山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2024年・第213通常国会

「国連憲章遵守」 お題目 次期戦闘機輸出で批判

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
次期戦闘機の共同開発を発表した二〇二二年十二月の日英伊共同首脳声明は、我々三か国には、自由、民主主義、人権、法の支配といった共通の価値に基づく、長年にわたる緊密な関係があると述べています。
そこで、パートナー国とされる英国について伺います。
本会議でも指摘しましたが、英国は二十一世紀に入ってからだけでも、イラク、リビア、シリアなど各地で戦闘を繰り返してきました。
二〇〇三年に始まったイラク戦争について、英国の独立調査委員会は、二〇一六年七月、七年間にわたる調査の結果、参戦の判断や計画策定に数々の誤りがあったとする報告書を発表しています。参戦の理由とされたイラクの大量破壊兵器の脅威は欠陥のある情報だったとし、戦争を法的に承認した手続も不十分だったと指摘しています。英国政府自身の検証で誤りが結論付けられております。
外務大臣の認識を伺います。

○外務大臣(上川陽子君) イラク戦争につきまして、英国は、イラクに関する政策が誤ったインテリジェンス及び評価を基に策定された等の報告書を発表していると承知をしております。
いずれにせよ、イラク戦争の核心は、クウェートに侵攻して国際社会の信用を失っている中、査察への協力を通じて大量破壊兵器の廃棄を自ら証明すべき立場にあった当時のイラク政府が、即時無条件の査察受入れを求める安保理決議に違反し続け、大量破壊兵器の不存在を自ら積極的に証明しなかったことにあると考えております。

○山添拓君 いや、いずれにせよじゃないんです。英国自身がその参戦の判断は誤りだったと結論付けているわけですね。イラクの側の対応ももちろんありますよ。しかし、そういう事態があってなお外交的な対応が必要だったのではないかと、軍事作戦ではない対応が必要だったのではないかというのがこの報告書の結論です。そして、報告書は、イギリスの参戦について国連安保理決議を得ない参戦だと、ですから法的根拠には十分には程遠いとしています。
英国は百七十九人が亡くなっていますが、イラク人の死者数は九万人から六十万人以上とも言われています。共同声明で述べている法の支配という共通の価値、本当に共有しているんですか。

○外務省 総合政策局長(河邉賢裕君) イギリスとの間では、お答えいたします。
イギリスとの間では法の支配という価値は当然共有してございます。

○山添拓君 ですから、法的根拠は十分には程遠い中で参戦をしたと、その英国と十分に価値を共有しているということはですよ、日本も法的根拠が不十分であっても参戦していくと、そういう姿勢に立つということですか。
このイラク戦争についての検証結果について、英国との間でも共有していますか。

○外務省 中東アフリカ局長(安藤俊英君) イラク戦争につきましては、政府といたしましては、決議六七八、六八七及び一四四一を含む関連安保理決議によって、イラクによる、イラクに対する武力行使は正当化されるという立場でございます。

○山添拓君 英国自身がそうではないということを英国政府の報告書で示しているわけですね。そうすると、英国としては法的根拠十分ではないままの参戦だったと認めたと。日本政府は、今おっしゃったように、イラク戦争はいまだに安保理決議十分にあったと、根拠のある戦争だったとおっしゃる、そういうことになりますか。共有していないんじゃないですか、認識を。

○政府参考人(安藤俊英君) お答えいたします。
英国の立場についてコメントをすることは差し控えたいと思いますけれども、我が国は、米国等によるイラクに対する武力行使を支持した我が国政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではないと考えております。

○山添拓君 だって、長年にわたる緊密な関係があるんでしょう。英国のことは知りませんなんという姿勢でいいんですか。
防衛大臣は本会議でコメントは差し控えるという答弁でしたけれども、コメントされるべきだと思います。

○防衛大臣(木原稔君) 先ほど、外務大臣始め外務省の、もうこれ政府としての見解ですから、私も同様の考えでございます。

○山添拓君 同様の見解というのはよく分かりません。英国政府が自身の検証によってイラク戦争の参戦は誤りだったと、それは日本政府としても同じ見解だということになりますか。

○国務大臣(木原稔君) イラク戦争については、英国がイラクに関する政策を誤ったインテリジェンス及び評価を基に策定された等の報告書を発表していることは承知をしているところでございますが、イラク戦争の核心というものは、クウェートに侵攻して国際社会の信用を失っている中で、査察への協力を通じて大量破壊兵器の廃棄を自ら証明すべき立場にあった当時のイラク政府が、即時無条件の査察受入れを求める安保理決議に違反し続け、大量破壊兵器の不存在を自ら積極的に証明しなかったことにあると考えています。

○山添拓君 その上で外交手段を尽くしていなかったというのがイギリスの、英国の検証結果なんですよね。そのことについてはコメントされようとしない。戦闘機の共同開発については今後何世代にもわたって幅広い協力の礎となるなどと喧伝されていますが、不都合な事実についてはコメントされないわけですね。
角度を変えて伺います、防衛大臣に。
過去に国連憲章違反の武力行使に及んだ国でも次期戦闘機の輸出先となり得るんでしょうか。

○国務大臣(木原稔君) 英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機については、我が国から第三国への完成機の移転に当たっては、防衛装備移転三原則及び運用指針に基づいて、移転先の国は国連憲章の目的と原則に適合する方法で使用することを義務付ける国際約束を締結しており、かつ、武力紛争の一環として現に戦闘が行われていないと判断される場合に限定されています。
その上で、国際的な平和と安全にどのような影響を与えているかなどを踏まえ、移転の可否を厳格に審査した上で閣議の決定を得ることになります。よろしいですか。(発言する者あり)
また、英伊からの、この英伊からの第三国移転に当たっては、我が国の防衛装備移転三原則及び同運用指針並びに我が国と英伊それぞれとの防衛装備移転に関する協定に従って我が国の事前同意が必要になるわけです。その上で、第三国移転に係るその事前同意に当たっては、運用指針上、事前同意を与える相手国にとっての安全保障上の意義等を考慮しつつ、第三国移転先が国際的な平和及び安全に与えている影響等を考慮して厳格に審査することとなります。

○山添拓君 そのとおり通告しているんですけどね。過去にどれだけ国際法違反の武力行使を繰り返していたとしても、それだけでは輸出先から除外することにはならないと、こういうことでしょうか。

○国務大臣(木原稔君) 先ほど私が申し上げたような手続を経まして次期戦闘機の第三国移転の可否を個別の案件ごとに判断することとなりますが、過去に国連憲章違反の武力行使に及んだ国が次期戦闘機の輸出先国となるかどうかを一概にお答えするというのは困難でございます。

○山添拓君 除外されないということでありました。
国連憲章、国際法違反の武力行使を繰り返してきたのが米国です。しかし、イラク戦争については、米国の独立調査委員会も、二〇〇五年の三月、戦争前の米国情報機関の判断についてほとんど全てが完全な誤りだったとする最終報告を発表しています。後にブッシュ大統領も攻撃を決定した責任があると認めるに至っています。
防衛大臣、この米国のイラク開戦の違法性についてもコメントなさらないですか。

○国務大臣(木原稔君) 二〇〇三年のイラクに対する軍事行動については、国際の平和及び安全を回復するという目的のために武力を認める国連憲章第七章の下で採決された関連する安保理決議により正当化されているものと考えております。

○山添拓君 英国の検証も米国の調査も、その前段の情報について誤りだということを指摘しているわけですね。前提事実が誤りであれば、安保理決議もないに等しいわけですよ。
米国との取決めでは、いかなる援助の供与及び使用も国際連合憲章と矛盾するものであってはならないとされております。米国との関係で武器や技術の供与をする、その条件ですね。ところが、ですから、国連憲章違反があってはならないと言っているわけですけれども、ところが、現に行われた武力行使の違法性について伺うと答弁されない。これはおかしいと思いますよ。
外務大臣に伺いますが、本会議で、次期戦闘機の輸出解禁は、通常より厳格な要件とプロセスを設けることで、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念を堅持するものだと答弁されました。ところが、防衛大臣の答弁では、過去の国連憲章違反、これを問うような姿勢すらありません。外務大臣自身も、英国のイラク参戦について明確に非難されていません。
私は、大臣がおっしゃる平和国家としての立場、ここには憲法が欠けていると、このことを昨日指摘いたしましたが、これでは国連憲章もお題目にすぎないということになっちゃうじゃありませんか。

○委員長(小野田紀美君) どなたがお答えになりますか。

○政府参考人(河邉賢裕君) お答え申し上げます。
イラクに対する武力行使の話でございますが、国際の平和及び安全を回復するという目的のために武力行使を認める国連憲章第七章の下で採決された関連する安保理決議により正当化されているというふうに政府は過去述べてきておる次第でございます。

○山添拓君 米国も英国も、独自の調査によってその前提に誤りがあったということを確認しているんですね。日本だけは誤りがないという認識のまま行くのですか。そうして過去に行った武力行使について誤った認識を持っている者同士が、今度戦闘機の共同開発を進めていくんですか。こんな危なっかしいことありますか。

○政府参考人(河邉賢裕君) お答え申し上げます。
先ほど私お答えさせていただきますのは、いただきましたのは、日本政府として繰り返し過去述べておりますが、安保理決議により正当化されていると、そういう認識であるというふうなことをお答え申し上げた次第でございます。

○山添拓君 その安保理決議の前提を欠くのではないかということをもう繰り返し指摘しているんですけどね、昨日も。
米国や英国のイラク戦争の誤り、これはスルーすべきではない問題だと思いますよ。外務大臣が、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と、こうおっしゃるのであれば、なおさら過去の国連憲章違反について目をつぶったまま進むというのはこれは許されないと思います。
イラク戦争だけじゃありません。米国は、一九八三年グレナダ侵略、八六年リビア爆撃、八九年パナマ侵略など、その武力行使について国連で繰り返し非難決議が上げられています。にもかかわらず、日本政府は米国を理解するなどとして擁護し、国際法違反を一度も批判してきておりません。その政府は、政府が、今度の次期戦闘機について、その輸出、輸出先の国で国連憲章の目的に沿う使い方に限るなどと言っているわけです。これは私は何の説得力もない空文句だと言わなければならないと思います。
加えて、イラク戦争については、自衛隊のイラク派兵、とりわけ米兵を空輸した点が、これは武力行使の一体化に当たるとして名古屋高裁で憲法九条違反と判決が出されております。ですから、日本政府も本格的な検証が求められていると、このことは指摘しておきたいと思います。
GIGOの設立条約十二条は、実施機関の業務として、次期戦闘機の輸出を管理し、及び支援することを挙げ、五十条では、非締約国への輸出についていずれか一つの締約国の意図を可能な限り支援するとしています。
外務省に伺いますが、輸出を支援するとは何のことですか。

○政府参考人(河邉賢裕君) お答え申し上げます。
委員御質問の十二条でございますが、第十二条一につきましては実施機関の業務につき列挙しておりまして、hは実施機関が行う業務の一つとして輸出に係る支援を挙げております。
次期戦闘機の輸出に関するGIGOの役割につきましては、今、イギリス、イタリアとの間で検討中、協議中でございまして、上記支援の具体的な対応については、その検討の結果を反映した形で実施していきたいというふうに考えてございます。(発言する者あり)
五十条につきましては、五十条一の主体は各締約国でありまして、本条に言う支援は、品目及び情報を非締約国に輸出し、又は移転するといういずれか一の締約国の意図に対するものでございます。
我が国の取組の具体的な対応といたしましては、例えばイギリス又はイタリアによる第三国移転への事前同意ということになります。その上で、この支援というのは、法的義務及び規則に従いまして、並びに国家安全保障上の直接の利益に妥当な考慮を払った上で、可能な限り与えるものとされてございます、条文上。
いずれにしましても、共同開発のパートナー国による第三国移転に対し我が国として事前同意を与えるか否かは、防衛装備移転三原則等に基づいて判断されるものでありまして、こうした対応は従来と何ら変わるところはございません。

○山添拓君 いや、条約上の義務として支援が求められるということですよ。他の共同開発国からの輸出を支援していくと、それが義務になっているわけです。輸出できるようにお互い援助するということです。
今、日本が十五か国と結んでいるという協定では、共同開発の相手国から第三国への輸出には日本の事前の同意が必要としており、今も答弁がありました。ですから、英国やイタリアから次期戦闘機を第三国へ輸出するに当たっても、日本の事前同意が必要とされます。
防衛省に伺います。第三国への輸出に同意できないのはどのような場合でしょうか。類型化できますか。

○防衛省 大臣官房審議官(弓削州司君) お答え申し上げます。
第三国移転に係る事前同意につきましては、運用指針上、厳格審査において、我が国からの直接移転における厳格審査と同様の二つの我が国としての視点である仕向け先及び最終需要者の適切性と我が国の安全保障上及ぼす懸念の程度に加え、共同開発のパートナー国にとっての安全保障上の意義等も考慮することとしています。
その上で、御質問の事前同意を与えない場合について、一概にお答えすることは困難ですが、例えば、パートナー国にとっての安全保障上の意義が認められず、仕向け先、最終需要者の適切性に疑義があり、我が国の安全保障上及ぼす懸念の程度も高いような場合については、海外移転の事前同意を行わないものと考えられます。
いずれにしても、先ほど述べたような観点から、事前同意の可否を個別具体的に厳格に審査することとしております。

○山添拓君 余りはっきりしないんですけれども、仮にその事前の同意を拒んだ場合でも、この条約によれば、英国やイタリアが輸出できるように支援することになるんじゃないですか、外務省。

○政府参考人(河邉賢裕君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げたとおりでございますが、実際に、そのいずれか一締約国の意図、第三、非締約国に輸出し、又は移転したいという意図が表明された後の話でございますが、これは、我が国としては法的義務及び規則に従い、並びに国家安全保障上の直接の利益に妥当な考慮を払った上で可能な限り与えるもの、可能な限りということでございます。もちろん、拒否もします、拒否が適切な場合は。

○山添拓君 可能な限り、やっぱり支援していくわけですよ。同意を与えていくわけですよ。事前の同意を必要とするとおっしゃるわけですが、本条約の下では限りなく可能な限り同意に傾き、日本が拒める場合は私は想定し難いと思います。
次期戦闘機は、ヨーロッパでは、英国、イタリア、ドイツ、スペインが共同開発した戦闘機、ユーロファイターの後継機とされます。ドイツ政府は、二〇一八年十一月、サウジアラビアの著名記者、ジャマル・カショギ氏が殺害された事件やイエメン内戦への軍事介入を受けて、サウジ向けの軍需品輸出の全面停止を決断しました。ユーロファイター四十八機をサウジに売却する百億ポンド、当時約一兆四千七百億円規模の受注が一時停止となりました。これを受けて、英国の軍事大手BAEシステムズはドイツの禁輸措置は自社の業績を圧迫すると警告し、イギリス、フランス両政府も撤回するようドイツの説得に必死になったと報じられております。ドイツの政権内でも、禁輸措置は産業と雇用を危険にさらしているなどと非難されたほか、ヨーロッパの軍需産業ではドイツ製部品を排除する動きが見られたといいます。
大臣に伺いますが、防衛大臣に伺いますが、次期戦闘機で日本が事前の同意を拒んだとしても、こうした事態というのは起こり得るんじゃないですか。産業界から、あるいは共同開発の他国から、それが軍需産業、防衛産業を阻害している、圧迫しているといって、輸出解禁はやめろと、あっ、輸出禁輸措置はやめろと、こういう圧力を受けるということは十分起こり得るんじゃないですか。

○国務大臣(木原稔君) お尋ねの、御紹介があったように、その二〇一八年に、十月、ジャーナリスト殺害事案に係るサウジアラビアの説明が不十分等として同国向けの装備品への輸出規制を講じた旨のドイツ政府の発表、また当該規制によってサウジアラビアへのユーロファイター四十八機の移転が遅延した旨の報道というのは承知をしております。また、本年一月には、イエメン情勢へのサウジアラビアの関与が軍事的な手段から政治的解決を目的とした建設的な対応へ変化してきたことなどを理由として、改めてサウジアラビアがユーロファイターの調達を希望する場合には、ドイツ政府としてしかるべく検討する旨、ドイツ政府報道官により発表が行われたこと、こういったことを承知をしております。
その上で、このような経緯の中でドイツ政府に対してどういう働きがあったか、日本政府として御説明する立場にはないということは御理解いただきたいと思いますが、いずれにしましても、我が国として、次期戦闘機を含む防衛装備の移転に際しては、防衛装備移転三原則等に基づいて、個々の具体的な案件に応じて検討を行い、適切に対応していくものであり、他国政府や、あるいは防衛産業からの圧力に左右されるといった、そういった御指摘には当たらないと考えております。

○山添拓君 時間が来ましたので終わりにいたしますけれども、このドイツの実例は、仮に事前の同意を与えない、反対したとしても、その意思決定というのは様々な圧力にさらされるということを如実に示していると思います。
輸出すべきでないという政治的な理由や国際紛争を助長するか否かという観点よりも、国内外の軍需産業の業績、雇用が優先され得るということです。ですから、GIGOの下で日本が輸出の継続に反対を貫ける保証などないということを指摘し、残りの質問は次回に譲りたいと思います。

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