山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2017年・第193通常国会

運転手の手配業務 実態は白タク(違法な無許可タクシー) 監督省庁が無いことを告発

要約
  • レンタカー利用の旅行者に対して運転手を手配する「ジャスタビ(本社・新宿)」の業務形態は白タクと同様であり、消費者行政として、また国交省として適切に規制を行うことを求める。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。

ITを用いて人々の間で物やサービスの共有を仲介するシステムとしてシェアリングエコノミーが注目されています。代表的なものは民泊やライドシェアであり、農地や駐車場など場所のシェア、あるいは介護や保育などスキルのシェア、お金をシェアするクラウドファンディングなどもこれに含まれると伺います。従来、本業としてサービスを提供する事業者と個人である消費者の関係だったものが、シェア事業者が介在することでサービスの提供者と事業者とをマッチングさせるものです。プロのサービスからアマチュアのサービスへと言われてもいるところです。

安全性を含むサービスの品質については誰がどのように担保する仕組みなのか、一般論ですが伺いたいと思います。

○政府参考人(川口康裕君) お答え申し上げます。

シェアリングエコノミーにつきましては、様々な分野で新たなサービスが開発されている途上と認識しておりますので、現時点でその仕組みを一般的に説明することはなお困難というふうに理解しておりますけれども、典型的なものについて申し上げたいと思います。

典型的には、まずサービス提供者である個人とサービス利用者である個人との取引をインターネット上でマッチング機能を提供するシェア事業者が仲介するという形態で行われている、これがシェアリングエコノミーでございます。このシェアリングエコノミーでは、サービス利用者に対して提供されるサービスの品質については、一義的にはサービス提供者、個人であることが多いわけですが、個人が責任を負うものと認識をしております。ただし、シェアリングエコノミーにおきましても、提供されるサービスが個別事業法の適用対象となる場合には当該個別事業法の規定によってサービスの品質が担保されることになります。

なお、個別事業法の適用がない場合でありましても、シェア事業者がサービス提供者と締結する契約及び規約におきましてサービスの内容について一定の要件を課すこと、あるいはサービス利用者がシェア事業者と締結する契約及び規約においてシェア事業者の義務を定めることなどを通じまして、サービス提供者の提供するサービスの品質を確保する仕組み、これがシェア事業者の関与の下で取られているということが一般的だと認識をしております。

そのほかにも、シェア事業者の中には、その自主的な取組としてサービス利用者に対するトラブル相談窓口を設置する、あるいはサービス提供者の提供したサービス内容を事後評価するシステムを消費者に対して提供することなどを通じまして、提供されるサービスの品質の一層の向上を図ろうとしている例もあると承知をしているところでございます。

以上でございます。

○山添拓君 お答えの中になかったんですけれども、このシェアリングエコノミーでサービスの品質を担保するために最も特徴的だとされているのは、インターネット上のアプリを使って口コミによって評価すると、こういうものなんですね。この口コミの評価、これは個人の経験に基づく自己申告にすぎませんので、何らの担保にもならないわけです。

例えば、二〇一六年の二月二十日にアメリカのミシガン州で銃を乱射して六名を殺害した容疑者は、ライドシェア大手のウーバーのドライバーで、銃撃の合間に乗客を運んでいたとされています。この容疑者のドライバー評価は、五点満点中の四・七三点と、好意的な評価とされていました。インターネット上の評価システムのみで安全や安心が担保されるという考え方には重大な限界があるわけです。

資料の二ページにございますが、総務省の調査では、海外でライドシェアや民泊を利用したいかという問いに対して、余り利用したくない、利用したくないが七割以上でした。その理由としては、事故やトラブル時の対応に不安があるから、これを挙げた人が六割で最多でした。業法による規制によって安全性を含むサービスの水準を確保する、こういう仕組みを取ってきた分野について、シェアリングエコノミーの仕組みでは国民の不安を解消し得ないということを示していると思います。

消費者保護を図る上でこの声は無視できないものだと考えますが、大臣はどのような御認識でしょうか。

○国務大臣(松本純君) まず一般的に、消費者が利用するサービスについては、消費者に対し必要な情報が提供され、また消費者の自主的かつ合理的な選択の機会というものが確保されることが消費者の権利だと思います。消費者におきましては、こうした権利を踏まえまして、シェアリングエコノミーにおいても十分な情報に基づいて利用するサービスを適切に選択できることが望ましいと考えております。

シェアリングエコノミーのうち、個別事業法による規制を受けないものについても、インターネット上でマッチング機能を提供するシェア事業者が消費者及びサービス提供者の仲介を通じて適切な運営管理を行うことが重要であると認識をいたします。

○山添拓君 ライドシェアというのは、スマートフォンやGPSなどを使って利用者とドライバーとをマッチングさせるサービスです。対価を得て自家用車で旅客を運送すれば、これは白タク行為であり、原則として禁止されています。この下で、今、形を変えてライドシェアに風穴を空けようという動きがあります。

二〇一六年の五月に、沖縄県で株式会社ジャスタビがレンタカー利用者と運転者のマッチングサービスを開始しました。資料の四ページ、五ページに付けておりますが、インターネットのサイトでレンタカーでの旅行を希望する利用者に対して登録したドライバーを紹介するというものです。形式上は利用者が借りたレンタカーを雇ったドライバーに運転させるというものですが、実態としてはレンタカーを用いた白タクにほかならない、こういう批判があります。

道路運送法がタクシーなどの一般旅客自動車運送事業について許可制とし、あるいは道路交通法によって運転手に二種免許が必要としている、これは安全の確保、利用者の保護を目的としたものです。ところが、今回のジャスタビのように、利用者がレンタカーを用意してドライバーに有償で運転させる、これまさにタクシーと同じように有償の旅客運送を一般のドライバーにやらせている、こういうものに該当するんじゃないかと指摘をされているところです。

ドライバーが自らの車を使ってお金を取って運転をすれば白タク行為で禁止されるのに、客が用意したレンタカーであれば禁止されないという理由は何でしょうか。国土交通省、お願いします。

○大臣政務官(根本幸典君) レンタカーについては、借り受けた者と運転する者が同一であることは求められておりません。よって、レンタカーを借り受けた者に代わって運転を行うことやそのようなドライバーを仲介することは、法令に抵触するものではありません。

一方、道路運送法において、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業については、旅客自動車運送事業の許可が必要とされているとともに、レンタカー事業の許可は、自動車の貸し渡しの態様が自動車運送事業に類似している場合に行われないこととされております。

レンタカーの貸し渡しとそのレンタカーを運転するドライバーの仲介が一体として行われる場合や一体的なサービスであることを強調する場合など、このような類似行為が行われることのないよう、今後の具体的な事業展開の状況を注視してまいりたいと考えております。

○山添拓君 ドライバーを提供するのと自動車を提供するのとが一体的でなければ抵触しないんだという御説明なんですけれども、法律にはそういう文言はないんですね。他人の需要に応じて有償で自動車を使用し旅客を運送する事業、これが旅客自動車運送事業として禁止をされているわけです。

資料の七ページにありますが、国土交通省は、二〇一五年に規制改革ホットラインでライドシェアについて提案を受けた際には、その回答の中で、マイカードライバーは旅客を安全に運送するために必要な二種免許等を有していない、安全確保や法令遵守のための運行管理、過労運転防止のための労働時間管理、飲酒チェック等が行われない、事故発生時の責任はマイカードライバーが負うことになりスマホなどで仲介する者は責任を問われないなどとしまして、こうした問題があるので慎重に判断する必要があるとしている。これがライドシェアに対する国交省の姿勢だったわけです。今回のジャスタビの事業とで本質的な違いはないと思われます。

国土交通省に改めて伺いますが、ジャスタビで雇ったドライバーについて兼業は認められるでしょうか。事前のアルコールチェックは義務付けられているでしょうか。あるいは、改善基準告示のような自動車運転時間の規制は及ぶんでしょうか。

○政府参考人(早川治君) お答えいたします。

ジャスタビ社の事業は、ドライバーとレンタカー利用者のマッチングサービスであり、登録されたドライバーはレンタカー利用者に代わってレンタカーを運転し報酬を得るものと認識しております。

ドライバーと自動車が実質的に一体として提供されているものでない限り、ジャスタビ社の事業は道路運送法上の旅客自動車運送事業ではございませんことから、アルコールチェックなどの運行管理を行う義務はありません。また、兼業についても特段の規制はないものと理解をしております。

なお、改善基準告示は、自動車運転の業務に従事する労働者の労働時間等の改善のための基準を定めたものでございまして、その基準の適用につきましては厚生労働省において判断されるべきものと考えております。

○山添拓君 過労運転を防ぐための兼業禁止や、あるいは運転時間の規制も基本的には対象外になると。もちろん、最低賃金や割増し賃金、労災や雇用保険なども対象外ということになります。

国土交通省に伺いますが、さきの要件を満たした下では国交省はこの今行われているジャスタビの事業について指導監督する権限を持つんでしょうか。事故など事業上の問題が生じた場合の責任はどこが持つことになるんでしょうか。

○大臣政務官(根本幸典君) レンタカーを借り受けた者に代わってその運転を行うドライバーを仲介する事業は、道路運送法上の旅客自動車運送事業やレンタカー事業には当たらないことから、このような事業者について国土交通省として監督責任があるとは考えておりません。ただし、レンタカーの貸し渡しとそのレンタカーを運転するドライバーの仲介が一体として行われる場合や一体的サービスであることを強調する場合など、自動車運送事業に類似する行為が行われる場合には自動車運送法に抵触するおそれがありますので、今後の具体的な事業展開の状況を注視してまいりたいと考えております。

国土交通省としては、自動車運送法上の旅客自動車運送事業やレンタカー事業を所管する立場として、これらの事業における安全の確保、利用者の保護等をしっかりと図ってまいります。

次に、レンタカーが事故を起こした場合の責任についてですが、一般的に、レンタカー事業者が自動車損害賠償保護法第三条の運行供用者として第三者に生じた損害の賠償責任を負うこととされており、これはレンタカー利用者に代わってドライバーがその運転を行い事故を起こした場合も同様です。一方、利用者に生じた損害の賠償については、ドライバーと利用者の間で、あるいは保険によって解決されるべきものと理解しております。

なお、レンタカー事業者に対しては、第三者に生じた損害について対人保険八千万円以上、利用者に生じた損害について搭乗者保険五百万円以上の保険の付保を義務付けているところであります。

○山添拓君 国交省は監督権限持たないし、事故については一義的にはドライバーの責任ということです。

では、経産省の側は道路運送事業者に対する規制に基づいて指導監督を行う権限を持つんでしょうか。簡潔にお答えください。

○政府参考人(前田泰宏君) お答えいたします。

規制権限は持ちません。

○山添拓君 結局、どこも利用者の安全に責任を負わない、こういうことです。極めて無責任だと私は思います。自動車で旅客を運送する事業なんですから、その安全性を担保し、事業者に対して監督する責任を負うのは、本来は国交省です。責任を果たすべきだと思います。

ところが、今回、資料の六ページにもありますが、ジャスタビの事業に対して合法だとお墨付きを与えたのは経産省です。国交省の自動車局旅客課長は、当初、このような事業は道路運送法に抵触する可能性が高いと述べていました。困った事業者が経産省のグレーゾーン解消制度に持ち込んだ結果、法律の文言からは読み取れないような解釈を導いて、むしろ新たなグレーゾーンをつくり出したものと言うべきです。

安全のための規制をないがしろにするやり方はやめるべきだと指摘をしたいと思います。対価を得てお客を乗せると、乗客の命を預かるタクシー同様の事業にもかかわらず、何らの規制も及ばないと、これでは旅客運送における利用者の安全は確保されないと思います。

委員の皆さんは資料の八ページを御覧ください。これはジャスタビで登録されているドライバーなんですが、ビールと思われるグラスを手にしたプロフィール写真を載せているドライバーまでいるわけです。こういうものを放置しておくのかと。

シェアリングエコノミーやそこから派生した業態が業法の枠外に置かれる。例えば、道路運送法によって規制されてきた白タク行為が国交省の規制の枠外に置かれようとする動きが広がっています。命に関わる安全のための規制をこのように強行突破することは許されないのではないか。

消費者の安全、安心の確保を旨とする消費者行政として、こうしてなし崩し的に規制を開放している在り方を放置すべきではないと考えますが、大臣の認識をお願いします。

○国務大臣(松本純君) 今後、シェアリングエコノミーが広がっていく中で、既存の行政規制の及ばない新たなサービスが生まれ、それを利用する消費者に生命、身体に関わる被害が発生する可能性もあります。こうした消費者被害については、サービスの実態について十分把握した上で、必要に応じて消費者に対する注意喚起や事業者に対する勧告など、消費者安全法上の権限が適切に行使されることが必要と考えております。

いずれにいたしましても、新たなサービス形態の広がりに対しても、消費者が安心して安全な消費生活を営むことができるよう全力を尽くしてまいる所存でございます。

○委員長(石井みどり君) 時間を過ぎておりますので、質疑をおまとめください。

○山添拓君 はい。

適切な消費者保護の行政を求めて、質疑を終わります。

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