山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

子どもと先生がもっと生き生きできる環境を 「若者の教育支援」参考人質疑

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日は、三人の参考人の皆さん、大変ありがとうございました。
小国参考人にまず伺いたいと思います。
現在の特別支援学校、学級をめぐる課題として、設置基準の問題というのが指摘をされてきたかと思います。特別支援学校に通う子供は増えたのに学校数は増えないと。そういう下で、各地で課題になり、過密になり、教室が足りなくて更衣室で勉強しているですとか、カーテンで仕切って勉強せざるを得ないと、あるいは窓がない倉庫を学習室にするような、そういうことも伺ってきました。これは、二年前にようやくその設置基準の一部が施行されましたが、既存校には適用されないというような課題もあるということも伺っています。
こうした点も含めて、特別支援学校、学級の現状について、それ自体の現状について認識を伺いたいということと、同時に、その今日御紹介いただいた国連の勧告というのは、特別支援教育の中止ということ、まあ分離教育の中止ですね。これは今、インクルーシブの目指すべき方向だと思うのですが、現状のその特別支援学校や学級が大変劣悪な環境だということを考えると、かなり距離があると思うんですね。で、ここを進めて、そこへ進んでいくための条件整備というのは何が必要なのかという辺りを是非御意見伺いたいと思います。

○参考人(小国喜弘君) ありがとうございます。
山添先生の御質問に対して、ちょっと何か斜めから答えるような形になってしまったら恐縮なんですけれども、ある意味、その現状で、特別支援学校とか特別支援学級が非常に劣悪な環境であるにもかかわらず、そこに行かざるを得ない、ある意味消極的なのかもしれないけれども選ばざるを得ない保護者がいるということの背景には、実は普通学級がもっと悲惨な場になっているという側面があるような気がするんです。
そういう意味において、やはり例えばその特別支援学校の先生方に伺うと、手帳のない子もたくさん来ているんですと。何であの子が支援学校で学ばなきゃいけないのかって思うんだけれども、そういう子たちが学んでいるんですというようなそういう、で、そのことでむしろぱんぱんになってしまっているという実態がある。本当に私たちが手を掛けて育てるべき子以外の子も実は選択して入ってきてしまっている。その背景に何があるかといえば、多分、特別支援学校では提供されるけれども、普通学校とかに行ってしまったら提供されないという合理的配慮というのがもしかしたらあるのかもしれないという、こういう制度の問題が一つはあるんだと思います。
もう一つは、もう本当にテスト漬けになっていて、これは本当に今、私の知り合いの普通学級の先生たちは、もう本当に子供はかわいそうだと。すごくテストがある。つまり、全国学テの点数を上げるために、それ用に目指して準備テストをたくさんやっているらしいんですね。場合によっては全国学テのテスト業者が練習問題を売っているというケースも、これ、今は違うのかもしれないんですけれども、まあ過去にはあったということなのかもしれませんが、そういうような状況もあって、そういうものをその学校の経費で買っていっぱい学習していると、そういう状況がございます。ですから、やっぱりその辺りが変わっていくということの方がむしろ重要なのではないか。
これ私の試算なので間違っているのかもしれないんですが、小学校の普通学級って特別支援学級を含めて二十七万学級あるんですね。そのうち五万学級が特別支援学級です。そうすると、二十二万学級が普通級で、二十二万人の担任の先生がざっくり言えばいらっしゃって、特別支援学級の先生が五万人いらっしゃって、恐らく私の試算では特別支援学校の小学部の先生が二万人いらっしゃるんです。そうすると、これって、二十二万対、単純計算でも七万になっておりまして。
ですから、もう一方で、人的なものとしていえば、特別支援学校、特別支援教育は非常に潤沢な部分もあるのかもしれないと思ったりもするんですね、生徒の割合はそんなには当然ないわけですので。そういうような問題が何かなかなか見えないところがございまして、つまり、本当にこの国では特別支援教育に幾ら掛かっているのかというのが率直に言うとなかなか分からない状況もございます。
例えば、教員の人件費として一括されてしまって国としては出てくるので、そうすると、国全体で特別支援教育関係でどれぐらい予算が付いているのかみたいな。で、地方の自治体に行きますと、支援教育の支援員みたいなのを市町村費で雇ったりしているケースもあるので、恐らく日本は特別支援教育系にかなりの予算を掛けてきているという実態もあるのではないかという気もしているところです。
だけど、先生がおっしゃるような状況もあってという、何か複雑な問題を、何だろうな、何だというふうに、ですから、そこを是非充実させるべきだと私も思いますって言いたいところもあるんですが、何か普通級の方がもっと悲惨なんじゃないかという気もしてしまいまして、何かそちらをまずはどう変えるのかということを提起したいなと思っているところです。済みません。

○山添拓君 ありがとうございます。
もう一点、小国参考人に伺いたいのですが、今のお話でも、普通級そのものが悲惨な状況があると。それは、例えば、先生たちの長時間労働ですとか、競争、管理教育の下で大変だということや、もうとにかく先生の配置が間に合わなくて新学期そろわない、あるいは産休に入った先生がいるとき代わりが入れないと、そういう話もどこでも伺います。これを子供たちに目が行き届くようにして先生自身も心身の健康を保っていくためには、これはもう解決策としては、やはり少人数学級と先生の数を抜本的に増やしていくということしかないと思うんですね。それは普通級も含めてと。
ちょっとこの点について、現状やあるいは課題ですね、先生の方で御認識のことを伺いたいと思います。

○参考人 東京大学大学院教育学研究科教授(小国喜弘君) ハレーションもあることを覚悟で申し上げれば、朝日新聞で、何か教師が足りないというようなその本の中でたしか見ましたけれども、朝日新聞で全国調査をしたときに、その幾つかの自治体なんですけれども、やっぱり支援級に、支援教育に教師の人数が掛かり過ぎているというふうに答えているところもございます。ですから、この教師不足の背景に実はそういうものが隠されているんではないかということもちょっと疑ってみる必要があるような状況に実は入ってきているということがあるような気がいたします。
やはり、先生たちにもっと、これ、ですから、例えば今回、渋谷区で特区を取られて、午前中に教科の時間を固めて午後は探求学習を中心にみたいに、渋谷区はいろんな企業があるからというような特殊状況もあるのかもしれませんけれども、やはりその先生たちが創意工夫を生かせるような場と時間をもっと設定すると。
つまり、今の非常に悲惨なしんどい状況は、その長時間労働をさせられているということだけではないと思うんです。意味のある、働きがいのある長時間労働であれば、ではなくて、自分は意味があるとは思えない、何かその、それから子供にこれが役に立つとは思えないことで長時間労働を強いられてしまっているという、この実態をやっぱり、状況を改善するということが大事なんだろうと思っておりまして、これはもう本当に学力テストを悉皆から抽出に変えていただくだけでも随分ですね。
やっぱり、つまり今、〇・五点全国平均よりも高いだけで、学校の校長先生はもううはうはされている学校は多いです。〇・五点低いだけで、もう何かうちの学校はぼろぼろですとおっしゃるかのような印象で語る先生もいらっしゃるんですね。この〇・五点というのは、まさに二十点の子が一人外れるか入るかで教育改善なしに変わる点数だとも思います。小規模校も増えているので。
先生方は悪気でそんなことをやっているとは思いません。学習指導要領に準拠した教育が、これが最低基準ということになっていますと、それに到達しない子供であれば特別支援学校用の学習指導要領に準拠するというのが法的な考えだということになるので、ある意味、この子にふさわしい教育の場は特別支援学級ですよねというのを言うことを法的に正当化されてしまっているという、そういう状況なんだと思います。
是非その辺りのところにメスを入れていただけると、もう全国の学校の先生たちはすごくもっと生き生き仕事ができる、子供たちももっと生き生きする、そんな環境が可能なんじゃないかと思っております。

○山添拓君 ありがとうございます。是非参考にしたいと思います。
次に、大空参考人に伺いたいと思います。
取組について本当に敬意を表したいと思います。今日、幾つかの角度からお話をいただいていますが、例えば不登校の問題、あるいはいじめなどいろんな背景があると思うんですが、その不登校の直接の要因というのは様々あり、それは子供に丁寧に寄り添っていくことが大事だと思うのですが、子供たちや保護者のいろんな声から考えると、先ほど小国参考人にも伺ったような競争の激しい社会や教育、その中で子供の人権が守られていないという問題についても御指摘あったと思いますが、そういう背景もうかがえるかと思います。
教育や社会の在り方との関わりで、実際に受けておられる相談内容から御指摘、ちょっと指摘をいただける、紹介をいただけるような観点がありましたらお願いしたいと思います。

○参考人 NPO法人あなたのいばしょ理事長(大空幸星君) ありがとうございます。
例えば、今、じゃ、自殺を見ていったときに、当然生活困窮に関する相談というのは非常に多いわけで、それを原因とする自殺も非常に多いのが実態です。国の政府統計の孤独・孤立の実態把握を見ても、やはりこれは仕事がないとか生活に困窮をしておられるという方、そうした方々の孤独感というのがほかの状況に置かれている方よりも高いというのはもうこれは分かってきているところです。私たちの相談窓口でも、例えば親御さんのその世帯年収とかですね、仕事があるかないかとかといったところと、お子さんが抱えておられる例えば孤独感みたいなところというのは、これはある程度関連をしてくるんだろうというような見方というのも持っています。
そうした状況の中で何が起きているかというと、これは非常に難しいのは、例えば、不登校とか虐待もそうかもしれませんし、子供たちにまつわる悩みや困り事というのが非常に、いわゆる社会の中でかわいそうな人たちが抱えている問題なんだというようなレッテルが貼られてしまうと、これは更に声を上げづらくなってしまうので、アプローチの仕方は、やはりこれは全ての人の問題なんだということは大前提として持っておかなくちゃいけないんだというのがまず最初のステップとしてあると思うんですね。
だから、その上で、例えば教育にしても、これは、じゃ、塾に通っているお子さんも塾に通わせるなかなか経済的に厳しいというお子さんも、両方不登校になっていくわけですね。なので、なかなかその属性とかですね、家族の状況で、データとしては見えてくるんだけれども、それをじゃどこまで扱うか、どういうふうな発信の仕方をするのかというのは、やっぱりこれはすごく気を付けなければいけないとは思います。
ただ、今の既存の教育の在り方の中で、なかなか子供たち自身が発信することができない、悩みを話すことができない、それは先ほど三浦先生もおっしゃいましたけれども、じゃ、スクールカウンセラーに子供たちが通わないんですって相談してくる学校関係者の方がたくさんいますけれども、じゃ、皆さんカウンセリング行ったことあるんですかというと、誰一人としてないわけですね。先生たち御自身もカウンセリングの経験なんかないのに、結局子供たちには相談をせよということを言わせてしまう。
それは、これだけいろんな社会問題が深刻ですよ、顕在化していますよといって対策を講じてきて、そのしわ寄せは当然学校現場に行って、学校の先生たちも、学校現場で虐待を見付けなきゃいけない、いじめも防がなきゃいけない、自殺も止めなきゃいけないと、言わざるを得ないわけですね、相談してね、何かあったら言ってね。やっぱり御自身の、自分たち自身のケアというか、メンタルケアも含めてですけれども、そうしたところに割く余裕がないというところがまず根本的な問題であって、そこを解決しない限り、どれだけ学習の在り方が変わったり、学校が変わったり、多様化しても、恐らく同じような問題というのは起きてくるんだろうと思います。

○山添拓君 ありがとうございます。
最後に、田中参考人に伺いたいと思います。
家族のケアのために困難に直面している子供が社会的に見えにくい、この大きい要因は家庭内の問題だとみなされるという、そういう風潮があるかと思います。
今日のまとめで強調されていた、家族全体を支える視点を持って対応するというのは、これは家庭の責任ということとは違う意味だと思うんですね。その辺り、もし詳しく御意見をお聞かせいただければ有り難く思います。

○参考人一般社団法人日本ケアラー連盟理事・一般社団法人ケアラーワークス代表理事 (田中悠美子君) 御質問ありがとうございます。
家庭全体を支えるというのは、ケアが必要な方の使っているサービスを見直すですとか整えていくというようなところの側面もあると思います。
やはり介護保険制度は、その認定された度合いによって利用の限度があったりですとか、やっぱり家族がいると利用が制限されてしまうような誤解もあったりとかする中で、既存のサービスのそのありようというのをもう一度見直しをして適切にそのケアが必要な方のサポートを、サービスを提供していくことでそのケア、大人のケアラーさんの負担軽減につながっていって、よってその子供たちのケアの負担の軽減につながるという間接的な場合もあると思います。
あとは、その親ですが、子供さんと直面している、例えば精神的な悩みがある御家族さんに病院になかなか行きにくいというところ、アクセスしにくいというところもあるので、例えば家庭訪問などをして、そういった、誰が気付くかにもよるんですけれども、例えば産後のうつですとかそういうところもあったとすると、家庭訪問しながら御家族さんを支えていく、あるいは疾病を抱えて、それで病院につなぐですとか、そういった家族さんを支えていく中で子供さんが安心につながっていくというところもあると思い、はい、家族全体の支援という話をさせていただきました。

○山添拓君 ありがとうございます。
時間ですので終わります。

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