山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2016年・第192臨時国会

羽田空港増便による都心低空飛行問題、計画撤回求める

要約
  • 山添議員は、羽田空港の国際線を増便するため、東京都心の人口密集地を通過する新ルートの問題を追及しました。
  • 7月の国交省と関係自治体との協議会で新ルートが了承されたと報道されていることについて、石井啓一国交相は「合意や了承といった事実はない」と明言。

○山添拓君 おはようございます。日本共産党の山添拓です。

私からは、羽田空港の機能強化について聞きたいと思います。

国交省は、二〇二〇年に向けて羽田空港を発着する国際線を増便するためとして、現在の東京湾上空を飛ぶルートから都心上空を飛ぶルートに変更しようとしています。

資料の一を御覧ください。南風の際、着陸は新宿あるいは麻布、品川上空を飛ぶものと、渋谷、恵比寿、五反田、大井町上空を通過するもの。品川や大井町では約三百メートルですから、東京タワーより低い超低空を飛ぶことが予定されています。離陸では、川崎コンビナートの上空を通過するものが加わることになっています。

資料の二を御覧ください。北風の際、これは離陸の際に荒川沿いを北上するルートが予定されています。今でも着陸機が高度約六百メートルで通過している江戸川区などでは、自費で二重窓にしてようやくテレビの音が部屋の中で聞こえるようになったと、こういう声も伺っています。

羽田空港は、元々、住民の皆さんや自治体の声を受けて住宅密集地やあるいはコンビナートの上を避けるために沖合に展開されてきたものです。ところが、今度、今までルートでなかった地域を超低空で飛行する計画です。騒音に加えて事故や落下物の危険、あるいは排気ガスの問題など、ルートの下に住む方々の生活に重大な影響を与えることになります。

そのこと自体をどのように認識されているか、まず大臣に御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(石井啓一君) 我が国の国際競争力の強化、急増する訪日外国人旅行者の受入れ等の観点から羽田空港の機能強化は必要不可欠と考えておりまして、飛行経路の見直し等によりまして発着枠を二〇二〇年までに約四万回拡大することを目指しております。

これを実現するためには多くの住民の皆様から御理解をいただくことが重要であると考えておりまして、昨年の七月より延べ三十四会場において説明会を開催をいたしまして、丁寧な情報提供に努めてまいりました。こういった説明会におきまして住民の皆様からは、騒音、落下物を含めた安全性、大気汚染等について懸念の声をいただいております。そのため、国土交通省におきましては、こうした住民の皆様の声を踏まえ、本年の七月に環境対策、安全対策等を内容とする環境影響等に配慮した方策をお示しをいたしました。

今後も、できるだけ多くの方に御理解をいただけるよう、説明会を引き続き開催するなど住民の皆様への丁寧な情報提供を続けてまいりたいと考えております。

○山添拓君 いかなる方策を取っても、住民にとっては新たな負担になるわけです。そのことに対する自覚を欠いていると思います。機能強化だ増便だと、決まったことだから我慢しろと言っているようにしか聞こえません。

安全対策に関わってですが、成田空港では、かつて年間の落下物の件数が多いときで十九件に上ったと聞いています。その後、減少したとされています。何が理由でしょうか、お答えください。

○政府参考人(佐藤善信君) お答えを申し上げます。

落下物を防止するためには、航空機の機体の点検整備の徹底を図ることが重要だと考えております。成田空港周辺における落下物を防止するため、これまで、国と業界団体が連携をして落下物の防止の観点から注意すべき機体の箇所についての点検整備のガイドラインを作成し、航空会社に対して指導を行ってきたところであります。このほかにも、航空会社に洋上での脚下げの実施を求めるなど、落下物を防止するための様々な対策を実施したところです。

成田空港周辺における落下物につきましては、これらの様々な対策が相まって減少したものと考えております。

○山添拓君 対策の代表的な例が洋上での脚下げだと、成田空港の会社のホームページでそう書いてあります。上空で付着した氷が車輪を出す際に落下するのを防ぐんだと。国交省と一緒に取り組んでいることだとホームページにも書かれています。海上ルートでなければこれはできない対策です。それでもゼロにはならないわけです。

資料の三を御覧ください。国交省が航空機の部品脱落に関する調査を行ったところ、八年間で四百三十七件だったと。国内の航空会社のみを対象とする調査でこれだけ出ています。脱落した部品は落下している可能性もあるということですから、新ルートによって落下物の危険性は否定できないかと思います。

次に、報道によりますと、資料の四ですが、今年七月二十八日、国と関係自治体との協議会で国交省が新たな環境対策を示したのに対して、地元自治体が新ルートの設定を了承したと報道もされています。確かに、東京二十三区の特別区長会会長、西川太一郎・荒川区長も出席しているんですが、この協議会はそもそも自治体の了承を取り付けるような場ではありませんし、そのプロセスも踏まれていないと思います。

了承という報道は正しいんでしょうか。これは大臣にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(石井啓一君) 本年七月二十八日に開催をされた協議会を受けまして、今委員から御紹介いただいたように、新聞等において羽田空港の飛行経路見直しについて関係自治体の合意や了承がなされた旨の報道がございましたが、そういった事実はございません。

さきの協議会におきましては、関係自治体から、二〇二〇年までに羽田空港を機能強化するために必要となる施設整備に係る工事費、環境対策費を国が予算措置することについて御理解をいただいたところでございます。

今後も、できるだけ多くの方に御理解をいただけるよう、説明会を引き続き開催するなど住民の皆様への丁寧な情報提供を続けてまいりたいと考えております。

○山添拓君 了承や合意がないということをはっきりしたことは大事なことだと思います。

この間、目黒区や品川区あるいは港区、各区議会でも区長や区の担当者からそういった事実はないということを繰り返し懸念も含めて表明されておりますので、国交省においても認識をしていただきたいと思います。

今、説明会ということがありました。住民との関係では、この間、国交省は地域住民への丁寧な説明を進めると言ってきました。ところが、実際に行われたのは、いわゆるオープンハウス型の情報提供でした。ブースを出展して、来場者がパネルなどを見るという形式です。しかし、それでは疑問やそれに対する回答を十分に受けられないではないかと。いわゆる教室型で、参加者と主催者の側とが意見交換をする、そういう形での説明会を開いてほしいという要望が各地から出されています。

十月の十九日には、港区の高輪でいわゆる教室型の説明会が開かれ、二百十名の方が参加された、大変関心が高いということがうかがえます。この港区での開催は、区からの要望によるものなんでしょうか。それから、騒音の影響の大きい地域など、住民の要求に応える形で教室型あるいはミーティング形式など、オープンハウス型以外の形式での情報提供、説明会、その言い方はどうあれ、こういったものを開催していく意向が今後おありかどうか、これも大臣にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(石井啓一君) 羽田空港の機能強化につきましては、できる限り多くの方々に御理解をいただくことが重要と考えております。

住民の皆様への情報提供の手法としては、より多くの方々が参加でき、一人一人の御関心に丁寧に対応できるオープンハウス型の説明会が最適であると専門家から御意見をいただいたところでございます。これを踏まえまして、住民の皆様に対しましては、昨年の七月より延べ九十五日間にわたり延べ三十四会場におきましてオープンハウス型の説明会を開催をし、約一万一千人の方に御参加いただくなど、丁寧な情報提供に努めてまいりました。

また、こうしたオープンハウス型の説明会とは別に、より影響の大きい大田区や品川区におきましては、区を通じた求めに応じ、地元自治会の会合に職員がお伺いをし、必要な情報提供や意見交換を行ってきたところでございます。

今度とも、できる限り多くの方に御理解をいただけるよう、関係自治体とも相談をしながら、引き続き丁寧な情報提供を行ってまいります。

○山添拓君 ちょっとはっきりしなかったんですが、各自治体からの要求に応じてそういったオープンハウス型以外のものも検討されているということなんでしょうか。そのところを明確に御答弁願いたいと思います。

○国務大臣(石井啓一君) 今後とも、できる限り多くの方に御理解をいただけるよう、関係自治体とも相談をしながら、引き続き丁寧な情報提供を行ってまいります。

○山添拓君 理解を得るということであれば、本来は一方通行の説明会や情報提供ということではなく、地元の住民の皆さんの合意を得るプロセスを踏むというのが当然求められることだと思います。

それで、資料の六を御覧ください。二〇〇八年に改正された空港法に基づいて、国交省の告示として空港の設置及び管理に関する基本方針というものが定められています。その第五が空港周辺における騒音などに関する基本的な事項とされています。

ここでは、空港の運営に伴う環境負荷を軽減するということ、これが重要だ、それは当然なんですが、それに加えて、環境対策や地域周辺対策の実施に当たっては、空港管理者、周辺地方公共団体、空港関係者などとの間において、十分な情報交換等に基づき適切な方策が合意され、進められることが望ましいとあります。

羽田空港の新飛行ルートの設定においても地域の住民、地元の自治体との合意を得ることが求められていると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 今御紹介いただいたと思いますが、空港法第三条に基づく空港の設置及び管理に関する基本方針第五におきましては、空港管理者が航空機の低騒音化等の発生源対策を含め更なる軽減に向けた努力を行うこと、法令に従い空港周辺における環境対策及び地域周辺対策を着実に行うことなどが規定をされているところでございます。

本年七月に国と関係自治体等で構成される協議会におきましてお示しをいたしました環境影響等に配慮した方策におきましては、発生源対策といたしまして、航空機の低騒音化を図るため、飛行機の重量だけでなく音の大きさも加味した着陸料体系への変更を行うこととしております。あわせて、空港周辺の騒音対策といたしまして、防音工事に係る基準を見直すことによりまして、従来対象にならなかった経路周辺の学校、病院等に対して助成を行うことができることとしてございます。

こういった方策を講じることによりまして、騒音に係る影響をできる限り少なくするよう努めてまいりたいと考えております。

○山添拓君 大臣、私が伺っているのはそこじゃないんですよ。

その後で、そうした環境対策を進めるに当たって、地元の自治体や、地元住民も含めてだと読めますけれども、適切な方策が合意され、進められることが望ましいと書かれている、それについてお聞きしているんですよ。そこをお答えいただけますか。

○国務大臣(石井啓一君) これは、今御指摘いただいたところは、この段落の最初のところを読みますと、また、これらの対策の実施に当たっては、適切な方策が合意され、進められることが望ましいというふうになっておりまして、これらの対策といいますのが、航空機の低騒音化等の発生源対策、あるいは空港周辺における環境対策、地域周辺対策ということでございます。

私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、国と関係自治体等で構成される協議会におきまして環境影響等に配慮した方策をお示しをいたしまして、この影響をできる限り少なくするよう努めているところでございます。

○山添拓君 先ほど、七月二十八日の協議会では合意や了承を得られたものじゃないということでしたから、今後、そうした場で合意が得られるように進めていく必要があろうかと思います。

今度の新ルートの計画というのは、国際線の増便のためだけのものです。利益を得るのは訪日外国人客です。国内でお金を使うことが期待されるとしても、新ルートの下に暮らす地元住民の受ける巨大な不利益とはバランスが取れないと思います。現在の計画では都心上空着陸ルートは四時間とされていますが、無制限に拡大することにもなりかねないと思います。国際競争力のために機能強化だと言い、住民の暮らしを犠牲にする。事故や落下物の危険にさらすことが妥当かどうかを議論すべきです。

首都圏の空港の機能強化といっても、成田空港でも発着枠はまだ余裕があるということです。あるいは関空や中部国際空港もあります。そうしたことも含めて、羽田の機能強化ありきということでこの議論を進めていく、住民の暮らしを犠牲にするような新ルートは撤回すべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

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