山添 拓 参議院議員 日本共産党

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2023年3月27日

首相のウクライナ訪問について本会議質問

岸田首相のウクライナ訪問について、本会議質問で登壇しました。

ウクライナへの武器供与問題、ウクライナ侵略の背景となった「外交の失敗」、これを東アジアで繰り返さないための外交努力の必要性ーーどれもまともな答弁がありません。このまま大軍拡路線を突き進むのは、あまりに危険です。

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 日本共産党を代表し、岸田総理のウクライナ等訪問報告について総理に質問します。

 冒頭、優生保護法による強制不妊を違憲とし、賠償を命じた大阪高裁判決について述べます。原告勝訴の判決は7例目、高裁で4例目です。判決は、国がいまだに裁判で違憲性を認めないことを批判し、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を否定しました。

 総理にうかがいます。この裁判でも原告5人のうち2人がすでに亡くなりました。これ以上、尊厳を傷つけ続けることは許されません。上告せず、全面解決に踏み出すべきではありませんか。

 判決は、違憲の法律を放置してきた国会の立法不作為を断罪しています。参議院として、上告すべきでないという意思を示すべきではありませんか。議員各位に呼びかけるものです。

 2月23日、国連総会の緊急特別会合は、国連憲章の原則に沿ったウクライナの包括的、公正かつ永続的な和平を求める決議案を141カ国の賛成で採択しました。ロシアは直ちに侵略をやめ撤退すべきです。ベラルーシへの戦術核配備の撤回を強く求めます。

 総理とゼレンスキー大統領の「共同声明」は、ロシアのウクライナ侵略が「国連憲章にうたう基本原則、特に主権及び領土一体性の原則に対する重大な違反」であるとしました。

国連憲章を守れの一点で国際社会が団結を強めることがいっそう急務です。この立場に立つ国を広げるために、どのような外交を進めますか。

 首脳会談で総理は、NATOの信託基金を通じた殺傷性のない装備品支援に3000万ドルの拠出を表明しました。殺傷性のない兵器とは何ですか。NATOの信託基金を通じて支援するのはなぜですか。紛争当事国を直接支援する目的で、過去に類似の基金に拠出した例はありますか。

 政府は1991年、湾岸戦争に伴い「湾岸平和基金」に合計1兆2400億円を拠出しました。当時の海部総理は武器・弾薬には使わせないと国会で答弁し、その使途は交換公文で定められていると説明しましたが、9割以上は米国に渡りました。お金に色はありません。今度の3000万ドルも使途の限定など事実上できないのではありませんか。

 日本は長年、武器輸出を原則として禁止してきました。ところが2014年、安倍政権が閣議決定で「防衛装備移転三原則」を定め、輸出解禁へ180度転換しました。

 従来、武器輸出を原則禁止してきたのはなぜですか。外務省は、武器輸出を行わず、輸出を前提とした軍需産業がないことが軍縮外交を進める上で国際社会をリードできるとしていたのではないですか。

 昨年運用指針を改定し、紛争当事国への軍事支援をも認めました。さらに自民党内では、殺傷力のある武器の輸出まで可能にするために運用指針のさらなる変更に向けた議論まで行われているといいます。ウクライナ侵略に乗じてこの歯止めまで取り払えば、どうして「平和国家であり続ける」などと言えるのですか。

 ゼレンスキー大統領は昨年3月、国会で行ったオンライン演説で、「人々は住み慣れた故郷に戻らなければならない」と述べ、避難者が帰還した際の復興支援を求めました。こうした非軍事の支援に徹すべきです。答弁を求めます。

 岸田政権が昨年12月に閣議決定した「安保3文書」は、ウクライナの防衛力が十分ではなくロシアの侵略を抑止できなかった、軍事力の不足がウクライナ侵略の背景だとしています。これでは19世紀と同じ「力対力」の世界であり国連憲章も憲法も見えません。総理は、これがウクライナ侵略の教訓だとでもいうのですか。

 ヨーロッパの教訓はむしろ、「力対力」で平和はつくれないということです。

 ソ連崩壊後に発展した欧州安全保障協力機構(OSCE)とはどのような機関ですか。また、1999年の欧州安全保障憲章が、OSCEを「紛争の平和的解決のための主要な機関」と位置づけたことをどう認識していますか。

 1994年、OSCEの会議でアメリカ、イギリス、ロシアが署名したブダペスト覚書は、ウクライナの独立、主権、既存の国境を尊重し、威嚇や武力行使を控え安全を保障するとしていました。ところが、OSCEの紛争予防、危機管理の機能が十分生かされず、NATO諸国もロシアも軍事力で相手の攻撃を「抑止」するという戦略を強め、「力対力」に陥った、これがこの間の経過ではありませんか。

 もとよりウクライナ侵略の責任は、国連憲章を蹂躙したロシア・プーチン政権にあることは言うまでもありません。同時に、戦争という結果になった背景には外交の失敗があることを看過すべきではありません。この失敗を東アジアで繰り返さないために、地域のすべての国々が参加する平和の枠組みをつくり機能させる、これこそ、ヨーロッパから引き出す最大の教訓ではありませんか。

 中国が東シナ海や南シナ海で力による現状変更を押し進める動きは断じて容認できません。しかし軍事的な対応を強化すれば緊張を激化させるのは明らかです。

にもかかわらず「安保3文書」は、軍事力に裏付けられた外交を掲げており典型的な力の論理です。戦力の放棄という徹底した平和主義を通じて、国際社会における名誉ある地位を占めることとした憲法を、総理はどう認識しているのですか。

 総理は20日にインドで行った演説で、安倍政権以来、政府が主張する「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」に言及し、その理念は「『多様性』、『包摂性』、『開放性』の尊重です。誰も排除しない、陣営作りをしない、価値観を押しつけないということ」などと述べました。

 しかしFOIPは中国を含まず、むしろ中国を多国間でけん制するねらいを背景としています。日米豪印「クアッド」の強化をはじめ、インド太平洋での自衛隊と米軍などとの共同演習が劇的に増加したのはその現れです。実態は、中国包囲のとりくみにほかなりません。こうして軍事的包囲を強めれば、相手も軍事力をエスカレートさせることが十分想定されるのではありませんか。

 昨年11月、ASEAN首脳会議の閉幕にあたり、次期議長国インドネシアのジョコ大統領は次のように述べました。ASEAN10カ国は「平和な地域、世界の安定の頼みの綱となり一貫して国際法を擁護しなければならず、またいかなる大国の代理人にもなってはならない」「現在の地政学的な動態を、われわれのこの地域で新たな冷戦へと変化させるべきではない」――米中対立をあおり、アジアにおける緊張関係を高めるのではなく、緊張緩和こそが求められます。日本はそのために、ASEANとどのような協力を進めますか。

 今年は日本とASEANの交流・協力50周年です。16日に開かれた記念シンポジウムでマルティ・ナタレガワ元インドネシア外相は東南アジア友好協力条約(TAC)に触れ、「TACは紛争解決に軍事を使わない、外交と対話の重要性を示している。これは東南アジアのダイナミクスを紛争と緊張から、相互理解と信頼へと変えるものだ」と述べました。総理はどう受け止めますか。

 2019年のASEAN首脳会議で採択された「ASEANインド太平洋構想(AOIP)」は、東南アジア友好協力条約を指針に、東アジア規模での友好協力条約を展望する構想です。現にASEAN10カ国に加えて日本や米国、中国など8カ国が参加する東アジアサミット(EAS)が存在します。これを活用し発展させる外交ビジョンを持ち進むことにこそ、東アジアの平和への展望があると考えます。答弁を求めます。

 軍拡競争の先に、平和への展望はありません。

 大軍拡と軍事同盟強化の「安保3文書」はきっぱり撤回し、戦争準備ではなく戦争を回避するための外交努力を尽くすべきことを重ねて指摘し、質問とします。

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