2022年12月21日
ODAの指針「開発協力大綱」改定について
ODAの指針、「開発協力大綱」改定についての有識者懇談会のメンバーである稲場雅紀氏(アフリカ日本協議会)と日本国際ボランティアセンターの今井高樹氏と懇談しました。
安保3文書の改定に前後して、開発協力大綱の見直しが急いで進められています。懇談会は9月に林外務大臣が会見で述べ、わずか4回、6.5時間の審議で12月には報告書の公表に至りました。NGOは、途上国の持続可能な開発につながる開発協力を推進する立場とともに、非軍事原則など歯止めを守らせる立場からの発言も求められます。ところが懇談会は、政府の方針をなぞるように「安全保障環境の悪化」を前提とし、開発協力を外交に従属させる方向で進められたといいます。
報告書には、懇談会で議論しなかった現状認識が盛り込まれました。「世界は約30年続いたポスト冷戦期の終焉を迎え、極めて複雑な国家間競争の時代に入った」という一文は、「新冷戦」的発想に立つものだと稲場さん。「自由で開かれたインド太平洋」というあいまいな概念を盛り込み、「日本外交の最重要手段の一つとしてODAを戦略的に活用」などとし、日本の安全保障政策が前面に出され、本来の目的である途上国の持続可能な開発は後景に。
「ジェンダー主流化」という言葉が入るなど、稲場さんらの奮闘で評価できる内容となった面もある一方、全体としてはODAを大きく変質させる方向を示すものになっています。加えて安保3文書では、ODAとは別の武器輸出の拡大も掲げており、これまでの積み重ねを全く無視した世界に踏み出そうとしています。
日本が平和国家であるために、紛争地域でも日本のNGOが標的にされず信頼されてきた実例をいくつも紹介いただきました。
安保3文書改定による大軍拡路線は、世界のなかでの日本の位置も変えてしまうでしょう。この方向は、やはり危険です。