2024年・第213通常国会
- 2024年5月8日
- 本会議
防衛省設置法等改正案 インド太平洋全域で米軍と連携するつもりか
○山添拓君 日本共産党を代表し、防衛省設置法等改定案について防衛大臣に質問します。
本法案は、安保三文書に基づき、陸海空自衛隊の実働部隊を一元的に指揮する統合作戦司令部を創設しようとしています。
政府がその必要性を認識したのはいつですか。河野克俊元統合幕僚長は、二〇一八年七月の講演で、米太平洋軍ハリス元司令官から、統合幕僚長は私のカウンターパートではない、自衛隊にも常設の統合司令官が必要ではないかと言われ、英軍やオーストラリア軍を参考にするよう助言され、研究を開始したと述べています。安保三文書以前に米国から創設を求められていたのではありませんか。
政府は、本法案の立法事実にも、自衛隊に米インド太平洋軍司令官との調整機能が不足していることを挙げています。米軍は全世界を六つの責任区域に区分し、それぞれに統合軍を配置しています。インド太平洋軍の担当地域はどこですか。自衛隊の統合作戦司令部は、その全域で米軍と連携し、共同で作戦を作り対処できるようにするつもりですか。
米国は、自衛隊の統合作戦司令部設置に合わせ、在日米軍の司令部機能を強化する調整に入ったと報じられています。インド太平洋軍の司令部を東京横田基地にある在日米軍司令部に移転し、横須賀を拠点とする米海軍第七艦隊や沖縄を中心とする米海兵隊を含め、作戦や指揮統制を担わせていく計画ですか。東京に日米の司令部機能が集中し、シームレスな統合の結節点となれば、攻撃する側にとっては標的とする口実になります。そのリスクをどう考えていますか。お答えください。
政府は、従来、自衛隊が他国の軍隊の指揮下で武力を行使することは、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるもので憲法上許されないとしてきました。この答弁に変わりはないか、確認します。
大臣は、自衛隊と米軍はそれぞれ独立した指揮系統により行動すると繰り返す一方、日米で緊密に連携する、指揮統制の在り方も連携の強化を高めていくと述べています。連携はどこまで高めるのですか。憲法上の限界はどこにあるとお考えですか。
日米が緊密に連携した指揮統制の下に共同対処すれば、武力行使は一体化しています。自衛隊の武力行使が必要最小限度の範囲を超えない保障はどこにありますか。
敵基地攻撃における日米共同対処のオペレーションは、目標情報の共有、攻撃する目標の分担、成果についての評価の共有のそれぞれで日米が協力すると想定されています。統合作戦司令部は、こうした共同対処でどのような役割を担うのですか。情報、装備とも圧倒的に優位に立つ米軍に、事実上従うほかないのではありませんか。
大臣は、自衛隊の運用は米国の情報だけでなく我が国自身が収集した情報を含め、全ての情報を統合して行われると言います。しかし、政府が導入を予定するトマホークは、事前にレーダー地図や情景を登録し、巡航中に得た情報と照合しながら最終目標に向けて進路を修正していきます。だから高精度とされます。自衛隊は、事前に入力するような情報を保有していますか。米側に専ら依存するのではありませんか。それとも、今後、莫大な費用を掛け、独自の情報収集を進めるとでもいうのですか。答弁を求めます。
米太平洋陸軍のフリン司令官は、四月三日、一部記者団との懇談で、年内にインド太平洋地域に新たな中距離ミサイルを配備する方針を明かしました。トマホークや対空ミサイルSM6を発射できる新型発射装置、タイフォンを指すとされます。この計画は事実ですか。タイフォンは移動式のミサイル車両で、米軍が必要に応じ展開できます。日本への配備や一時展開も認めるのですか。
米国は、トランプ前政権がロシアとの中距離核戦力、INF全廃条約を破棄し、二〇一九年八月に失効するまで、射程五百から五千五百キロのミサイル保有を禁じられてきました。中国とのミサイルギャップ解消を掲げ、日米でミサイル配備の強化を進めるつもりですか。ミサイルの開発、配備をめぐる軍拡競争を加速させることは明らかではありませんか。
本法案は、日英伊三か国が共同開発を進める次期戦闘機の開発、生産、輸出を管理する国際機関、GIGOへの防衛省職員の派遣を可能とするものです。
職員には自衛隊員倫理法が適用され、職務上知り得た情報について、国民の一部に対してのみ有利な取扱いをすることは許されません。しかし、次期戦闘機の開発、生産、輸出に当たっては、三菱重工やIHI、三菱電機など、主な受注企業が既に決まっています。派遣される職員は、受注企業に対してどのような職務を行うのですか。次期戦闘機とその輸出は、安保三文書で位置付けられた軍需産業強化の方針に基づくものです。派遣される職員は、受注企業の利益を最大化するために働くことになるのではありませんか。本法案に特定の企業への利益誘導を禁ずる規定はありますか。
軍需産業は、かねてから政官財の構造的な癒着が深刻です。最近十年間の防衛調達における三菱重工、IHI、三菱電機の受注総額はそれぞれ幾らですか。同じく最近十年間、防衛省・自衛隊から三者への天下りはそれぞれ何人ですか。
自民党の政治資金団体である国民政治協会に対する三菱重工の献金額は十年で三・三億円、IHIは一億円、三菱電機は一・九億円に上ります。自民党への巨額の献金と天下りの受入れがその何倍もの受注となって還流しています。利権と癒着の闇を次期戦闘機で一層深いものとするなど断じて許されません。答弁を求めます。
本法案は、陸海空を問わず、自衛隊が必要とする輸送を行う自衛隊海上輸送群を新編し、その任務に当たる自衛官の権限強化を定めています。海上輸送群は、米軍の輸送も行うのですか。
海上輸送力強化の対象となる南西地域では、民間港湾における軍事利用を平時から強める特定利用港湾の計画が進められています。海上輸送群もこうした民間港湾を平時から利用する予定ですか。
内閣官房のQアンドAは、民間の空港、港湾で、様々な団体の反対があり、なかなか自衛隊がアクセスできない状況があるとしています。断られた事例を具体的にお示しください。特定利用港湾では、従来自治体が断っていたようなケースでも、あくまで自衛隊が優先利用できる仕組みにしていくつもりですか。
本法案は、自衛官の人材不足を理由に、任期付自衛官の導入や予備自衛官の任用期間の延長を盛り込んでいます。
自衛官の採用者数と中途退職者数は、この間どのように推移していますか。大臣はその理由を何だとお考えですか。
浜田前防衛大臣は、昨年、いじめやハラスメントを原因とする退職について調査すると答弁しています。調査の結果、いじめやハラスメントが自衛官を続けられない原因となっている実態を認識しましたか。
自衛官の人権弁護団・全国ネットワークが昨年行ったウェブアンケートには、当事者やその家族などから二か月で百四十四件の相談が寄せられました。パワハラが八割を占め、セクハラやマタハラも見られます。重大なことは、防衛省・自衛隊が行っているとするハラスメント対策について、九割近くが有効とは思わないと答えていることです。ハラスメントした人たちが昇任しており、対策はポーズだけ、人事評価を下げられ、給与や昇任面でも不利益といった声もあります。特別防衛監察を含むこの間の調査では全く不十分ということではありませんか。
自衛官の人材不足は、組織の在り方そのものの問題に加え、大軍拡により戦争する部隊に変容させていることに要因があると言うべきです。戦争する国づくりに人が集まるはずがありません。
抑止力にすがり、日米一体の戦争体制で対中包囲網を強めるのではなく、米国も中国も含む対話の枠組みを発展させるべきです。徹底した平和外交で戦争させない努力を尽くすことこそ政治の責任であることを強調し、質問といたします。(拍手)
○防衛大臣(木原稔君) 山添拓議員にお答えいたします。
統合作戦司令部の新設についてお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増している中、平時から有事までのあらゆる段階における活動をシームレスに実施できるよう、統合運用により機動的、持続的な活動を行うことが不可欠です。
こうした観点を踏まえ、国家防衛戦略等において常設の統合司令部を創設することとしました。あくまで我が国自身の主体的な判断として自衛隊の統合運用の実効性を強化するためであり、米国に言われて創設を決定したとの御指摘は当たりません。
次に、統合作戦司令部の新設と米側の態勢についてお尋ねがありました。
お尋ねのインド太平洋軍の責任地域は、米国西海岸沖から日付変更線を越えてインドの西部国境までの地域であると承知しています。その上で、自衛隊による全ての活動は、我が国の主体的な判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われるものであり、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動します。この点は統合作戦司令部の新設後も変わりません。
また、先般の日米防衛相会談において、米軍と自衛隊の相互運用性強化のため、それぞれの指揮統制枠組みの向上について日米間で引き続き議論していくことで一致しましたが、御指摘の米側の態勢については、現在米側において検討しているとのことであり、予断を持ってお答えすることは差し控えます。
その上で、日米のそれぞれの指揮統制枠組みの向上を含む様々な取組により、日米同盟の抑止力、対処力は一層強化されることとなるため、御指摘のようなリスクが高まるとは考えていません。
次に、日米の連携と指揮系統についてお尋ねがありました。
お尋ねの一九九〇年十月二十六日の衆議院国際連合平和協力に関する特別委員会における中山外務大臣の答弁は自衛隊の国連軍への参加に関するものでありますが、この答弁に変更はありません。
その上で、自衛隊による全ての活動は、米軍との共同対処を含め、我が国の主体的な判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われることとなっており、また、自衛隊及び米軍は各々独立した指揮系統に従って行動することとしています。この点は日米ガイドラインにも明記されており、日米間でも認識を共有しているものです。
こうした認識を踏まえ、指揮統制に係る調整要領や連携の強化も含め、日米の相互運用性及び即応性を強化するために同盟としていかに効果的に連携して対応していくか、議論を進めてまいります。
次に、統合作戦司令部の下での日米共同対処等についてお尋ねがありました。
まず、自衛隊の全ての活動は、御指摘の反撃能力の行使も含め、主権国家たる我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われ、また、自衛隊及び米軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することから、運用に係る意思決定はあくまで自衛隊が行うことは当然です。
また、お尋ねのトマホークを含め、スタンドオフミサイルの運用に係る具体的な要領等については現在検討中であり、具体的にお答えできる段階にはありませんが、いずれにせよ、自衛隊の運用は、米国の情報だけでなく、我が国自身で収集した情報を始め、全ての情報を総合して行われるものです。
その上で、情報収集を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築することとしていますが、いずれにせよ、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することに何ら変更はありません。
次に、米軍の中距離ミサイルの配備及び日米のミサイルの配備についてお尋ねがありました。
お尋ねの地上発射型中距離ミサイルシステムを我が国に一時的に展開する計画は承知しておりません。その上で申し上げれば、地上発射型中距離ミサイルについては、米国から、直ちに配備する状況にはなく、また具体的な配備先について検討するには至っていないとの説明を従前より受けているところです。
ミサイルの取得や配備を含め、我が国の防衛政策や防衛力整備は特定の国や地域を脅威とみなし、これに軍事的に対抗していくという発想に立っているものではなく、また、我が国の防衛政策はこれまでも透明性を持って進めてきており、御指摘のような軍拡競争につながるとの御指摘は当たりません。
次に、GIGOに派遣される職員と企業との関係、防衛省職員派遣処遇法における規定、受注額や再就職の人数を含めた企業と政府との関係についてお尋ねがありました。
GIGOへ派遣される職員は、防衛省職員派遣処遇法上、防衛省職員の身分を維持することから、自衛隊員倫理法が適用され、また、GIGOにおいては、英伊から派遣される職員とともに、三か国の企業から成る共同事業体制との間で次期戦闘機の開発に係る事業管理を実施するものであり、御指摘の特定の企業への利益誘導を行うことはありません。
また、防衛省が実施する装備品の中央調達において、過去十か年における三菱重工株式会社との契約金額の総額は約四兆四千八百億円、株式会社IHIとの契約金額の総額は約四千九百億円、三菱電機株式会社との契約金額の総額は約一兆一千億円となっております。
過去十か年におけるこれらの企業への自衛隊法の規定による再就職の届出等に基づき防衛省が公表している再就職者は、それぞれ、三菱重工株式会社二十六人、株式会社IHI二十人、三菱電機株式会社三十八人となっています。
これらの契約や再就職は、いずれも法令にのっとり公正に実施した結果であり、政治献金との因果関係はなく、利権と癒着の闇を次期戦闘機で一層深いものとするとの御指摘は当たりません。
次に、自衛隊海上輸送群についてお尋ねがありました。
自衛隊海上輸送群は、統合運用体制の下、自衛隊の部隊や装備品の輸送任務を専門的に担う部隊として新編するものであり、米軍の輸送を目的とした部隊ではありません。
また、特定利用港湾は、海上輸送群を含む自衛隊による利用が想定されますが、港湾等の既存の法令に基づき、関係者間で連携し、調整するための枠組みを設けるものであり、自衛隊の優先利用のためのものではありません。
なお、相手との関係もあることから、自衛隊が民間空港、港湾の利用を断られた事例等をお示しすることは困難です。
次に、自衛官の採用者数、中途退職者数及びハラスメント対策についてお尋ねがありました。
高校新卒者の有効求人倍率が令和五年七月末には過去最高に達したことなどもあり、民間も含めた人材獲得競争が熾烈なものとなる中、自衛官の募集は大変厳しく、採用者数は減少し、中途退職者数も増加しているところです。
また、いじめやハラスメントを含む職場の人間関係を理由とした離職者が一定数いるのも事実ですが、ハラスメント対策については、特別防衛監察における一千三百二十五件の被害の申出のほか、それ以外の個別のハラスメント案件についても調査を行っており、対策が不十分との御指摘は当たりません。
防衛省・自衛隊としては、募集能力の強化、離職者対策、ハラスメント防止対策を含め、あらゆる選択肢を排除せず、人的基盤の強化に引き続き取り組んでまいります。(拍手)