山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2018年・第196通常国会

リニア談合事件 政府の対応、JR東海の責任追及

要約
  • リニア中央新幹線建設工事をめぐる談合事件で、大手ゼネコン4社が独禁法違反(不当な取引制限)罪で起訴された23日に開かれた参院国土交通委員会で、重大な犯罪行為である談合への政府の対応の遅さを批判。談合に加担するような発注を行うJR東海の責任を追及しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。

リニア中央新幹線の工事をめぐる談合事件について伺います。

今日午前、公正取引委員会は、独占禁止法違反事件で大成、鹿島の幹部とスーパーゼネコン四社を刑事告発し、今日午後にも起訴という状況になっています。

公正取引委員会に伺います。告発の根拠とその理由を簡潔にお述べいただけますか。

○政府参考人(山本佐和子君) お答え申し上げます。

公正取引委員会は、JR東海が発注する中央新幹線に係る建設工事の受注調整事件につきまして、独占禁止法に違反する犯罪があったと思料して、本日、大成建設株式会社、鹿島建設株式会社、株式会社大林組及び清水建設株式会社の四社並びに大成建設株式会社及び鹿島建設株式会社で同工事の受注などに関わる業務に従事していた二名を検事総長に告発したところでございます。

被告発会社四社は、過去にも独占禁止法に係る刑事罰、行政処分を受けており、また、本件受注調整の対象とされた工事の規模が大きいこと、さらに、全国新幹線鉄道整備法に基づく中央新幹線の建設工事であり、かつ、財政投融資資金による貸付けの対象とされていることなど、高度に公共的な財・サービスであることなどから、本件は国民生活に広範な影響を与える悪質、重大な事案であると考えられました。また、公正取引委員会の行う行政処分によっては、独占禁止法の目的が達成できないと考えられたところでございます。このため、公正取引委員会といたしましては刑事告発を行ったものでございます。

○山添拓君 公共工事ではなく民間発注の工事で刑事責任が問われるというのは初めてのケースですので、意外だと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

資料の二ページを御覧ください。これまで二十四件、JR東海などが発注している工事の約六割、十五件で今の四社が三から四件ずつ工事を分け合っています。あの南アルプストンネルや品川駅、名古屋駅など、確かに高い技術が必要な工事もあります。しかし、JR東海が競争入札という仕組みを採用している以上は、そこでの受注調整は談合、犯罪になるわけです。

独占禁止法違反の談合は、逮捕者が出た段階で国が発注する公共工事の競争入札に参加する資格を停止する、指名停止措置をとることになっています。国交大臣、直ちに指名停止にすべきじゃないですか。

○国務大臣(石井啓一君) リニア中央新幹線の建設工事に関しまして、独占禁止法違反の疑いで、大成建設、鹿島建設、大林組及び清水建設の四社が公正取引委員会による告発を受けたことは誠に遺憾であります。指名停止措置につきましては、指名停止の期間や対象地域等について検討を進め、できる限り早く対応してまいりたいと考えております。

○山添拓君 遅いんですよね、対応が。この問題浮上したのは昨年末です。逮捕は三月二日です。ところが、政府は三か月以上の間ほとんど何もしてきませんでした。捜査の進展を見守るというばかりで、事実確認すらろくに行わずに今日まで来ています。重大な犯罪行為なんですよ。遺憾で済む話じゃないと思います。

今後発注される公共工事については、最長九か月とはいえ、指名停止が想定をされています。しかし、既に発注した工事についてはこのままでは止まりません。これは普通の感覚からすればおかしいと思います。発注済みの工事についても契約の解除を含めて考えるべきではないかと。

国交省直轄工事の契約書の四十七条では、発注者は工事が完成するまでの間は、必要があるときはこの契約を解除することができる、こうしています。任意の解除権です。その行使や、あるいは解除が可能な仕組みを整備していくという必要があるんではないでしょうか。

○国務大臣(石井啓一君) 国土交通省直轄工事の契約では、発注者が必要と認める場合には、受注者の損害を賠償した上で任意に契約解除を行うことができることとなっております。独占禁止法違反等を理由として任意解除することは、当該契約が仮に工事着手前の段階であったといたしましても、契約手続のやり直し等のために工事の完成が遅れるなど社会的な損失が発生すること、人員や資材の確保を開始している下請や資材の調達先等に不測の損失を生じさせること、発注者に損害賠償が生じる可能性があることなどから、適切ではないと考えております。公共事業におきましては、事業の中断や手戻りなどによる社会的な損失を防ぐことも重要であります。

このため、独占禁止法違反者等へのペナルティーにつきましては、指名停止等の措置でこれまでも対応してきたところでありまして、引き続きそれらの措置により厳正に対処してまいります。

○山添拓君 既に全然厳正じゃない対応になっていると思うんですけどね。

東京都は、大成、鹿島の幹部が逮捕されたその日に二社を指名停止処分にしました。二件の水害対策工事の仮契約を解除しています。水戸市でも、ごみの最終処分場建設について、大林組JVとの仮契約を解除しました。北海道では、仮契約を解除する規定がないことに批判が噴出をしまして、解除規定を設ける検討を始めています。国と地方で仕組みが違う面もありますけれども、国も何らかの態度を示すべきだと考えます。

リニア工事の発注者であるJR東海の柘植社長は記者会見で、契約済みの工事は予定どおり進めていく、新たな契約も工期に影響が出ないよう着実に進めると言い、東京や愛知の大深度地下トンネルの工事を含む十件の発注手続を継続しています。昨日の社長の会見では、起訴されても判決確定までは契約から排除しない、こんなことまで述べています。

仮に最高裁まで争われれば数年掛かる場合もありますから、全部工事を発注し終わってしまう、こういうことです。それでいいんですか。工事一旦中止させて、全容解明を求めるのが当然じゃありませんか。

○国務大臣(石井啓一君) JR東海によれば、リニア中央新幹線の工事については、工期に影響が出ないよう着実に進めていく考えであると聞いております。工事を継続するか否かにつきましては、発注主体であるJR東海が判断すべきものであると認識をしております。

○山添拓君 JR任せなんですよ。民間発注だからということなんですね。

しかし、皆さん、大臣、昨日いらっしゃらない時間でしたけれども、今日この委員会で与党の議員からは、リニアはナショナルプロジェクトだというような指摘もされているんですよ。都合のいいときだけ民間だからといって手を引くというのは、これはちょっとおかしいんじゃないかと思いますね。今後もスーパーゼネコンの違法行為に国が加担することになりかねないという意識が欠けていると言わざるを得ません。

先ほど公取から紹介をいただきましたように、今度告発をしたその理由は、高度に公共的なものだと、財投が入っているということも考慮してですね。だから、国民生活に影響を与える悪質、重大な事案だということが指摘をされているわけです。

民間の工事なら発注者に問題ないということでもありません。談合行為に発注者が関与するケースというのは、いわゆる官製談合です。過去には、橋梁談合事件で、発注者である旧道路公団の役員が受注者の独占禁止法違反の共犯となった、そういう事例もあります。民間発注の工事でも、受注者の談合に加担した発注者側は、幇助犯ですとか共同正犯ですとか、共犯関係が成り立ち得るわけです。ですから、今回でいえば、JR東海側にも刑事責任を問われる可能性があるということになります。

国交省に伺います。JR東海の担当者が工事の見積額を漏えいしていたとかゼネコン四社に未公表の発注情報を開示していた、さらには、受注予定企業の一覧表はJR東海が工事の発注前に原案を作成していた、こういう報道もあります。分野ごとに、各社の意向や得意分野を基に技術研究を持ちかけて、各社も将来受注につながるといって協力をして、そして予定どおりそれらを受注しているという経過がありますが、そもそもJR東海、どういう発注方式を取っているんですか。

○政府参考人(藤井直樹君) お答えをいたします。

JR東海によれば、リニア中央新幹線工事の発注方式は、主に公募競争見積方式と指名競争見積方式の二種類を採用しているとのことです。

このうち、公募競争見積方式とは、ホームページにより参加条件などを開示することにより幅広く競争参加者を公募し、多数の業者から見積書、技術提案等を受け付ける、その中から価格と技術提案等を総合的に評価して協議先一社を選定する、選定した協議先ときめ細かく価格協議を行う方式とのことでございます。

一方で、指名競争見積方式は、複数の競争参加者をJR東海が指名の上、見積書、技術提案等を受け付ける、その中から価格と技術提案等を総合的に評価して協議先一社を選定する、選定した協議先ときめ細かく価格協議を行う方式と聞いております。

○山添拓君 資料の四ページに比較的分かりやすいと思われる表を載せておりますが、二段階なんですね。なぜこのような方式を取るのかといいますと、技術提案や見積価格が妥当かどうかを判断するには一定の知見が必要になります。JR東海やその子会社では知見が十分ではありませんので、ゼネコンの力を借りるということです。契約先を決める前から工事ごとに特定の大手ゼネコンを選んで、技術協力と称して場合によっては無償で適切な施工方法や見積価格について検討をさせます。汗かき方式などとも呼ばれるんですが、発注者としては汗をかいた業者に工事をやらせたいと思いますし、ゼネコンの側としては技術協力を事前に行った費用については回収したい、だから受注をしたいと、こう考えるわけです。ゼネコン同士それぞれ事情は同じですから、受注調整しやすいように第一段階の技術協力の場面でJR東海の側が受注するゼネコンを事実上選んでいると、こう考えられます。こういう発注方式自体が談合の温床ともなっている、言えると思います。

国交省、伺いますけど、いわゆるこの第一段階の技術協力の場面でJR東海は対価を支払っているんですか。イエスかノーかだけで結構です。

○政府参考人(藤井直樹君) 今の質問は御通告ございましたので、確認ができておりません。

○山添拓君 もう何度も聞いているんですけれども、JR東海、どうしているかって分からないんですね。非公表なんですよ。そうですね。

○政府参考人(藤井直樹君) 先ほど申し上げたとおりでございます。

○山添拓君 非公表なんです。これ、表の方を見ていただいても分かりますけれども、二ページの表のところで御覧いただきますが、契約金額について、そもそも全体も非公表ですから第一段階で払っているかどうかなんてことも分からないわけです。不透明さが談合の温床にもなっております。JR東海は、今お示ししましたように、入札の経過も契約額も一貫して非公表です。談合事件の発覚後もその態度を変えておりません。

大臣は、二月八日の衆議院予算委員会で、我が党の本村伸子議員の質問に対して、公共工事では透明性の確保が重要だと言い、入札や契約について公表すると言いながら、リニアはJR東海の民間工事だという一点で公表は義務付けられないとし、それは財政投融資を含めて公的資金が投入されていても同じなんだと、こう答弁をされています。

この先も放置されるというおつもりですか。JR東海が同様の方式で発注をして、契約や入札も非公表を続けて、新たな談合は起きないと保証できるんですか。

○国務大臣(石井啓一君) 国等が発注、契約主体となるいわゆる公共工事につきましては透明性を確保することが重要でございますので、公共工事の入札や契約等に関する情報につきましては、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に基づきまして公表することとなっているところでございます。

一方、リニア中央新幹線につきましては、民間企業であるJR東海が建設主体でありまして、JR東海が発注する工事につきましては、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の適用はないことから、契約等に関する情報の公表は義務付けられていないところでございます。なお、この点は公的資金を受けているか否かに関わらないということでございます。

○山添拓君 それは二月の答弁と全く同じなんですね。民間工事で初めて刑事責任が問われる事態となっているのに、認識が甘過ぎると思います。談合したゼネコン各社には直ちに指名停止の措置をとるべきですし、JR東海に対しても再発防止のための実効性ある措置をとらせることが最低限必要です。民間発注の工事だから手も足も出せないということでは困ります。

政府も、また与党の皆さんも含めて、問題だとすら思っていらっしゃらないような気が私はいたしますけれども、これはとんでもない事態だということを、犯罪行為だという事態を是非認識いただく必要があるんじゃないでしょうか。

そもそも、リニア新幹線の事業自体が採算制を無視して自然と暮らしを破壊する、安全性も担保されていない、談合という……

○委員長(野田国義君) 時間が来ましたので、まとめてください。

○山添拓君 終わりますが、犯罪行為にまで悪用された事業です。この事業自体中止を私ども求めておりますが、談合疑惑については徹底究明が必要だということを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございます。

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