2018年・第196通常国会
- 2018年2月1日
- 本会議
補正予算に反対討論しました
- 要約
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- 2017年度補正予算が2月1日の参院本会議で、自民、公明、維新の各党などの賛成多数で可決・成立。日本共産党、民進党、希望の会(自由党・社民党)、立憲民主党、希望の党、「沖縄の風」は反対しました。同予算の総額は2兆7073億円で、そのうち軍事費が2345億円計上されました。
- 討論に立った山添拓議員は、九州北部豪雨や熊本地震などの復旧対策費は「緊急かつ必要な支出」と表明、その上で「反対する最大の理由は軍事費だ」と指摘しました。
○山添拓君 日本共産党を代表し、二〇一七年度第一次補正予算案に反対の討論を行います。
初めに、沖縄をめぐって安倍政権が発した驚くべき暴言について、抗議を込めて指摘します。
先月二十五日、衆議院本会議で我が党の志位委員長が相次ぐ米軍機の事故やトラブルについて質問した際、松本内閣府副大臣が、それで何人死んだんだとやじを飛ばしました。凄惨な地上戦にさらされ、長いアメリカ占領時代を経て日本に復帰し、なおも基地の危険と負担を余儀なくされてきた沖縄県民の痛みと苦しみ、その歴史をどこまで踏み付けにするのでしょうか。
辞任で済まされる話ではありません。地元の新聞が「にじむ国の本音」とタイトルを付け報じたように、安倍政権の姿勢そのものが問われています。
総理は、安全確保は大前提と言いますが、米軍は沖縄全土で事故を繰り返しています。ところが、日本の警察は現場に立ち入ることすらできず、航空機の安全規制も特例法で適用除外。原因究明も再発防止もままならない、まさに主権侵害です。沖縄の人々に寄り添うというなら、事故を起こした全機種の飛行停止を米軍に求め、航空法特例法は廃止すべきです。普天間基地の返還が待ったなしというなら、無条件の返還を求めるべきです。海兵隊を強化し固定化する辺野古新基地建設は中止すべきであることを強く求めるものです。
本補正予算案のうち、九州北部での豪雨災害や台風被害、熊本地震などの復旧対策費については、緊急かつ必要な支出です。
私は、昨年末、福岡県朝倉市、添田町、東峰村、大分県日田市を訪れました。土砂と流木に押し流され、元の姿が想像できないほどの深刻な被害に見舞われた谷合いの集落があり、一刻も早い住宅、なりわいの再建が求められています。
一方、この地域のJR日田彦山線は復旧作業すら行われていません。レールがさび、草がぼうぼうの様子を見るたび、見捨てられたような気がするという声は痛切なものです。JR九州は、復旧費用を精査するでもなく、単独では負担できないと言います。営利ばかりを優先し、災害を奇貨として自治体に負担を押し付け、さもなければ鉄路の廃止などという態度は許されません。まず復旧をという地域の願いに政府が適切に対応するよう強く求めます。
本案に反対する最大の理由は軍事費です。
財政法上、補正予算による支出は、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費に限られます。ところが、第二次安倍政権発足以降、毎年、戦闘機、護衛艦、ミサイルなどの購入経費を補正予算に盛り込むことが常態化しています。補正予算の趣旨にも反し、本予算と一体に軍事費を肥大化させるものです。
本案における軍事費は二千三百四十五億円。その実に八割が兵器調達の歳出化前倒し、すなわち既に発注し分割払で後の負担としていた分の前払です。緊急性など認められません。
加えて、新規の兵器購入も計上され、補正後の総額で二兆三千二百六十七億円もの新たな後年度負担を生み出そうとしています。継続分を含めた後年度負担の残高は、一九年度以降で五兆七百六十八億円に上ります。オスプレイやF35、無人偵察機など、高額兵器をアメリカの言い値で爆買いし、国民負担を膨らませるゆがんだ予算をいつまで続けるつもりでしょうか。
安倍政権は、北朝鮮問題への対応を口実に軍拡を進めてきました。
本案には、能力向上型迎撃ミサイル、PAC3MSEの調達、弾道ミサイル防衛システム関連経費、二基二千億円以上というイージス・アショアの調査費が含まれています。さらに、一八年度予算案では長距離巡航ミサイルの導入経費まで計上していますが、これは、政府が憲法の趣旨から持つことができないとしてきた、他国に攻撃的な脅威を与える兵器にほかなりません。敵基地攻撃能力の保有は断じて許されません。
一九九四年の北朝鮮危機をアメリカ国防長官として対応したウィリアム・ペリー氏は、当時、巡航ミサイルによる核施設の破壊を計画したといいます。しかし、北朝鮮が反撃すればより大きな惨禍へとエスカレートすると予測し、外交手段を選択、それが成功した。今日、軍事的手段を行使しない理由は当時よりずっと大きいと述べています。ペリー氏の教訓にこそ学ぶべきです。
北朝鮮問題への対応は、経済制裁と一体に、対話による平和的解決を目指すべきであります。
今政府が行うべきは、巨額の軍事費で際限のない軍拡に突き進むことではありません。格差と貧困を是正するため、医療や介護、年金、子育てや教育、国民生活に密着する施策に必要な予算を投じる政治への転換こそが求められています。
アベノミクスの五年間、日銀マネーや年金資金の投入で株価が二倍につり上げられ、大企業と富裕層がかつてない利益を上げました。大企業の内部留保は四百兆円を超え、超富裕層の資産は三倍にもなっています。しかも、株式譲渡益への低い税率により、税負担は大幅に軽減されています。
一方で、消費税が増税され、働く人の実質賃金は年額で十五万円も減り、実質消費支出は二十万円も減少しました。格差と貧困の広がりは明らかです。
ところが、総理は代表質問で、こうした客観的事実さえ認めようとせず、アベノミクスで景気は回復、貧困、格差を拡大させたとの指摘は当たらないと開き直っています。
来年度予算案で低所得世帯の生活水準が下がったことを理由に生活保護をカットしようとしていますが、そのこと自体、貧困が改善という政府の宣伝が偽りであることを示しているではありませんか。
働き方改革の目玉とされる高度プロフェッショナル制度は、労働者が望まない残業代ゼロ制度です。総理は、健康を確保しつつ意欲や能力を発揮できる柔軟な働き方などと言いますが、二十四時間、休憩もなく、深夜もお構いなしの働き方で、どうやって健康を確保するというのでしょうか。裁量労働制の拡大、過労死ラインの合法化とともに、長時間労働の是正と相入れない働かせ方の大改悪であることは明らかです。
税金の集め方と使い方を抜本的に改め、八時間働けば普通に暮らせる社会への変革が必要です。それは、憲法を生かした政治の実現にほかなりません。
昨年三月のNHK世論調査では、憲法九条が日本の平和と安全に役立っていると答えた方が初めて八割を超えました。ところが、総理は、戦後の平和は自衛隊と日米同盟の抑止力があったからだと強弁し、九条の価値を殊更軽視をしています。この上、国民の多数が望まない改憲を進めるなど、もってのほかです。
市民と野党の共同の力で、九条改憲発議を許さず、憲法に基づく政治への転換に全力を挙げる決意を申し上げ、反対討論といたします。(