予算委員会の締めくくり総括質疑、討論、採決に続いて、午後の参議院本会議で来年度予算案が採決されました。
日本共産党、立憲民主党、維新の会などが反対。自民、公明、国民の賛成で成立しました。
参議院での予算審議が始まった日にロシアのウクライナ侵略が始まり事態は一変。この問題で政府をただしつつ、チームプレーで様々な角度の論戦に臨んできました。
予算委員会の質疑は、議員団が知恵を出し合い練り上げています。一つひとつが珠玉の質疑。審議の中身を討論でもなるべく紹介しようと原稿をつくりました。
本会議での討論原稿をご紹介します。
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日本共産党を代表し、2022年度総予算3案に、反対の討論を行います。
冒頭、ロシアによるウクライナ侵略に、満腔の怒りをもって抗議します。ロシアの軍事行動は、武力行使を禁じた国連憲章の明白な違反であり、原発、病院、避難所などへの無差別攻撃は、ジュネーブ条約をはじめ国際人道法に反します。断じて許されません。侵略を直ちに中止し、即時に撤退するよう強く求めます。
国際司法裁判所は、ロシアに対し、侵攻の即時停止を命じる暫定措置命令を出しました。国連総会では、人道支援のアクセス確保、国際人道法の尊重などを求める新たな人道支援決議採択の動きが始まっています。国連憲章を守れ、国際人道法を守れの一点で、国際社会が力を合わせることがなにより求められています。
一方本予算案には、2016年に安倍元首相がプーチン大統領と約束した8項目の経済協力プランに基づく21億円が計上されたままです。ロシアによる実効支配を強め、日本の領土主権が損なわれる、4島での共同経済活動とセットの経済協力を、この期に及んで放置することは看過できません。総理は「予算の執行段階で適切に判断したい」と言いますが、予算案に計上しておくこと自体、適切ではありません。経済協力プランはきっぱり中止し、予算は削減すべきです。
本予算案は、長期化するコロナ禍から国民の命とくらしを守るという点で、まったく不十分です。
総理は記者会見で、「第6波の出口ははっきり見えてきた」と述べました。死者数は第5波の3倍近くに上り、いまだに増え続けています。過去最悪の結果を招いた責任を、曖昧にすることはできません。ワクチンの3回目接種が遅れ、検査も不十分なままです。この現状を、一体どう認識しているのですか。
コロナ禍の2年間、医療体制を恒常的に強化する予算は組まれず、逆に急性期病床の削減は着々と進められ、消費税を財源とする国の補助金を受け、全国で2846もの病床が削減されました。いい加減にやめるべきです。
保健所の体制強化は、2年間で保健所1か所当たりわずか2.4人分に過ぎません。保健師を2倍にしてほしい、限界をはるかに超えているという現場の声に、正面から向き合うべきです。
児童・生徒の感染者数が第5波を大きく上回り、小学校や保育園の休校休園が相次ぐなか、保護者の休業補償が切実な課題です。にもかかわらず、小学校休業等対応助成金の支給実績は少なく、相談窓口が働きかけた企業の8割が特別の休暇制度を導入しないと答えています。事業主が認めない限り支給しないという現行制度は見直すべきです。
多くの事業者が営業時間の短縮や自粛を余儀なくされてきました。ところが事業復活支援金は、対象期間が5か月と短く、支給額も不十分です。せめて持続化給付金と家賃支援給付金並に、支援を拡充すべきです。
くらしと営業を支える抜本的な対策強化が求められるにもかかわらず、予備費5兆円で対応しようとするのは「その場しのぎ」の姿勢というほかありません。
総理は「新しい資本主義」を掲げ、「新自由主義の弊害を是正する」と述べました。
低賃金で不安定な働き方が広がり、結婚のハードルを上げ少子化にも拍車をかけました。派遣法の改悪など、非正規雇用を4割にまで拡大した政治に重大な責任があります。ところが官房長官は、非正規雇用の増大が「新自由主義の弊害」であるとは認めようとしませんでした。これを弊害と言わずに、一体なにを弊害というのですか。
フリーランスは、最低賃金の保障も労働時間の制限もなく、コロナ下での育児休業支援金も受け取れません。人間らしい生活を保障するため、「労働者」としての保護こそ必要です。
男女の賃金格差の開示について、有価証券報告書や女性活躍推進法の見直しを検討することが表明されました。直ちに進めるべきです。
一方現実には、将来の職務内容や配置の変更の可能性の違いを理由に、勤続年数ゼロでも男女の格差があります。厚労大臣は、わが国の雇用環境を踏まえたものだと開き直りましたが、国際基準の「同一価値労働同一賃金」とは言えません。女性が多い職場の非正規化や「コース別人事」など、男女格差を温存してきた企業と、それを許してきた政治の責任が問われなければなりません。
格差と貧困の拡大は、新自由主義の本質です。ところが、所得1億円を超える富裕層で所得税負担率が軽くなる、「1億円の壁」の是正は、早々に先送りされました。総理は「優先順位が違う」と言いますが、これこそまず実現すべきです。
第二次安倍政権以降、大企業は約130兆円もの内部留保を積み増しました。賃金を低く抑え、法人税を減税してきた結果です。日本共産党は、このストック分に課税し、最低賃金の大幅引き上げなど賃上げに使う提案をしています。総理は、「政府としては賃上げ税制だ」と述べますが、賃上げ税制を8年にわたり実施しながら、実質賃金が低下している現実を直視すべきです。
来年度、公的年金が0.4%引き下げられようとしています。自公政権の10年で、実質6.7%もの削減です。年金受給額の減少に配慮するなら、年金カットをやめるべきです。
消費税は5%に減税し、中小業者やフリーランスを倒産・廃業に追い込むインボイス制度は中止すべきです。
東日本大震災と東電福島第一原発事故から11年。最高裁は、原発事故の被害賠償を求めた6つの集団訴訟で決定を下し、東京電力の責任が初めて確定しました。いずれも賠償の目安を定めた国の中間指針を上回る損害を認めています。中間指針は直ちに見直すべきです。
原発事故は、いまもふるさとと人生を丸ごと奪い続け、被害者を苦しめ続けています。この事実を無視して、テロ対策施設が未完成でも再稼働を認めよなどというのは暴論です。
気候危機への対応は、原発ゼロと脱炭素を決断し、再エネ・省エネの抜本的拡大で進めるべきです。総理は「水素やアンモニアを活用する」といいますが、いまだ実証段階の技術に頼るのは、石炭火力の延命策にほかなりません。経済界の要求で、海外輸出の公的支援まで行うのは、途上国を含めた世界的な脱炭素化の足を引っ張ります。COP26で化石賞を受賞した理由を自覚すべきです。
本予算案は、護衛艦の空母への改修と搭載するF35戦闘機の取得、長距離巡航ミサイルの開発など、敵基地攻撃能力に利用可能な兵器の保有を進めるものとなっています。
総理は敵基地攻撃能力の保有について、「憲法と国際法の範囲内で検討する」といいます。しかし、安倍元首相は「相手国をせん滅する打撃力」といい、防衛大臣は相手国領空での空爆を「排除しない」と述べ、「専守防衛」「海外派兵の禁止」など、歴代政権の憲法解釈との整合性すら投げ捨てています。断じて容認できません。
自民党や一部野党が、日米の「核共有」を求めていることも看過できません。非核三原則は、衆参の本会議決議を経て国是とされたものです。日本被団協の声明は、「(核兵器は)人間として認めることができない絶対悪の兵器」だと厳しく批判しています。総理は核共有を否定しましたが、ならば与党内での議論や検討は、きっぱりやめさせるべきです。
松井芳郎公述人が述べたように、核抑止力論は、19世紀の国際社会を支配した勢力均衡の考え方と同じです。軍事、核、力の論理による対抗は、際限のない軍拡競争で緊張関係を高めるばかりです。東アジアを平和と協力の地域にするために、憲法9条をいかした外交戦略に知恵と力を尽くすことこそ政治の役割だと強調し、反対討論とします。