2025年・第217通常国会
- 2025年3月7日
- 予算委員会
米国は「法の支配」逸脱 「公正な和平を」/紛争国派遣 海自秘密裡参加 前代未聞/空襲被害救済法実現を「今国会で」
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
高額療養費の自己負担額引上げ見送りについて、午前中、まだ確定していないという総理の答弁でした。
そこで伺いますが、八月の引上げ見送りは今からでも時間的には可能なんですね。
○委員長(鶴保庸介君) もう一度お願いできますか。ちょっと聞き取れなかったみたいですから。もう一度お願いできますか、済みません。いいですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) それはまだ決定をいたしておりません。今、この時点で予断を持ってお答えはできません。
○山添拓君 否定をされませんでした。可能だからこそ、方針を固めたという報道なんだと思います。
全面凍結や白紙撤回も含めて検討して判断していくと、こういうことですね。
○内閣総理大臣(石破茂君) それ、今から断定はいたしません。ただ、患者団体の方々のお話は、厚生労働大臣並びに厚生労働省として承っておりますが、私自身、今日の夕刻になると思います。承っていない時点で、今からお答えはできません。
○山添拓君 いや、検討の中身として、全面的に凍結をする、八月からの引上げ見送りも含めてですね、白紙撤回も含めて検討していくと、こういうことかと伺っています。
○内閣総理大臣(石破茂君) 今からそのようなことにお答えはできません。
○山添拓君 昨日は、引上げは前提として理解を求めるという御答弁でした。それ、今は答弁を変えられていると。私は、あっ、変えていないんですか。いや、首をかしげられたので。
○内閣総理大臣(石破茂君) いや、首をかしげたことに質問されてもなかなかつらいところがございますが。
ですから、いろんな可能性はあるでしょう。ただ、私は、この制度を維持していく、この必要性についてずっと衆議院でも参議院でもお答えをいたしております。この制度を、本当に高額療養費制度を受けておられる方々、これはこれから増えていくでしょう。そして、高額療養というものも医学の進歩に伴ってこれから先、更に増していくものだと思っております。この制度を維持するために何をするべきかということについてお答えをしてまいりましたが、その思いは今も変わってはおりません。
○山添拓君 もう一度だけ伺いますけれども、今日夕方お会いになるという、団体の代表の方ともお会いになる、それを踏まえて、全面的な凍結、これも含めて検討していかれますかと伺っています。
私は全面的に凍結すべきだと思いますよ。白紙撤回すべきだと思いますよ。今むしろ決断していただきたいと思うんです。いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 今ここで決断して答えを申し上げたら、お目にかかる意味がなくなります。
○山添拓君 そんなことないと思います。治療を諦めろと迫るに等しい改悪というのは白紙撤回すべきだと、これは重ねて申し上げたいと思います。
ウクライナ侵略から三年です。総理は今朝の質疑でも、米国バイデン前大統領が派兵しないと断言したからロシアへの抑止が働かなかったと、こういう趣旨を述べられました。しかし、いかなる理由があってもロシアの侵略は許されないではありませんか。
○内閣総理大臣(石破茂君) いかなる理由があっても許されません。
しかしながら、バイデン大統領が合衆国として武器の支援、情報の支援、訓練の支援等は行うが合衆国軍隊の派遣は行わないというふうに言われたことがプーチン大統領の決断の背景にあったのではないかということを申し上げたのであって、それと許されないというのは話が別でございます。
○山添拓君 外務大臣に伺います。侵略の違法性を国連憲章や国際人道法に則して御説明ください。
○外務大臣(岩屋毅君) ロシアによるウクライナ侵略は、国連憲章の第二条四項ですね、全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないということに照らしても明白な国際法違反であるというふうに認識をしております。
○山添拓君 戦争に至る過程で、NATO諸国もロシアも力対力で相手を抑止する、そういう戦略に陥った外交の失敗は否めないと思います。しかし、今度の侵略の責任が国連憲章をじゅうりんしたロシアの側にあることは明らかです。
日本政府は、国連憲章に基づく包括的で公正で永続的な和平の実現に努力するとしてきました。この包括的で公正で永続的、これはどういう意味ですか。
○国務大臣(岩屋毅君) 我が国が用いている公正かつ永続的な平和という語における公正あるいは永続的という意味ですけれども、特定の有権的な定義が定まっているわけではありませんけれども、これまでの国際社会での議論も踏まえますと、まず、ロシアによるウクライナ侵略が国連憲章を含む国際法の諸原則の深刻な違反であるという観点、それから、実現される平和が長期的に持続可能なものである必要があるという観点、これらを念頭に置いた概念であると御理解をいただければと思います。
○山添拓君 資料をお配りしています。
二月二十四日国連総会決議も、公正な和平を目指す過去四回と同様の内容であり、日本も賛成しました。ところが、米国は、過去四回と異なり反対し、別の決議案を出しました。その理由を米国はどう説明しましたか。
○国務大臣(岩屋毅君) 現地時間の二月二十四日、ロシアによるウクライナ侵略から三年となることを受けまして、国連総会においてウクライナに関する討議が行われた際に、米国はウクライナ及び欧州が提出した決議案に対しては反対を、反対票を投じたと承知をしております。
その際、米国の国連常駐代表代理であるシェイ大使は、米国が別途提出した決議案について説明する中で、戦争の早期の終結及び永続的な平和を強く訴える同国提案の総会決議こそが必要とされているとして、ウクライナ及び欧州提出決議案の撤回を求めたと承知をしています。さらに、決議の投票前に実施した投票理由説明において、ウクライナ及び欧州提出決議案がウクライナにおける殺りくをすぐさま止めることにはならない旨を述べたと承知をしています。
○山添拓君 欧州提出のものは後ろ向きのステートメントだと、こういう批判をしたわけです。
米国が出した決議案はどうなりましたか。
○国務大臣(岩屋毅君) フランスの修正を加えたものが議決をされたと承知をしております。
○山添拓君 そして、その決議に米国は棄権したわけですね。自ら提出した決議案を棄権するという異例の事態です。加えて、米国は、ロシアやフランスの修正案については言葉の戦争を追求するものだなどと述べて批判をしました。総理も同じようにお考えでしょうか。
○国務大臣(岩屋毅君) これは、米国のその態度、姿勢というものを我が方が断定的に評価するわけにはまいりませんけれども、ロシアを交渉のテーブルにきちんと着かせるということを多分米国は一番重きを置いて国際場裏に臨んでいたのではないかと推察をしております。
○山添拓君 これは総理に伺いたいのですが、トランプ氏のスタンスは、過去の決議では戦争を止められなかった、だからロシアの批判を控えて、公正な和平も投げ捨てようと、こういうものです。事実、トランプ外交は、ウクライナの頭越しにロシアと協議し、ロシアの言い分を認める形で、ウクライナに対して主権と領土の回復を諦めるように譲歩を迫るものです。
国連憲章の実現に最大の責任を負う常任理事国の米国が公正な和平を否定する事態は、これは国際秩序の深刻な危機だと、こういう認識を総理はお持ちでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 別にアメリカに限りませんが、ほかの国の外交というものに我が国があれこれと評論をすべきだとは思っておりません。
ウクライナの頭越しに全てが決まるというものではございませんで、この戦争を一日も早くいかにして終結をさせるかということ、そこにおいて力による現状変更をしようとした国に対して利益が与えられることがないようにと、この二つは二つとも正しいのですが、これをどうやって両立させて実行するかということについて、これから先いろんな手だてが講じられるし、我が国としても意見を申し述べていかねばならないと思っております。
○山添拓君 国際秩序の危機にあると、そういう認識をお持ちかということを伺っているんです。
○内閣総理大臣(石破茂君) 力による現状変更は常に国際秩序の危機だと認識しております。
○山添拓君 米国がまさにそういう立場に今あると思うんですね。
フランスのドリビエール国連大使は、侵略が報われ、弱肉強食がまかり通れば、平和も安全もどこにも存在しないと、こう述べました。
総理は、この間の米国とウクライナの対応を見て、どちらの側にも立たないと、こういう答弁をされています。しかし、力の支配の側に立つということは、これはできないんじゃありませんか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 平和の実現のために合衆国が果たすべき役割は大きいと思っております。
○山添拓君 それが力の支配の論理でいいのかと、こう伺っています。
○内閣総理大臣(石破茂君) 力の支配による論理を肯定したことは、今までのアメリカ合衆国の発言からは一度も行われたことはございません。
○山添拓君 しかし、公平な和平を、公正な和平を否定しているわけですよ。
外務大臣、来週G7に出席すると伺います。米国に対して、力の支配ではなく法の支配の立場で公正な和平を目指すべきだと、こうお伝えになりますか。
○国務大臣(岩屋毅君) 事態は刻々と変化していると思うんですね。
先般のホワイトハウスでの会談は決裂しましたけれども、先ほど入ってきたニュースでは、サウジアラビアにおいて米国とウクライナの対話がまた再開されるというような報道も出ておりまして、私もお許しをいただければG7の外相会合に出席をして、米国を含むG7各国と、ウクライナに一日も早く公正で永続的な平和が実現をするということのためにG7が結束していくべきだということを、米国を含めた各国にしっかりと申し上げたいというふうに思っております。
○山添拓君 総理にも確認したいと思います。
トランプ氏の力による平和、あるいは不公正な和平の押し付け、これ許されないという立場は表明いただきたいと思います。
○内閣総理大臣(石破茂君) 不公正な解決はあってはなりません。力による現状変更ということを許容することはあってはならないと思います。
○山添拓君 国連憲章は全ての国際関係の基盤だと日本政府も国連で表明をしています。それをゆるがせにしてはならないということを重ねて述べたいと思います。
防衛大臣に伺います。
米国やウクライナとの軍事演習、シーブリーズへの海上自衛隊の参加について御説明ください。
○防衛大臣(中谷元君) シーブリーズは、米国とウクライナが共催する多国間演習でありまして、一九九七年以降、ほぼ毎年実施をされております。
我が国は、二〇二一年にオブザーバーを派遣をしまして、二〇二二年のロシアによるウクライナ侵略による中止の後、二〇二三年から本参加をいたしております。
昨年実施されたシーブリーズ二〇二四は、機雷除去等を内容として、昨年六月二十五日から七月五日までの間英国で、次いで九月九日から二十日までの間にブルガリアで実施をされまして、海上自衛隊から英国に一名、ブルガリアに十名参加をさせました。
この訓練の公表につきましては、個々の訓練ごとの公表の有無や時期を判断しております。
○山添拓君 なぜ当初公表しなかったんですか。
○国務大臣(中谷元君) 先ほど申し上げましたけど、参加隊員が英国に一名、ブルガリアに十名ということでございましたので、派遣、艦艇の派遣を伴わなかったということ、また、少人数の要員参加にとどまる点等を総合的に勘案しまして、積極的に公表することはしませんでした。
○山添拓君 二〇二一年の最初の派遣は一人だったんですが、事前に公表しているんですね。
今の大臣のお話ですと、外国軍との共同演習で公表していないもの、ほかにもたくさんあるんでしょうか。
○国務大臣(中谷元君) お尋ねの非公表の共同訓練の実績につきましては網羅的に集計はしていないことからお答えは困難でありますが、例えば、防衛省からピンナップ等を行っていない共同訓練の参加の実績としましては、米国、ウクライナが共催する多国間演習、シーブリーズ二〇二三及びシーブリーズ二〇二四の参加の例があります。シーブリーズ二〇二三、二四につきましては、対機雷訓練を内容といたしております。
これらの訓練の参加につきましては、艦艇の派遣を伴わなかったことから発表しなかったわけでございます。
○山添拓君 要するに、今回のものだけじゃないですか。
ほかにないのか確認いただいた上で、委員会に報告を求めたいと思います。
○委員長(鶴保庸介君) 後刻理事会にて協議をいたします。
○山添拓君 私は、憲法の下で実力組織の海外派遣を秘密裏に進めること自体が問題だと思います。
大臣は、これを適切だとお考えでしょうか。
○国務大臣(中谷元君) この訓練は、武力行使を伴ったり、また戦争に参加するというようなものではございません。機雷除去を行うということで共同で行った訓練でございます。
○山添拓君 ウクライナのように、武力紛争中の国が主催する軍事演習に参加した例は過去ありますか。
○国務大臣(中谷元君) 何が武力行使かという定義がいろいろございますが、例えば、アメリカとの共同訓練は現在も我が国周辺で頻繁に行っているわけでございますので、そういう訓練は常時行っております。
○山添拓君 アメリカは武力行使中だということを平然と述べられているんですが、これ、アメリカやイギリスを除けば前代未聞の事態だと思います。にもかかわらず、公表せずにきたことは、私は重大だと思います。
総理に今度は伺いたいんですが、資料をお配りしています、三枚目です。
昨年四月、岸田前総理とバイデン大統領の共同声明では、日米同盟がインド太平洋地域の平和、安全、繁栄の礎であり続けることを確認するとしていました。ところが、先月、総理とトランプ大統領の共同声明では、日米同盟がインド太平洋及びそれを超えた地域の平和、安全、繁栄の礎であり続けることを強調したと、こうあります。
なぜ変えたんでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) それは、日米同盟というものと日米安全保障条約というのはぴったり一致をするわけではございませんので、日米安全保障条約のフィリピン以北というのも、これ自体も地理的な概念に限定をしたものではございません。
必要なものであるならば、インド太平洋及びそれを超えた地域に日米同盟が役割を果たすこともございますし、必要がなければ日本の近くでも役割を果たすことはございません。
○山添拓君 私は拡大した理由を聞いているんです。
○内閣総理大臣(石破茂君) 拡大をしたわけではございません。以前からこのような考え方でございます。
○山添拓君 昨年のものは文言が違いますよ。
○内閣総理大臣(石破茂君) 日米同盟が果たす役割は、昨年も今も変わるものはございません。
○山添拓君 文言を変えたのはなぜかと伺っています。
○国務大臣(岩屋毅君) かつて世界のための日米同盟という言い方をしたこともあったと思いますけれども、委員御指摘の文言は、日米同盟を一層強化し、インド太平洋地域はもちろんでございますけれども、世界の平和と繁栄に役割を果たしていく、そうした日米首脳の決意を示した表現でございます。
○山添拓君 決意の表れといいますが、日米同盟を野方図に拡張するものだと思います。しかも、国民に知らせることなく海外での軍事演習に参加する、米国が法の支配を逸脱しても批判せずに付き従う、そして軍事費を増やせという要求を吹っかけられると。おもねりへつらうような対米従属から私は脱却すべきだと、これは強く指摘したいと思います。
残りの時間で、空襲被害者の救済について伺います。
総理は昨日、戦後八十年で行政として何ができるかよく考えたいと、こう答弁されました。立法の必要性について総理自身はどうお考えでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 現在、超党派の議員連盟におきまして、昨日も御紹介がございましたとおりです。空襲被害者に対する特別給付金の支給、実態調査などを内容とする議員立法について議論をされておるところでございまして、私どもとしては、これをよく注視をしてまいりたいと思っております。
また、これまでの政府の取組といたしまして、一般の社会保障施策の充実と併せまして、一般戦災死没者の追悼の観点から、全国の空襲等に関する情報の収集、整理、発信を行ってきたところでございますが、政府として更に何ができるか、議員立法での議論も見守りながら考えてまいりたいと思っております。
○山添拓君 総理は昨日、最高裁は受忍論だと答弁されました。しかし、その後の東京空襲訴訟では最高裁は受忍論を取っていません。二〇〇九年の東京地裁判決は、一般戦争被害者を含めた戦争被害者に対する救済、援助、これは国会が立法を通じて解決すべき問題だと述べています。東京高裁も同様です。最高裁はそれを否定していません。ですから、立法による解決の決断、これが求められていると思いますが、いかがですか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 今の判決、判例の御紹介はそのとおりでございます。立法によって解決をするということは、それは我が国において当然起こり得ることですし、そういうことについて立法がなされましたとするならば、政府がそれに対応するということは当然あり得ることであります。
○山添拓君 昨日の質疑では、艦砲射撃などとの公平ということもおっしゃいました。今、議連で議論している法案は、空襲、船舶からの攻撃その他の戦闘行為、全て対象にしていますから、艦砲放射もあるいは沖縄の地上戦も含まれています。公平かどうかということよりも、残されてきた戦争被害、戦後補償に向き合い、解決すると、これが求められていると思うんです。いかがでしょう。
○内閣総理大臣(石破茂君) 超党派の議連において真摯な議論がなされておるということでございます。
私は、判決、判例、随分と読んでおるところでございますが、我が党からは平沢議員、松島議員、どちらも東京選出でございます。立派な考え方の方々と私は思っておりますが、そこにおける議論というものを逐一私も拝聴しながら考えてまいります。
○山添拓君 資料の三枚目には、今月四日、全国空襲被害者連絡協議会、空襲連の院内集会でのアピールを付けておりますが、今日も当事者の皆さん、傍聴においでなんですね。総理は議連の一員でもありますが、是非、総理として直接話を聞くような機会を持っていただきたいと思います。いかがでしょう。
○内閣総理大臣(石破茂君) 多くの方々の御意見を聞くということは必要なことだと思っております。私の立場としてそれを承るということが、どのような形でやることが一番望ましいのか、それは政府部内で少し議論をさせてください。
○山添拓君 是非お願いしたいと思います。
この救済法の成立は、国として二度と戦争の惨禍を繰り返さない、そういう決意を示すことにもなると思います。戦後八十年のこの国会で姿勢を正していくと、改めていくと、このことを強く求めて、質問を終わります。