山添 拓 参議院議員 日本共産党

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2022年5月20日

刑法改正案について本会議で代表質問

侮辱罪の法定刑引き上げと、新たな拘禁刑創設(懲役刑と禁錮刑を廃止)する刑法改正案が参議院で審議入りしました。
今日は本会議で代表質問。
 
二之湯国家公安委員長は、「『慎重な運用』とは何か」との質問に「『慎重な運用』とは、慎重に運用すること」、「『現行犯逮捕は実際上は想定されない』というが想定外もあり得るということか」との質問に「『想定されない』とは、想定されないということ」など、ずっこけ答弁の連続で議場も失笑。これでは疑念が深まったと他党の議員からも指摘がありました。
 
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 日本共産党を代表し、刑法等改正案について質問します。
 
 法案に先立ち、ウクライナからの避難者の受入れについてうかがいます。
 入管庁は、日本への避難者に対して、住まいの提供や生活費の支援を行い、受入先の自治体へ移転した後は、医療費、日本語教育費や就労支援費を必要に応じて実費負担することとしています。かつてない対応であり重要です。
「必要に応じて」とはどういうことですか。とりわけ医療費は、仕事がなく収入がないなか高額の負担となりかねません。避難先、知人や身寄りの有無にかかわらず、安心して医療が受けられるよう支援すべきではありませんか。
 人道的支援を必要とする外国人は、ウクライナからの避難者だけではありません。ミャンマーやシリアをはじめ、紛争地域の暴力や迫害から逃れてきた避難者についても、人道的な対応が求められます。法務大臣の見解をうかがいます。
 
 法案について質問します。
 恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演したプロレスラーの木村花さんが、SNSで誹謗中傷を受け自ら命を絶ちました。心からお悔やみを申し上げます。
 衆議院で参考人として意見を述べた母・響子さんは、花さんが自死に至った最大の要因について、番組の悪意ある編集、炎上商法で視聴率を稼ぐあり方、出演者に一方的に誓約書を書かせ、誰にも相談できない状態においたことなどメディアの責任を厳しく指摘しました。その下で、SNSでの異常な誹謗中傷を招きました。
 
 法案は、こうした事態に侮辱罪の法定刑引き上げで対応しようというものです。しかし、その出発点から疑問が出されています。
 刑法231条は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と規定しています。「侮辱」とは、「他人に対する軽蔑の表示」であり、社会的評価を低下させる行為をいいます。 一方、インターネット上の誹謗中傷で問題となるのは、必ずしも社会的評価の低下ではありません。被害者に直接、誹謗中傷・罵詈雑言が浴びせられることで自尊感情が傷つけられ、精神的に追い詰められPTSD等を発症し、自殺にまで追い込まれる危険がある、私生活の平穏を脅かす行為であることが問われるべきではありませんか。
 SNSのダイレクトメッセージやLINEグループのような閉じられた空間での誹謗中傷も深刻です。これらは、「公然と」行われるわけではありません。侮辱罪で対応するのは、なじまないのではありませんか。大臣は衆議院で、公然性の要件を充たさない誹謗中傷について「行政的な諸施策を推進する」と述べていますが、それは何ですか。以上、法務大臣に答弁を求めます。
 
 侮辱罪は、表現内容を理由とする刑罰です。不当な制限により、本来自由に行える表現行為が萎縮することは許されません。
 衆議院で政府が示した統一見解は、「侮辱罪による現行犯逮捕について、表現の自由の重要性に配慮しつつ、慎重な運用がなされる」「表現行為という性質上、逮捕時に、正当行為でないことが明白といえる場合は、実際上は想定されない」としています。「慎重な運用」とは何ですか。「想定されない」とは、想定外もあり得るということですか。
 
 このような懸念を抱くのは、現に心配される事態が起きているからです。
 2019年の参院選、安倍元首相が札幌市内で行った街頭演説で「安倍辞めろ」「増税反対」などと声を上げた市民2人を北海道警が排除しました。こうした政治家に対するヤジが、「侮辱」に当たるとして現行犯逮捕されることはないと断言できますか。
 札幌地裁は今年3月、警察官が2人の体をつかんで移動させた行為などを違法として、国家賠償請求を認める判決を下しました。「表現の自由」のなかでもとりわけ尊重されなければならない「公共的・政治的事項に関する表現行為」であったとしています。
 ところが国家公安委員長は、「現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえ法律に基づき必要と判断した措置だ」「正しかった」との答弁を繰り返しています。現場の警察官の判断次第で、こうしたヤジ排除を今後も行うということですか。時の総理の街頭演説であり、官邸の指示を含め、道警の組織的な関与も疑われます。徹底的に検証すべきではありませんか。これが不当な弾圧でないと開き直るなら、侮辱罪の恣意的な運用の懸念も払拭されないではありませんか。以上、国家公安委員長の答弁を求めます。
 
 侮辱罪は1875年、新聞・風刺画などによる為政者への批判を防ぐねらいの下に布告された讒謗律に由来し、同じ日に布告された新聞紙条例とともに自由民権運動の弾圧に用いられました。
 今日、政治的な言論活動が侮辱罪によって制約されないと言い切れるでしょうか。仮に不起訴になったとしても、現行犯逮捕等のインパクトは自由な言論・表現への脅威となり萎縮効果を生みます。だからこそ、憲法上特に重要な権利である「表現の自由」とのかかわりは慎重な検討が必要です。
 ところが本法案を議論した法制審議会の部会は、わずか2回の会議で要綱を決定しています。憲法学者を委員に加えなかったのはなぜですか。表現の自由の制約について、どのような議論がなされたのですか。名誉毀損罪には、公共の利害に関する特則があり、政治家や候補者に関する場合など一定の要件の下で違法性が否定されます。法定刑引き上げに当たり、侮辱罪でも同様の規定を設けることとしなかったのはなぜですか。答弁を求めます。
 
 法案は、懲役と禁錮を廃止し、新たな自由刑として拘禁刑を創設するものです。
 懲役刑が、殺人、放火、強盗などに対する刑罰であるのに対し、禁錮刑は政治犯や過失犯などが対象とされてきました。特に政治犯は、通常の犯罪者と異なりその名誉を重んじた処遇を行うべきだという考えの下に、刑務作業を強制しない禁錮刑を科すべきとされてきたものです。戦後の刑法改正をめぐる議論でも、政治犯・国事犯の思想を強制労働で改造するようなことがあってはならないという配慮から懲役刑と禁錮刑の区別が残されてきました。刑罰によって、人の内心まで変えることは許されないと考えますが、どのような認識ですか。
 
 一方、本法案の拘禁刑は、「刑事施設に拘置」するだけでなく、「改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」とし、すべての受刑者に刑務作業と改善指導を義務づけています。
 自由の剥奪に加えて、刑務作業と改善更生を刑の内容とするのですか。作業や指導を拒んだ場合、懲罰の対象となることはありますか。刑務所長などが決める処遇計画に、受刑者が意見を述べることはできますか。
 
 国連被拘禁者処遇最低基準規則、通称マンデラ・ルールは、身体を拘束する刑罰は自由を奪うことによって犯罪者に苦痛を与えるものであり、それを超える強制を内容とすることはなるべく避けるべきだとしています。また、刑務所などでの処遇の目的は、「刑期が許す限り、釈放後、法を遵守する自立した生活を営む意志と能力を持たせることを目的としなければならない」とし、社会復帰の支援を国家の側に義務づけ、受刑者には社会復帰のための処遇に能動的に参加する権利を保障すべきだとしています。
 拘禁刑の下で、受刑者の自発性、自律性、尊厳を尊重せず、懲罰の威嚇のもとに改善更生を強いることとなれば、国際的に求められる受刑者への処遇水準からますますかけ離れてしまうのではありませんか。
 以上、法務大臣の答弁を求めて、質問を終わります。

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