2018年・第196通常国会
- 2018年4月11日
- 資源エネルギー調査会
資源エネルギーをめぐる諸問題について参考人質疑
- 要約
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- 再生可能エネルギーを主電源にすることについての課題について等、参考人のご意見をお聞きしました。
○会長(鶴保庸介君) 原子力等エネルギー・資源に関する調査を議題といたします。
「新たな時代に向けた我が国の資源エネルギー像」のうち、「我が国の資源エネルギー戦略」について調査を行うに当たって、本日は「資源エネルギーをめぐる諸問題」について参考人から意見を聴取いたします。
御出席いただいております参考人は、特定非営利活動法人国際環境経済研究所理事・主席研究員竹内純子君、龍谷大学政策学部教授大島堅一君及び特定非営利活動法人日本水フォーラム代表理事竹村公太郎君でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本調査会に御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
議事の進め方でございますが、まず竹内参考人、大島参考人、竹村参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、竹内参考人からお願いいたします。竹内参考人。
○参考人(竹内純子君) 御紹介いただきましてありがとうございます。私、国際環境経済研究所あるいは幾つかのシンクタンク、大学等でエネルギー・環境問題を研究しております竹内と申します。今日は貴重な機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。また、ちょっと体調を崩しまして、ちょっと多分お聞き苦しいところがあろうかと思いますけれども、御容赦をいただければ幸いでございます。
私からは、日本のエネルギーミックスをめぐる諸問題と題しまして、長期的なエネルギーのトレンドあるいは基本的な考え方、世界の潮流も含めた上で、エネルギーの動向というようなところをお話をさせていただきたいと思います。
まず、早速入っていきたいんですが、これから日本のエネルギーというのは激変をいたします。どう変わるかは分からないけれども、大きく変わることだけは間違いがない。その変化をもたらすトレンドを、私、昨年九月に上梓いたしましたこの「エネルギー産業の二〇五〇年」という本の中で、四人の共著なんですけれども、五つのDということで整理をさせていただきました。
まず一つ目のDが、ディカーボニゼーション、脱炭素化でございます。これはもうパリ協定という国際的な枠組みだけではなくて、民間企業が今低炭素化ということに向けて動き出しております。ただ、大幅なCO2削減、これには実は技術的なオプションというのはそれほどございません。
エネルギーの全体像をまずお話しさせていただきますと、日本で今使用されているエネルギーの三割程度が電力で、あとの七割というのは非電力。要は、例えばガソリン車でガソリンを燃やす、あるいは工場のボイラーをたく重油、そういった直接燃焼と言われるものが七割を占めております。
この直接燃焼から出るCO2を減らすには、二つ。一つは高効率化、二つ目は使用抑制ということになりますが、高効率化は今までもかなり進められておりますし、これ以上なかなか難しいところもある。もちろん、これからもやるんですが、難しいところもある。使用抑制となると、これは国民生活への抑制あるいは負担ということになる。
これを踏まえまして考えると、有力な手段としては、実は二次エネルギーと言われる何かからつくるエネルギー、要は電気あるいは水素というのは何かからつくるエネルギーで、つくり方によっては、要は再生可能エネルギーあるいは原子力等でつくりますとCO2を出さずに得ることができるエネルギー、これを活用するということでございます。
ただし、水素というのも期待されるエネルギーではある一方で、今のところですが、配る、送るためのインフラがないので、今、世界各国は、要は直接燃焼で使っている部分のエネルギーを電化する。例えばですけれども、ガソリン車を電気自動車にする、そうした上で掛け算として電源の低炭素化、これを図る。この掛け算というのが一つ世界の大きな潮流となってきます。
ですので、最終エネルギー消費というエネルギーの全体像は減るんですけれども、これから二〇五〇年に向かって大幅な脱炭素化をするとなると、実は電力需要というのは増えていくということが予想されます。この本の中でも、人口減少や省エネを踏まえた上でも、要は、人口減少、省エネといった減少トレンドを踏まえても、二、三割、現在と比べて電力需要が増えるのではないかということを予想をしました。
二点目のDが、人口減少、ディポピュレーションでございます。
人口減少、過疎化というのはこれから急速に日本の中で進む。二〇五〇年までに現在の居住区の六割以上で人口が半分以下になるという見通しを国土交通省さんも出しておられる。こうなると何が起こるかというと、全ての社会インフラ、道路、交通、水道、行政サービス等が維持が困難になるわけでございますけれども、電力でいえば、特に全ての送配電線、これが赤字路線化をするというおそれがございます。今、送電線、配電線というのは、大規模電源で発電をして送って、その売った売上げで投資を回収しているという形なんですが、この人口減少が進むと、今まで三千人の村だったのが例えば三百人になるとか、そういうことになりますと、売れる電気の量、当然減ります。投資回収がどんどん難しくなるということが起きてくるということでございます。
三点目が、ディセントラライゼーション、分散化でございます。
この分散化というのは、実は太陽光発電、風力発電、もちろん皆さん再生可能エネルギーというふうにお呼びだと思うんですけれども、あちこちに分散して置かれるので分散電源ともいう言い方をします。こうした今までのその大規模集中電源から分散した発電あるいは蓄電という形のものが導入されるということは、これは世界的な潮流でございます。日本でも当然分散化というものは進むわけですが、まず、日本の再生可能エネルギーの普及拡大をするには、諸外国の数倍に高止まりをしているこのコストを引き下げるということ、これが非常に大きな課題でございます。
ただ、ここでちょっと申し上げておきたいのは、分散電源や蓄電池の導入というのは、政策的な措置をすればある程度進みます。日本も、フィードインタリフ、全量固定買取り制度を二〇一二年に導入してから、日本は再生可能エネルギーまだまだ遅い遅いと言われながらも、太陽光発電、これ世界に例を見ない勢いで急速に普及をいたしました。今、OECD加盟国中、発電量でいえば第二位ということでございます。
これだけこうやって政策的な措置をして分散電源を導入するということはある程度できるかと思うんですが、この上で考えなければならないのが、実は安定供給を確保するには従来型電源、送配電網を適切に維持をしなければならない。分散化を進めるという方に政策の目は向くんですけれども、逆にその調整役を担う方をどう適切に維持するかというところを見落としがちなので、諸外国もここの制度設計がおろそかになって後で苦労するということが実は起きております。
というのは、四点目に書いております自由化、ディレギュレーションの世界に調整役を担う火力発電は既に置かれているということなんですね。
再生可能エネルギーというのの調整役を果たす火力発電というのは、自由化市場に置かれている。自由化というのは、要は経済性で勝つ事業者が勝者として生き残って、敗者は市場から出ていってくださいという、そういう制度です。ただ、エネルギー政策というのは、経済性だけではなくて、安定供給や環境価値、こういった価値を含めて、バランスを取って考えなきゃいけない。どういう方向に誘導するのかが非常に難しい。で、調整する役回りを担う火力発電を自由化市場に置いて、自由化直後というのは、まだこれまでの総括原価の下で培った設備がありますので、設備がある意味だぶついている状況でございますので、問題が顕在化するということはなかなかないんですが、時間がたつと顕在化してくる。これが自由化と先ほどの分散化というようなことが相まって、これを同時に進めた欧米諸国、特にその目配りが、送配電網、従来型電源の維持というところに目配りが十分でなかった欧米諸国が今この問題に直面しているというところでございます。
そしてまた、自由化のところで考えなければならないのが、原子力。自由化市場ではやっぱり民間事業者が原子力事業にチャレンジするということは基本的になくなるということで、もし国にとって原子力が必要だということでありましたら、こうした点を補完する制度設計が必要になるということでございます。
そして、最後のDが、デジタライゼーション、デジタル化ということでございます。
デジタル技術の進歩によって、特に計量や課金の仕組みが非常に安価、手軽になりました。こうなると、例えば自宅の太陽光で余った電気を自宅の前に設置した電気自動車のチャージャーに、人に売るというようなこともどんどんできるようになっていく可能性はあります。今はちょっと計量法の縛り等もございますのでどこまでできるか不明ですが、エネルギービジネスの在り方というのは大きく変わるということが予想される。
これが五つのDで整理をさせていただいた大きな潮流ということでございます。
これからのエネルギーミックスをどう考えるかというところに話を移してまいりたいと思いますが、まず考えなければならないのは時間軸の問題でございます。
実はエネルギーのような大きな社会インフラを変えていくというのは非常に大きな長い時間が必要となります。二〇三〇年、日本はパリ協定の目標を二〇三〇年の目標として出しておりますが、あと十二年、エネルギーのインフラを入れ替えるという点では十分な時間とは到底言えませんので、パリ協定に提出した日本の温室効果ガス削減目標を国内で達成するということでありましたら、原子力の再稼働次第ということになるというふうに言えると思います。ただ、二〇五〇になると、十分とは言えないまでももう少し時間的猶予がある、かつ、多分非連続な変化が起こってくるというようなところが予想をされてまいります。
さて、次にエネルギーミックスの考え方という点で基本的なところ、これを皆様、釈迦に説法ではございますけれども、お話し申し上げたいと思います。
その際に重要な考え方というのは、各エネルギー源が抱えるリスクというものはそれぞれあるということでございます。原子力はもう顕在化をしております事故のリスク、災害のリスクというようなところもございますし、では、それ以外のエネルギー源がリスクがないかというとそんなことはなくて、再生可能エネルギーでいえば天候がどう振れるかというようなリスクもございますし、化石燃料には国際市場の燃料価格のボラティリティーですね、変動を含む地政学のリスクといったようなものも当然ございます。
エネルギーミックスを強靱にするということは、これ政治の責任として当然考えなければならないことでございまして、リスクを勘案したポートフォリオを考えるというようなことが重要になってこようかと思います。
見落とされがちなリスクというのは非常時明らかになります。東日本大震災を含めて、今までの経験に学び尽くすという必要がございますけれども、例えば、東日本大震災直後、東京電力管内では計画停電が実施をされました。
皆さん、福島原発の事故に目をとらわれがちですし、あの計画停電でもう大規模集中電源駄目だ、システム改革だという議論になったわけですが、実は東京電力の火力発電所は太平洋側に広く点在させていたわけです。福島県にある広野火力と茨城県にある鹿島火力、百五十キロぐらい離れております。これが同時に被災をした。
本来であれば、日本海側に分散させておいた柏崎刈羽原発が動いていればあのような事態にはならずに済んだんだと思いますけれども、あのとき地理的リスクを分散させておいたにもかかわらず、それをうまく生かすことができなかった。やっぱりこうした災害のリスクという、地理的な分散が必要であるということも考えなければならない。
特に、例えば再生可能エネルギーで地産地消にしていた場合、自然災害でその地域一帯が災害に見舞われた場合に、復旧にエネルギー源ないというようなことにならないようにもしなければいけない。いろんなことに、やっぱりリスクに目配りをするということが必要になってこようかというふうに思います。
こういうリスクの在り方、ここら辺は震災から七年たってもまだ我々対応できていないところが多分にある。今年も関東圏内、かなり需給逼迫ということで供給が危ういという時間帯ございました。これは火力発電所が幾つかトラブルに見舞われたということもありますけれども、太陽光発電の上に雪が積もって数日間発電が全くできなかったというようなこと、こういったこともあったわけです。こういうようなことを、そのリスクというようなものをいろいろ併せ考えておく必要があるということを申し上げたいというふうに思います。
将来のエネルギーを考えるときに鍵となるのが原子力というようなことは、これはもう皆様お疑いのないところであろうかというふうに思います。日本のエネルギーの将来というようなことを考えたときに、もし原子力も必要だということであれば、人材あるいは技術を維持するということが必要になってまいります。諸外国においても、エネルギーのナショナルリスクを考えた上で制度措置を行っている。イギリスは事業予見性の確保をするような買取りというような形に近いもの。米国はあれだけ化石燃料に恵まれながらも全方位政策をやると。英、米、カナダとも、安全性や廃棄物の問題の少ない次世代原子力の技術開発戦略というのを描いて将来を見据えているというようなことで、各国の状況というもの、これは国によって異なるというところでございます。
原子力の経済性についてでございますけれども、高い安いというのは実は比較論でございます。化石燃料が高くなれば相対的に安くはなる。蓄電の技術開発によっても異なる。特に、電源のコストというのは国ごとに条件も異なりますので、実は単純比較というのは結構困難ではございますが、新設原子力については、実は確かに諸外国で一部コストの増大が指摘をされております。これは、OECDもその要因を分析をしておりますけれども、新型炉へのチャレンジ、あるいは数十年開発をしていなかったことによるサプライチェーンの喪失といったようないろんな要因が相まっている。ただ、それが全部ではなくて、中国や韓国等では新設原子力であってもコスト増は確認をされていないというようなところがございます。
既設の原子力でございますけれども、これにつきましては、燃料コストがほとんど掛からないので、相当の競争力を持つというようなところでございます。ただ、ちょっと再稼働に至るまでの時間等も相当掛かってきておりますので、規制行政の在り方、これを問われているというようなところであろうかというふうに考えます。
最後に、日本の議論に今何が足りないのかというようなところを申し上げて、私のお話を終えたいと思いますけれども。
今、日本のエネルギーに関する議論に何が足りないかといえば、我が国なりのリスクのポートフォリオ、これを描くことではないかというふうに思います。そして二点目として、移行のシナリオを描くこと、これ、既にある社会インフラを、その安定性を保ちながら新しいものに差し替えていくということは、これは非常に難しい、かつ時間の掛かる、エネルギーというのはやっぱり時間が掛かるんだということ。ですので、これが長期的なビジョンなんだということを国民と共有した上で、掛かる時間軸というものも含めた共有というようなことが必要になろうかというふうに思います。
特にこれからは、エネルギー等、例えば再生可能エネルギーの不安定性を吸収する役者として、電気自動車に備えられたバッテリーが活躍する、こういう時代も来るかもしれません。そうなると、エネルギーをエネルギーとして考えるのではなくて、モビリティーと融合させながらエネルギーを考えていく、こういったことも必要になってまいります。
政治の在り方、行政の示す示し方の果たすべき役割ということも考えなければならない。そういったあるべき絵姿に向けて適切なモチベーションを与えること、予見可能性を確保して事業者に安心して事業に取り組んでもらうというようなこと、規制の在り方など、政府、政治あるいは行政がどういうふうに関与するかについても議論を深める必要があるだろうというようなことを最後に申し上げて、私のお話とさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。
次に、大島参考人にお願いいたします。大島参考人。
○参考人(大島堅一君) 龍谷大学政策学部の大島と申します。このような機会をお与えいただきまして、本日はどうもありがとうございます。心より感謝申し上げます。
私は、環境経済学、環境政策、エネルギー政策を二十五年ほど研究してまいりました。また、原子力市民委員会という民間の組織の座長もしております。
本日は四点申し上げます。コンパクトに、かつ丁寧に申し上げます。
詳しくは事前の配付資料及び本日の資料を御覧ください。こちらにも映しますが、資料が、かなり大きな資料を作っていただいておりますので、そちらを御覧ください。
二ページ目を御覧ください。(資料映写)
まず第一点目、現在、政府においては、エネルギー基本計画を作成しているところであります。しかし、その策定プロセスがあべこべないしちぐはぐになっているのではないかということを申し上げます。
二点目、発電コストを計算する際、最もシンプルな方法を用いて考えますと、現時点で原発は安い電源ではなくなっているということを申し述べます。
三点目、電気料金と再稼働との関連について述べます。
四点目、政策決定上極めて重要な情報公開について述べさせていただきます。
四ページ目を御覧ください。
エネルギー基本計画は、エネルギー政策基本法に基づきまして、二〇〇三年より策定されてまいりました。今次は四回目に当たります。エネルギー基本計画は三年ほどで改定されていくもので、その後に長期エネルギー需給見通し、いわゆるエネルギーミックスや原子力政策大綱などが策定されていきます。
ここで注目すべきは、二〇〇五年に作られた長期エネルギー需給見通しです。この時点で目標年次が二〇三〇年に置かれております。つまり、中長期的なエネルギー政策の枠組みがつくられ、次に具体的な需給見通し、エネルギーミックスが示されているということになります。
五ページ目、御覧ください。
言うまでもなく、新しい政策というのはこれまでの政策の多面的な評価を行ってからつくられるべきです。また、エネルギーに関する利害関係者をまずは除いて客観的評価を行うべきところです。
六ページ、お願いします。
つまり、多面的評価を行い、その中で経済的評価を行って、その上で基本計画を作るということ、さらに、それに基づいたエネルギーミックスが策定されるというものでなくてはなりません。これは、エネルギー政策基本法の趣旨にも合致するところであります。
七ページ目。
しかるに、残念なことに、前回のエネルギー基本計画では、経済評価をしていないにもかかわらず、原発は安い、運転コストが安価とされて、その後に後付けで計算がされるという手順となりました。これは順番があべこべです。本来ならば、計画策定前に経済性評価を行うべきところでした。
今回も、二〇一五年に作られたエネルギーミックスを前提に、これを達成するためにエネルギー基本計画を作るという、まさに本末転倒な議論がされています。しかも、目標年次は二〇三〇年にすぎません。二〇〇五年の段階で二〇三〇年でしたので、かなり遅れているというふうに言わざるを得ません。
八ページ目、御覧ください。
御存じのように、前回のエネルギー基本計画以降、重要な出来事が多数発生いたしました。パリ協定や東芝の海外原発事業の破綻、原発事故費用の急増、高速増殖炉「もんじゅ」開発からの撤退など、どれもエネルギー政策の根幹に関わる重大なことです。
九ページ目です。
本来であれば、エネルギーミックスを前提とせず、二〇五〇年以降を目標にして基本計画そのものを大きく見直すべきときに来ているところであります。
次に、発電コストについても述べさせていただきます。
十一ページ目です。
原発のコスト計算については幾つかの方法がございます。最も一般的なものは、LCOE、つまり平準化発電コストというものです。このほかにも実績値の推計がございます。本来、コスト情報が公開されていればこのような計算は必要ありません。
十二ページです。
LCOEですが、これは評価時点で原発を新設した場合のコストです。
十三ページ、御覧ください。
計算方法は非常に単純でございまして、新しい原発を新設した場合に四十年間に掛かる費用を四十年間の発電量で割るという方法で計算しております。
十四ページ目です。
政府の最新の試算は、先ほど申しました二〇一五年の試算となります。このときの化石燃料価格は非常に高く、原発のコストが相対的に安くなるというふうになっております。今回は申し上げませんけれども、再生可能エネルギーの費用がここでは非常に高く評価されておりますのも特徴でありまして、これは世界の潮流から大きく外れております。
十五ページ目です。
しかし、計算方法自体に問題がございます。一つ目は、福島原発事故以降に造られる原発のコストを試算するというものであるにもかかわらず、事故前の原発を建設すること、これに追加的安全対策を施すということを前提としております。
十六ページ目です。
世界では、コアキャッチャーをあらかじめ装備するなど、設計段階から安全性を高めることが求められるようになっています。しかし、これは反面、建設コストの上昇を招きます。実際、現在建設予定のイギリスのヒンクリーポイントCという原発では、キロワット当たり百二十万円程度というふうになっております。これは二〇一五年の計算の前提であるキロワット当たり三十七万円の三倍です。アメリカでも二倍程度となっているところであります。日本だけ格安にできると考えるには無理がございます。仮にイギリス並みとすると、資本費は上昇して、発電コストはキロワットアワー当たり十七円となります。つまり、原発は非常に高い電源と評価することができます。
十七ページ目です。
事故費用の計算に当たっても重大な問題がございます。一つは、事故発生頻度という概念を使って計算していますが、事故発生頻度を二分の一になったというふうに評価してしまっています。さらに、事故発生頻度を利用しているにもかかわらず、事故費用の絶対額が非常に大きいことから来るリスクプレミアム、これを足す必要がございますが、それを考慮してございません。この辺りは十八ページから二十一ページで説明してございます。割愛させていただきます。
二十二ページ目ですが、結果的に事故費用を大幅に値引きしております。更に言えば、二十三ページ目でございますが、済みません、急がさせていただきますが、現実の福島原発事故の費用は二十三・五兆円というふうになっております。二〇一五年の計算時の想定は十二兆円でした。
二十四ページ目です。仮に、事故の発生頻度の考え方を取らず共済方式という現実に近い方法での計算を行うと、事故費用はキロワットアワー当たり一・六円というふうになります。したがって、次の表ですが、二十五ページ目ですが、全てのコストを加えるとキロワットアワー当たり十七・六円になります。これは一つの試算にすぎませんが、これでは原発が安いとは到底言えないということになります。
二十六ページ目ですが、二〇一五年の計算方法は、今述べましたように非常に問題が多いということですが、この問題の多い政府の試算方法を用いたとしても、現在、右端の十二・五六円から十五・一四円程度というふうになり、他電源に比べて高くなるというふうに言うことができます。したがいまして、少なくとも、経済評価を行わずにエネルギー基本計画を作るべきではありません。経済性評価をやり直し、その結果を国民に示すべきだというふうに考えます。
二十七ページ目に申し上げます。原発再稼働と電気料金についてです。
二十八ページ目です。一般に、原発再稼働すれば電気料金は下がると言われております。これは正しい見解です。ただし、真理の一面にすぎません。原発再稼働をすれば電気料金が下がるのは事実ですが、原発ゼロ、イコール原発を廃止すると、現時点より電気料金上がるということではありません。イコールではありません。
二十九ページ目に申し上げます。電気料金が下がるのは二つあります。一つは右側、再稼働するということです。原発が動いていないので、火力のたき増しがあります。このとき再稼働をすれば火力のたき増し分が減ります。それが電気料金が下がる原因です。次に、再稼働ではなく、原発廃止した場合どうなるでしょうか。すると、左側のように原発維持費が減ります。その分、電気料金の原価が減ります。どうしてそうなるのか。それは、現在、廃炉決定していない原発が稼働していないにもかかわらず維持するための費用が掛かっているからです。
では、右と左、どっちが安くなるのか。これは、そのときの火力燃料費や電力会社の電源構成で変わります。一概には申し上げられません。ですが、右左どちらでも電気料金は下がるということを念頭に置いていただければと思います。
三十ページ目、これは再稼働して電気料金が下がった関西電力の場合の資料でございます。
三十一ページ目、このときに出された資料を基に関西電力について試算してみました。ここでは、再稼働や廃止した場合にこれに応じて変化する原価のみを計算しております。同じことは関西電力も行っております。
高浜三、四号機再稼働で値下げしたのは二〇一七年で、一番左の数字です。これは九千九百億円ということになります。仮に、大飯三号、四号機を再稼働すると、更に下がり九千二百六十七億円になります。この分値下げになります。さらに加えて、高浜一、二号機、美浜三号機、全てで原発を再稼働すると八千七百九十九億円となります。原発廃止のケースは一番右です。この場合八千五百六十九億円となりまして、原因は原発維持費が下がるためになります。つまり、最も電気料金は下がるということになるのではないかと思われます。
結果的に、高浜三、四号、大飯三、四号機再稼働だと大体七・三九%値下げ、全部再稼働だと九・六九%の値下げ、これに対して原発ゼロだと一〇・八二%だと考えられます。ただし、これは注意点がございます。この試算は、あくまで二〇一七年値下げ時に関西電力によって公表された数値を基礎にしているという点です。現時点で依拠できる数字はこれしかありませんので、正しい計算はこれ以外の数字が明らかになれば可能となります。
はっきり言えることは、再稼働して電気料金が下がるということ。加えて、原発廃止、原発ゼロにしても現行より電気料金は下がるということです。電力会社が再稼働を強調するのは多少理解できますが、本来、中立公正であるべき政府が原発ゼロでの電気料金を示さないのはいかがなものかというふうに考えています。
次に、三十二ページ目、現実のコストデータについてです。
三十三ページ目です。これまで述べてきましたが、原発のコストが現実に幾らなのかはっきりすれば、試算する必要はございません。ですが、三十三ページ目で挙げた費用が実ははっきりしません。
三十四ページ目です。福島原発事故の費用も根拠も具体的に示されておらず、今後幾らになるか分かりません。
三十五から三十七ページ目は、廃炉のための積立て、再処理のための拠出金。これは国民、電力消費者から広く徴収されています。このための単価は省令に基づいて計算しているというふうに説明されています。しかし、本当に現実に幾らなのか、これについては全く明らかにされてございません。
三十八ページ目。情報公開の在り方はエネルギー基本計画にも書かれてございます。第三者が独自の視点で整理するとまで書かれております。しかし、このようなことは全くされたことはございません。むしろ、二〇一六年暮れに東京電力福島原発事故のコスト負担の在り方を検討した東京電力・1F問題委員会というのがございました。このとき、これは、この会議は非公開で行われました。情報公開とは正反対のことが行われております。
原発のための様々な費用のための措置で本当に費用は足りるのか、お金が足りるのか、足りなかった場合どうするのか、これは国民的な関心事でありますが、議論すらできない状況です。国の予算ではございませんので、このままでは国会でも直接審議されることもございません。しかしながら、国は現実に原子力に強く関与しています。国民が隠れた形でコスト負担も行っています。そうであれば、正確なコスト情報を公開することが強く求められます。
情報を分かりやすく出すのが情報公開ではございません。情報をアクセスしやすい形で全て公開する、検証可能にするというのが情報公開です。これを進めなければ適切なエネルギー政策が形成できないのではないかと強く懸念するところです。
以上、駆け足で四点述べてまいりました。国会の先生方におかれましては、これからのエネルギー法制度の策定に当たって御考慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
以上、ありがとうございました。
○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。
次に、竹村参考人にお願いいたします。竹村参考人。
○参考人(竹村公太郎君) ありがとうございます。竹村でございます。
私は、現在、NPOの日本水フォーラムの、特定非、活動法人の日本水フォーラムの代表理事を務めさせていただいております。十六年前まで、国土交通省の河川局長を退官しまして、今はもう完全に気分は民間人でございます。
本日は水力発電についての活用策ということでお話しさせていただきますが、私はずっと河川をやっていました、河川とダムをやっていました土木エンジニアです。土木技術者です。そのために、最初から水力へ行ってしまうと我田引水のような話、イメージを持たれてしまうといけないので、私はなぜ水力が大事だという考え方を今日プレゼンするかというところに至った考え方を簡単にお話しさせていただきます。(資料映写)
これが経産省が、二ページ目ですけど、経産省が発表している世界各国のエネルギー自給率でございます。
この図はちょっと八百長でして、日本が大きくしているんですね。韓国が一八%だけど、日本は六%なんですね。本当はこれを韓国の三分の一にしなきゃいけないんです。何でこんなことをしているのか全く分からないんですけど、私は。本当に分からないんです、これは。韓国の三分の一なんです、日本のエネルギー自給率は。
この六%の文明国は必ず滅びます。これは歴史を見ると、エネルギー自給率六%の文明は必ず滅びるんです、歴史的に見ると。ということを日本の歴史、世界の歴史と言っても皆さんぴんとこないから日本の歴史で簡単に言いますと、この図がコンラッド・ダットマンが作った日本の森林伐採の図です。真ん中の真っ赤っかのが奈良時代後半の森林伐採エリアです。つまり、奈良時代、奈良盆地でもう木がなかったという証拠なんです、これは。紫のところが戦国時代に木を伐採した、能登半島、伊豆半島まで来ているんですね、なかったということなんです。つまり、戦国時代、もう関西には木がなかったということです。イメージとしてはこんなふうなことです。
これは比叡山です。これが高松です。実は、青森から、これは私、恣意的にこれを持ってきたんじゃなくて、青森から九州まで、昭和年代、丸裸でした。これは、もしどうしても青森の丸裸の写真見たいというなら、私に言っていただければお渡しできます。
これ、日本全国が丸裸だったんです。なぜかというと、全てのエネルギーを、化石エネルギーを戦争に投入したからです。これは昭和天皇のお話で「昭和天皇独白録」という、今でも売っております、文春文庫で。さきの戦争は石油で始まり石油で終わったという、天皇の侍従たちにお話ししたことが文春文庫できちんと書かれております。
つまり、あの戦争は石油戦争だったと。陸軍の統帥権がどうのこうのという人間模様で語られますけど、私は基本的にエネルギー戦争だったと。あのインドネシアの石油が欲しかったんです。ヒトラーはバクーの発電所が欲しかったんです。バクーの石油が欲しかったんです。結局、日本は当時はアメリカに頼っていましたので、石油を、当時の日本の自給率は、石油の自給率は七%でした。ちょうど今と同じです。この七%の日本が、アメリカに首を絞められて窮鼠猫をかむ形で戦争に突入してしまったということでございます。
これが、現在、経産省のホームページ見て皆さん御承知だと思いますけど、エネルギー可採年数。石炭があと百年、石油があと五十三年、ガスが五十六年。三・一一以前は、この石炭が三百年ぐらいだったんです。三・一一以降は百年になっちゃいました、あっという間にですね、急激に石炭が少なくなっています。つまり、今生まれた赤ちゃんが五十歳になったときには、もう石油とガスがないんです、この日本は。このデータに基づくとですよ。私じゃないですよ、これは、エネ庁の判断ですから。つまり、今生まれた赤ちゃんが五十歳になったときは、途方もない大混乱の文明になっているということが想定できます。
一つの証拠が、これはスタンフォード大学のエイモス・ヌル教授が巨大油田の発見の経年経緯を、経過をやったんですが、この一九六五年、一九六五年が重心ですから、もう巨大油田は一九六五年に人類は発見し終わったということが言えます。もう既に、血眼になっていますけど、発見されておりません。
次、この図が各国の石油産出と消費の図なんですけど、世界で一番石油産出が多いのはアメリカです。これは、皆さんが意外とびっくりされると思いますけど、アメリカです。そして、一番使っているのもアメリカです。これ見ますと、今石油が余っているというのは、ロシア、そしてイラン、イラク、サウジ、UAE、クウェートです。ですから、この非常に極めて厳しいところが石油が余っていて、それを私どもがどうにかしてもらっているという実情です。
つまり、これからの石油とガスの取り合いは、アメリカと、アメリカはもう需要量大きいですから輸入していますので、アメリカと中国と日本とEUが化石エネルギーの取り合いをするというような状況が十分考えられるわけです。で、私どもは一体どうしたらいいんだと。太陽エネルギーしか私はないと思っています。太陽エネルギーは無限で膨大です。もう無限で膨大と言っていいです。でも、決定的な弱みがあります、この太陽エネルギーには。単位面積当たりの密度が薄いんです。どうやってこの単位面積当たりの薄いエネルギーを集めるかが実は各技術開発の焦点ですが、いよいよ水に、水力に入っていきます、これからは。
これは国土交通省が作っている国土の分布図でございますが、真ん中が国土のシェアですけど、左右に人口だとか資産が書いてありますけど、国土交通省の河川局が作ったグラフは、これは何かといいますと、日本の七〇%は山だと。で、高台がちょっとあると。高台というのは、大体、今、国会があるような、こんな台地ですね。で、一番下の方に低平地があると。ここが、水が、いつでも水害が起きるよ、そこに人口の五〇%と資産の七〇が集中しちゃったと。こんな危険な先進国はないんですけど、こんなふうな危険なんだよという説明なんですけど、逆に見ますと、逆にこの図を見ますと、僕たちの大都会の背後には山が控えているということなんです。山は何かというと、薄い、単位面積当たり薄いエネルギーの水、これは雨もそうですから、雨も単位面積当たりが薄いんです。下町にばしゃばしゃ降っても、水があふれるだけで、何にもエネルギーじゃありません。この雨が山に降ることによって、この雨が山、山岳地形によって集められて、大都会に供給していく。つまり、電気として供給されると。つまり、日本列島は、太陽エネルギーに囲まれた国なんです。それを最初に言ったのはグラハム・ベルです、明治時代に。
その話はちょっと先へ置きまして、次のこの図なんですけれども、じゃ、なぜ水力発電が各電力会社撤退しちゃったか。高いからです。これが三・一一以前のデータです。電事連のデータです。三・一一以降はいろんな、いろんな数字が出ちゃっていまして混乱していますので、三・一一以前に、いわゆる電事連が何を考えていたかよく分かるんですけど、水力はこんな高いよと、ほかの石油、石炭、LNG、そして原子力、こんなに安いよと。だから、もう十三円も、こんな三〇%も高いんじゃやってられないということで、各電力会社は水力発電から撤退しました。
でも、この中の燃料費のシェア見てくれということなんです、この図は。つまり、水力はただなんです。ところが、これから火力、石炭、LNG、原子力はちょっとパスしまして、この三つの化石エネルギーは止めどもなく高くなっていきます。この十年、二十年じゃないんです。五十年後にもう可採なくなるんですから、簡単に取れる石油、石炭が、ガスが。ということは、途方もなく膨大にこれが価格が上昇していくという前提となると、これを今のうちに、ただの水力をやっていくのが一番ベストだねというのが私が考え方です。
ただし、日本列島は非常に弱点を持っています、滝のような川なんです。大体、世界の川と比べてみましても日本の川は滝のようでして、そうですね、多摩川ですと、東京の多摩川ですと、上の日の出で降った雨が大体その日のうちに東京湾に帰っちゃいます、日帰りです。一番大きい利根川であっても、みなかみ町でばあっと降った水が銚子に出てくるの大体二泊三日ぐらいですね。それしかいてくれないんです、日本国内に。だから、雨が多い、雨が多いというのはあれうそなので、あっという間に海に戻ってしまう雨しかないんです。
それをためておくのが実はダムなんだよということでございます。ですから、ダムは太陽エネルギーの貯蔵庫なんです。それを言うと環境の方に非常に、竹村また嫌なことを言うと嫌がられているんですけど、私は本気でそう思っていますので、このダムがあるからこそ水をためて、それを使い勝手のいいエントロピーの小さいエネルギーにできるんだということでございます。
整理しますと、日本の水力発電は、これはちょっと論理が飛んで申し訳ないんですけど、日本はアジア・モンスーンの北限にあって、非常に水が多いんです、世界的に見ても。地理は、周りに海に囲まれていますので、海に囲まれているというのは太陽エネルギーの原資である水に囲まれているということです。そして、地形としては七〇%の山地で、日本列島そのものがエネルギーを集める装置なんだということです。
社会的な平等な脊梁山脈、これは何かと申しますと、北海道から九州まで脊梁山脈がありまして、全ての市町村に川があるんです。こんな国はないんです。全ての市町村に流れている水があるんです。それは全部エネルギーなんです。ですから、全ての市町村にある、エネルギーがあるということは、こんな公平な、日本国、国家はないと断言できます。もちろんカナダとかそういうところはありますけど、それは山岳地帯にあるんであって、日本のような全ての市町村に流れている水があるなんということはないんです。
そして、貯蔵装置としては、ダムは太陽エネルギーの貯蔵庫ということで、過去先輩たちがダムを、私も含めてダムを造ってきましたので、このダムを上手に使おうというのが今日の最後の私の考え方です。つまり、新しいダムを造ると言うと、竹村またあいつはダムを造りたいんだなと思われてしまいますので、私は、既存のダム、今あるダムを有効に使ったらすごいポテンシャルあるぞということをお話ししたいんです。
なぜこんなことを言うかというと、エネ庁の方々は、これからの水力発電のことを考えるときは一切国土交通省や農林省のダムを無視しています。ほかの行政に手を突っ込むことはタブーなんです、霞が関では。ですから、エネ庁の方々は、いいんだよ、国土交通省のダムに手を突っ込んでくれよと言うとびっくりしちゃうんですね。
つまり、今、今日私がお話ししたいのは、各省庁の縦割りの行政の枠外した、全て今あるダムを徹底的にエネルギーに使っていったらどうかという提案でございます。まず、全てのダムに発電機を付けてくれと。うそだと思うのが、発電機がないダムがいっぱいあるんです。それを付けたらどうかと。
それと、ダムの運用変更です。ダムの運用変更というのは、もう少しダムを水ためていいじゃないかと、なぜもう少しためられないんだと。なぜためられないか一つ理由があります。昭和二十九年に洞爺丸事件が起きまして、次の二年後に多目的ダム法というのができたんです。そのとき先輩たちは、台風がどこにいるか分からない、どこ行くか分からないという前提で、洞爺丸事件のダメージを受けていましたので、その二年後に作った特定多目的ダム法というのは台風がどこにあるか分からないという前提で作ったんです。ですから、このダムに必ず今年百年の洪水が来るぞという前提なんです、全てのダムが。それは、今はもう一週間前から分かっているんだから、台風の進路は。だから、もうちょっとためておいていいんじゃないの、今あるダムの、あと五メーターためただけで物すごい大きなポテンシャルがありますというようなことがダムの運用変更です。
あと、ダムのかさ上げをしてくれと。ダムのかさ上げというのは、古いちっこいダムのところに大きいダムを造ってしまう、簡単な話です。
そして、下流調整池でピーク発電をやってくれ。これは何かというと、本ダム、この図であります本ダムがありまして、本ダムでピーク発電するんです。そうすると、どんと水が下流に流れてしまうと大変なことなので、本ダムの下流にちっちゃい三十メーターぐらいのダムを造るんです。その小さいダムで、本ダムでぼんと発電したピーク発電の流量をためて、二十四時間かけてゆっくり出すんです。これ、別に難しいことじゃないです。私が宮ケ瀬ダムの所長をやっているとき、このシステムをやりました。
今、神奈川県の厚木ダムの、厚木にある宮ケ瀬ダムは昼間ピーク発電している、どんとしています、三時間ぐらい。そして、百何十メーターのダムですけど、下流に三十メーターのちっこいダムを造りまして、そこで水をためて、そして安定的に下流に、厚木の方に流しているというのが宮ケ瀬ダムでございます。日本で唯一直轄ダムで造ったダムでございますけど、国交省が。そういう、やろうと思えばできるわけでございます。
そんなふうなことをして私が仲間たちと試算した結果が、既存のダムだけで、新しいダムを造らないで活用だけで三百七十万キロワットできるよと。これは非常に極端な案でして、全てのダムを、発電をナンバーワンのプライオリティーにしろという考え方なんです。だから、概念を変えなきゃいけないんです。つまり、五十年後にはそういう概念になるだろうという前提です、私は。五十年後はもう化石エネルギーはなくなるんですから、五十年後のダムの最もプライオリティー高いエネルギーになるはずです。私が死んだ後で、私は予想するだけですけど、そうした場合、どれだけポテンシャルがあるかということをカウントしただけでございます。
つまり、水力発電を前提とした操作をして、水道だとか農業用水はその後の従属で使ってくれと、もし足りない分は、それはほかのところでため池造ろうじゃないかというような考え方です。治水に関しても同じです。治水はいろんな様々なメニューがありまして、まだまだ幾らでもやることがありますが、エネルギーに関しては私は選択肢はそれほどないと思っています。
ここで、三百七十万キロワットできるよと言うと、皆さん、既存のダムだけで原子力発電所が五個分できたねと喜んでくれるんです。そうじゃないんです、これは。分散型なんです。北海道から九州までの各市町村ができるようなレベルの小さな発電、水力発電も含めた統計ですので。ですから、原子力発電、つまり、この東京が維持するには、あと黒四ダム三つぐらい造らなきゃ駄目です、この利根川で。そんなことできるわけないんです。又は、横浜、東京をやるために、この関東地方で黒四ダムを今から三つ、四つ造るのかと、そんなことできるわけないんで。ですから、これはあくまで分散型だということで、この水力発電とほかの電力とのミックスでもってこれから日本は生きていかなきゃいけないと私は思っております。
最後に、河川法の第一条に、この河川法というのは治水と利水と環境というのが入っていますが、是非、このエネルギー開発、水力エネルギーの最大活用のようなことを入れていただかないといけないなと思っております。
これは、最後にちょっと申しますと、今の法律でもできるんです、河川法は。でも、今の法律体系だと、河川管理者は許認可をする、上から目線なんです。上から目線だと事業をやる方々にとっては非常につらいんです、それは。やっぱり、河川管理者が一緒になって、プレーヤーとなって水力発電に参加するというところに持ち込まない限り、できません。今は本省にいる人間はみんな頭がいいから、私の言うことをみんなぴんと来ているんですよ。ところが、津々浦々の末端の現場に行っちゃったら、その彼らは、彼らにとっては法律が何もないから、やる必要ないんです。許認可していればいいんです。
ですから、この国会の先生方が本省の人間と、竹村があんなこと言ったから、おまえやれと言っても、もう彼らは分かっているんです、本省の人間は。でも、それを津々浦々の河川管理者の方々が事業者と一緒になってやっていくためには法律を変える、法律を変えるのは、国土交通省は自ら変えられないから議員立法でやってもらうしかないと私は思っております。なぜこれ国土交通省がこんなことをやるかと経産省が邪魔しますから。これは、何だ、エネルギーは俺たちのものだと。ある省庁が行政法を出していくと必ずそれは潰されます。それはあくまでもガバナンスのある国会議員の方々がそれを指導していくしかないなと私は個人的な意見でございますが、そう考えている。決して河川局の意見じゃありませんので。よろしくお願いします。
以上でございます。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
三人の参考人の皆さん、今日は長時間にわたり、ありがとうございます。
私から、竹内参考人と大島参考人に御質問をさせていただきます。
先ほど市田委員の質問の中にもありましたが、外務省の気候変動に関する有識者会合、エネルギーに関する提言の中では、ベースロード電源として原子力や石炭が必要だという考え方は既に過去のものになっている、電力市場の成熟した各国では、限界費用の安い再生可能エネルギーをまず最大限に使い、柔軟性に乏しい原子力や石炭の役割は次第に限られたものとなってきたと指摘をしています。これは、この有識者会合だけではなく、先日、この調査会の中でも参考人から、欧米諸国では再生可能エネルギーを優先するためにベースロード電源という考え方にこだわるのをやめた、再生可能エネルギーを主力電源とし、その出力変動に合わせて他の電源の出力を調整するという指摘がありました。
日本もこういう方向に踏み出すべきだと考えますけれども、いかがお考えでしょうか。竹内参考人から、では、お願いいたします。
○参考人(竹内純子君) 御質問いただきまして、ありがとうございます。
再生可能エネルギーを主体にし、その調整役としてというようなところというのは考え方としてあろうかと思いますし、現状でも再生可能エネルギー、例えば九州の地域では再生可能エネルギー相当量入っている。再生可能エネルギーを優先して使うために火力発電をでき得る限り絞って、ただ、ごめんなさい、火力発電もゼロにはできないんです。何かあると、例えば太陽光の上に雲が掛かったら太陽光発電からの出力がふっと落ちます。そのときにスイッチを火力発電オフにしていたら、立ち上がれません。なので、フォローができないので、エンジンを掛けた状態、車でいえばエンジンを掛けた状態で待機しているので、最低出力運転という分は出ます。そういったような形の部分までぎりぎりに絞って再生可能エネルギーを活用するということはしているというのが現状でございます。
原子力もそれに合わせてということになるかという御意見かもしれませんけれども、原子力の出力調整をするというのは、これは技術的にできないというよりは、これはフランスとかでは実は原子力の出力も変えるという運転をしたりしているんですけれども、原子力で出力を上げたり下げたりするというようなことはこれは不安を地域の方が持たれるということで、基本的には認められていないというようなところでございますし、基本的には、一定的に運転をするというのが経済的にも見合うというような形で、そういう運転をするようにはなっているというようなところではございます。
運転の仕方というのは、電源それぞれの特性があるというところも含めて総合的に考えていただければというふうに存じます。
○参考人(大島堅一君) 今は、現状、ベースロード電源として、原子力や石炭をベースロード電源にして、ほかを、余っているか需要と供給の間があれば、ほかにミドル、ピークというふうにやっていくというのは、古い電力需給の在り方としてはどの国もやっておりました。ただ、再生可能エネルギーを大量導入するということ、あとIT技術や予測技術が向上してきたということになりますと、まず再生可能エネルギーというのは、一回設置してしまえば燃料費はゼロですので、全部使う方が経済的なんです。もちろん、もう導入してしまえばもう本当ゼロですから。ですので、そういう運用をするわけです、経済的に。
あと、その供給と需要の間にギャップがあれば、ほかの電源で賄うであるとか、あとその系統の運用でそこの需要のギャップを持ち、再生可能エネルギー一〇〇%超えていればほかのエリアのところに送るとか、そういうことで安定供給ができるようにするわけです。
再生可能エネルギーは、専門的な用語で言いますと変動性電源というふうに申しますが、不安定電源ではありません。変動性の電源を使って安定的に電気を供給するというのが昨今の欧米諸国を中心とした考え方であります。
以上です。
○山添拓君 ありがとうございます。
今の点に関わってもう一問、竹内参考人、また大島参考人に伺いたいのですが、政府は電力を安くかつ安定的に供給するには原発が必要だとしています。原発が本当に安いのかという点は大島参考人からありましたし、また竹内参考人の今日の事前の資料でも少し拝見をさせていただきました。
一方で、原発は安定的かどうかという点も私は検証が必要ではないかと思います。三月八日付けの東京新聞では、今年一月に亡くなられた九州大の吉岡斉教授が原発こそ電力が不安定になる原因だと指摘されていたと紹介していました。発電量が大き過ぎて、急に止まると穴を埋められないと。中越沖地震のあった二〇〇七年にも柏崎刈羽原発が停止をして首都圏は電力不足に陥りました。あるいは、最近も九州の玄海原発の三号機が蒸気漏れで予定外に止まるという事態があります。
ですから、電力を分散させて、あるいは今後蓄電技術を高めると。実は、先日、調査会としても視察に行きまして、蓄電技術がもう実用化寸前というような状況も皆さんと見てきたところもあるんですけれども、そうした形での安定供給を目指せば、その安定供給という原発の特徴もそれほどメリットにはならなくなってくるような気がいたしますが、御意見をお聞かせいただけますか。
○参考人(竹内純子君) 御質問いただきましてありがとうございます。
原子力が安定電源なのかどうかという今の吉岡先生の、私もお目に掛かったことございますけれども、御意見伺ったことはありますけれども、その、何というんでしょう、原子力が大きいからそれがなくなったときの穴が大きいというのは、それは原子力の電源としての性質というよりは、その原子力というものに過度に依存したエネルギーミックスの失敗であって、原子力の電源としての特性ではないように私は思っております。
これは、例えば二〇一〇年当時のエネルギーミックス、政府が描いていた姿というのは温暖化というのが非常に大きな危機であるということで、当時は原子力を五割に、再生可能エネルギーはまだ今よりもずっとコストが高かったので二割に、要は低炭素電源を七割に引き上げて火力を三割に抑えましょうという計画を書いておりました。これをもし実現をしていたとすれば、これは確かに、震災以降にこうやって全てが、原子力が一旦止まるような状態になったときにその穴を埋め切れないというようなことは確かに起こります。ただ、それは原子力の電源としての性質ではなくて、今申し上げたように、一つの電源、一つのエネルギー源に過度に依存したということの失敗であろうというふうに思います。
エネルギーで一番やってはいけないのは一本足打法というようなことでございますので、先生が今おっしゃったように、いろいろミックスして考えなければいけないのではないか、それを主体にしながら再生可能エネルギー主体の電源に徐々に変えていくんだというようなお考えの在り方を取っていただくというのが私は正解ではないかなというふうに思います。
○参考人(大島堅一君) 原子力をどう見るかということですが、原子力はよく安定と言うんですけれども、変動できない電源です。使うときは一定の定格出力で運転するということであって、再生可能エネルギーがたくさん入ってくると出力を変動させる、フランスは一部ちょっとやっていますけれども、日本は安全性の観点から、あとまた住民の不安からできないということでありますので、変動させられない電源というふうに言うことができます。
ですので、再生可能エネルギーが入ってくると、もう一つは、変動しにくいのは、変動させにくいのは石炭でありますので、両方の電源がだんだん邪魔になってくるわけであります。そういう意味では、将来、再生可能エネルギーがたくさん入ってくるという将来見通しからすれば、おのずと原子力や石炭というのは役割を閉じていくであろうというふうに考えているところであります。
以上です。
○山添拓君 ありがとうございます。