山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2022年・第210臨時国会

救済へ明確な条文にすべき 寄付不当勧誘防止法案について岸田総理に質す

○山添拓君 日本共産党を代表し、消費者契約法等改正案及び法人寄附不当勧誘防止法案について岸田総理に質問します。
この質問は昨夜、衆議院での採決はもとより、本日午前の総理質疑より前に準備したものです。衆議院での審議を踏まえた熟議と再考を任務とする参議院の審議を形骸化させる運びに強く抗議します。
総理は、拙速な審議で不十分な法案でも通しさえすればよいとでもお考えですか。会期末ぎりぎりの審議となっているのは、総じてこの間の岸田政権の責任です。我が党は会期延長の申入れを行いました。参議院で十分審議を尽くし、実効ある規制とすることをお約束ください。
統一協会の加害行為の中核は、正体を隠して勧誘し、知らないうちに教義を植え付け入信させる、信教の自由の侵害にあります。総理にその認識はありますか。
新法案は、統一協会によるこうした被害実態を十分踏まえたものとは言えず、被害者の主張、立証や裁判所の判断次第で救済が大きく左右されるという課題があります。我が党が衆議院で修正案を提出したのは、法案に看過できない不十分さがあるからにほかなりません。
禁止規定の四条六号は、寄附の勧誘をするに際し、不安をあおり、又は不安に乗じて、寄附が必要不可欠と告げることによって困惑させてはならないとし、これらを全て満たす場合に取消し権を行使できるという条文です。
しかし、統一協会による被害は、勧誘され入信し、教義を植え付けられた下で寄附するため、寄附の時点では困惑していないケースも多くあります。この場合、取消し権の行使は困難ではありませんか。
総理は衆議院で、マインドコントロールによる寄附は、多くの場合、不安に乗じた勧誘であり、取消し権の対象となると答弁しています。不安に乗じた勧誘であれば、自動的に困惑したと言えるのですか。
教義に基づく責任感や義務感から寄附した場合、寄附を勧誘する側には相手が困惑しているとは見えません。禁止規定として明確性を欠くのではありませんか。
統一協会は、入信させる当初は必ずしも寄附が必要不可欠と告げるわけではありません。数か月から数年を掛け伝道、教化し、持たせた信仰を利用して献金させます。入信と献金要求にタイムラグがある場合、寄附の勧誘をするに際し困惑させたと言えるのですか。
衆議院で総理は、入信から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘と判断でき、事後的に寄附当時困惑していたと考えた場合には取消し権の対象になると答弁しています。しかし、寄附の勧誘に際しという文言では、タイムラグが長期にわたる場合まで含むと読むのは無理があります。また、被害者が事後的に当時困惑していたと考えたかどうかで、禁止され、禁止されたりされなかったりするのでは、明確性も法的安定性も欠くのではありませんか。答弁を求めます。
重大な不利益を回避するために寄附が必要不可欠と告げることが要件とされます。単に必要では足りず、不可欠まで求めるのはなぜですか。
衆議院で川井康雄参考人が紹介したように、出家するか、あるいは出家したつもりで二百十万円浄財しなければならないなどと選択肢を示した場合、必要不可欠と言えますか。
総理が幾ら取消し権の対象となると主張しても、最後は司法判断です。裁判で統一協会が、献金は自発的になされ困惑していなかった、不可欠とは言わなかったなどと反論して被害救済が阻まれることのない明確な条文にすべきではないでしょうか。
総理は、配慮義務規定を禁止規定にすべきという指摘に、どのような行為をしてはならないか的確に認識できるよう、可能な限り客観的に明確なものとすべきと述べています。しかし、特に法案三条三号の正体隠しや使途を誤認させる寄附勧誘は、刑法の詐欺罪に当たり得るもので、してはならない行為は明確です。なぜ禁止規定にできないのですか。
衆議院における修正案で、配慮義務違反に対する勧告が盛り込まれています。配慮義務に違反してされた献金を勧告によって被害者に返金させることはできますか。
信者や家族が困窮するほどの過大な献金被害も深刻です。
法案五条は、借入れ等による資金調達の要求を禁止しています。要求されず自発的に献金した場合を禁止しないのはなぜですか。自宅などを売却して現金で献金した場合だけでなく、不動産そのものを寄附する場合を禁止していないのはなぜですか。また、これら過大な要求による寄附について取消し権の対象としなかったのはなぜですか。
統一協会などの宗教二世らが宗教二世問題ネットワークを設立し、法案は被害実態と乖離しているとして修正を求めています。進学、就職、結婚など人生の様々な場面で望まない選択を強いられてきた宗教二世の方たちの声を総理はどう受け止めていますか。
法案が子や配偶者の被害救済のためとして設けた債権者代位権の特例では、取り戻せる範囲が養育費などに限られます。親の無資力が要件となっていることからも、救済はかなり限定されるのではありませんか。
二世被害者の場合、親権者である親が信者であるために裁判の同意が得られず、救済は困難と考えますが、どう認識していますか。
統一協会は、信者に献金等をさせる際、領収書など金品を受け取った事実を示す書面を交付することがほとんどありません。そのため、長年にわたる被害の末に脱会し、賠償請求しようとしても、記録がなく、被害の全体像を把握すること自体困難なケースが少なくありません。
一回につき十万円以上など、一定額を超える寄附を受け取った場合には帳簿の作成を義務付け、寄附をした本人等から請求されたときは帳簿の開示を義務付ける仕組みを設けることも検討すべきと考えますが、いかがですか。
総理は、宗教法人法に基づく解散命令請求のために、統一協会の法令違反の組織性、悪質性、継続性を確認すると述べてきました。本日までにいかなる法令違反の事実を把握できましたか。
政府は、一九九四年以降、民事裁判で統一協会の責任が認められた事件を少なくとも二十二件把握しているといいます。新たに判明した養子縁組のあっせんを許可も得ず継続的に行っていた事実は、これだけで重大です。既に確認できた事実に基づき、直ちに解散命令請求に踏み出すべきです。答弁を求めます。
政府は、全国霊感商法対策弁護士連絡会などから、統一協会による深刻な被害に関する情報を継続的に得てきました。ところが、解散命令請求はおろか、調査も行わず、逆に正体隠しに加担する名称変更まで認めてきました。
総理は、国会で、今日まで放置したことは政府として深刻に受け止めなければならないと述べました。深刻な被害を政治が放置してきたのはなぜだとお考えですか。自民党と統一協会が癒着を深め、被害を拡大させてきたという認識はありますか。
総理は、新たな接点が判明した場合には、その都度追加的に報告、説明を行うことを徹底すると述べています。九月に自民党が各議員の自主点検結果を公表した後、追加的に報告、説明した議員は何名で、どのような関係が判明したのですか。
共同通信の調査では、統一協会や関連団体と接点があった都道府県議は少なくとも三百三十四人、その八割以上が自民党といいます。同時に、宮城県の村井嘉浩知事を始め百五十七人が調査に回答しておらず、闇はもっと深いことが疑われます。茨城県、高知県、京都府、千葉県など各地の議会では、統一協会との癒着解明、被害者救済を求める意見書が自民党などの反対で相次いで否決されています。自民党として責任を持って調査し、地方議員を含め、統一協会との癒着を徹底解明するべきです。
以上、答弁を求め、質問といたします。(拍手)

〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 山添拓議員の御質問にお答えいたします。
消費者契約法等の改正案及び新法の国会審議についてお尋ねがありました。
旧統一教会問題における被害者の救済及び再発防止は、今国会における最重要課題の一つであり、消費者庁に対し、総力を挙げて法制度の検討を進め、可能な限り早急に国会に提出するよう指示をしてまいりました。
国会日程については国会がお決めになることであるためコメントは差し控えますが、政府としては、参議院においても法案の趣旨や解釈について丁寧な説明を行い、法律の実効性が高まるよう、最大限努力をしてまいります。
旧統一教会の加害行為に関する認識についてお尋ねがありました。
旧統一教会の活動について、信教の自由の侵害に当たるか否かは一概にお答えはできませんが、個別の事案において、特定の宗教であること等を意図的に隠し、社会的に相当と認められる範囲を逸脱した方法によって勧誘等を行い、献金等をさせたことが不法行為として裁判上認められた事案があります。
こうした問題を重く受け止め、政府案では、寄附の勧誘を行う法人等を特定できる事項を明らかにすること等を配慮義務として定めることとしたところであり、これに反する行為があった場合に、不法行為に基づく損害賠償請求による救済が容易になると考えております。
寄附の勧誘に関する禁止行為についてお尋ねがありました。
入信当初に不安をあおる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に、本人が主張して取消し権を行使することが可能な場合はあると考えております。
また、不安に乗じた勧誘であれば自動的に困惑したと言えるわけではないですが、寄附に至るまでの経緯、そして状況等の諸事情から困惑していたと認められる場合には寄附者の取消し権が生ずると考えられます。
また、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定をしております。
入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合等の取消し権及び禁止行為の取扱いについてお尋ねがありました。
御指摘の答弁は、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断でき、また、事後的に寄附当時困惑していたと考えた場合には、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合であったとしても、取消し権の対象となり得るという法案の趣旨を端的に述べたものであります。
また、不適切な勧誘行為を受け困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため、取消し権、取消しを認めるという考え方に基づき条文の整理を行ったものであり、可能な限り明確な条文としていますが、具体的にどのような行為が該当し得るかについては、国会審議や法成立後、法律の解釈を示す中で可能な限り示してまいります。
そして、必要不可欠という要件についてお尋ねがありました。
必要不可欠要件は、必ずしも必要不可欠という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性と切迫性が示されている場合には適用可能と考えており、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くはそのような必要性と切迫性を有しているものと考えられることから、政府案で十分実効的に対応できるものと考えております。
御指摘のように、単に必要とすると、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで対象が広がってしまいかねず、規制の範囲が広がり過ぎるおそれがあります。
また、不可欠の部分については、唯一の選択肢しか示さない場合のみということでなく、御指摘の事案のように、選択肢を示して勧誘する場合にも、必要不可欠である旨告げたという要件に該当する可能性はあると考えています。
こうした点について引き続き丁寧に解釈を説明し、被害の救済の実効性、これを高めてまいります。
配慮義務を禁止行為とすることについてお尋ねがありました。
禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。
一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止対象行為を規定する禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする、こうした効果が高いと考えております。
御指摘の第三号の規定も、誤認させるおそれといった結果としての状態に関する幅広い概念で捉えるからこそ、被害の救済、防止に資するものであると考えております。禁止行為とするために誤認させるおそれのある行為を規定すると、その範囲が限定的になってしまう可能性があり、適切ではないと考えております。したがって、一定の行為を明確に定めて禁止行為とするのではなく、配慮義務の規定とすることが適切であると考えております。
なお、衆議院における法案の修正において、配慮義務違反に対する勧告が盛り込まれました。この規定の具体的な運用については成立後検討することとなりますが、一般論として、民事不介入の原則があることから、返金を行政指導することは困難です。他方、例えば、法人等に対して返金の相談に真摯に対応するようにといった行政指導を行うことは考えられます。
資金調達要求の禁止規定についてお尋ねがありました。
新法では、居住用不動産や個人等の生活の維持に欠くことができない事業用資産について、法人等の側からあえて寄附者に処分による換金という手間を掛けさせて寄附するよう要求する行為を禁止しており、他方で、居住用不動産や事業用資産そのものを寄附するよう要求する行為は禁止してはおりません。これは、こうした資産をあえて換金までして寄附を求める行為はより悪質性が高いと考えられることに着目したものであります。
また、寄附勧誘の際にこうした資産の売却の求めがなく、自発的に売却し、寄附を行った場合には、寄附勧誘者が第五条に抵触することはない一方で、そのようないわゆるマインドコントロール状態にある人に対する寄附勧誘については、第四条の禁止行為に該当する可能性も高く、また、家族も居住している不動産を寄附する場合は、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務に反する、このように考えられます。
そして、旧統一教会問題の宗教二世の方たちの声の受け止めについてお尋ねがありました。
私も、先日、旧統一教会の被害者の方々と内々にお会いをし、凄惨な御経験を直接伺いました。こうした被害を生じさせず、また救済できるよう、政府として、相談体制の充実や、現在御審議いただいている法律の早期成立と法解釈の明確化による実効性の向上、適正な執行などに全力で取り組んでまいります。
そして、債権者代位権の実効性についてお尋ねがありました。
政府提出の新法案においては、自ら権利を保全するために必要な範囲で他者の権利を行使することを認める制度である債権者代位権を活用しやすくしており、これによって、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含めて、家族らの被害救済につながる、つなげることができると考えております。
一方、債権者代位権は使いにくいとの指摘があることから、債権者代位権の適切な行使に向けて、法テラスと関係機関が連携した相談体制の充実を進めてまいります。
また、配慮義務の規定では、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持に関する配慮義務を規定しております。これによって、家族自身が当事者、自身を当事者とした民法上の不法行為の認定や、それに基づく損害賠償請求が容易となり、家族の被害救済の実効性を高めることができると考えております。
なお、この扶養債権の範囲を超えて、家族を含めた第三者が幅広く本人の行った契約や意思表示の取消しができるとすることは、個人の財産権の侵害の観点から適当ではないと考えております。
宗教二世被害者の救済についてお尋ねがありました。
債権者代位権の行使の前提として、扶養義務等に関する定期金債権を確定するための裁判手続を取る場合や債権者代位権を訴訟で行使する場合には、親権者と子との利益が相反する行為に該当すると認められれば、特別代理人が選任されることになると考えられます。
その際、扶養義務を果たしておらず、ネグレクトに当たるような場合には、児童養護施設や児童相談所の職員において、事実行為として特別代理人の選任の手続を紹介したり、法テラス利用をサポートすることが考えられ、こうした点についてQアンドAの作成などの対応を行ってまいります。
このように、法テラスを中心に児童相談所等の関係機関との連携を強化し、未成年に対する支援の充実、これを図ってまいります。
寄附の記録についてお尋ねがありました。
個人が法人等に寄附した場合、悪質な寄附を勧誘する法人等による記録によらず、個人が銀行から取引履歴を入手するなどして、法人等に対して寄附をした日時や金額について明らかにすることも可能であると考えられます。こうした方法について、QアンドAを通じて適切に周知してまいりたいと考えております。
旧統一教会について、法令違反の事実の把握や解散命令請求、これまでの政府の対応についてお尋ねがありました。
お尋ねの、今日までに把握できた法令違反の事実については、報告徴収・質問権の行使及びその後の対応に支障を来すおそれがあるため、お答えは差し控えます。
旧統一教会については、御指摘の解散命令の請求の適否を判断するためにも、まずは報告徴収・質問権を行使するとともに、弁護士の団体等からの情報も得て、旧統一教会の実務等に関して具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにする必要があり、その上で、法律にのっとり、必要な対応を行ってまいります。
旧統一教会に対するこれまでの対応については、旧統一教会の被害者の方々が存在するということ、様々な形で情報を得ていた中でそれを放置していたことについて、政府として深刻に受け止めなければならないと考えております。
だからこそ、政府としては、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の整備という三つの対策を並行して進めてまいります。
旧統一教会との関係の調査等についてお尋ねがありました。
閣僚を含む多くの議員が社会的に問題がある旧統一教会、その関連団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の皆様の政治の信頼を傷つけたことを率直におわびを申し上げます。
そして、自民党においては、各議員それぞれが旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告し、新たな接点が判明した場合にはその都度追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底すること、これを方針としております。
その上で、九月末以降に新たな接点が判明した各議員の報告、説明の状況については、党として取りまとめの発表は行っておりませんが、党の方針に従い、各議員それぞれが説明をしているとおりであると承知をしております。
いずれにせよ、大切なことは、未来に向かって関係を絶つことであります。自民党においては、旧統一教会及び関連団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、既にガバナンスコードを改訂し、対応、方針について、党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところであり、これを徹底してまいります。(拍手)

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