権利を後退させます。
 
第三に、オンライン申立て等の一部義務化は拙速です。法案は、義務化の対象を弁護士等が代理人となる場合に限定していますが、自らの訴訟記録をオンライン上に置くことを当事者に事実上強制することは妥当ではありません。セキュリティを含めた信頼性・安定性・利便性の確保されたシステム作りから開始すべきであり、義務化の先行は拙速です。
 
裁判所の人的・物的体制の拡充、訴訟費用の低廉化など、司法アクセスを改善して裁判を受ける権利を実質的に保障することこそ求められていると指摘し、討論とします。

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