2025年・第217通常国会
- 2025年2月19日
- 国民生活経済地方調査会
優生思想払拭する基本法を 誰も取り残さないための支援について参考人質疑
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
まず、藤井参考人に伺います。
障害者権利条約について今日もお話をいただきました。その中で、医学モデルから社会モデル、人権モデルへ、その機能障害の程度によって支援の量を決定するという在り方から、本人の希望に応じてその支援が保障される、そういう仕組みにという考え方だと思うんですが、日本で今そうなっていない、あるいはそれが、その転換が遅れている理由として参考人が今お考えのことをお聞かせいただきたいと思います。
○参考人 特定非営利活動法人日本障害者協議会代表(藤井克徳君) おっしゃるとおり、日本ではなかなかいわゆる医学モデルから脱却できないと。例えば、その典型が障害者手帳ですね。その御本人がどんな家庭環境、どんな地域環境に関係なく、歩けなかったらもう何種何級とか、目が見えなくなったら何級とか、実はその人は、経験値やら、あるいは住んでいる地域やら、あるいは家庭条件、みんな違うわけです。その点でいうと、この環境要因が含まれていないというのは長年日本がずっと積み上げてきた方法で、恐らくその原因は、私も十分に分かりませんけれども、そういったもの、バランスが崩れることが、例えば手帳制度だけ見てもこれ大ごとになっちゃうわけですよね。そういうことのバランスのこのアンバランス化をむしろ懸念しているということが一つはあるんじゃないか。
それから同時に、やはり障害分野というのは長年この医療からのアプローチが多かったわけで、そういうことが暗黙のうちにこの医者あるいは医療ということの圏域ということなんかも守ることも含めて、こんなことが陰に陽に影響しているのかな。
是非、これは国会でも、また政府においても、今のようなこの環境モデルとも言われている社会モデルです、こういう点からもっと総合的に障害を見ていくような視点があってもいいんで、そういうことのやはり研究等も深めていかなくちゃいけない。はい。お答えできるのはその程度です。
○山添拓君 ありがとうございます。
もう一点、藤井参考人に伺います。
今日最初に、優生保護法の問題で言及がありました。最高裁の判決を受けて、昨年、補償法は成立しましたが、調査や検証、また優生思想の根絶、障害のある人への差別と偏見の根絶という解決に向けた施策というのはいまだ必要だと思います。
今後国会でどのような議論を期待されるか、御意見を伺いたいと思います。
○参考人(藤井克徳君) この優生思想というのは、これもなかなか容易じゃないテーマで、よく言われているように、私たち個人個人の中にも内なる差別とかね、内なる優生思想というのはよく言われることでもあって、非常にこれは深い深い問題であると。
ただ、私は一つ言いたいことは、例えば、あの高い精神科病院を見て、あるいは、今少し減りましたけれども、鉄格子を見て、誰がまともな障害者観を抱くでしょう。あるいは、学校教育でずっと分離されたままということで、誰がまともな障害児観を抱くでしょう、抱くのか。
先ほども言いましたけれども、やはり、人間の意識というのは、目に見える部分から始まってきているものは少なくないと思います。そうすると、優生思想という問題は、それだけをいじるんじゃなくて、置かれている環境を変えていこうと、そこにどれくらい知恵とお金を使えるかということ。このことは、いずれ誰もが住みやすい社会だという国民的な合意や共感。
ですから、私は、単純にこの法律を作って、そしてどうこうというのはいかぬだろうと。ただ、それにしても、それにしてもやはり法の規範というのは威力が大きいです。そうすると、今の障害者差別法だけではカバーできません。もう少し全省庁にまたがるような、あるいは社会全体にまたがるような、そういう、優生思想や、あるいは優生思想までいかないけれども、優生思考だとか差別、偏見ということを払拭するような、そういう基本法、理念法というのは是非国会でも検討に入っていただきたいと同時に、補償法を作っていただきました。私たちは、補償につながって何ぼというものだと思うんです。作ったことをもってゴールにしちゃいけない。是非、この点も一緒に考えてもらえればというふうに思います。
はい、以上です。
○山添拓君 ありがとうございます。肝に銘じたいと思います。
奥田参考人と谷口参考人にそれぞれ伺いたいと思います。それは、支援の担い手の問題です。
伴走型支援と、これは課題解決型ではないというお話を今日も伺ってなるほどと思ったのですが、とはいえ、その目的意識を持ってつながり続けようというその一定の集団をつくっていくことが必要になると思います。
そうした支援に当たる人をどう広げて、どう育てていくといいますか、高めていくのかと。これは、アウトリーチの場合にはより専門性の問題もあるかと思います。また、そのモチベーションやスキルの問題もあろうかと思いますので、その主体を広げる上での現実に直面しておられる苦労やあるいは課題や、あるいはその必要な行政上の支援などについて御意見を伺いたいと思います。
○参考人 認定NPO法人抱樸理事長(奥田知志君) ありがとうございます。
本当に大切な観点の御質問だと思います。
一つは、伴走型支援においては、私は実は十数年、二十年ぐらい前ですかね、勝手に伴走型支援士養成講座というのをつくっていまして、これは別に社会福祉士さんみたいな高度な資格ではなくて、誰でも受講できる。まあ、それをやっているうちに日本福祉大学の授業になったということなんですが。今全国で二千人ぐらいの伴走型支援士という、それ取ってどうなるんですかと言われても、なんちゃって資格なんでどうにもならないんですけれども、ちょっと考え方を変えていくことですね。気付きを与えるような資格をつくるという、何というんですかね、プロフェッショナルを生み出していくというよりかは、目線を変えるとか気付きにつながるような人材育成が一つ大事だと。
もう一つ、とはいえ専門職の養成は大事です。そこにおいて私は特に言いたいのは、生活困窮者自立支援制度の全国ネットワークの代表なんですが、とかく、やはり現場の人材の待遇の問題が一番大きいと思います。今、公務員の方々、まあ直営でされている行政の枠で動いている方でも会計年度任用職員です。そういうスタッフ、あるいはうちの職員さん、うちはフルタイムのスタッフは全員正規雇用なんですが、それにしても行政からの委託契約は一年ごとです。来年仕事があるかないか分からない人に伴走型の長い目で支援をするということを求めても、それはとかくおかしい。さらに、会計年度任用職員さんも含めて、地域づくりだとか例えば防災とか、そういう観点も今生活困窮者の人材育成に入ってきているんですね、災害時の対応もやりましょうと。でも、来年自分が雇われるかどうかも分かんない人たちにいつ来るか分かんない災害対応を想定して動きなさいと言ってもですね。
ですから、私は、やっぱり専門職の育成に関しても、まずは育成段階だけじゃなくて、待遇のところをやはり大きく見直さないと私はいい人材はもう残らないというふうに思っております。よろしくお願いします。
○参考人 認定特定非営利活動法人スチューデント・サポート・フェイス代表理事(谷口仁史君) 重要な御指摘ありがとうございます。
後ほどで結構ですので、百十三ページに、資料の方にも載せておりますが、我々、戦略的人材育成というのを実施をしています。
やはり、新しい制度をつくるんだったら新しい人材育成の仕組みはセットであるという考え方から、実は、大学生から実はボランティア、有償ボランティア、非常勤、常勤と、こういう形で、だんだんスキルアップしていける制度というのをつくっています。というのも、やはり縦割りというのは非常に弊害が大きくて、実はいろんな専門職採ってしまうと、もうその世界だけに特化した視点になってしまって、実は多角的に物事を見れなくなる場合があるということであります。その縦割りの世界に入る前に、実は、教育、医療、福祉、労働を学ぶ学生たちが、実は不登校であるとか引きこもり、そういった社会的孤立の問題に触れてもらうということによって実は変わるものがあるんじゃないかと思っています。
というのも、教員、僕、実は教員免許持っているんですが、実は、教員になったら実は見えなくなる世界というのは出てくるんですね。やはり学校の先生、先ほど先生からも御指摘ありましたけれども、やっぱり先生は評価者でありますので、先生が家庭訪問するとなると片付けなきゃとかいう形で非日常になってしまって、結果、家庭訪問しても実は効果が少ないということがあります。
実は、日常的に家庭教師のようにお兄さん、お姉さん的アプローチで入って、家庭の中に入っていくと実は関係性もできて、ハードルも下がって、抵抗感も下がって、実は家庭のそのものの姿って見えるようになるんですね。そうすると、自分が掛けた言葉が本人に、さらに御家族にどんな影響を与えるんだというところを実は伴走型支援を展開していく中で見えてくれば、実はその様々な縦割りの制度の中に入っていったとしても、しっかりとそういったしんしゃくしながら関わっていける、そういった有能な人材が輩出できるということを思っています。
それが、実は県のこども未来課さんが次の時代を担う指導者養成講座として実はその人材育成を取り入れていただいて、あとは大学も授業の出席扱いにしていただいて、さらに教育委員会もその採用試験のときの加点にしてくださると、そういった取組が佐賀では生まれてきているということであります。
最後、もう一点、実は内閣府さんもアウトリーチ研修という、実は実地研修というのがないと机上の空論になっちゃうんですね。特にアウトリーチの世界、見たことない世界は想像付かないわけでありますので、実はその実地訓練を伴う体系的な研修を、三週間程度のものを国に実施していただいていました。しかしながら、こども家庭庁に移ってアウトリーチ研修どうなったか、実は実地研修も含めてなんですが、自腹になったんですね。先ほど申し上げたように、最前線は非正規であるとか嘱託職員、そういったNPOの人間がやっている、その人たちに実は金払わせて、極端、研修を受けろというのは実際無駄、無理があるということだと思います。
そういった形で、いい制度はしっかりと残していく、継承していくということも大事なんではないかというふうに思っています。
以上です。
○山添拓君 いずれも、その処遇といいますか、どう支えるかということ、経済的な問題も含めて大事だと思いました。
ありがとうございます。終わります。