山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2016年・第192臨時国会

建設工事従事者の下請け事業者に関する賃金、社会保険加入状況の労働実態調査、安全経費の別枠支払い求める

要約
  • 建設工事従事者の安全・健康確保を推進する議員立法が全会一致で可決された。建設業では重大な労働災害が増加しており「一人親方」を含む建設工事従事者の安全・健康の確保を図ることが基本理念とされている。
  • 山添議員は、建設工事では重層的な下請け構造のもと労務費が中抜きされており、賃金、社保加入状況の実態調査を求めるとともに、法定福利費など安全や健康を守る経費を、工事費と別枠で支払われるようにすべきと求めた。

○山添拓君 おはようございます。日本共産党の山添拓です。
議員立法で今般成立を目指しております建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律案というものがありますが、これに関わりまして質問をしていきたいと思います。
この間、公共工事の設計労務単価、これは引き上げられてまいりましたが、建設工事従事者の処遇を向上させ、将来の担い手を確保していくためにも極めて大事なことだと思います。ところが、現場の賃金額、その上昇に追い付いていないという実態がございます。
資料一を御覧ください。これは首都圏の三千六百四人の大工の方への調査の結果ですが、設計労務単価と常用賃金の差額、二〇一二年には東京で二千五百六十四円だったものが、一五年には八千九十七円に、三倍に開く結果となっています。
あるいは、資料の二を御覧ください。こちらは千葉土建が千葉県内の十六か所の公共工事の現場で行った調査でございますが、職種別の労務単価の平均額は二万三千九百六十七円、これに対して回答額の平均は一万四千百十五円と、差額は九千八百五十二円もありました。
これだけ開きがあるということは、国の公共事業であるかそうでないか、この違いだけでは説明できないと思います。元請から一次、二次、三次と重層下請構造がある中で労務費が中抜きされている実態も影響していると考えますが、大臣はこうした差が出ている状況、どのように御認識をされているでしょうか、お答えください。
○国務大臣(石井啓一君) 設計労務単価は公共工事の予定価格の積算に用いることを目的としておりまして、公共工事に従事する建設労働者の賃金を調査対象として算出しておりますので、その上昇幅は必ずしも民間工事を含めた全ての建設労働者の賃金水準の上昇と同一になるものではないと考えております。
これまで四度にわたり公共工事設計労務単価の引上げを行ってきたところでございますが、引き続き、現場の建設労働者の賃金水準の上昇という好循環につながるよう、建設業団体に対しまして適正な賃金水準の確保を要請してまいりたいと存じます。
○山添拓君 私から問題意識としてお伝えしましたのは、下請構造が重層化する中で労務費が中抜きされていると、そういう実態も背景にあるのではないか、こういうことをお伝えしているわけです。
労務単価を上げて賃金を上げるというのは、安倍政権、この間一貫して言ってきたことであります。ところが、今お示しした実態のように、労務単価を上げて処遇を改善し担い手を確保するということとは程遠い実態があるだろうと思います。
改めて国交省に伺いますが、一次、二次、三次の下請業者あるいはその労働者について、実際の賃金額の実態、この下請の各階層に沿って賃金額の実態を調査されている、把握をされているのでしょうか、お答えください。
○政府参考人(谷脇暁君) お答えいたします。
公共工事設計労務単価の設定のために行っておりますこの公共事業労務費調査、これにおきまして建設労働者の所属する企業の元請・下請次数の把握も行っております。これを元請・下請次数別の社会保険加入状況の確認といったことに活用しているところでございます。
一方、元請・下請次数別の賃金の支払実態を分析するには、各職種、各地域の元請及び下請次数別の調査標本数をそろえる必要がございますけれども、現在の調査手法では正しく分析できるほどの標本数の確保ができていない状況でございます。
○山添拓君 ですから、階層ごとには把握はできていないということなんですよね。
とりわけ、安全や健康のための必要経費というのは、現場で働いている一人一人に確実に行き渡ることが重要だと考えます。国交省は、一七年の四月から、社会保険に加入していない企業の労働者については現場への入場を認めない扱いにすると、そういうふうにすべきだとしています。雇用保険、健康保険、厚生年金、三保険について、法律上の加入義務があるのに加入しないケースは、これは放置すべきでないと私も思います。
一方で、請負代金が社会保険料を賄うのに十分でないから、そのことによって加入したくてもできない、加入強制を徹底されるだけでは事業の継続性が危ぶまれるという事業者の声も伺います。これでは担い手確保どころではなく、もう事業そのものがもたなくなると。
国交省の下請指導ガイドラインでは、法定福利費について、元請人、下請人とも法定福利費相当額を内訳で明示した見積書を提出すると、その見積書を尊重して請負金額に反映すべきだとしています。ところが、先ほどの千葉土建の調査でも、元請企業が一次下請の社会保険加入状況を把握しているけれども、二次下請以降については加入状況を確認している元請企業はごく僅かだったとされています。
大臣に伺いますが、法定福利費の末端の労働者まで含めた確実な支払、どう担保することになるんでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 国土交通省におきましては、建設業で働く技能労働者の方々の処遇向上のため、社会保険の加入促進に取り組んでおります。加入を進めるためには、元請企業から下請企業に対し社会保険の加入に必要な法定福利費が適切に支払われることが重要でございます。このため、建設業団体に対して適切な法定福利費の確保を繰り返し要請するとともに、法定福利費を内訳明示した見積書の活用促進に取り組んでおります。
今年度の取組といたしましては、小規模の事業者向けに法定福利費の算出方法や見積書の作り方について分かりやすく解説する研修会を先月より開催していることに加えまして、元請となることが多い大臣許可の業者に対しては立入検査の機会に合わせて見積書の活用状況を確認するなど、更なる活用徹底に取り組んでいるところでございます。
今後とも、見積書の活用状況についての調査等を通じて実態把握にも努めつつ、法定福利費を内訳明示した見積書の活用の徹底に取り組んでまいりたいと考えております。
○山添拓君 資料の三を御覧いただきますが、今、見積書の活用を徹底するとありました。見積書、確かに提出状況改善されてきているんですけれども、それでも昨年で見積書提出されているのは約四割なんですね。その中で、見積金額全額を支払う契約となったのは四五・九%だと。法定福利費を除く総額では減額されたというのが三六・七%、これ上昇していますけれども。それから、法定福利費の一部が減額されたという回答も二〇・九%。あるいは、法定福利費の請求が認められない契約となった、一一%。そもそも見積書を受け取ってもらえなかったというものまであります。
見積書で法定福利費を明示させて支払を促進させても、材料費や労務費あるいはほかの経費で減らされて総額が増えないような状況にされては、処遇の改善にはつながらないと考えます。とりわけ下請の事業者にとっては、立場が弱くて無理を押し付けられる事態も起こるわけです。法定福利費が適切に支払われない下で社会保険の加入強制だけが強化される、強力に進められるのは、中小事業者にとっては酷ではないかと思います。
大臣、改めて伺いたいんですが、この下請各階層における賃金の実態も含めて、先ほど調査、把握されていないということでしたが、法定福利費が適切に支払われているのか、行き渡っているのか、こういうことを調査をする、このことを検討されるべきじゃないでしょうか。大臣、お答えいただけますか。
○政府参考人(谷脇暁君) いろいろなアンケート調査等々を通じまして、実態がどういうふうになっているのかというのは絶えず把握をしながら対策を講じていきたいというふうに考えております。
社会保険の加入につきましては、しっかりとその経費が行き渡るということと、やはり業界全体を含めまして統一したルールの下で社会保険加入を徹底すると、これを車の両輪として実施していく必要があるというふうに考えております。いろいろな実態調査をしながら、適切に対応させていただきます。
○山添拓君 是非、実態の把握に努めていただきたいと思います。
それで、今度の法案との関係では、法定福利費を含む安全や健康のための必要経費、中抜きされることなく現場の労働者、一人親方にまで行き渡るように、工事費とは別枠で支払われるようにすべきではないかとも考えます。更に言えば、賃金そのものが発注者から元請、下請、数次の下請、そして一人一人に行き渡るように、公契約法を制定するなど抜本的な対策に踏み出すべきではないかと思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(石井啓一君) 建設工事の現場におきましては、元請企業と下請企業がそれぞれの立場に応じた役割について認識を共有しながら、建設工事従事者の安全及び健康のための対策を講ずることは重要と考えております。
安全及び健康のための経費は、労働災害防止対策を適切に実施する上で元請企業及び下請企業が義務的に負担しなければならない費用であり、当該対策の責任関係が明確になるよう、元請、下請間において実施者及び経費の負担者の区分を明らかにすることが必要となっております。当該経費の元請、下請間の区分を契約書面の内訳書などに明示することにつきまして、平成二十六年十月に建設業法遵守ガイドラインを改訂をいたしまして、これまでも建設企業に対して指導をしてきたところでございます。
さらに、従来から資金需要の増大が予想されます夏期八月と冬期十二月の毎年二回、建設業団体を通じまして建設企業に対して、工事現場における工程管理や品質管理及び安全管理等の施工管理が適切に行われるよう、労働災害防止対策の経費を含め下請契約の適正化に向け指導を行っているところでございます。
今後ともガイドラインの周知を徹底をいたしまして、契約書面等において労働災害防止対策に要する経費が明示されるよう、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。
○山添拓君 必要な経費については適切かつ明確に確保して、そして下請事業者まで確実に支払われるようにする、これは処遇改善のためにも重要なことですので、法案成立の暁には是非その趣旨を踏まえて対処していただきたいと存じます。
次に、この法案は建設工事従事者の安全と健康の確保が重要だという認識を示すものとなっています。その立場から、現在起きているじん肺、アスベストの被害の救済と根絶、特に求められると考えています。
二点、お伝えします。
トンネルじん肺の問題では、発症した労働者の救済が求められておりますが、今後の予防も重大な課題だと考えます。トンネル工事の従事者は、雇用主や現場、転々と変わります。じん肺のように長期潜伏型の被害を防いでいくには、生涯の粉じん暴露量を減らしていく、健康管理を十分に行う体制を取り作業時間を考慮するなど、予防策が必要ではないでしょうか。
また、建設アスベストについて、石綿粉じん暴露による肺がん、中皮腫の健康被害が爆発的に拡大をしています。労災保険と石綿救済法による給付者数は毎年一千名前後だと。その四八%が建設作業の従事者です。全国各地で提訴されている事件で国は連敗をしています。アスベスト暴露を防ぎ、安全措置と製造禁止の措置を怠ったのだと裁判では指摘をされています。この中で、京都地裁の判決では建材メーカーの賠償責任を認めたほか、東京地裁の判決も、建材メーカーの責任を前提に、立法政策の真剣な検討を望むとされています。
被害の救済のための具体的な立法化に踏み出すべきではないかと考えますが、厚労大臣政務官にお答えをいただけますでしょうか。
○大臣政務官(堀内詔子君) お答え申し上げます。
まず、一点目のトンネル工事従事者のじん肺の件についてでございますが、トンネル建設労働者のじん肺を防止するためには、作業における粉じん暴露量の低減を図ることが大切であると認識しております。このため、法令等により事業者に対し、換気装置による換気などの粉じんの暴露防止措置を義務付け、平成二十五年からの第八次粉じん障害防止総合対策によりこれらの措置を徹底しているところであります。
このような取組を進めてきた結果、多くのトンネル建設現場においては、ただいま労働者の暴露量は低く抑えられているものと承知しており、平成二十七年のトンネル建設労働者の新規有所見者数は三人と、昭和五十六年の三百五人に比べ大幅に減少しております。しかしながら、現状においても新規有所見者数が一定度見られるなど、一部の現場においては粉じん暴露防止措置が不十分であると考えられていることから、まずはこうした問題のある現場において労働基準監督署等による的確な指導により措置の徹底を図ってまいりたいと存じます。
また、トンネル建設工事における粉じん濃度が最も高い切羽付近については、簡便かつ負担の少ない正確な濃度測定、評価方法について検討するため、学識経験者や関係団体などから成る検討会を十一月三十日に立ち上げたところであり、その検討を着実に進めてまいりたいと存じます。
また、二点目の御質問にあるアスベストに関してでございますが、建設作業従事者のアスベスト被害については、現在、国土交通省、厚生労働省及び建材メーカーを被告とする複数の訴訟が係争中であり、国の主張は引き続き裁判の中で明らかにしていくこととさせていただいております。
厚生労働省としては、石綿による健康被害に遭われた方々に対しては、労災保険制度や石綿健康被害救済法に基づく給付制度等に基づき救済を図っております。また、建設工事に従事する労働者の石綿による健康障害防止のため、建設物の解体作業等での石綿暴露防止対策の徹底、石綿作業従事者に対する法令に基づく健康診断の実施の徹底、一定の要件を満たす離職者に対する石綿健康管理手帳の交付と国の費用による健診の実施等を行っており、今後これまで以上にしっかりと取り組んでまいりたいと存じております。
○委員長(増子輝彦君) 申合せの時間が大分過ぎておりますので、おまとめください。
○山添拓君 はい。
建設アスベストの原告、全国で六百五十名おられますが、三分の二が亡くなられております。是非判決を待つことなく救済に乗り出していただきたいとお伝えして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。

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