2016年・第192臨時国会
- 2016年10月20日
- 国土交通委員会
初質問、JALの不当労働行為について国の責任追及
- 要約
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- 初質問に立ち、最高裁が断罪した日本航空の不当労働行為事件を取り上げ、違法行為を生む枠組みをつくった国の責任をただしました。
- 内閣府副大臣「よくなかった」、石井啓一国交相「遺憾に思う」とそれぞれ答弁。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今年七月の参議院選挙で初めて国会へと送り出していただきました。今日が初質問ですので、どうぞ皆さんよろしくお願いをいたします。
私は、労働事件に労働者の立場で取り組む弁護士として仕事をしてまいりました。空の安全を担う労働者の権利に関わって質問をしたいと思います。
JAL、日本航空は、御承知のとおり、二〇一〇年に経営破綻し、国策で再生することになりました。管財人という、破綻した会社を公正な立場で立て直していく、この役職に公的機関である企業再生支援機構が選ばれました。この年の大みそかに、何の責任もないパイロットと客室乗務員、合計百六十五名が整理解雇される事態になりました。
この過程で不当労働行為があったとして、今年九月二十三日、最高裁が判断を下しました。具体的には誰のどんな行為がいかなる不当労働行為とされたのか、端的に御説明をお願いします。
○政府参考人(佐藤善信君) お答え申し上げます。
本件に係る東京都労働委員会から日本航空に対する命令書によれば、平成二十二年十一月十六日に、日本航空の管財人であった企業再生支援機構の担当者が日本航空乗員組合及び日本航空キャビンクルーユニオンの二組合との間で行った労使交渉の場において、組合は争議権の確立に向けた投票を行っているが、組合が争議権を確立した場合にはそれが撤回されるまで日本航空に係る会社更生計画にある三千五百億円の出資はできないという旨の発言を行いました。
当該発言について組合が東京都労働委員会に救済申立てを行った結果、同委員会は、本来、組合が自主的に決定すべき内部事項たる争議権の確立を自粛するように求める趣旨のこの発言について、労働組合法第七条第三号において禁止されている、労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、いわゆる組合への支配介入に当たる不当労働行為であると認定したものと承知をしております。
○山添拓君 争議権を確立すれば出資しないと脅し、ストライキ権を背景に労使交渉を進める権利を妨害する、憲法と労働組合法が保障する団結権を侵害するものです。なぜこんな事態に至ったのでしょうか。
当初、管財人は、人員削減は必要だけれども、しかしワークシェア的にやっていく、いきなり整理解雇とは考えない、労使協議で徹底的に議論を重ねるとしていました。しかし、実態は全然違ったものでした。
一部のパイロットに乗務をさせずスタンバイを指示する、雇用の不安が高まっている中で更に不安をあおるような業務指示がされました。組合が抗議しても何ら改善されない、退職を迫るそのための面談日だけが指定される状況でした。
客室乗務員ではどうでしょうか。管理職で五十五歳以上、一般職で四十五歳以上を対象に希望退職者を募集し、応じない人には、一日とか半日自宅待機を命じて個別面談を行う、希望退職に応じなければ整理解雇だ、退職条件の上乗せはなくなるぞと、自ら辞めるか解雇されるか、この二者択一を迫るような退職強要が行われた。
この事実を大臣は御存じでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 日本航空の再生過程におけます個別の労働者との雇用に係る調整経緯につきましては、国土交通省としては承知をしておりません。
○山添拓君 今の話は判決文にも書かれており、東京地裁、高裁、認定されている事実ですから、御確認いただける内容かと思います。
私は余りにも酷なやり方だと思います。労働組合はこのときどう対応したか。人員削減は必要だという前提で、しかし解雇ではなくワークシェアとか、あるいは四〇%もの大幅な賃金カットだとか、相当の譲歩を含むような具体的な提案を繰り返し行っていました。大勢のベテランが首になれば空の安全が脅かされる、こういう思いからだと考えます。
ところが、管財人は、組合の提案をまともに取り合わず拒絶し、退職強要を続け、拒否するなら整理解雇だと、この姿勢に固執しました。組合員の不安がますます高まる中で、何としても管財人を協議のテーブルに着かせたい、そのための手段として行ったのがストライキ権を背景に労使交渉を行うためのスト権の確立でした。これに対して管財人が、スト権確立なら出資しないと、そんな事実はどこでも決定していないのに、正式な見解だと述べて脅したわけです。
大臣、判決でも認められたこうした管財人の対応、支援機構の対応は余りにもひどいものだとお思いにならないでしょうか。この仕打ちが労働組合にどんな影響をもたらしたか御存じでしょうか。お答えください。
○国務大臣(石井啓一君) 御指摘の不当労働行為と認定された発言につきましては、本件に関する平成二十七年六月の高等裁判所判決文で、労働組合の自主性や独立性を脅かすものであったと述べられていることは承知をしております。
この発言が労働組合に対して与えた影響につきましては、国土交通省としては承知をしておりません。
○山添拓君 私は、判決で認定された、こうした不当労働行為への受け止めを伺っています。書いてあることは分かっておりますから、大臣自身がどのように受け止めたか、このことを伺いたいんです。
そして、労働組合にどのような影響を与えたかという事実関係は、これもまた判決の中で事実関係が認定されています。組合員が動揺したわけです、整理解雇は困ると。しかし、スト権を確立して出資がされず、会社が倒れるということになるかもしれない、逆らえないというぎりぎりの思いの中で、スト権投票を中止したり、あるいは組合員の脱退が相次いだり、大事な時期にスト権を背景にした労使交渉が困難になるという、そういう状況ができた。
取り返しの付かない影響が生じたんですが、このことを大臣はどのように認識されているのか、もう一度お答えください。
○国務大臣(石井啓一君) 先ほど申し上げたとおり、不当労働行為と認定された発言が労働組合に対して与えた影響については、国土交通省としては承知をしておらないところでございます。
○山添拓君 そもそも、この不当労働行為を行った張本人は誰か。先ほどお答えいただきましたが、企業再生支援機構のディレクター、飯塚氏らなんですけれども、政府が約半分を出資する公的機関の人間です。JALの再生において、支援機構は、本来公正な立場で立て直しを進める管財人でありながら、同時に再建のための出資も行っています。言わば、お金を出す側と受け取る側と両方担ったわけです。
内閣府に伺いますけれども、所管する公的機関の支援の方法として、会社更生法上の管財人と出資者とを兼ねた、こうしたスキームを使ったケースはJAL以外にはあったでしょうか。また、JALでこのスキームを採用した際に参考となった先例はあったんでしょうか。
○政府参考人(伊野彰洋君) お答えいたします。
企業再生支援を行っている内閣府所管の法人における再生支援に係る取組で、管財人への就任と出資を併用するようなスキームを用いた事例は日本航空の事例以外にはないと承知しております。
また、地域経済活性化支援機構からは、日本航空の再生支援に当たって、管財人と出資を併用するスキームとして参考にした事例はないと聞いております。
○山添拓君 JALが初めてなんです。まれな、特異なスキームを使ったと言えると思います。
支援機構が仮に管財人の立場だけなら、スト権確立なら出資はしない、こんな発言はできません。もちろん、出資者の立場だけでもこの発言はできません。管財人と出資者、両方の立場を兼ね備えていたから初めてできた発言だった。この前代未聞の特異なスキームが今回の不当労働行為を可能にしてしまったものだと言えます。
内閣府にもう一度伺いますけれども、このスキームの中で、管財人である支援機構が不当労働行為に及んで、そのことがこの度、最高裁で確定をしました。どのように受け止めているか、また、判決を受けてどう対応したのか。これは、この二点は内閣府副大臣にお答えいただきたいと思います。
○副大臣(越智隆雄君) お答えいたします。
まず、企業再生支援機構の職員等による発言が不当労働行為と認定されたことについては、遺憾だというふうに考えております。
地域経済活性化支援機構においては、今回の不当労働行為に係る最高裁判所の判決も踏まえまして、法令遵守の徹底を改めて社内で行う等により、引き続き適切な業務運営を行ってもらいたいというふうに考えております。
また、今委員から具体的な取組について御質問がございました。地域経済活性化支援機構におきましては、今般の最高裁の判決を踏まえまして、法令遵守に向けた社員教育のため、社員向けホームページに労働関連法令を掲載するとともに、社内の幹部会におきまして、労働関連法令の遵守の徹底を指示するというふうに聞いております。
○山添拓君 遺憾だと。つまり、適切でなかったということをお認めなんだと思いますが、本件の、JALの件については具体的な個別の対応をしていないということも今の話の中で明らかだと思います。
JALの問題となった組合に対して、内閣府として、機構を所管する立場として謝罪することは当然だと思いますが、この点はどうでしょうか。
○副大臣(越智隆雄君) ただいまの御質問についてでございますが、先ほど遺憾だというふうに申し上げましたが、ここは言い換えれば、良くなかったというふうに考えているところでございます。
○山添拓君 資料の一枚目を御覧いただきたいんですが、そもそも今回、支援機構が管財人と出資者とを兼ねるというスキーム、これを考案したのは、国交大臣が二〇〇九年に設置したJAL再生タスクフォースの考案です。国交省も関与した異例のスキームの中で起きた不当労働行為です。
大臣は改めてこのことについての責任をどのようにお考えか、答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(石井啓一君) これは前政権時代でしょうかね、多分、と存じますが、いずれにしましても、このJALの再生のための様々な枠組みを検討したということかと存じますが、その中で不当労働行為と認定されたようなことがあったということについては私自身も遺憾に思っているところでございます。
○山添拓君 大臣、前政権の話とおっしゃいましたけれども、行政としては連続しておりますから。そして、その間ずっと苦しみ続けているJALの労働者の皆さんがおられます。その方たちの前で、前政権が行ったことだから関係ないというようなお考えは決して示されないでいただきたいし、遺憾だという言葉はありましたけれども、公的機関である支援機構の行った不当労働行為です。しかも、そのことを可能にしたのは、国交省が関与する下で考案された特異なスキームです。その違法行為が最高裁で確定したと。このことを踏まえて、国の責任をどう考えるのかということを聞いています。
今、不当労働行為と認定されるような事態に至った、そのことは遺憾だとおっしゃいましたが、国に一切責任はないということなんでしょうか。国の責任をどう考えるか、改めて大臣に伺いたいと思います。
○国務大臣(石井啓一君) 遺憾と申し上げたとおりであります。
○山添拓君 国の責任は明らかだと思うんですね。責任があるのかどうか、遺憾だとおっしゃるなら、その責任をどう取るのか。働く者の職場を奪って、労働者の団結を侵して、司法に断罪されてもいまだに国の責任を認めない、個別の労使間の問題のように扱っている、そのような答弁はにわかには信じ難い思いがいたします。これは私は、何よりも空の安全に関わる問題だから申し上げています。
不当労働行為の末に整理解雇が強要されて会社への不信が広がる下で、JALの職場は疲弊をしています。例えば客室乗務員でいえば、毎年六百人前後を採用しますが、二百人から四百人が辞めていくと。人材流出が止まらず、今三人に一人が新人という状況です。今年に入ってからも、ドアモードの誤操作、操作の誤り、あるいはカートを転倒させる、乗務員が客にスープをこぼしてやけどをさせる、こうした不安全事例が幾つも報告をされています。過酷な勤務の中で乗務員自身が体調を崩して機内で自ら医者を探したと、そういうケースも報告されています。
資料の二枚目を御覧ください。客室乗務員の新規採用者数です。整理解雇から五年で、JALは二千九百七十名の客室乗務員を採用してきました。このうち千百名は海外勤務の外国人です。日本人の中途採用、邦人既卒とありますが、これは五百九十名です。労働組合によれば、外国人では、JALの破綻で退職した人を複数名再雇用、再契約で職場に戻している。しかし、日本人の退職者は一人も再雇用していないそうです。
大臣はこれらの事実を把握していますか。
○国務大臣(石井啓一君) 日本航空が採用する客室乗務員が過去に日本航空に在籍していた者であるか否かについては、国土交通省としては承知をしておりません。
○山添拓君 経営破綻でやむなく退職させてしまった労働者については経営が再建したら元に戻すんだと、これが世界的には常識なんだと思います。だから、海外では、外国人の元JALの職員を戻していると。なぜ日本ではできないんでしょうか。ましてや、JALは、経営破綻した当時も含めて莫大な利益を、営業利益を上げ続けています。
この間、JALの三つの労働組合、機長組合、乗員組合、また客室乗務員のキャビンクルーユニオンが、整理解雇された者についても、また希望退職者の募集に応じた者についても、復職を希望する者については職場復帰に向けて道筋を付けよと、こういう統一要求を掲げました。組合として確認をしたというふうに伺っています。
整理解雇の過程での不当労働行為が、今、最高裁で確定をしました。ILOも、職場復帰に向けた労使の意義ある対話を維持せよ、このことを重視する、政府に対して繰り返し勧告をしています。
客室乗務員に限らず、パイロットにおいてもこの間に約百八十名が退職するなど、人材不足も深刻です。国交省もパイロットの不足については問題意識を持って取り組まれているとも伺っています。何よりも空の安全に関わるような問題です。
大臣に伺いますが、国交省として、JALに対して解雇問題の解決のために労使の協議を行うよう指導をする必要があるんではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 日本航空の整理解雇につきましては、個別企業における雇用関係に係る問題でございますので、日本航空において適切に対処すべきものと考えております。
このため、行政として関与することは適切でないと考えております。
○山添拓君 二〇一二年、平成二十四年八月十日の「日本航空の企業再生への対応について」、八・一〇ペーパーと呼ばれていますが、JALの二〇一六年度までの中期経営計画の期間中、航空局は、再生の進捗状況について報告を求め、その状況を監視し、必要に応じ指導助言を行うとしています。不当労働行為について最高裁が判断をしました。違法行為の末の整理解雇だと確定した、そのことを大臣も遺憾だとまでおっしゃる。
解決のために指導をすべきではないか。指導の必要性はこの八・一〇ペーパーでも航空局自身が認めているんではありませんか。
○国務大臣(石井啓一君) 重ねてのお答えになりますが、日本航空の整理解雇につきましては、個別企業における雇用関係に係る問題でございますので、日本航空において適切に対処すべきものでございます。
このため、行政として関与することは適切でないと考えております。
○山添拓君 極めて無責任だと思います。
JALは国策として企業再生が行われたわけです。それは、今日この場にいらっしゃる皆さんお分かりのとおりです。この中で、公的機関である支援機構が労使の誠実な協議に応じないばかりか、国がこしらえた特異なスキームに乗じて虚偽の事実を伝えてまで不当労働行為を行ったわけです。その違法行為が最高裁で断罪をされています。
JALは不当労働行為の謝罪文を社内に掲示したと聞いていますけれども、それだけで済む話ではありません。整理解雇されたある客室乗務員の方からは、この時期になると思い出すと伺いました。乗務を外されて、辞めるか解雇されるか迫られると。八方塞がりの日々がちょうどこの今の秋の時分だったとおっしゃいます。
このまま放置することは許されないと考えます。何よりも空の安全のために、今こそ国が自らの責任を重く受け止めて、解決のために役割を果たすべきであるということを強調して、質問を終わりたいと思います。