山添 拓 参議院議員 日本共産党

ブログ

2024年4月19日

岸田総理の訪米報告 本会議で代表質問

参議院本会議で岸田首相が訪米の帰国報告。代表質問に立ちました。

裏金問題で支持率低下にあえぐ岸田首相が、すがるように出かけていったのが米国でした。バイデン大統領と約束した共同声明は、日米軍事同盟の歴史的大変質をもたらす危険な踏み込みです。抑止力に傾き、外交をなおざりにする政治に、未来を託すことはできません。

===================

 日本共産党を代表し、岸田総理の訪米報告について、総理に質問します。

 総理は9年ぶりの国賓待遇での訪米でした。米国はその理由をどう説明しましたか。

 前回は2015年4月、安倍元総理が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した翌年でした。今回の日米首脳共同声明は、GDP比2%への軍事費増額、敵基地攻撃能力の保有決定、統合作戦司令部の設置、防衛装備移転三原則と運用指針の改定を米国が「歓迎する」としています。国賓待遇は、安保三文書の閣議決定で米国に都合のよい安保政策の大転換を進めたご褒美だったのではありませんか。

 最大の焦点は、米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化をいっそう進め、日米軍事同盟の歴史的大変質をもたらそうとしていることです。

 共同声明は、「作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」としています。

 「シームレスな統合」とは何か。防衛大臣は16日の外交防衛委員会で、「日米が共同対処等を行う場合に、陸海空及び宇宙、サイバー、電磁波などさまざまな領域での作戦や能力をシームレスに連携させていく必要があるという趣旨」だと述べました。共同対処という以上、日米の部隊どうしが文字通り一体化するということではありませんか。

 米インド太平洋軍司令官アキリーノ氏は3月10日の米下院公聴会で、「我々がもつ同盟国及びパートナー国との力強いネットワークは、長期にわたる競争において最も重要な非対称のアドバンテージだ」と述べ、対中国で、米軍の優位性は同盟国の存在であると公言しています。自衛隊は、事実上米軍の指揮下で、あたかも米軍の一部隊のように扱われるということではありませんか。

 トマホークをはじめ敵基地攻撃能力の運用は日米共同作戦が前提です。標的の探知・追尾、攻撃による効果の判定など自衛隊単独では困難であり、情報収集とその分析能力で圧倒的な米軍との共同が不可欠だからです。

 自衛隊と米軍が、「日米共同作戦計画」の策定を進めていると報じられます。今回の共同声明における合意は、日本の敵基地攻撃能力保有に伴い共同作戦計画が進展したことから必要となったのではありませんか。

 米国の軍事シンクタンクCSISは昨年6月、退役海軍少将マーク・モンゴメリー氏の論考を発表しています。日米の部隊協力は、1970年代は互いの「衝突回避」というパートナーシップだったのが、2010年代までにはよく「調整」された関係となり、「統合」部隊の側面を現し始めているとし、自衛隊と米軍ほどの高い相互運用性を備える国は地球上にないとまで評価しています。その上で、米国は、今後5年間に直面する事態で中国を抑止し打ち負かすことができない、日米が「統合され、かつ、効率的な指揮統制」を図ることが侵攻の抑止に大きな効果をもつ、などと煽っています。共同声明にいう「統合」も、こうした評価とねらいに基づくものですか。

 米国は、米国が中心となり同盟国と関係を結ぶ「ハブ・アンド・スポーク」から、米国の同盟国同士の連携を強める「格子状の同盟」へと変容を迫っています。軍事的な同盟関係をネットワーク化し中国と対峙しようとする米国に、日本も同調するのですか。

 米英豪の排他的な軍事枠組みであるAUKUSと先端軍事技術で日本が協力すれば、地域における軍事的緊張と対抗を激化させ、悪循環を招くのは明らかではありませんか。

 今年の外交青書には、中国との関係について双方が共通の利益を拡大していく「戦略的互恵関係」の推進が5年ぶりに明記されました。「対話を重ね、共通の諸課題については協力する」関係を掲げながら、米国主導の軍事ブロックづくりに加担し圧力を強めるのは矛盾ではありませんか。答弁を求めます。

 共同声明は、抑止力の強化を繰り返し強調し、日米で兵器の共同開発・生産を進めるために「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)」の開催を宣言しています。

 優先分野に掲げるミサイルは、どのような性能を想定したものですか。日米から輸出することも検討しているのですか。

 新たなミサイルの開発・生産が抑止力を高めるとする根拠は何ですか。

 日米は2006年度から迎撃ミサイルSM3ブロック2Aを共同開発し、昨年納入されイージス艦への配備が進められています。SM3を含む「ミサイル防衛」システムの導入は2003年末に決定されました。以後今日まで、「ミサイル防衛」予算の累計はいくらになりますか。日米合作で「ミサイル防衛」の強化をやみくもに進めた結果、地域の緊張関係をいっそう高める現状をもたらした事実をどう認識していますか。今後も続けるなら、果てしない予算を注ぎ込み終わりのない軍拡競争となるのは明らかです。やめるべきです。

 共同声明にはまた、米海軍艦船などの日本の民間施設での共同維持整備が盛り込まれました。米国は、なぜこんなことまで要求しているのですか。米海軍長官のカルロス・デル・トロ氏は2022年12月の講演で、「損傷を受けた艦船でも迅速に戦闘に復帰できるよう、可能な限り戦闘地に近い場所で修理する必要がある」などと述べています。中国との「戦闘」を念頭に、米軍の戦闘継続を支えるために日本の民間企業をも動員するつもりですか。答弁を求めます。

 共同声明は、「米国の拡大抑止を引き続き強化する」とし、「次回の日米『2+2』の機会に、拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう求める」としています。「突っ込んだ議論」とは何を期待しているのですか。日本に米国の核兵器を置くことの検討を求めるなど断じて認められないと考えますが、総理の認識をうかがいます。

 4月2日、米軍横田基地にB52戦略爆撃機が通告なく飛来しています。拡大抑止だといい、こうした核戦力の運用を拡大強化させるつもりですか。

 総理が広島出身を語りながら核兵器禁止条約に背を向け続け、核抑止力論にいつまでもしがみつくのは到底許されないことを指摘します。

 日米同盟の抑止力を理由に、沖縄・辺野古新基地建設を「唯一の解決策」として強行すると明記したことに、断固抗議します。総理は、沖縄県民多数の意思が辺野古新基地建設に反対であることをバイデン大統領に伝えたのですか。

 普天間基地の米軍オスプレイが、傍若無人の飛行を続けています。事故による運用停止の解除後、日米で合意した午後10時以降の離着陸は何回ありましたか。騒音防止協定違反をやめるよう求めましたか。そもそも事故原因すら明らかにしないことに、沖縄をはじめ全国から抗議の声が上がっています。運用停止と撤去こそ、求めるべきではありませんか。

 首脳会談のファクト・シートに記された環境問題に関する「協力」とは何ですか。米軍基地由来とみられる有機フッ素化合物(PFAS)の問題について、基地内での調査と対策を求めましたか。米国環境保護局は総理が訪米中だった4月10日、法的強制力を伴う飲料水の規制値を決定しました。日本の目標値の6倍厳しい値です。米国の基準を、在日米軍基地でも適用させますか。答弁を求めます。

 首脳会談や米国議会の演説ではにかむ総理の様子からは、日米軍事同盟の下で現にある国民の苦難に寄り添う姿勢は全く見受けられません。それどころか軍事的対抗を強め、いっそうの危険と負担をもたらす同盟関係の大変質に突き進んでいます。

 いま必要なことは、地域のすべての国々を包摂する対話と協力の枠組みをつくり発展させる、外交による平和の創出であることを強調し、質問とします。

ページ
トップ