2017年・第193通常国会
- 2017年5月31日
- 資源エネルギー調査会
福島原発収束作業従事者 危険手当の搾取防ぐ仕組みを
- 要約
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- 原子力規制委員会委員長に対し、新規制基準の火山対策には不備があり、見直すべきだと質しました。
- 福島の除染作業現場の従事者への危険手当が末端まで行きわたる仕組みになっているのに対し、福島第一原発の収束作業の従事者については中間搾取が行われていることを指摘。原発労働者一人一人に確実に行きわたる措置の徹底を求めました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今日は、まず、新規制基準の下での火山対策から伺ってまいります。
原発の立地評価に関わって、特に火砕流との関係で、設計上の対応ができない事態の評価を誤りますと、これは重大な事故となりかねないわけです。火山ガイドというものがございます。この中では、運用期間中に施設に影響を及ぼす可能性が十分小さい場合にはモニタリングを行って、万一破局噴火の兆候が見られた場合には相応の対処をして安全を維持できるとされています。しかし、本当にそんなことができるのかと。万が一にも起こり得る破局的な噴火か、それとも通常のといいますか小規模な噴火現象なのか、火山現象なのかと、こういう的確な予測は不可能ではないかという批判がなされています。
川内原発の再稼働差止めを求めた裁判では、二〇一六年四月に出された福岡高裁宮崎支部の決定で、不可能な予測が可能であることを前提とした規制委員会の火山ガイドは不合理だとされています。今年三月には、伊方原発の再稼働差止めを求めた広島地裁の決定でも同様の判断がされています。
運用期間中に影響を及ぼす可能性のある火山がある地域での原発の立地、これは見直すべきではないんでしょうか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) まず、私どもは裁判の当事者ではありませんので、判決の内容について直接コメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、川内原発のことがありましたので申し上げますと、川内原発については、周辺半径百六十キロの範囲の火山、活火山、十四ぐらいあるわけですけれども、それについてその影響評価を行いまして、それに対する安全評価をして、何というんですか、その火山の影響が原子炉の安全性に影響を及ぼすことはないということを確認させていただいています。
破局的噴火というのを、先生、どういうことを想定されているかよく分かりませんけれども、カルデラ噴火のようなものが起これば、恐らく九州全域は全滅、人は瞬時にして亡くなるような状態とか、そのカルデラ噴火が起これば一億人ぐらいは亡くなるというような予測もされています。そういうものに対して予測できるかというと、それは、私どもとしては、それを予測することを求めているわけではありません。
私どもとしては、そういったことが、発電所の寿命期間中にそういうことの兆候があれば、少しでも前もって原子炉の安全対策を施すと、原子炉を止めるとかそういう判断に使おうということで、いろいろ事業者にいろんなデータの蓄積を求めておりますが、破局的噴火の予測を予兆するために我々が取り組んでいるということはございませんし、ガイドでもそのことは求めておりませんので、その旨御説明させていただきます。
○山添拓君 要するに、予測はできないということではあるわけです。
可能性は十分低いけれども起こり得るという前提で今もお話になっていたかと思います。起こらないとは言い切れないわけです。川内原発、巨大なカルデラに囲まれた場所にありまして、今御説明もいただきました。伊方原発も過去に阿蘇の噴火によって火砕流が到達していた、こういう可能性も指摘をされています。ですから、可能性の程度として低いかどうか、これはいろいろ御意見あるんですけれども、しかし、これではまた想定外が起こってしまうと、そういう指摘がされているということであります。
火山ガイドでは影響評価の点でも特に火山灰の問題が指摘をされています。火山灰で非常用ディーゼル発電機の吸気フィルターが目詰まりを起こすと。これにはフィルターを取り替えて対応するということになっているんですが、大気中の火山灰濃度の想定が過小評価ではないかと、こういう指摘がされています。先ほど述べました福岡高裁の宮崎支部の決定では、火山灰の大気中濃度について少なくとも十倍以上の過小評価が疑いがあると、広島地裁の決定では、過小評価は明らかだと、こうも述べています。
従来、一立米当たり三・三ミリグラムという想定値を、十倍の一立米三十三ミリグラムと、こういう想定値で安全性の確認をし直すというふうに伺っているんですけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 火山灰によるフィルターの目詰まりについては、パブリックコメントでそういった御指摘がありまして、私どもとしてはそれを前向きに受け止めています。
〔会長退席、理事福岡資麿君着席〕
原子炉の安全上の問題として、すぐにそのことが大きな事故につながるようなことはなくて、フィルターの交換とか様々な対策で対応はできますけれども、より安全を確保するというのが今回の私どもの考え方、バックフィット、そういったことがありますので、そういった視点から今事業者と話し合って、どういった方法にすれば、今御指摘の十倍どころか百倍程度でも大丈夫なようにしておく方がいいだろうということで、今そういった検討を進めているところでございます。
ですから、そういったいわゆるバックフィットとか何かを全く否定してしまいますとこれは安全神話の世界に陥りますので、そういうことではなくて、できるだけより安全を求めていくという方向で私たちは取り組んでいるところですので、誤解のないように申し上げておきたいと思います。
○山添拓君 特に誤解はしていないんですけれども。
そういう意味では、今のこの火山灰の対策、このままではいけないかもしれないと、こういう前提で検討を進められているということなんだと思います。今、前向きに検討というお話もありました。
皆さん方も御承知のとおり、三年前の御嶽山の噴火などもありましたが、いつどういう噴火が起こるかということはもう予測ほとんどできない、できていない状況にあります。ですから、今稼働している原発について求められている安全性を満たしていない、あるいはその疑いがあるということであれば、本来は直ちに止めて、十分に必要な対策を検討した上で対策を施すということが最低限必要なんじゃないでしょうか。そこはいかがですか。
○政府特別補佐人(田中俊一君) 火山灰に限らず、様々ないろんな安全規制上、安全上、手当てをしなければいけないということを、今後全くないかというと、そういうことはないと思っております。
ただし、その程度によりますけれども、直ちに止めて対策をしなきゃいけないのか、どの程度のものかというのは、その状況によって判断していくということになります。
〔理事福岡資麿君退席、会長着席〕
今の火山灰でありますと、ある程度、人力も含めて、フィルターの交換とか、今非常用電源も二台ありますから交互に運転することができるとか、それからほかにも電源が準備されているというようなことがあって、直ちに安全上の問題があるから原子炉を止めなきゃいけないというような状況でないという判断をしつつ、なおかつ、より、より、非常にちょっと想定できないような、我が国では今までそういった噴火はないんですけれども、そういった状況を踏まえて、そういうことも頭に想定しつつ、それにも対処できるように、安心して対処できるようにという、そういう手当てをしていこうということで今取り組んでいるところですので、繰り返しになりますけど、考え方が、基本的にバックフィットするという考え方、安全神話に陥らないようにするという考え方からいうと、今先生の御指摘のようなことをやれば当然安全神話の世界に入っていくということになりますので、ここは私どもとしてはちょっと、御指摘ではございますけれども、そういうふうな考え方には、先生のような御指摘にはいかないというふうにお話しさせて、御説明させていただきます。
○山添拓君 本当に予想外のことが起こるということが福島事故での経験でもありますので、そうした前提で、新たな知見が得られた場合には直ちにそれに対応していくということが最低限求められるということを指摘しておきたいと思います。
今日は、危険手当の問題を指摘したいと思っています。
福島の今除染作業が行われておりまして、ここでは危険手当、特殊勤務手当と言っていますが、人事院規則の定める手当額として、帰還困難区域では一日六千六百円、居住制限区域では一日三千三百円という額になっています。これが現場の作業員に行き渡っているのかどうか、これは環境省において元請企業に賃金台帳を確認させて定期的に報告をさせているということを伺っています。三か月に一回環境省に報告がなされて、その際に払っているかどうかを確認しているということで、それ自体には、三か月に一回ですから、果たしてきちんと払われているのかという問題があり、今日資料でもお配りしておりますが、実際には、一次、二次と下請の各段階で作業員の賃金から会社の利益を差し引いて、残りを作業員に渡している、こういうふうに言われているところもあるわけです。
それはそれとして、環境省において、この除染作業の危険手当に関して伺いたいんですが、発注時に見積もった作業量が、実際に作業を行ってみると、予定より作業に日数を要したとか、あるいは予定より人数が多く掛かったということで、実際の見積りと実績とがずれるという場合があろうかと思います。この場合にも作業員一人一人に特殊勤務手当は確実に行き渡る仕組みになっているんでしょうか。
○政府参考人(早水輝好君) お答えいたします。
今御指摘のように、発注時の見積りの作業量と実際の作業量が異なる場合でも、作業日数に応じた特殊勤務手当を作業員に支払うことを受注者に義務付けております。これは、先ほど先生御指摘のように、契約において、共通仕様書の中で、受注者に対して定められた額を支払うということと、それから三か月に一度支払状況を確認することを義務付けているということでございます。
仮にもしその作業量が増加した場合には、これは、受注者が必要な手当等の支払に支障を来すことのないよう、この増嵩分の賃金、それから特殊勤務手当を含む金額は精算時に環境省から受注者に対して支払っておりますので、そういうことで、支障は来すことはないというふうに考えております。
○山添拓君 精算をするので、確実に作業員一人一人に行き渡る仕組みがあるんだということです。
そこで、東電に伺いたいんですが、福島第一原発事故の収束作業に従事する作業員に対するいわゆる危険手当ですが、これは請負契約における労務費の割増し分として支払われています。資料の二ページに示した記事の中にイメージがありますので、委員の皆様、御参考ください。
基本給の部分に当たる労務費と事故直後から払われている割増し分があり、さらに、二〇一三年の十二月からは割増し分が増額されたと。この問題、我が党でも繰り返し取り上げているんですが、まず、事故直後から払われている労務費の割増し分というのは、これはどういう趣旨で払われているものでしょうか。
○参考人(廣瀬直己君) お答え申し上げます。
これは、私どもが工事をお願いする際に、社内で一体幾らぐらい掛かるだろうかということをある意味積算するために使っている社内の考え方であり、数字でありますけれども、御存じのように、1Fの、福島第一の作業環境は大変厳しゅうございます。したがいまして、そうした中でお仕事をしていただくこと、またさらに、元請企業さんにとりましては、そうした環境で働いていただくような作業員の方を確保していただくために、やはり同じ金額ではなかなか厳しいというのは私どもも認識しておりますので、例えば同じ工事をする際に、柏崎刈羽で行う工事のための積算するための分が一番この新聞記事で言えば左側の基本分であります。それに加えて、福島第一ということでの特別な分を加算をして、我々として人件費の、このぐらい掛かるんではないかということを内々積算するための考え方であり、数字であります。
○山添拓君 割増しの分は明示されていないんですか。
○参考人(廣瀬直己君) これは私どもが、例えばこういう工事を行うために何人ぐらいの人が仕事に関わるだろうかというのを積み上げまして、それで、幾らぐらいで全体、全部の工事費ですね、材料代とか全てを含めてこのぐらいの工事費でお願いするということを積み上げるための数字でございますので、最終的に請負企業の方と契約を結ぶのは総額でございます。示しておりません。
○山添拓君 しかし、例えば二〇一二年の三月十二日には、いわきの市議会で、小森当時の常務取締役でしょうか、危険手当については今後も引き続いて必要な経費と考えておりますと、それがしっかり作業員の方に渡るように各企業さんには常にお願いをし、必ず作業されている方に仕事の成果として行くように引き続いて努力してまいりたいと、こういうふうに述べておられます。
本来は区別をして明示をし、そして作業員まで行き渡るようにするべき趣旨のお金だと、こういうことではないんでしょうか。
○参考人(廣瀬直己君) 私どもも、当然、作業員の方々にお金が渡っていただきたいということで、私どもお支払いする側ですので、その目的に照らしてそうした使われ方をしてほしいと思うのはやまやま、そのとおりでございますけれども、ただ、御存じのように、請負契約というのは、例えば福島第一であれば、タンクを十個造ってくださいという工事の契約でございます。そこに対して、当然、土台を造る方、金属の溶接をする方、それから塗装をする方、電気工事をする方と様々いらっしゃいますけれども、もうそうした方々をまとめて、それが元請さんのお仕事ですけれども、工事を全部仕上げていくという形になります。
したがって、私どもは、それぞれについてどのぐらいの人数が掛かるだろうということを内々想定をして、金額を全体はじいて総額でこのぐらいになるだろうということは当然しますけれども、だからといって、必ずしも、例えば塗装に十人掛かると我々が見積もったからといって、請負さんが十人でやる必要はございません。八人でやれるのであれば八人でやっていただいても構わないですし、見習の方なので二十人を投入したということであれば、それもそれで構わないと思っております。
私どもとしては、全体のタンク十個というのをしっかりとした金額で請け負っていただくということから、そうした請負契約の形になっているというふうに理解しております。
○山添拓君 今、八人だったり二十人だったりということがありました。八人なら八人分を、二十人なら二十人分を払うというのが本来だと思うんですね。しかも、元の原資は、これは税金から今東電に対して払われているわけですから、いわゆる危険手当について、聞かれれば払っていると強調しながら、事故後六年たっていまだに明示もされていないと、これは私は大問題だろうと思います。
それからさらに、この更なる増額分ですが、二〇一三年十二月から増額された労務費の割増し分の増額分、これは、マスクを着用していれば二万円、ボンベやアノラック着用なら三万円、あるいは線量や汚染度が特に高い場所での作業、精神的、肉体的に負担の高い作業なら四万円というふうに増額をされておりまして、要するに装備の違いによって増額分が違うと。つまり、作業する環境、線量の違いによって差を付けているわけです。ですから、なおさらこの増額分については、それぞれ一人一人に、作業された一人一人に行き渡るべき趣旨のお金なんだろうと思います。
東電に改めて伺うんですが、この増額分が実際に行き渡っているのかどうか、確認をされているでしょうか。東電は今年の三月末までに三百社に対してサンプル調査を行ってきたと伺っています。その結果、いずれも増額を確認できたとも聞いているんですが、下請の各社において幾らの増額を確認されたのか、この増額分がそれぞれ確実に増額しているというふうに確認されたのかどうかということを、恐縮ですが、時間も短くなってきましたので、端的にお答えいただけますでしょうか。
○参考人(廣瀬直己君) 私どもの確認の仕方といたしましては、それぞれの作業をされていらっしゃる方がその方の属されている会社さんとどういう契約を、どういう作業条件で契約をされているのかというのを作業員のサイン入りの作業指示内容を確認をして、さらに、私どもが例えば今先生が御指摘になったような部分の増額をしていますよということを元請さんに説明しておりますので、その説明内容をちゃんと作業員の方がお聞きになっているかどうかという確認をし、さらに最後は、賃金台帳でそれらの額が、額といいますか、そうした趣旨のものがお支払いになられているかどうかという確認をしております。
先生の御質問でありますけれども、先ほど来、繰り返しになりますが、私どもは例えばこの作業であれば十人分のということで増額費用をお支払いはしております。それは間違いございません。是非私どももそれは末端の作業員の方まで届いてほしいと思っておりますが、それを八人でやるか十二人でやるかはそれぞれの工夫とそれぞれの状況の中で御判断をされておりますので、例えば十人でやっていない場合もございますので、その金額が必ずしも合っていないからといって、それを十二人で分けていらっしゃるかもしれませんし、八人で分けていらっしゃるかもしれませんので、そこについては、最終的には私どものその趣旨が伝わっているかどうかということで確認をさせていただいております。
○山添拓君 ですから、本来は作業している環境に応じて払われるべきものだと、東電もそう主張されているわけです。ですから、確実にその作業をされた人に対してその額が行き渡るようにすべき性質のものではないかと思うんですね。
経産省に最後伺うんですが、労務費割増し分あるいはその増額分について、資源エネルギー庁としても、そうした作業に従事する労働者、作業員一人一人に行き渡るべき性質のものだと認識をされているかどうか。そしてその上で、この今危険手当として払われているものについてはその実態を正確に把握して、間に入る会社が中間搾取するような構造を許さないことが必要ではないかと思います。現に、お聞きいただいたとおり、環境省の除染の作業の現場では、限界はありますけれども、末端まで行き渡る仕組みが構築されているわけです。収束作業についてこれだけ中抜きが問題視されてきています。東電が直接末端の作業員まで支払うような仕組みにしていくべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○副大臣(高木陽介君) 個別の賃金や労働条件は労働契約で定められるものでございますので、個別具体的な賃金水準に国が立ち入るということ、この性格のものではないと思います。ただし、今お話がありましたように、作業員の方々があの福島第一原子力発電所の廃炉作業、汚染水の対策作業、六千人がやっておられますので、そういった作業員の方々のモチベーションの向上、そういった観点から、御指摘の労務費の割増し分、その増額分については作業員に確実に行き渡ることが望ましいと、このようには考えています。
そういった中で、東電も、今お話がありましたように、例えば元請各社に対して労務費割増し分の増額対策の趣旨を丁寧に説明し、増額分の労務費が作業員の方々に確実に行き渡るように具体的な施策の立案及び実行等を要請するとともに、その施策が適切に行われることの確認など取組を行っておりますので、しっかりとその部分は私たち経済産業省としても指導をしていきたいと思いますし、あともう一つは、作業員の方々が、賃金、仕事の内容、また放射線の問題等々、作業環境についてもしっかりと説明を受けて、納得をした上で働いてもらうことが重要でございますので、引き続き東京電力の取組状況を確認しながら適切に指導してまいりたいと思います。
○山添拓君 これで終わりますけれども、危険手当、まさに危険に対する対価ということですから、一人一人に確実に行き渡る措置を徹底していただきたいと思います。
終わります。