2023年4月27日
日豪・日英版「地位協定」 反対討論
外交防衛委員会で、日豪・日英版「地位協定」について質問。採決まで行われました。
オーストラリア国防軍や英国軍が日本国内で活動する場合の法的地位を定めるものですが、特に刑事裁判権が問題に。一昨日の質問では、協定締結前はどのような合意をしてきたのかと質問したのに対して、外務省は答弁不能に。昨夜、説明を受けたのですが、「文書で報告はできない」というので文書にするよう求めていました。
ところが、今朝の理事会ではなんの報告もなく、「これでは採決の前提を欠く」と主張。その結果、今日の私の質問直前にいったん休憩となり、理事会を再開。外務省からようやく文書で説明がなされました。もっともその説明は、「一般国際法の考え方を踏まえて〜」と一般論に終始しており、外国軍隊に対する刑事裁判権をどのように整理してきたのか明らかになっていません。
質問では死刑をめぐる問題を指摘。日本に死刑が残っているために、死刑廃止国は簡単に日本に刑事裁判権を行使させるわけにはいかないーーおそらくこの点が、外務省が説明を拒みたがる背景にあると思われます。
協定はねらいも内容も大問題ですが、議論を通じて日本が死刑制度を存置し執行を続けていることの問題点が浮き彫りに。
===================
日本共産党を代表し、日豪、日英部隊間円滑化協定の承認を求めるの件、及び両協定実施法案、4案に反対の討論を行います。
両協定は、日米同盟を中心に、自衛隊の海外活動と外国軍との共同の軍事活動をいっそう強化しようとする措置であり、憲法9条に明確に反します。
岸田政権が閣議決定した「国家防衛戦略」は、日米同盟の抑止力・対処力の強化にとどまらず、「同志国等との連携の強化」を明記しました。同志国等とは、米国の同盟国・パートナー国を指すことは明らかであり、それらの国々との軍事的協力の強化を図ろうとするのは、インド太平洋地域において「同盟・パートナー関係のネットワーク化」と「能力強化」を進める米国の戦略に従ったものにほかなりません。
日豪2+2では、将来自衛隊のF-35をオーストラリアにローテーション配備する計画まで合意しました。日本を守るどころか地域の緊張関係を高めかねず、法的根拠もあいまいです。なし崩しに軍事的一体化を進めることは許されません。
両協定は、派遣国の軍隊の構成員が「公務中」に罪を犯した場合の第一次裁判権を派遣国側に与えています。外務省は両協定について、「公務中」かどうかは「具体的な事案に応じて判断される」と答弁しました。日米地位協定の下では、米側が公務証明書を発行した場合、日本側はその反証をしなければならず、反証をしても最終的には合同委員会の協議次第という不当な運用がまかり通っています。日豪・日英間でも同様の事態を招きかねません。外国軍隊の活動のために重要な国家主権である刑事裁判権を放棄することは許されません。
また、日本で死刑が求刑される可能性がある重大な犯罪の場合、派遣国であるオーストラリア及び英国側は、日本側に被疑者の身柄を引き渡す義務を負いません。日本が死刑制度を存続させ執行を続けていること自体が深刻な問題ですが、その結果として重大な犯罪ほど日本側の裁判権が失われるという不平等な内容であり認められません。
さらに、両協定が締約国間の協議機関として合同委員会を設置し、協議を行うだけでなく取り決めを行うことができるとしていることも看過できません。両協定には、議事録の作成についての規定はありません。外務大臣は衆議院で、仮に作成した場合も個々の事案ごとに検討し双方の同意があれば公表できるとすることを想定していると答弁しており、合同委員会の設置前から開示に消極的です。これでは国民の知る権利を侵害し、外国軍隊の活動による問題について国会と国民の監視を困難にします。
いかなる国であれ力による一方的な現状変更が認められず、国連憲章と国際法に基づきただすべきことは言うまでもありません。そのうえで政府がいま行うべきは、地域の緊張を高める軍事的協力態勢の強化ではなく、東アジアを平和の地域にするために包摂的な安全保障の枠組みをつくる平和外交であることを強調し、討論とします。