2024年・第213通常国会
- 2024年2月7日
- 国民生活経済地方調査会
衰退地方に国支援を 「地域経済とコミュニティの活性化」参考人質疑
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日は、参考人の皆さん、大変ありがとうございます。
石田参考人、平山参考人、田口参考人にそれぞれ御意見を伺えればと思うのですが、今日も話題に上っていますが、能登半島地震では、いまだ一万四千人、避難生活が続いており、先の見通しが立たない状況があるかと思います。これは、当面の救援とともに生活やなりわいの再建ということが大きな課題ですが、これも指摘のあったように、元々、過疎化、高齢化、そして困難を抱えてきた地域でもあると、これもいろんなところで指摘をされてきています。そして、この一月で人口減少が二十年分進んでしまったという集落や、あるいは集落そのもの、もうこのままでは住めないのではないかというふうに言われているところもあると。
一方で、そういう形で、もう住めないということで、くしの歯が欠けるように人が住まない地域が増えていくということになっていいのかと。いや、そもそも帰りたいと思っている方もいる中で、どう支えていくのかということは大きな課題だと思うんです。
〔会長退席、理事田名部匡代君着席〕
特にこの能登半島地震の被災地の復興に関わって、今それぞれのお立場でお考えになっていることを是非教えていただければと思います。
○理事(田名部匡代君) どなたに伺いますか。
○山添拓君 順に。
○理事(田名部匡代君) 順に。
それでは、石田参考人。
○参考人 農林中金総合研究所主事研究員 (石田一喜君) 御質問いただき、ありがとうございます。
私、やはり農業経済という農業の立場ですけれども、今回、春先にかけての作業タイミングでの被災ということで、今年度、来年度の農業はなかなか厳しいというような声が実際に聞こえてきております。そうした中で、一年ブランクが空くと、これを機にやめてしまおうかとか、そういうような本当にタイミングの議論になってきますので、その辺りの支援、あるいはどうするかというところを考えていきたいと思います。
作らないという判断が悪いというわけではなくて、作らないのであればその農地の維持をどうしていくかとか、そういう多様な在り方を考えていくべきというふうに個人的には思っております。
私からは以上でございます。
○理事(田名部匡代君) 続いて、平山参考人。
○参考人 神戸大学名誉教授(平山洋介君) 私は、まだ能登にはまだ行っておりません。なので、いろんな方から聞いている情報だけになるんですけれども。
〔理事田名部匡代君退席、会長着席〕
まず、私は神戸にずっとおりましたので、九五年の震災で自分の家も吹っ飛びましたし、ひどい目に遭いました。学生もたくさん亡くなったりしました。東北の震災のときには、かなり現地に行って仕事をさせていただいたということがありました。
その経験で、能登の、まだ行っていませんけれども、その経験を基に言いますと、重要なことは二つあるかなと思うんですけれども、一つは、何というんですかね、復興計画がかなり過大になる傾向があります。
神戸でも東北でも、行政の方々とか、そういう言い方をされる、これを機会に町を頑張ってつくろうというような考え方にどうしてもなってしまう。しかも、国からの支援が結構きちっとあるということで。ですから、神戸の場合も、物すごく、歴史的に二番目に大きい再開発を仕掛けた挙げ句に、二十年たっても埋まらなかったとか、東北でも、十年以上たって区画整理がやっと終わったけれどもほとんど人が帰ってきていない、非常に立派な宅地がもうだあっと広がっているというようなことがありまして、何といいますか、申し上げたいことは、現場の実態からではなくて、それと別のところから大きな計画を立てがちだということがあろうかと思います。
ところが、今回、それが一点ですね。一点目と二点目に共通するのは、現場の実態に即した復興計画という当たり前のこと言っていますけれども、これは、なかなか当たり前のことが当たり前に進まないのが危機的な状況の特徴だと思います。一つは過大なプロジェクトに走らないこと。
もう一つは、非常に気になっていますのは、今日申し上げたことと関連するんですけれども、公式にはそんなことは出ていないんですけれどもちょくちょく耳にしますのは、能登に本当に投資するのかということをおっしゃる方が出てきているというふうに聞いています。それは非常にどうなんだろうというふうに思います。
本当に、もう人口が元々減っていたと、高齢者五割ぐらいだというところのインフラを本当に何兆円も掛けて復旧するのかというような声が、公式には出ていないと思いますけれども、出る可能性がある。それはそれで非常にどうなんだろうというふうに思います。
一点目の意見と二点目の意見って相反するようですけれども、共通しているのは、現場の実態を踏まえていないということだろうというふうに思います。現場の実態を踏まえるといいますのは、その客観情報やデータを踏まえるというのはもちろんですけれども、被災された方とか地域の人がどうしたいのかというのを丁寧に聞くことだと思います。お住まいの方が望んでないことやってもうまくいくはずがないので、やっぱり、その被災された方は帰りたいのか。
東北の場合は、地震きっかけに大阪に来られた方もたくさんおられて、それはそれで今も生活しておられるわけですけれども、離れた方への支援は全くなかったわけですよね。帰ってきた人には支援があるけど離れた方には支援がないという問題もあったりします。
ですので、申し上げたいことは、現場に即して、被災された方、地域の方がどうしたいのかということを丁寧に聞いて、その上で、それに沿った計画を作ることだろうと。補助制度や大掛かりなプロジェクトが先走っては、のは、先走るのはどうかなというふうに思います。
以上です。
○参考人 徳島大学大学院教授(田口太郎君) ありがとうございます。
私から申し上げることは、今の平山先生のおっしゃったように、やっぱり現場の状況に合わせるということはすごく大事なんですけど、一方で、現場の状況も日々変わるということです。
これは、私、新潟で商店街の復興やっていたとき、もう復興の実は計画を作ってから最終的に完成するまで十数年掛かっているんですね。その間にやっぱり地域の人たちも高齢化するわけで、当初は再開したいと、商店街なので、そのときは再開したいって言っていた人がやっぱり時間の経過とともに変わっていったりする。やっぱりその中できちんと、最初こう言ったんだからそれを守りなさいって圧力を掛けずに、その状況にどうやって柔軟に対応していけるか。そこをきちんと対応していくと、例えば、地権者である商店主でもあるので、そこを何か自分が住むだけじゃない選択肢、だから、逆に言うと、若い人たちがお店を出すみたいな話に展開していくこともできるんですね。
これは、結局、その復興計画とかそういったものにどれだけ自分の意見が参画しているかどうかによって、それを育てるか、柔軟に変更するかとしても、積極的であるかどうかというところが恐らくあるので、やっぱり現場の意見も常に変わるので、そこを、最初に、これは、今被災直後なので当然帰りたいというのは当たり前なんですけれども、やっぱり、状況に応じて変わっていく人も当然いるので、それを、じゃ、悪なのかというと、やっぱり良くないということが一点と、あともう一つは、主体形成ということが結構大事だと思っていまして、これも、これから恐らく仮設住宅に入居されて、それから自分の家に帰るまでの一定期間を過ごすんですが、この仮設住宅の入り方がその復興に大きく影響するという言い方が、結構、新潟の中越地震では知見としてあります。
中越地震の場合は集落単位で仮設住宅に入っていたものですから、仮設住宅の段階でもう帰村後の計画作りを一緒に近隣同士でやっているんですね。これをやれると、何となく、地域に戻るんだと、地域をみんなで盛り上げるんだという機運ができてくるんですが、この入居の仕方とか避難所の暮らし方次第によってはやっぱりその主体というグループができなくなっちゃうので、やっぱりそういったところにどう配慮するかということをきちんと考えられるかどうかも大きいかなというふうに思っています。
で、新潟も大体人口推計的には二十五年ぐらい先送りされているんです。タイムスリップしてしまっているんですが、でも、結果、人が減っても活力取り戻している集落はたくさんありますので、それはそれで大事なことなんじゃないかという気はいたします。
○山添拓君 ありがとうございます。
いずれの御意見も、やはり実態、時の経過も含めて、実態に即してというのが共通していたかなと思いました。ありがとうございます。
次に、平山参考人と田口参考人に伺いたいのですが、今日は地方に関する調査会で地域づくりをテーマにということなんですが、この課題そのものはもうかなり前からの国政上の課題でもありますし、地方創生という意味では既に十年たっていると、平山参考人から、一括法からするともう四半世紀という話もありましたが、要するに、これだけ課題だとされていながら、それで目指された方向に必ずしもなっていないというのは、今日のお話では、平山参考人から自立、競争というレジーム、その分配の在り方をどう評価するのかという指摘があり、田口参考人からも上を引き上げ、規制緩和で上を引き上げるより下を支えるという、そういう指摘があったのですが、ちょっと振り返って、どこにそのボタンの掛け違えがあったと言えるだろうかという点について、それぞれ御意見を伺いたいと思います。
○参考人(平山洋介君) 非常に重要な御質問だと思います。
どう答えるか決めずにしゃべり出していますが、そもそも地方の方々は何を目標にしているのかというと、今日もお話ありました、人口の話がすごく多くて、人口を増やすんだと、さすがにそれは言えなくなって、人口減少を緩めるということ。で、人口自体が目標になっていると思うんですけれども、本当にそれが重要なことなのかなというふうに思ったりします。
人口はある程度、日本全体で八千万とか六千万になるとかいうのが出ていますけど、だったら減りますよね、どの町も大体。減ったときにどういう暮らしをしたいのかというような点での目標というのは余り聞かないかなというふうに思うんですよね。人口が減っても楽しく暮らせるというのはどういう町なんだろうということですよね。
そういうことを考えて、私の分野でしたら町づくりとか住宅づくりをやっていく必要がありますし、ですから、先ほどの御質問にもありましたけど、地方で人口減るのにまだ新規開発が起こるんだというようなことはありますけれども、そういうのは規制すべきだと思いますし、空き家や古くなった住宅をもっとちゃんと修繕するような、新しい建築を応援する制度じゃなくて修繕する制度というのをもっと充実させていく必要があるし、災害の予防として危険なところには家を建てさせないという規制も必要だと思いますし、何かそういったことで、抽象的なことになりますけれども、人口を増やすとか減らさないということ自体が目標なのではなくて、人口も所与の条件として、その上で何が幸せなのか、どういう町をつくりたいのかということを目標にすべきなんじゃないかなということが一つですね。
それともう一つは、今日、繰り返しになりますけれども、その頑張ったところを助けるというのはいいんですけれども、選択と集中というキーワードが、いつでしたかね、二十年ぐらい前ですか、出るようになりましたけれども、何といいますかね、頑張れなかったというと言い方悪いですけれども、頑張れるところばかりじゃないと思うんです。そこをどうするのかというのは、やっぱり国レベルで考える必要があると思います。大学の話に、もう余り長くする気はありませんけれども、大学、頑張ったところに資金集中するようになってどうなったかということを機会あればお話ししたいですけれども、何かそういうことですね。
先ほどマンションのお話もありましたけれども、マンションも非常に差が出てきていますのは、非常に頑張っているところあるんですね、自分たちでどうしよう、どうしようと。ところが、もう頑張れなくて、もうどうしようもなくなって途方に暮れているところがあって、そこには支援が一切入らない。声が出ないので、支援しようがないわけですよね。
ですから、頑張ったところを応援するということと、声が出ていなくて困っているところはこのままでいいのかというふうな問いの立て方も必要かなと思います。
以上です。
○参考人(田口太郎君) 先ほどのボタンの掛け違いがどこからということですが、僕はやはり、これは競争だと思っているんです。ただ、その競争の手段がアピール合戦になっているんですね。アピールしやすいことにやっぱり主眼が置かれてしまって、アピールしにくいところ、つまり、ほかでも同じようなことをやる必要があるようなことに関してはPRをしなくなっていったというのがやっぱり大きいかなというふうに思っています。
これ、個性というものの履き違いだと思っているんですけれども、言わば個性ある町づくりしましょうというのはあちこちで言われるんですけど、個性と他との差別化というのは意味が違うということをちょっといま一度確認する必要があって、個性というのは要はオリジンであると、内発的であるということだと思うんですが、内発的なものでも、ほかと結果一緒であるとそれは個性とみなされないというのが今の競争の原理の中で働いてしまっている。その結果、どこでも必要な普遍的なものというものに関してはどんどんおろそかになってしまっているんじゃないか。
これが、その競争という名の下の、ただ、僕は競争を否定するわけじゃ、先ほど若林さんがおっしゃったように、ある程度のその主体性があって頑張るモチベーションというのは大事なんですが、ただ、そのアピールということと競争というのがちょっと違うかもしれないということと、アピールしやすいものがボタンの掛け違いの根本的なところにあるんじゃないかという気はちょっとしています。
○山添拓君 ありがとうございます。
やっぱりお話を伺っていて、この問題でも、その現場、実態ではなく、どういうその競争のさせ方があるべきかというところから始まったことがやっぱりそもそもの掛け違いにあるのかなというふうに、それはまあ効率化という名でやられてきた側面もあると思うのですが、感じました。
大変参考になりました。ありがとうございます。
終わります。