山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

米国の原爆投下正当化 外務省「抗議、撤回求めたことない」 根底に核抑止論

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
アメリカ共和党のリンゼー・グラハム上院議員が、八日、上院歳出委員会国防小委員会の公聴会で、バイデン政権のイスラエルへの弾薬輸送停止を批判し、その中で、広島、長崎への原爆投下に触れ、日本への原爆投下は正しい判断だったと思うかと質問しました。米軍のチャールズ・ブラウン統合参謀本部議長が、世界大戦を終わらせたと言えると答え、続けて問われたオースティン国防長官も同意しました。
上川大臣は衆議院で、これらは受け入れられないとして申入れを行ったと答弁しています。グラハム議員に対してどんな申入れを行ったのか、抗議し、撤回を求めたのでしょうか。

○外務大臣(上川陽子君) グラハム上院議員が現下の中東情勢の文脈で広島、長崎の原爆投下を引用した議論を提起したことは適切ではなかったと考えており、受け入れることはできません。
我が国といたしましては、広島及び長崎に対します原爆投下は、大変多くの尊い命を奪い、また、病気や障害などで言葉に尽くせない苦難を強いた、人道上極めて遺憾な事態をもたらしたものと認識をしております。
また、政府としては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しないと考えております。
このような広島及び長崎に対する原爆投下に関する日本側の考えは変わりはなく、米側にも繰り返し伝えてきており、今般、改めて米国政府及びグラハム上院議員事務所に対し申入れを行ったところであります。また、グラハム上院議員側とはその後も意思疎通を重ね、日本側の考えをしっかり申し入れてきているところでございます。
引き続き、唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならないとの信念の下、核兵器のない世界の実現に向けて、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねるとともに、グラハム上院議員側と意思疎通を重ねることを含め、被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

○山添拓君 抗議はされたんですか。

○外務省 大臣官房参事官(宮本新吾君) お答え申し上げます。
繰り返しとなりますけれども、現下の中東情勢の文脈でグラハム上院議員が広島、長崎……(発言する者あり)いずれにいたしましても、広島、長崎に対する原爆投下についての考え方を今般改めて米側には申し入れたということでございます。

○山添拓君 抗議はしていないわけですね。

○政府参考人(宮本新吾君) 今回、いろいろ確認をいたしましたけれども、確認できる限りにおいて、今回の事例も含めまして、御指摘のような発言について米側に抗議を求めたということはございません。
ただし、必要に応じ、累次しっかり日本政府の考え方について申入れを行ってきているということでございます。

○山添拓君 先ほど、グラハム議員事務所から、議員側と意思疎通を図るという話がありました。この議員事務所から何か回答はあったんでしょうか。

○政府参考人(宮本新吾君) グラハム上院議員事務所とのやり取りに関しましては、内容について御説明することは、先方との関係もありまして差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、やり取りを続けてきているところでございます。

○山添拓君 この発言の後、十二日のNBCのテレビ番組でも、このグラハム議員は正しい決断だったと繰り返しました。本当に申入れってされたんですか。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
申入れは行っておりますし、継続して接触をしております。
同議員が現下の中東情勢の文脈で広島、長崎に対する原爆投下を引用した議論を提起したことは適切ではなかったと考えており、受け入れられません。同議員がこのような発言を繰り返したことは極めて残念に思っております。

○山添拓君 しかし、その抗議は伝わっていないと思いますね。伝えていないわけですから伝わっていないと。
米国の政治家による原爆投下を正当化する発言は戦後繰り返されています。九一年には、湾岸戦争でイラクへの空爆を始める中、当時のチェイニー国防長官が、核兵器使用の可能性を視野に、原爆投下は正しかったと発言しました。当時のブッシュ大統領も、原爆投下の判断は正しかった、日本に謝罪する必要はないと言い放ちました。
そこで、過去、米国の大統領や議員のこうした原爆投下を正当化する発言について、政府がこれまで抗議し、撤回を求めたことがあるかということを伺うつもりでいましたが、先ほど、それはないということでした。ないんですね。

○政府参考人(宮本新吾君) 確認できる限りでございますけれども、御指摘のような発言について米側に抗議と撤回を求めたことはございません。しかしながら、必要に応じ、累次しっかり日本政府の考え方を申し入れてきているということでございます。

○山添拓君 どれだけ申入れをしても伝わってはいないということだと思いますよ。
資料二枚目を御覧ください。
被団協、日本原水爆被害者団体協議会が十五日、声明を発表しました。広島、長崎への原爆投下によって第二次世界大戦が終結した、原爆投下は日米の戦争の早期終結に必要だったとする歴史観は、今日アメリカの言論の中でも少数派であり、逆に、戦争終結のためには原爆投下は必要なかったというのがアメリカの歴史学者の多数の統一見解とも言えるようになっている。米国の教育界でもよほど保守的でない限り同様である。これらの自国の良心の声を無視しての今回の発言は、国際人道法にも反している。核兵器禁止条約も発効している今、時代錯誤の悪意ある妄言としか言えない。核兵器は使用されてはならない兵器であり、本来、存在も許されない兵器である。これらのことは広島、長崎の被爆者が被爆後、一貫して世界に訴えてきたことである。そして、断固抗議し撤回を求めるとしています。
外務大臣はこの声明をどう受け止めますか。そして、受け止めるなら抗議をするべきじゃありませんか。

○外務大臣(上川陽子君) 今回の、このグラム上院議員が現下の中東情勢の文脈におきまして広島、長崎に対する原爆投下を利用、引用した議論を提起をいたし、日本側からの申入れにもかかわらずそのような発言を繰り返している、繰り返したということにつきましては極めて残念に思っておりまして、グラハム上院議員側とは、二〇二四年の五月十二日の同議員の二回目の発言以降も含めまして意思疎通を重ね、日本側の考えをしっかり申し入れてきているところでございます。
今般、日本原水爆被害者団体協議会によります抗議文の送付につきましては承知をしております。この点も踏まえ、引き続き被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

○山添拓君 長崎市の鈴木史朗市長は、原爆投下、核兵器の使用に正当化の余地は一ミリもない、原爆投下でいかに非人道的、破滅的な結末が起こったか、それを踏まえれば、いかなる理由をもってしても正当化されるものではないと述べています。そのとおりだと思います。
これは政府として公式に抗議すべきだと考えますが、いかがですか。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
御答弁申し上げているとおりなんでございますが、グラハム上院議員が現下の中東情勢の文脈で広島、長崎に対する原爆投下を引用した議論を提起し、また日本側からの申入れにもかかわらずそのような発言を繰り返したことについては極めて残念に思っておりまして、グラハム上院議員側とは二〇二四年五月十二日の同議員の二回目の発言以降も含めまして意思疎通を重ねて、日本側の考えをしっかり申し入れてきております。
引き続き、唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならないとの信念の下、核兵器のない世界の実現に向けて、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねるとともに、グラハム上院議員側と意思疎通を重ねることを含めまして、被爆の実相の正確な理解を促進するために不断の努力を行っていきたいと考えております。

○山添拓君 一連の発言は、米国がイスラエルへの弾薬輸送を停止した、この対応をめぐるものです。グラハム議員は、我々が広島、長崎に原爆を投下して戦争を終わらせたように、イスラエルもユダヤ人国家として生き残るために必要なことは何でもすべきだと述べています。原爆投下を引き合いに、イスラエルへの武器供与を続け、ガザの壊滅を支援せよと述べているわけです。これは二重、三重に許されないです。そして、一議員の発言にとどまらず、米軍の制服組トップと国防長官がこれに同意しています。米国政府と米軍が原爆投下は正しかったと公言しているということです。
G7の広島ビジョンの発表からちょうど一年になります。バイデン大統領も含め、核のない世界へのコミットメントで一致したというのが昨年の政府の説明でした。しかし、米国政府は、核兵器の非人道性、これ全然共有していないということではありませんか、大臣。

○国務大臣(上川陽子君) 日米は、核兵器のない世界の実現に向けまして、協力しながら取組を積み重ねてきているところであります。
二〇二三年五月に開催いたしましたG7広島サミットの際に、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンを発出したところでありますが、そこにおきまして、核兵器のない世界の実現に向けたコミットメントを再確認している状況でございます。
また、二〇二四年四月の岸田総理の米国公式訪問の際の日米首脳会談の際に発出した首脳共同声明におきましても、現実的かつ実践的なアプローチを通じまして核兵器のない世界を実現するという日米両国の決意を表明しており、日米間には核兵器のない世界の実現を目指すという点で共通の価値観が存在していると考えているところでございます。
引き続き、唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島、長崎の惨禍は決して繰り返してはならない、こうした信念の下、核兵器のない世界の実現に向けまして、米国とも協力しながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねるとともに、被爆の実相の正確な理解、それを促進するため、不断の努力を重ねてまいりたいと考えております。

○山添拓君 しかし、広島ビジョンには被爆者という言葉すら入っていなかったんですね。ですから、被爆の実相を共通認識として表明するということさえできなかったと。
その結果、どういうことが起こっているか。米国NNSA、核安全保障局は五月十四日に臨界前核実験を行ったと発表しました。バイデン政権で三回目です。抗議しましたか。

○国務大臣(上川陽子君) 二〇二四年の五月十六日に、米国家核安全保障庁、NNSAは、二〇二四年五月十四日にネバダ州におきまして未臨界実験を実施した旨発表したと承知をしております。
その中で、NNSAは、未臨界実験につきまして、核爆発実験を行わずに核弾頭の安全性、セキュリティー、信頼性、有効性を担保する有益な情報を収集するためとしていると承知をしております。
一般的に、未臨界実験は、包括的核実験禁止条約におきまして禁止される核爆発を伴うものではないと承知をしております。未臨界実験等、核爆発を伴わない核実験の扱いにつきましては、核兵器のない世界を目指すとの立場から、核軍縮に取り組んでいく中で今後検討すべき課題であると考えております。
我が国といたしましては、核兵器のない世界に向けまして、CTBTの早期発効を目指しつつ、核戦力の透明性向上、FMCTの早期交渉開始等に向けまして、核兵器国も参加する効果的な核軍縮措置に向けた取組を積み重ねているところでございます。今後とも、そうした方針に変わりはございません。

○山添拓君 抗議したとおっしゃらない。被爆地広島や長崎だけでなく、神奈川県や京都府など、多くの自治体、地方議会が抗議文を発表しています。ところが、日本政府は、抗議するどころか、容認、擁護、そういう姿勢です。
NNSAは、今後こうした臨界前核実験を行う頻度を上げる計画だと表明していますよ。これからも抗議されないんですか。

○国務大臣(上川陽子君) 先ほども申し上げたとおりでございますが、未臨界実験は、包括的核実験禁止、CTBTにおきます禁止される核爆発を伴うものではありません。
我が国としては、CTBTの発効を具体的な核軍縮措置として重視しておりまして、まずはCTBTの発効を目指すべきと考えているところであります。
私も、二〇二三年九月の発効促進会議に出席をいたしました。その上で、核兵器のない世界に向けて、CTBTの早期発効を目指しつつ、核戦力の透明性向上、またFMCTの早期交渉開始等に向けまして、核兵器国も参加する効果的な核軍縮措置に向けました取組を積み重ねているところであります。
今後とも、本日から始まります核兵器のない世界に向けた国際賢人会議等の取組を通じまして、核軍縮に向けた国際的な機運を高める取組を進め、核兵器のない世界の実現に向け、一歩一歩近づく努力を進めてまいりたいと考えております。

○委員長(小野田紀美君) 時間が過ぎております。おまとめください。

○山添拓君 済みません。
時間ですので終わりにしなければなりませんが、実験というのは使用を前提とするものです。ですから、核の廃絶には完全に逆行します。核兵器のない世界をうたうのであれば、あらゆる実験に反対し、やめさせるべきです。その根底には、私は日本政府の核抑止力論にしがみつく姿勢があると思います。日本政府の姿勢が問われているということを指摘して、質問を終わります。

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