2022年・第210臨時国会
- 2022年12月2日
- 予算委員会
今からでも見直しを 統一協会被害者救済新法「実効性あるものに」/第2次補正予算案 反対討論
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
昨日閣議決定された統一協会の被害救済のための法案について伺います。(資料提示)
統一協会の特徴は、正体を隠して誘い込み、不安をあおり、信仰を植え付ける点にあります。こうして信仰を抱かせた状態を利用し、数年から数十年にわたり献金をさせ続ける被害の実態は、先日この予算委員会で木村弁護士からも指摘がありました。
法案の三条は、自由な意思を抑圧すること、本人や家族の生活維持を困難にすること、正体を隠したり寄附の使い道を誤認させたりすることのないよう配慮義務を設けています。全国霊感商法対策弁護士連絡会は、配慮義務だけにとどまれば迅速な被害防止、救済は実現できないと指摘し、禁止行為とするよう求めてきました。
昨日、我が党の田村議員の質問に総理は、これらを禁止行為とするのは明確性の点で問題があると答弁をされました。今日も類似の答弁がありました。ただ、この例えば三号の正体隠し、寄附の使い道を誤認させる、これは明確だと思うんですけど、いかがですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 申し上げたのは、法律に落とし込む際には法律の条文として明確にしなければならない、そしてこの様々な、現実には様々なものがこの寄附行為として想定される、そういったことから一概に要件を規定することが難しい、こういった事情から禁止行為とこの包括的な配慮規定、二段階構成を取ることにした、このように説明させていただいております。
○山添拓君 明確性が求められるのは、行為として明確かどうかが行為者に伝わる必要があるからだと思います。なぜこれすら禁止ができないのかと。寄附を求める側が正体を明らかにしない、何のための献金かを誤認させる、これは詐欺みたいなものです。明確性というのは罪刑法定主義との関係が念頭にあると思います。十分これで明確だと思うんですが。
では、罪刑法定主義との関係で明確性が必要だということなら、刑事罰の対象とはせずに禁止規定や行政措置の対象とする、そういうことなら可能性はあるということですか。
○消費者担当大臣(河野太郎君) 要件の明確性がなければ行政罰その他を科すのは難しいというふうに思います。
現実にこうしたことがどれぐらいの明確性になるのかというのは、検討の余地はあろうかと思います。
○山添拓君 検討の余地はあるということでしたから、是非、禁止行為にしていただきたい、その対象にしていただきたいと思います。
一号の自由な意思の抑圧も、これ決して曖昧ではありません。札幌青春を返せ訴訟の第一審札幌地裁判決など、自由な意思を奪った勧誘行為が違法であることは裁判例が既に積み上がっています。禁止規定とし、行政措置の対象としていくべきです。
法案の四条六号は、マインドコントロールされた下で、洗脳された下での被害の防止と救済にとって肝になる条文です。不安を抱かせた上、寄附が必要不可欠と告げることで困惑させてはならないというものです。
しかし、既に被害者や弁護士からも指摘されているように、統一協会の被害では、寄附の時点では必ずしも困惑していないケースも多くあります。勧誘され入信し、教義を植え付けられているため、献金の時点では困惑していないわけです。
一方、総理は、この間、入信当初に不安をあおられる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に取消し権を行使することが可能な場合はあると答弁しています。
取消し権を行使できる場合があると。これは取消し権を行使できる場合とできない場合があるという意味ですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) これは、法律の適用ですから、個別具体的に事案に当てはめなければならないということですから、全てその対象になるということではないという意味でこういう表現を使いました。しかし、逆に、こうした法律をしっかり適用できるように、法律としてはこの用意をさせていただいた、こうしたことを申し上げた次第です。
○山添拓君 もちろん、最終的にはケース・バイ・ケースというところあると思うんです。ただし、全てが当事者の主張と裁判所の認定次第というわけにはいかないと思うんですね。
この法案は、行政による勧告や命令によって実効性を確保しようとしています。ですから、当事者や裁判所任せではなく、行政として取り消せるのか取り消せないのか、その基準はどうあるべきなのかと、これ明らかにする必要があるんじゃないでしょうか。
○国務大臣(河野太郎君) 法律の当てはめでございますので、そこはもう個別のケースによるんだと思います。そこは裁判で判例を積み上げていくしかないのではないかと思っております。
○山添拓君 いや、そうじゃないんですよ。裁判ではなく行政がこういう声がたくさんあると勧告したり命令をしたりするわけですよね。行政の側に判断権限が必要ですよ、判断基準が必要ですよ。総理、いかがですか。
○国務大臣(河野太郎君) どのように解釈するかというところは、少し行政の方で何らかの明確化をしていくことは考えたいと思います。
○山添拓君 全然明確になってないということですか。
さっきは明確でないから配慮義務は禁止規定にできないとおっしゃったんですよ。これは禁止規定にされたものですから、今の段階で明確でないとおかしいじゃないですか。
○国務大臣(河野太郎君) 更に明確にできるところはしていきたいというふうに思っておりますが、ここの部分はかなり明確に禁止規定にできると思っております。
○山添拓君 更に明確にできるということであれば、そういう条文にされるべきだと思うんですね。
困惑とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいうなどとされています。統一協会による被害は、違法な伝道、教化で不当に持たされた教義に基づく確信、責任感や義務感、使命感から、寄附の時点では進んで寄附をしているように見えるものが多くあります。困惑していないわけです。ところが、この条文は、あくまで困惑させてはならないというものです。
河野大臣は、おととい、立憲民主党の石橋議員の質問に、義務感、使命感に駆られている状況を全て困惑と言うのは無理だと思うと答弁されました。
統一協会の被害のかなりの部分が外れてしまいかねないと思います。困惑しないで行う献金が対象となる条文にするべきではありませんか。
○国務大臣(河野太郎君) 法律の当てはめでございますから、使命感その他を全て困惑と言うのは無理があるというふうに申し上げております。
本人が後で気付いて、困惑した状態で行った寄附だということならばこれは取消しができるわけでございますので、いろいろとやりようはあるんだろうと思います。
○山添拓君 いや、私が言っているのは、寄附の段階で困惑をしていない、そういう被害がこの統一協会の被害の実態として把握されてきていると思うんですね。それに先立つマインドコントロール、洗脳があり、その下で教義に対して確信を持つ、自ら責任感の下で進んで寄附を行う、こういう被害の救済をするために、困惑させてはならないという文言にこだわる必要はないんじゃないかということです。
○国務大臣(河野太郎君) まず、不当な勧誘行為があれば、それは不法行為で損害賠償の対象になるわけでございます。
そして、入信させるときに、最初の寄附のときに困惑した、そしてその状態が長く続いていて、その期間寄附を続けていたということが後になって分かったときに、本人が気付いたときにそこは取消しができます。ですから、多くの場合、適用されない、救えないということはないんだろうと考えております。
○山添拓君 総理にも伺いますが、困惑させてはならないと、この文言にこだわらずに被害の実態に即した文言にするべきじゃないですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今、河野大臣からも答弁ありましたように、被害の実態に即して考えたときに、外面的には自ら進んで献金を行っていたように見えたとしても、その不安を、その後から振り返ってみて困惑されていたと気付いた場合には取消しの対象になり得る、こうした考えに基づいて法律を作っています。
この現実に即した対応がこの条文によって可能になると考えています。
○山添拓君 困惑という文言は、消費者契約法からそのまま使っているものです。新法で新たな規制を行うのであれば、新たなルールを考えるべきです。
もう一つ伺います。
寄附の勧誘をするに際し、寄附が必要不可欠だと告げることで困惑させてはならないという条文です。単なる困惑ではなく、寄附が必要不可欠だと告げることによって困惑したことが要件となっています。
しかし、統一協会は、勧誘し入信させる当初の段階では必ずしも寄附が必要不可欠と告げているわけではありません。将来的には献金させようと狙っていても、狙いを隠し、数か月から数年という長い期間を掛けて伝道、教化し、そうして持たせた信仰を利用し、何十年も経過した後まで継続的に献金を出させています。
このように入信と献金にタイムラグがある場合、勧誘し入信させる当初の言動は、寄附の勧誘をする際にと言えるんですか。
○国務大臣(河野太郎君) 最初に身分を隠して寄附を勧誘するというようなことは、これはそれ自体配慮、違反しているということになってくるわけでございます。(発言する者あり)失礼。必要不可欠ということは、これはもう……(発言する者あり)前に何回も答弁をしておりますけれども、必要不可欠ということをそのまま告げる必要はないというふうに繰り返しこれは申し上げてきているところでございます。(発言する者あり)寄附に至る……
○委員長(末松信介君) 答弁、一旦止めてください。
はい、どうぞ。山添拓君。
○山添拓君 寄附の勧誘をするに際し困惑させてはならないという条文です。入信するときと献金との間にタイムラグがある場合に、勧誘し入信させる当初の言動というのは、寄附の勧誘をする際にと言えるのかということです。
○国務大臣(河野太郎君) 勧誘から寄附までの期間がタイムラグがあっても、そこはそういうふうに言って構わないというふうに思います。
○山添拓君 繰り返しになりますが、当初は寄附を求めておらず、不安をあおり困惑させ、数年後に初めて寄附を求めた場合、これも対象になるということなんですか。
○国務大臣(河野太郎君) 寄附の勧誘ということがあれば、それは対象になるんだろうと思います。
○山添拓君 当初は寄附の勧誘をしていないケースもあるんですよ。むしろそういう場合がほとんどですよ。勧誘し入信させ、そしてやがて献金させると、そういう場合は入るのかということです。
○国務大臣(河野太郎君) 全く勧誘がなければそれはならないんだろうと思いますが、そもそも最初に身分を隠して寄附の勧誘をしているんであるならば、そこは対象になるんだろうと思います。
また、寄附の勧誘があって、寄附をするまでの間にタイムラグがあっても、それはその際と言って構わないんだろうと思います。
○山添拓君 今おっしゃった身分を隠した勧誘というのは、さっきの三条の配慮義務の話なんですね。私が伺っているのは、四条の問題として、寄附の勧誘をするに際し、困惑させてはならないという条文ですから、その最初の段階で寄附を求めていないで入信を求めたと、そういう場合にも入るのかということを伺ったんです。
行政措置や刑事罰を科す上で明確性が求められるんだと、今日、最初答弁あったんですが、余り明確じゃないですね。何だかケース・バイ・ケースみたいな話なんですよ。全国弁連の声明は具体的な文言を挙げて修正を提案していますから、今でも修正するべきだと思います。
今日、答弁を聞いていますと、法案も政府の説明もやっぱり明確ではありません。なるべく被害救済できる実効性あるものにするべきですが、今のような御説明では、困惑させていない、最初の勧誘の時点では寄附を求めていない、必要不可欠とは告げていない、統一協会側が幾らでも反論できてしまうと思いますよ。
抜け穴を塞ぐ法案にするために、今からでも必要な見直しを行うべきだと思います。総理、いかがですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) ちょっと今の質疑は少し食い違いがあったと感じていますが、この法、法律……(発言する者あり)
○委員長(末松信介君) お静かに。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 法律につきましては、政府として、今の日本の法体系の中で最大限、この被害を受けた方々を救うべく、法律の中にどこまで書き込まれるか、書き込めるか、これを最大限努力した上で作成をいたしました。
是非、この法案の審議の中でこの法案について解釈等をしっかり詰めることによって、実効性のある法律にしていかなければならないと思います。
政府としても、引き続き努力を続けていきたいと考えます。
○山添拓君 不十分な法案を拙速に進めて実効性を欠くようなことになっては意味がありません。
時間ですので終わりますが、禁止規定の拡大、取消し権の対象と行使期間の見直しなど、審議を通じて必要な修正を行い、統一協会による加害行為の実態に即した法案にするよう求めて、質問を終わります。
○山添拓君 日本共産党を代表し、二〇二二年度二次補正予算案に反対の討論を行います。
本補正予算案は、緊急に求められる物価高騰から暮らしを守る対策に乏しく、逆に緊急性がない多額の予備費や基金、軍事費などを計上しています。国民生活を守る上でも、補正予算は特に緊要となった経費のみに認められるとする財政法に照らしても到底認められません。
本補正予算案の物価高騰対策は、電気・ガス料金の引下げが中心で、部分的、一時的な対策に終始し、苦境にあえぐ国民の暮らしと営業を全体的に支えるものとなっていません。それどころか、円安を生かして稼ぐ力を回復、強化するなどと異常円安を居直り、賃上げ対策だというリスキリング、学び直し支援は、賃金が上がらない現状を働く人に責任転嫁までしています。低賃金で不安定な非正規雇用を政策的に拡大したことが、日本を賃金が上がらず成長できない国にしてきました。
審議を通じて、総理を始め政府に、この構造的な問題への認識も反省もないことが明らかになりました。最低賃金を時給千五百円を目指し引き上げ、正規も非正規も抜本的に賃上げを実現する、そのために大企業の内部留保に課税し中小企業支援に充てるべきです。各地方最賃審議会の要求に正面から応えるべきです。
物価高騰対策には消費税減税が最も効果的です。個人事業主、フリーランスを苦しめるインボイスは中止すべきです。社会保障や教育の負担を軽減し、国民生活を守り、消費の減退と景気の後退を防ぐべきです。
物価高騰の中、年金を引き下げ、医療や介護の負担増を次々押し付けるのは血も涙もない冷たい政治です。新型コロナの第八波で医療機関への支援が求められる中、九月末で打ち切られた受入れ病院への緊急支援の補助金は直ちに再開すべきです。
本補正予算案には四兆七千四百億円もの予備費が計上されています。コロナ危機の下で巨額の予備費が国会審議を回避する常套手段とされてきました。財政民主主義の原則をこれ以上踏みにじることは許されません。
四千四百六十四億円もの軍事費も看過できません。歳出化経費、すなわち米国製兵器爆買いのローン払いを補正予算で前倒しするのはいいかげんにやめるべきです。辺野古新基地建設や馬毛島基地建設など、米軍再編に伴う経費まで盛り込まれています。県知事選挙で再度示された辺野古ノーの民意を踏みにじり、南西諸島に新たな危険と負担をもたらすことは許されません。ましてや、政府が防衛力の抜本的な強化として進める反撃能力、敵基地攻撃能力の保有検討と、そのための大増税は絶対に認められません。今求められているのは大軍拡ではなく、外交努力を尽くして戦争の心配のないアジアをつくることです。
以上、反対討論とします。(拍手)