山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2023年・第211通常国会

「合区」解消理由に改憲 「言語道断」

要約
  • 参院選挙の選挙区「合区」をテーマに自由討議をおこなった。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
日本国憲法制定に当たって、当時の政府は、参議院は地域別又は職能別に選挙された議員と任命制の議員で組織するという条文案を作っていました。しかし、この案は、総司令部とのやり取りを経て取り下げられ、帝国議会の審議を経て、憲法四十三条一項、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」という規定になりました。
法制局に伺います。
全国民の代表の意義について、当時、政府はどのように説明していたでしょうか。

○参議院法制局長(川崎政司君) 憲法四十三条に関して、憲法制定時の帝国議会において、金森国務大臣から、正しく国民の有様をある標準に照らして小さく写し出すものが国会でなければなりませぬ、そのときに技術的な種々なる考慮からいたしまして、本当の姿が縮写されないことは、この四十三条の全国民を代表するという一つの要件の精神に顧みまして甚だ疑わしいなどといった説明がなされているところでございます。

○山添拓君 その審議の際に、参議院の地方区について、例えば各都道府県で二名ずつの議席を案分し、都道府県代表とするような意見は見られたでしょうか。

○法制局長(川崎政司君) 当時の議論につきまして、今手元に資料がございませんのでつまびらかでないところはございますけれども、都道府県単位の選挙区、地域代表的な性格、事実上持つ選挙制度について議論がなされたということは承知しております。

○山添拓君 少なくとも、都道府県で二名ずつなどとするような制度にはなりませんでした。むしろ、地方区の定数は、各二名を基礎に、人口比例であんばいされました。憲法制定と参議院議員の選挙制度創設の当初から、地方区、現在の選挙区ですが、選出議員に地域代表や都道府県代表としての要素は予定されていなかったと言うべきです。一九八三年の最高裁判決が投票価値の平等を憲法上の原則と確認し、その要請を強めている下で、これを無視することは許されません。
四月二十六日の参考人質疑では、合区された二県の間で利害が異なることがあり、これは当該選挙区から選ばれた議員には葛藤のある難しい局面ではないかという意見が述べられました。しかし、米軍基地や自衛隊基地で進む大軍拡、整備新幹線や高規格道路といった大型開発、あるいは原発など、国政、地方政治と住民世論が対立するケースも多々存在します。そもそも民意は多様であり、一つの県でも一つの意見ということはあり得ません。
一方、一つの選挙区から一人の議員しか選ぶことができない小選挙区制では、死票が多く、民意が反映されにくくなることが避けられません。合区されれば一層深刻であり、地域の声が国政により届かなくなるのは言うまでもありません。
日本共産党は、投票価値の平等を実現するとともに、多様な民意が正確に議席に反映する制度とするために、比例代表を中心とする全国十ブロックの非拘束名簿方式の選挙制度とすることを提案してきましたが、改めて強調したいと思います。
ところで、一票の較差をめぐる裁判例に参議院憲法審査会での検討に言及するものがあることをもって、当審査会で議論を重ねることが最高裁の要請に応えることになるかのような意見がこの幹事会で述べられたことがあります。
法制局に伺います。
二〇二二年参院選の較差訴訟の判決において、合区解消のための憲法改正の議論を当該判決の憲法判断の根拠、理由として明記しているものがあるでしょうか。

○法制局長(川崎政司君) お答えいたします。
令和四年の参議院選挙についての定数較差訴訟における高裁判決で、参議院憲法審査会における合区問題を中心に参議院の選挙区制度に関する議論が行われたことにつき言及するものはありますが、合区解消のための憲法改正についての議論を判断の根拠、理由として明記しているものはないものと承知しております。

○山添拓君 ないんですね。較差の是正に向けた姿勢として論じたものが九件、選挙制度の改革の議論として論じたものが四件、私が確認しただけでありました。裁判所が改憲による合区解消論を判断の理由としたものは、当然ですが一件もありません。この問題は、当審査会の議題ではなく、参議院改革協議会などで各会派が意見を出し合い、前に進めるべきです。
参考人質疑で意見を述べた四県の知事、副知事からは合区解消を求める意見が相次ぎました。二〇一五年、極めて乱暴な国会審議で合区が導入されたことへの強い憤りの声だと受け止めるべきです。
加えて、二〇一八年、自民党が導入を強行した特定枠制度は、国政上有為な人材を当選しやすくすることが目的だと説明されましたが、同党が特定枠に据えたのは合区となった両選挙区で候補者とならなかった他方の者であり、しかも、先般、その特定枠で当選した議員が県知事選挙に立候補し、辞職されました。
徹頭徹尾、党利党略で制度をゆがめ、有権者を愚弄し、あろうことか改憲の理由にするなど言語道断だということを述べて、意見とします。

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