山添 拓 参議院議員 日本共産党

ブログ

2024年5月8日

日米一体の戦争体制を進める防衛省設置法等改定案

自衛隊への統合作戦司令部設置など日米一体の戦争体制を進める防衛省設置法等改定案が参議院で審議入り。本会議で代表質問に立ちました。

防衛大臣の答弁は答弁漏れや論点外しがいくつもあり、困ったときには「憲法の範囲内」と繰り返すテンプレ答弁。

明日、外交防衛委員会で6時間の審議の後、直ちに討論、採決が予定されています。スピード審議は、まるで議論が広がるのを恐れているかのようです。

抑止力一辺倒の大軍拡に、それでも断固抗議し論戦に臨みます。

===================

 日本共産党を代表し、防衛省設置法等改定案について、防衛大臣に質問します。

 本法案は、安保三文書に基づき、陸海空自衛隊の実働部隊を一元的に指揮する統合作戦司令部を創設しようとしています。

 政府がその必要性を認識したのはいつですか。河野克俊元統合幕僚長は2018年7月の講演で、米太平洋軍ハリス元司令官から、「統合幕僚長は私のカウンターパートではない。自衛隊にも常設の統合司令官が必要ではないか」と言われ、英軍やオーストラリア軍を参考にするよう助言され研究を開始したと述べています。安保三文書以前に、米国から創設を求められていたのではありませんか。

 本法案の立法事実にも、自衛隊に米インド太平洋軍司令官との調整機能が不足していることを挙げています。米軍は全世界を6つの責任区域に区分し、それぞれに統合軍を配置しています。インド太平洋軍の担当地域はどこですか。自衛隊の統合作戦司令部は、その全域で米軍と連携し、共同で作戦をつくり対処できるようにするつもりですか。

 米国は、自衛隊の統合作戦司令部設置に合わせ、在日米軍の司令部機能を強化する調整に入ったと報じられています。インド太平洋軍の司令部を東京・横田基地にある在日米軍司令部に移転し、横須賀を拠点とする米海軍「第7艦隊」や沖縄を中心とする米海兵隊を含め、作戦や指揮統制を担わせる計画ですか。東京に日米の司令部機能が集中し、シームレスな「統合」の結節点となれば、攻撃する側にとっては標的とする口実になります。そのリスクをどう考えていますか。

 政府は従来、自衛隊が他国の軍隊の指揮下で武力を行使することは、「自衛のための必要最小限度の範囲を超えるもので憲法上許されない」としてきました(1990年10月26日衆院国連平和特委)。この答弁に変わりはないか、確認します。

 大臣は、自衛隊と米軍はそれぞれ独立した指揮系統により行動すると繰り返す一方、日米で緊密に連携する、指揮統制のあり方も連携の強化を高めていく、と述べています。「連携」はどこまで高めるのですか。憲法上の限界はどこにあるとお考えですか。

 日米が「緊密に連携」した指揮統制の下に共同対処すれば、武力行使は一体化しています。自衛隊の武力行使が必要最小限度の範囲を超えない保障はどこにありますか。

 敵基地攻撃における日米共同対処のオペレーションは、目標情報の共有、攻撃する目標の分担、成果についての評価の共有のそれぞれで日米が協力すると想定されています。統合作戦司令部は、こうした共同対処でどのような役割を担うのですか。情報、装備とも圧倒的に優位に立つ米軍に、事実上従うほかないのではありませんか。

 大臣は、「自衛隊の運用は米国の情報だけでなく我が国自身が収集した情報を含めすべての情報を統合して行われる」といいます。しかし、政府が導入を予定するトマホークは、事前にレーダー地図や情景を登録し、巡航中に得た情報と照合しながら最終目標に向けて進路を修正します。だから高精度とされます。自衛隊は、事前に入力するような情報を保有していますか。米側に専ら依存するのではありませんか。それとも今後、莫大な費用をかけて独自の情報収集を進めるとでもいうのですか。

 米太平洋陸軍のフリン司令官は4月3日、一部記者団との懇談で、年内にインド太平洋地域に新たな中距離ミサイルを配備する方針を明かしました。トマホークや対空ミサイルSM6を発射できる新型発射装置「タイフォン」を指すとされます。この計画は事実ですか。タイフォンは移動式のミサイル車両で、米軍が必要に応じ展開できます。日本への配備や一時展開も認めるのですか。

 米国は、トランプ前政権がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄し、2019年8月に失効するまで、射程500~5500kmのミサイル保有を禁じられてきました。中国との「ミサイル・ギャップ」解消を掲げ、日米でミサイル配備の強化を進めるつもりですか。ミサイルの開発・配備をめぐる軍拡競争につながることは明らかではありませんか。

 本法案は、日英伊3カ国が共同開発を進める次期戦闘機の開発・生産・輸出を管理する国際機関(GIGO)への防衛省職員の派遣を可能とするものです。

 職員には自衛隊員倫理法が適用され、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをすることは許されません。しかし、次期戦闘機の開発・生産・輸出にあたっては三菱重工、IHIや三菱電機など主な受注企業がすでに決まっています。派遣される職員は、受注企業に対してどのような職務を行うのですか。次期戦闘機とその輸出は、安保三文書で位置づけられた軍需産業強化の方針に基づくものです。派遣される職員は、受注企業の利益を最大化するために働くことになるのではありませんか。本法案に、特定の企業への利益誘導を禁ずる規定はありますか。

 軍需産業はかねてから、政官財の構造的な癒着が深刻です。最近10年間の防衛調達(中央調達)における三菱重工、IHI、三菱電機の受注総額はそれぞれいくらですか。同じく最近10年間、防衛省・自衛隊から3者への天下りはそれぞれ何人ですか。自民党の政治資金団体である国民政治協会に対する三菱重工の献金額は10年で3.3億円、IHIは1億円、三菱電機は1.9億円に上ります。自民党への巨額の献金と天下りの受け入れが、その何倍もの受注となって環流しています。利権と癒着の闇を、次期戦闘機でいっそう深いものとするなど断じて許されません。答弁を求めます。

 本法案は、陸海空を問わず自衛隊が必要とする輸送を行う自衛隊海上輸送群を新編し、その任務に当たる自衛官の権限強化を定めています。

 海上輸送群は、米軍の輸送も行うのですか。

 海上輸送力の強化の対象となる南西地域では、民間港湾における軍事利用を平時から強める「特定利用港湾」の計画が進められています。海上輸送群も、こうした民間港湾を平時から利用する予定ですか。

 内閣官房のQ&Aは、「民間の空港・港湾で、様々な団体の反対があり、なかなか自衛隊がアクセスできない状況がある」としています。断られた事例を具体的にお示しください。特定利用港湾では、従来自治体が断っていたようなケースでも、あくまで自衛隊が優先利用できる仕組みにしていくつもりですか。

 本法案は、自衛官の人材不足を理由に、任期付自衛官の導入や予備自衛官の任用期間の延長を盛り込んでいます。

 自衛官の採用者数と中途退職者数は、この間どのように推移していますか。大臣はその理由をなんだとお考えですか。浜田前防衛大臣は昨年、いじめやハラスメントを原因とする退職について「調査する」と答弁しています(2023年4月11日参院外交防衛委員会)。調査の結果、いじめやハラスメントが自衛官を続けられない原因となっている実態を認識しましたか。

 「自衛官の人権弁護団・全国ネットワーク」が昨年行ったウェブアンケートには、当事者やその家族などから2か月で144件の相談が寄せられました。パワハラが8割を占め、セクハラやマタハラも見られます。重大なことは、防衛省・自衛隊が行っているとするハラスメント対策について、9割近くが有効とは「思わない」と答えていることです。「ハラスメントした人たちが昇任しており対策はポーズだけ」「人事評価を下げられ給与や昇任面でも不利益」といった声もあります。特別防衛監察を含むこの間の調査では、全く不十分ということではありませんか。

 自衛官の人材不足は、組織のあり方そのものの問題に加え、大軍拡により戦争する部隊に変容させていることに要因があるというべきです。戦争する国づくりに、人が集まるはずがありません。

 「抑止力」にすがり、日米一体の戦争体制で対中包囲網を強めるのではなく、米国も中国も含む対話の枠組みを発展させるべきです。徹底した平和外交で、戦争させない努力を尽くすことこそ政治の責任であることを強調し、質問とします。

ページ
トップ