2024年5月29日
次期戦闘機の共同開発 徹底審議を
次期戦闘機の共同開発に向けた政府間機関設立条約について、本会議で質問しました。
外務大臣も防衛大臣も、憲法に基づく平和国家として武器輸出を禁止してきた従来の立場を忘れ去ったかのような答弁。維新の会は、輸出解禁を次期戦闘機に限るのは不当だなどとあおる始末です。明日から委員会での審議が始まります。衆議院では1日で採決、参議院は2回は審議するとしていますが、限られた時間であることは変わりありません。安保政策にかかわる重大な方針転換をこんなに軽々しく進めること自体が大問題。徹底審議を求め論戦に臨みます。
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日本共産党を代表し、次期戦闘機共同開発条約(GIGO設立条約)について質問します。
ICJ国際司法裁判所は24日、イスラエルに対し、ガザ地区南部ラファでの攻撃を直ちに停止するよう暫定措置を命じました。法的拘束力のある命令です。
ところがイスラエル政府は、ラファでの軍事行動は「パレスチナ市民の殺害につながらない」などと述べ、命令後も攻撃を続けています。政府はどう認識し、どう対応していますか。日本政府を含め、ガザ攻撃の国際法違反を正面から非難しない姿勢が、国際法や国際裁判所の判断を無視するイスラエルを助長してきたのではありませんか。即時停戦のために日本政府はいかなる外交を行うのか、答弁を求めます。
米国バイデン政権は14日、イスラエルに対して砲弾や戦闘用車両など総額10億ドル、1550億円以上の武器を売却する方針を議会に通知したとされます。こうした米国の姿勢が、ICJの命令をも意に介さないイスラエルの攻撃続行を可能にしているのではありませんか。
政府は24日、ロシアによる北朝鮮からの武器調達に関し、ロシア関係者の資産凍結など制裁措置を強めることを決めました。その理由はなんですか。
イスラエルに対しても、ロシアに対しても、第三国による武器輸出が戦闘の継続を支え、犠牲を拡大している現実をどう認識していますか。以上、外務大臣の答弁を求めます。
本条約は、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の開発、生産、輸出を管理し推進するための政府間機関GIGOを設立するものです。
モデルとされたNATOユーロファイター・トーネード管理機関NETMAは、二つの戦闘機の共同開発や輸出を管理するNATOの一機関です。しかし日本はNATOの一員ではありません。なぜNETMAと同様の組織をつくるのですか。米国以外のNATO加盟国と、初めて戦闘機の共同開発を行うねらいはなんですか。
次期戦闘機に関する共同首脳声明は、抑止力の強化を強調しています。一方、パートナー国となる英国は、2003年イラク戦争に参戦し、2011年リビアの内戦に介入、2014年からイスラム国への空爆を始め、2018年にはシリアの化学兵器施設への空爆に参加するなど、各地で戦闘行為を繰り返してきました。イラク戦争をめぐっては2015年、ブレア元首相が「誤りだった」として謝罪し、翌年独立調査委員会が「根拠なき戦争だった」と断罪するに至りました。この四半世紀に限ってみても、英国が中東地域で平和と安定を壊してきた事実をどう認識していますか。その英国との戦闘機の共同開発が、なぜ日本にとって抑止力向上といえるのですか。
2022年12月、政府と与党が次期戦闘機の共同開発を決めた時点では、日本から第三国への輸出は行わない前提だったといい、翌2023年1月から3月にかけて、英国やイタリアが輸出による貢献を求めていることを認識したとされます。事実なら、協議入りした直後に「前提」が崩れていたことになり、あまりにも不自然です。英国やイタリアが輸出に関心をもっていることは、NETMAの実績からも当然予想されます。むしろ当初から、輸出を前提に協議に入っていたのではありませんか。ごまかしはやめるべきです。
「輸出による価格低減努力」とは、日本からの輸出解禁で販路を拡大し、量産で売り上げを増やし、相対的に開発コストを抑えるねらいにほかなりません。次期戦闘機の開発にかかわって、これまで支出した国費はいくらですか。安保三文書の5年間でいくらと見込んでいますか。開発費の総額に上限は設けますか。青天井に開発費をつぎ込み、利益を確保するには売りさばくしかないとばかりに突き進むつもりですか。お答えください。
輸出の対象は「次期戦闘機に限る」と言います。しかし、与党協議の座長だった小野寺五典元防衛大臣は「戦闘機というハードルの高い装備が最初に認められた。第三国移転の道は開けた」「新しい案件を追記していけばいいだけで、何の制約もない」などと早々に述べました。最新鋭の戦闘機が輸出可能なら、艦船や弾薬などあらゆる殺傷兵器も輸出できて当然と考えているのではありませんか。
「現に戦闘が行われていると判断される国」へは輸出しないといいます。現時点で何カ国あり、具体的にはどこですか。衆議院で政府は米国について、「米国内において、武力紛争の一環として現に戦闘が行われているとは認識していない」と答弁しています。国外で侵略していたとしても、国内で戦闘が行われていなければ現に戦闘中ではないということですか。基準が全く定かでなく、いくらでも恣意的判断ができるのではありませんか。
輸出にあたり、二重の閣議決定で厳格なプロセスを経るといいます。閣議決定に至る政府・与党協議の資料や議事録は、公開しますか。プロセスは全く不透明ではありませんか。以上、防衛大臣の答弁を求めます。
外務大臣は武器輸出の原則について、「国連憲章を遵守するとの平和国家としての理念を引き続き堅持していく」と述べています(4月25日衆院本会議)。しかし、日本の平和主義は、国連憲章のみでなく、憲法9条に立脚するものです。憲法に基づく平和国家の立場を、どう認識していますか。
国際紛争の助長を回避するため、武器の輸出は行わない――武器輸出禁止は、1976年に三木内閣が政府統一見解として表明し、1981年、衆参本会議の全会一致の決議は、「日本国憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえ」、これを国会の総意と確認しています。
その後政府は、武器輸出禁止を非核三原則と並ぶ「国是」であると国会で繰り返し答弁してきました。殺傷兵器の最たるものである戦闘機の輸出まで解禁するのは、「国是」としてきた武器禁輸をいよいよ骨抜きにするものです。到底許されないのではありませんか。
以上、外務大臣の答弁を求めます。
次期戦闘機は、「無人機との連携機能」が特徴とされ、日米で共同技術研究に合意しています。人工知能AIに有人機の戦闘パターンを学習させ、自律的に攻撃したりおとりになったりするといい、その最大のメリットは、撃ち落とされても人が死なないこととされます。AIが自律的に攻撃するなら、敵に照準を合わせ、発射ボタンを押す心理的抵抗もなくなります。戦闘行為のハードルを下げ、犠牲をいっそう拡大しかねません。防衛大臣は、その認識をお持ちですか。
外務大臣、こうした兵器は、開発競争に加わるのではなく、禁止の国際規範づくりでこそリードすべきなのではありませんか。
次期戦闘機を受注する三菱重工とIHIなど軍需産業は、特需にわいています。川崎重工を加えた大手3社の今年3月期の受注高は、前年比2.2倍の3兆1800億円、来年3月期も同水準が見込まれるといいます。
今年2月に開かれた「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」で防衛省が議論を求めた論点には、「防衛力の抜本的強化と経済成長の好循環を生み出すこと」とあります。軍事費倍増と輸出解禁を背景に、軍需産業を特別扱いで支え経済成長をと、本気で考えているのですか。それは、産業も経済も軍事に従属させ、社会全体にゆがみをもたらしかねません。防衛大臣の認識をうかがいます。
軍事分野でこそ、政治とカネの闇が問われます。2017年、防衛大臣だった稲田朋美氏が予定していた政治資金パーティーを中止し購入者に返金。当時の収支報告書から、防衛省の受注企業23社が計114万円分のパーティー券を購入していたことが明らかになりました。大臣規範との抵触も疑われます。防衛大臣は、ご自身の政治資金団体や所属する派閥の政治資金パーティーで、軍需産業にいくらパーティー券を買ってもらっていますか。次期戦闘機を受注する三菱重工、IHI、三菱電機の3社について、過去10年の実績をお示しください。
戦闘機の輸出解禁は、憲法9条に基づく平和国家としての日本を大きく逸脱するものであり断じて容認できません。武器を売り歩き利益を増やす、武器輸出大国へ突き進むことは許されないことを重ねて強調し、質問とします。