2025年・第217通常国会
- 2025年3月13日
- 予算委員会
予算委員会中央公聴会 外交・安全保障・環境・エネルギーについて公述人に質問
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
本日は大変貴重なお話をありがとうございます。
東野公述人にまず伺います。
米国とウクライナの昨日の共同声明は、米国が提案した三十日間の停戦をウクライナが受け入れることと引換えに米国が軍事支援を再開するというものです。一方、ロシアの側は、西部クルスク州からウクライナ軍が撤退しない限り停戦協議には応じない、そういう条件を米側に示しているとも報じられました。これではロシアの侵略を容認することになってしまいます。
仮に停戦が今後実現したとして、それと同時ではないとしても、国連総会が繰り返し決議をしてきた公正な和平を曖昧にするべきではないと思います。公正な和平を実現する上で、今、国際社会がどういう対応を取るべきだとお考えでしょうか。
○公述人 筑波大学教授(東野篤子君) 山添先生、大変貴重な質問をどうもありがとうございます。
おっしゃるとおり、プーチン大統領はクルスクからのウクライナ軍の撤退を要求するのと加えて、より大事なこととして、恐らくここはプーチン大統領としては変わっていないのではないかと思いますけど、今の段階では変わっていないのではないかと思いますが、東部、南部四州からウクライナ軍が軍を引く、これが交渉開始の条件であるということなんですね。なので、停戦の条件ではなくて開始の条件ですから、なかなかにウクライナとしては受け入れ難い、そういった条件というのを明示的には緩めていないということですね。なので、ここにおいて停戦交渉が本当に始まり得るのかとか、先日の海、山、ごめんなさい、海と空と、それから地上とエネルギーインフラのその停戦ということに果たしてたどり着く状況になるのかということですね。ここがまず一番に危ぶまれるわけであります。
国際社会にとって公正な平和をどのように実現していくのがよいのかという御質問ですけれども、まずはこの公正な平和とは何かということを考える、そこを十分に意識するということです。公正な平和という言葉自体が余り強調されず、ともすればウクライナが妥協して、例えばロシアによる占領を受け入れれば戦争が終わるのだからウクライナはそうすべきであるというような、そういった議論がありますけれども、仮にその軍事的な意味合いにおいてウクライナが全ての領土を奪還することが現状では難しいとしても、それはロシアによる不法な占領であるということを常に強調しておく必要がある。そして、それはロシア、ウクライナが外交による奪還を始めたならば、それを全力で支援をするということにほかならないのではないかというふうに思います。
やはり、先ほどの冒頭でもお話をさせていただいたように、やはりその占領を受け入れるとか、それから領土の割譲を受け入れるとかということが、やはり回り回って自分たちのよって立っている秩序を脅かす、平和な社会を脅かすということに関してやはり我々が敏感でい続けることが、この問題に対する公正さ、どの程度公正な平和を達成することができるのかということの解にも近づいてくると思います。
また、直近の問題として、ウクライナがずっと恐れていたこととして、ロシアによる再侵略は何度も行われてきたということをやはり肝に銘じる必要があるために、余り停戦のそのハードルを下げ過ぎない方がいいということも重要なのではないかというふうに思います。
○山添拓君 ありがとうございます。
国際秩序を傷つけてきたことについて正当に評価をし、その批判は続けなければならないと思います。
加えて、もう一問伺います。
先日、核兵器禁止条約の第三回締約国会議が行われました。ここでは、核廃絶が世界の安全保障と人類の生存に不可欠という政治宣言を採択しました。この核抑止論を、人道的アプローチにとどまらず、安全保障政策上も強く批判したのが特徴と言えるかと思います。
核保有国であるロシアが核を使うという脅しを背景にウクライナ侵略を続けていきました。そこで、核兵器による抑止力は、逆説的ですが、働いていないと、そういう指摘がされてきました。また、これ、トランプ氏の対応が直接の契機ではありますけれども、マクロン大統領がフランスの核の拡大抑止を主張しています。むしろ核軍拡につながりかねない、そういう現実があるかと思います。この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○公述人(東野篤子君) 再び核の問題、大変貴重な、重要な問題であろうかというふうに思います。
現在のそのマクロン大統領の核の傘をヨーロッパレベルに広げていくという考え方、これをフランスとイギリスとの間で協調しながらやっていくということに関しては、おっしゃるとおり、一見、核の拡大のように、あるいは核戦力の増大のように見えるかもしれませんけれども、現状で今何が一番大事なのかといいますと、とにかくロシアに核を使わせないことということでございます。ですので、こちらはもう、お聞きの猪口邦子先生が大変な専門でございますけれども、やはり今ロシアが使うという脅しを掛けているその状況をヨーロッパで協力して止めていく、使わせないことに注力するということが今一番大事なことでございます。
この使わせないということを守らない以上、核の廃絶ということもあり得ない、まずは使わせないことを確実にしていく、その次の段階として、使わせないことが確証できたならば、あるいは確証というのはちょっと難しい言葉でして、いや、なかなか確証も得られないのですが、使わせないということがある程度観察できる段階に入ったら、その時点で初めて核廃絶ということを目指していけるのだと今思います。
なので、今回のそのマクロン大統領の発言に対して、日本国内で、唯一の被爆国である日本国内において様々な反応、否定的な反応があることはよく承知をしておりますけれども、今の段階でとても大事なのは、とにかく使わせないために国際社会がどのように協力できるのかということでございます。
○山添拓君 ありがとうございます。
続いて、飯田公述人に伺いたいと思います。
トランプ大統領がパリ協定からの離脱を表明しました。石破総理に国会などで聞きますと、日米首脳会談では時間がなかったとおっしゃって、議題にはしなかったということでしたが、先ほど、それによる再エネの普及促進については、アメリカの国内の対応変わらないんではないかという意見陳述をいただきましたが、こうした米国の動きに対して、国際社会あるいは国際政治に求められる対応について御意見を伺えればと思います。
○公述人 特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所所長(飯田哲也君) 気候危機は本当に人類に差し迫った危機で、日本も全力で立ち向かわないといけないんですけれども、これも先ほどの電気自動車にちょっと似ていて、二〇一〇年頃までの気候は政策ドリブンで、各国で枠を決めて、何とかそれで、キャップ・アンド・トレードとかで炭素税を入れて、とにかく減らしましょうということで、特に途上国とかは、いや、先進国は先に使って成長してひきょうじゃないかとか、あるいはアメリカ、日本とか、当時は、要はそれに入らない国々がそれに離脱をするとか、そういう時代が十年ちょっと前までありました。
この十年、まさにこの自然エネルギー、再エネがその状況をがくっと変えて、再エネドリブンに変わったわけですね。つまり、再エネ、さらに蓄電池、電気自動車にどんどんシフトしていけば、これは途上国も含めて経済メリットがあり、エネルギーも、つまり、気候が、気候はある意味、極端な話おまけで、エネルギーが自立できて、自給できて、しかも経済的に豊かになって、そしておまけにCO2も減るという、そちらのシフトにどんどんドリブンしていったということがあるので、もちろん、きちんと、まさに今の公正な平和じゃないですけど、公正な削減で、平等だが差異ある責任というのを、しっかり責任、先進国と途上国でやっていく必要はあるという意味でCOPの枠組み非常に重要なんですけれども、同時に、例えばアメリカでいうと、もう州レベルでどんどん進んでいます。それこそ、トランプの本拠地のテキサスがアメリカでは再エネが一番進んでいるので、これ、連邦の政策がどうなろうとテキサスは進んでいくわけです。あるいはカリフォルニアとかですね。これはもう、だから、ブルーステートもレッドステートも関係なくどんどん進んでいく。それはある種の経済原理ですし、経済原理が機能するところに来たというところが非常に面白い。
しかも、電気自動車は、それこそ昨日、トランプがテスラの、テスラカーを買って、IRAという一台当たり一万ぐらいの補助金出ているんですが、もしそれがなくなっても、電気自動車の価格が今急激に安くなっているので、もうほとんど関係なくなってくるというような形で、ちょうどタイミングがその政策ドリブンからテクノロジードリブン、特に再エネ、蓄電池、電気自動車に今変わりつつあるというところの中で、いかにフェアに国際的にやっていくのかという、若干多分シフト、論点はシフトしていく時代に入ってきたのかなと思っています。
○山添拓君 ありがとうございます。
そうした経済原理に基づくエネルギーのモードチェンジという問題と言わば逆行して、真っ向から逆行しているのが日本の原子力政策の問題ではないかと思います。七次のエネルギー基本計画で、最大限活用と鮮明にしました。
お配りいただいた資料の二十一ページには、「原子力という「病」と「沼」」というタイトルのスライドがありまして、ここは公述人が魂を込めて作られたんではないかと思いますので、是非御意見を伺いたいと思います。
○公述人(飯田哲也君) お時間いただいて、ありがとうございます。
中身に、私は、元々私、原子力をやっておりましたし、原子力の技術は大体分かっている自負もありますし、この原子力を外から見ている。ただ、今日は中身には余り入りません。
ただ、やっぱり福島第一原発事故という、もうあわやこの国の、少なくとも東日本が崩壊するかもしれないという経験をして、で、今、今日、まさに三日前が、あっ、二日前ですね、二日前がもう十四年目、あの事故の日からですね。本来、きちんと、賢者は歴史に学ぶというかですね、という観点から言うと、やはりそこをきちんと学ぶべきだったのですが、ここにもちょっと、どこかに書いたんですが、当時の、やはり政権交代があって、安倍政権とそこに入った経産省の方、そしてその後の岸田政権と経産省の方がかなり政策をある意味ショックドクトリン的にゆがめてしまった要素があって、例えばここに書いた論点というのは、一個一個話すとこれだけでもう何日も掛かるわけですけれども、政府全体がもう極論の一方に完全に立っていて、フェアな公論が全くなされない、国会でもなされない、政府はましてやなされないと。そういう状況というのは非常に今不健全だと思います。
当時あった原子力の国会調査委員会的な場を改めて国会に設けて、しっかりと、賛成があっても私はいいと思うし、でも、批判的な議論、そして科学に基づいた議論を丹念に繰り返す。まずは公論の場をつくるということをしないと、これは本当に将来世代にもう取り返しが付かない。あの福島の事故って、四十年、あと残り三十年でできると思っている人がどれだけいるかと。私は、少なくとも専門家であればあるほど一人もいないと思いますよ。
そういうことがきちんと議論されないというのは非常におかしな状況で、戦後、敗戦の後、今年八十年ですが、それに照らすと、恐らく今は、昭和、あれが、福島原発事故が昭和二十年だとすると、今は昭和三十年ぐらいです。そこからきちんとした当時は高度成長ができたわけです。でも、公害があったと。
それ振り返ると、やっぱり今からでも歴史を振り返って、きちんとボタンの掛け違いを正すときが一日も早くやっていった方が、それは国会議員の先生方の責任でもあるし、我々一人一人の市民の責任でもあるというふうに考えております。
○山添拓君 ありがとうございます。参考になりました。
終わります。