2018年・第196通常国会
- 2018年5月11日
- 本会議
本会議でバリアフリー法案について質問
- 要約
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- 山添議員は11日の参院本会議で、バリアフリー法改正案について質問し、高齢者や障害をもつ人など全ての人に自由で安全な移動を保障することは憲法の要請だとして、支援拡充を求めました。
- 山添議員は、法案が新たに設けた理念規定で「社会的障壁の除去」などを明確化することに言及。日本も批准した障害者権利条約が「移動の自由」、建物や交通機関の利用機会の保障を求めているとして、「法案にも移動の自由を明記すべきだ」と述べました。
○山添拓君 日本共産党を代表して、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案について質問します。
公文書の改ざん、森友、加計疑惑、働き方改革をめぐるデータ捏造、自衛隊日報隠蔽にセクハラ。安倍政権の底なしの異常さと開き直り、真相解明に背を向け続ける姿勢に、多くの国民が心底うんざりしています。民主主義の根幹を揺るがし、国会審議の前提を崩してきた責任は政府・与党にあることをまず指摘しなければなりません。
法案に先立ち、麻生財務大臣に伺います。
大臣は、セクハラ罪という罪はないと繰り返し、財務省がセクハラ行為を認定した福田前財務省事務次官をなおもかばい続けています。被害者に名のり出よと求めた調査方法、はめられたという発言、人権感覚を欠落した言動が、被害者やセクハラに悩む多くの人を更に傷つけ、政府に対する国民の信頼を失墜させているという自覚をお持ちですか。
また、大臣は、どの組織でも改ざんはあり得る話、個人の問題などと述べ、前代未聞の公文書改ざんを個人の責任に矮小化しようとしています。国会の国政調査権をじゅうりんし、国民を欺いた事態の重大さをいまだに理解されないのですか。
森友学園への国有地売却をめぐって、佐川前国税庁長官がないと言っていた財務省と学園側との交渉記録が五百ページ分も出てきたと報じられています。大臣は記録の存在をいつから知っていたのですか。直ちに開示すべきではありませんか。答弁を求めます。
近畿財務局が当初から約八億円の値引きを前提とし、大阪航空局にごみの積算量を増やすよう依頼していたという報道から一月がたちます。いまだにごみ増量の依頼があったかどうかすら明らかにできないのですか。麻生大臣、石井国交大臣、お答えください。
ごまかし、だまし、隠蔽し、発覚すれば調査中だと盾に取って言い逃れる、国民と国会を愚弄する政治に未来はないということを厳しく指摘し、以下、法案について石井大臣に質問をいたします。
高齢者や障害者、病気やけがを負った人も、全ての個人を尊重し、その自由な人格形成と発展を支えるのが憲法の保障する基本的人権です。どんな人も排除されない社会を実現するため、自由で安全な移動や利用を保障することは、憲法に基づく政治の当然の役割です。
障害者団体や高齢者団体の粘り強い運動が実を結び、二〇〇〇年の交通バリアフリー法、二〇〇六年の新バリアフリー法の下、様々な努力が進められてきました。その後十年を経て、更なるバリアフリー化をという市民、国民の要求はますます拡大しています。この声に応えていくことが政治に求められています。
本法案は、新たに理念規定を設け、共生社会の実現、社会的障壁の除去を明確化するとしています。障害者権利条約や障害者基本法と歩調を合わせた、当然の措置です。
障害者権利条約は、障害のある人に移動の自由を保障し、都市でも地方でも、建物や交通機関を利用する機会を確保するよう求めています。本法案にも、移動の自由を明記するべきではありませんか。
ハンセン病国家賠償訴訟の熊本地裁判決は、次のように述べます。憲法二十二条一項に定める居住、移転の自由は、経済的自由や人身の自由としての側面のみならず、自己の選択するところに従い社会の様々な事物に触れ、人と接しコミュニケートすることは、人が人として生存する上で決定的重要性を有する、居住、移転の自由は、これに不可欠の前提というべきものである。
高齢者、障害者等の移動を制約する社会的障壁を取り除き、自由で安全に移動できる社会を築くことは、憲法の要請であり、基本的人権の問題であると言うべきではありませんか。
鉄道駅などでエレベーターやエスカレーターの設置が進められてきました。しかし、内閣府の調査では、鉄道駅のバリアフリー化が進んだという回答は三七・一%にとどまります。車椅子を使うある方に伺いますと、町に出ても多目的トイレが少なく、結局は駅まで戻るしかない、しかも汚くていらいらするといいます。コンサートで一番前の席を購入できたのに、会場に行ってみると、車椅子スペースは一番後ろや端の方にしかなく、舞台が見えにくい。
こうした現状をどう認識していますか。高齢化が一層進み、バリアフリー化のニーズも多様化をする中で、一定程度進展したと満足するのではなく、小規模施設を含めた建築物のバリアフリー化や複数ルートの確保など、一層の拡充が求められると考えますが、御答弁ください。
更なるバリアフリー化は、事業者任せでは進みません。移動の自由を明記してこそ、国や自治体の義務が明らかになり、財源を確保すべきことも明確になります。この立場が示されない下で、本法案には二つの懸念があります。
第一に、国民の責務に新たな文言を追加し、利用者に対し、高齢者や障害者の移動に必要な協力を行う努力義務を課していることです。
一人一人が自発的に協力することに異存はありません。しかし、バリアフリー化に本来責任を負うのは、交通事業者や施設管理者、国や自治体です。声掛けなどを心のバリアフリーと呼び、国民の責務として法律に書き込むことは、事業者や国の責任を曖昧にするものではありませんか。
第二に、交通事業者や施設管理者の果たすべき義務、特に既存の施設や設備のバリアフリー化が努力義務のままとされている点です。
赤字を理由に、地方の鉄道、バスで廃止や撤退が続いています。列車のワンマン化、駅の無人化が進められ、駅の段差解消も遅れています。中小事業者のバリアフリー経費への財政的補助など、支援を抜本的に強めるべきではありませんか。
政府は、バリアフリー化のために、運賃の上乗せなど利用者負担を求める議論を進めています。しかし、それでは、地方の赤字路線などで運賃の更なる値上げをもたらし、ますます利用しづらくなりかねません。バリアフリー化の費用は、事業者と国や自治体による補助を原則とし、利用者負担に求めるべきではないと考えます。答弁を求めます。
鉄道ホームからの転落事故が後を絶ちません。視覚障害者の方からは、欄干のない橋を目隠しをして歩いているようなものだという声が寄せられます。転落件数は年間三千件近くに上り、悲惨な死亡事故も相次ぐ中、安全対策は緊急の課題です。
ところが、転落防止に有効なホームドアが設置されたのは、全国約九千五百駅のうち六百八十六駅、一日十万人以上が利用する駅でも約三割にとどまっています。政府は二〇二〇年度までに八百駅でのホームドア設置を目標としていますが、利用者や障害者の要望があり、必要とされる駅には直ちに設置すべきではありませんか。
そもそも、駅ホームからの転落防止は、生命の危険に関わる問題です。サービスの一環として鉄道事業者任せにするのではなく、安全対策としてホームドアの設置を義務付けるべきではありませんか。同時に、ホームドアが整備されるまでの間は、ホームに要員を配置するなど、人の目による対策を求めるべきです。
以上、石井国交大臣の答弁を求めます。
憲法と障害者権利条約の理念を地域の隅々に広げ、誰もが安全で安心できる社会の実現を目指すべきことを強調し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕
○国務大臣(石井啓一君) 山添議員にお答えをいたします。
森友学園への国有地売却についてお尋ねがありました。
報道されております、見積額を当初から約八億円とすることが前提とされていたという点等につきましては、私からの指示に基づき調査を進めているところであります。
現在、大臣官房の立会いの下、本省航空局によって、当時、本件見積作業に関わったと考えられる大阪航空局の職員を中心に聞き取りなどを行っているところであります。調査結果につきましては、できるだけ早期に御説明したいと考えております。
移動の自由の保障についてお尋ねがありました。
移動の自由の保障、すなわち移動権を法律上規定することにつきましては、平成十九年の障害者権利条約の署名や平成二十三年の障害者基本法の改正などと時期を同じくして平成二十五年に交通政策基本法が制定された際、関係審議会において議論が行われたところであります。
この際には、保障する権利の内容や保障する責務を有する主体、権利を保障する仕組みや財源の確保について、実定法上の権利として規定できるだけの国民のコンセンサスが得られているとは言えないとして、移動権を法定化することは時期尚早とされたところであります。こうした状況は、現在においてもなお変わっていないと考えております。
高齢者、障害者等の移動の自由と基本的人権の関係についてお尋ねがありました。
バリアフリー法の依拠する考え方は、遡れば、憲法の基本的人権に関する規定、例えば、第十三条の個人の尊重、第十四条の法の下の平等といった規定、さらには、移動によって行動が自由に円滑になることにより実現できる自分自身の発揮などを考えれば第二十一条の表現の自由などの規定にも根差しているものと考えており、その考え方は従来より変わりがございません。
今般の改正におきましては、基本理念の規定を設け、社会的障壁の除去等に資することを旨といたしまして、バリアフリーの取組を進めるべきことを明文化しているところであります。
建築物等のバリアフリー化の推進についてお尋ねがありました。
バリアフリー化につきましては、これまでの取組により、旅客施設や道路、公園等において一定程度進展してきていると認識をしております。
多機能トイレにつきましては、多くの方が利用するため車椅子使用者が利用できない等の意見があったところであります。このため、多機能トイレの機能分散を図ることとし、建築物については昨年三月にバリアフリー設計のガイドラインを改正をし、公共交通機関につきましては本年三月に交通バリアフリー基準等を改正をいたしました。
コンサート会場等の車椅子スペースにつきましては、車椅子使用者用の客席の配置や視野の確保等に関する留意点をまとめたバリアフリー設計のガイドラインを平成二十七年七月に公表したところでありまして、その普及を図ってまいります。
また、バリアフリールートにつきましては、交通バリアフリー基準等の改正によりまして、大規模駅において複数ルートの確保を義務付けることとしたところであります。
本法案における国及び事業者の責任についてお尋ねがありました。
現行法においては、国の責務といたしまして、移動等円滑化について関係者と協力して適切に促進する責務や国民の理解と協力を求める責務を規定をしております。
本法案では、関係者の参画の下で、定期的にバリアフリー化の状況を把握の上、評価する会議を設置することとし、その評価等を踏まえ、適切に検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずることを国の責務規定に定めたところであります。
また、公共交通事業者等につきましては、基準適合義務に加え、本法案では、乗降等の支援を適切に行う努力義務を新たに課すとともに、ハード、ソフト対策を一体的に推進するための新たな計画の作成等を義務付けることとしております。
したがいまして、国や事業者の責任を曖昧にするとの御指摘は当たらないものと考えております。
中小企業者のバリアフリー化への支援についてお尋ねがありました。
公共交通のバリアフリー化を推進するために、公共交通事業者等への補助制度によりまして、鉄道駅のバリアフリー化、ノンステップバスの導入等への支援を行っております。
これらの支援は、中小事業者か否かという観点ではなく、利用の実態を踏まえ、バリアフリー化設備等の整備を進めるという観点で行っているものであります。
引き続き、このような考え方の下、公共交通事業者等によるバリアフリー化の取組を推進するため、必要な支援に努めてまいります。
バリアフリー化の費用負担についてお尋ねがありました。
鉄道駅のバリアフリー化は着実に進捗をしておりますが、利用者ニーズの高度化等を受け、複数のバリアフリールートの確保等、より高い水準のバリアフリー化が求められております。
こうした施設整備は必ずしも収益につながらないため、これを迅速、確実に行えるよう、有識者等から成る検討会を設置をし、新たな費用負担の在り方を検討してまいりました。
この検討会の中間取りまとめでは、従前の補助制度に加え、利用者に一定の負担を求める仕組みの検討が必要とされた一方で、利用者等に幅広く意見聴取を行うとともに、技術的な課題等についても検討することが必要とされました。
今後は、中間取りまとめにおける指摘事項や利用者等の関係者の意見を十分に踏まえつつ、更に検討を深めてまいります。
ホームドアの設置等についてお尋ねがありました。
ホームドアは、利用者数十万人以上の駅を優先して整備をしておりますが、それ以外の駅につきましても、転落事故の発生状況や障害者、高齢者の利用状況等を勘案の上、必要に応じて整備を行っております。
また、設置義務付けに関しましては、乗降口の位置が一定等の条件を満たす場合は、本法律に基づき、駅の新設又は大規模改良を行う際に整備を義務付けております。
一方、ホームドアが未設置の駅において駅員等が果たす役割は重要であり、各駅の利用実態等に鑑み、必要に応じて配置を見直すことを含め、指導を行ってまいります。
国土交通省といたしましては、こうした取組を通じまして、ハード、ソフト両面における総合的な転落防止対策を着実に進めてまいります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(麻生太郎君) 山添議員から、セクハラ問題及び森友学園問題について計四問お尋ねがあっております。
まず、セクハラ問題に関する私の言動についてのお尋ねがありました。
私の発言の一部が切り取られてクローズアップされ、報道に取り上げられている現状は、誠に残念であります。
私自身、セクハラは被害女性の尊厳や人権を侵害する行為であって決して許されるものではないと考えておりまして、被害女性を傷つけるとか加害者を擁護するという意図は全くありません。
また、四月十九日に局長クラスを大臣室に呼び、セクハラやパワハラは決して許されないことなどを改めて申し渡したところでもあります。
今後、セクハラ、パワハラは許さない組織文化を徹底し、信頼回復に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、文書の書換え問題に関する私の認識についてのお尋ねがありました。
決裁を経た行政文書を書き換えるというようなことは極めてゆゆしきことであって、誠に遺憾であって、深くおわびを申し上げねばならないということは度々申し上げているとおりであります。
その上で、議員御指摘の私の発言は、財務省において今回のような問題が全省的かつ日常的に行われていたわけではないということ、今回の件につきましては、現在進めている調査の結果を踏まえ、書換えに関与した職員に対し厳正な処分を行っていく必要があること、その上で、個々の職員の手による問題が生じないよう、財務省の組織として再発防止を取り組んでいくべきことといった問題意識から申し上げたものであり、問題を矮小化するといったような意図は全くありません。
次に、財務省と森友学園との交渉記録に関する報道についてお尋ねがありました。
森友学園への国有地売却につきましては、財務省として決裁文書の書換えに関して調査を進めているところであります。
森友学園との交渉につきましては、これまでも記録が残っているのではないかという様々な報道があり、まずは書換えについての調査を優先しつつ、交渉記録についても調査をしてまいりたいと考えております。
最後に、近畿財務局から大阪航空局に対して、地下埋設物の積算書を増やすよう依頼していたとの報道についてのお尋ねがあっております。
議員御指摘の報道につきましては、事実関係について調査を進めているところであります。進行中の捜査にも留意をいたしつつ、できる限り速やかに報告できるよう努力をしてまいります。(拍手)