2018年・第196通常国会
- 2018年5月17日
- 国土交通委員会
バリアフリー法案 「バリアフリー化対策費の利用者負担、駅無人化は法に逆行」指摘
- 要約
-
- 山添議員は、移動の権利は憲法上保障された権利か、大臣の認識を質し、法案に明記すべきと述べた。
- 山添議員は、運輸事業や施設のバリアフリー化については、ハード面でもソフト面でも第一義的には事業者にあり、国や自治体がこれを支援すべきであり、駅バリアフリー化についての利用者負担の検討は見直すべきと求めた。
- また、駅の無人化が進んでいる現状に対して、バリアフリー化に逆行するとして、法改正をふまえて適切に国が対応をとるべきと述べた。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
高齢者や障害者、病気やけがを負った人、誰であれ、個人を尊重し、その自由な人格形成と発展を支えるのが憲法の保障する基本的人権であろうと思います。
大臣は本会議で私の質問に対して、バリアフリー法の趣旨は、憲法十三条や十四条、二十一条などに依拠すると述べました。二十二条の居住、移転の自由や、あるいは二十五条、生存権に根拠を求めることもできるだろうと思います。
いずれにしても、こうした憲法に定める権利を実現しようとするのがバリアフリー法であります。誰もが自由に安全に移動する権利はそもそも憲法上保障された権利だと、こういう認識を大臣はお持ちでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 御指摘の誰もが自由で安全に移動できる社会を築くことは憲法で保障されているということについては、必ずしもその趣旨が明確ではございませんけれども、それが人の移動をする自由を妨げないという意味であれば、本会議で御答弁いたしましたように、バリアフリー法の影響する考え方として憲法の規定に根差しているものと考えております。
一方で、いわゆる移動権、すなわち請求の根拠となるような具体的な権利として認められるという意味であれば、本会議で御答弁いたしましたように時期尚早であると考えております。
○山添拓君 憲法上の権利、これに依拠するものだということを認めるんであれば、法律に明記することも可能であるはずなんですね。障害者権利条約でも移動の自由は保障されておりますし、またバリアフリー法について、今日午前中の参考人質疑では秋山委員からも、内容的には移動権を認めたフランスと比べても遜色のないものだと、こういう意見も示されました。なぜ移動権を明記しないかといえば、御答弁ありましたとおり、権利の内容について国民のコンセンサスが得られていない、だから時期尚早だと、こういうわけです。
しかし、権利が問題となる場面というのは、常に少数者の権利が脅かされる場面であります。障害者や高齢者のように移動に不自由を感じる方を念頭に置いたバリアフリー化でこそ、権利として正面から位置付けることが求められていると思うんです。大臣、これ改めていかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 今ほど御答弁したとおりであります。
○山添拓君 なかなかそれ以上前に進まないんですけれども。
時期尚早だ、国民のコンセンサスが得られていないと、こうおっしゃるんですが、二〇一三年の交通政策基本法の前提となった審議会ではもっと露骨な議論をされているんですね。これ、権利を規定すると義務を負うのは誰かということになっていくと、財源が必要になると、やらなければ行政が不作為を問われる、つまり裁判を起こされかねないと、あるいは利用者と事業者との間に対立意識を生みかねないのだと、こういうことを議論されているわけです。結局、そうなった場合に不都合を受ける行政やあるいは事業者の言い分を通しただけであります。それによって、移動の自由や権利というものが時期尚早だと。これでは、いつまでたっても時期尚早のままということになりかねないということを指摘しなければなりません。
今、移動の自由や権利としての保障がはっきりしないために、今度の法案でも懸念すべき点があると私は考えています。その一つが、国民の責務に追加をされた文言です。高齢者や障害者が公共交通機関を利用して移動するために必要となる支援その他、必要な協力をするよう求めると、こうされています。一人一人の国民が自発的に支援したり協力したりする、これに何の異論もありません。しかし、本来バリアフリー化に責任を負うのは運輸事業者や施設の管理者であります。
大臣に伺いますが、ハード面でもソフト面でもバリアフリー化の責任は第一義的には事業者にあり、国や自治体がこれを支援すべきだと、この考えには変わりはないと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 現行法におきましては、施設設置管理者等、国、地方公共団体及び国民について、それぞれ努力義務として責務が定められているところであります。施設設置管理者等につきましては、移動等円滑化のために必要な措置を講ずること。国につきましては、関係者と協力して、移動等円滑化の促進のための施策の内容について、適時適切に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること及び国民の理解と協力を求めること。地方公共団体につきましては、国に準じて、移動等円滑化を促進するために必要な措置を講ずること。国民につきましては、理解を深めるとともに協力を行うこととされているところでございます。
こうした責務にのっとり、それぞれが役割を果たしてバリアフリーの取組を進めることが本来あるべき姿と考えております。
○山添拓君 ですから、バリアフリー化の責任が、一義的には事業者が行うべきものだと、これ自体は特に否定されないかと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(由木文彦君) お答えいたします。
委員お尋ねの一義的にはというところが一体何を意味しておられるのか、必ずしもよく明確ではございませんけれども、今申し上げましたように、バリアフリー法上は、移動等円滑化のために必要な措置を講ずることという努力義務は、施設設置管理者等、いわゆる事業者等に課せられた責務として規定をされているということでございまして、国は施策の内容について適時適切に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること及び国民の理解と協力を求めること、それから国民は理解と協力を行うことということでございまして、今回法律に追加をいたしましたその責務につきましては、その理解を求める対象の例示を追加をしたということでございます。
○山添拓君 ですから、移動の円滑化のために責任を負うのは、本来は事業者、管理者ということであろうと思います。
駅などで声掛けは重要ですが、やっぱりプロによるサポートを基本とするべきだ、こういう田中参考人からの意見もありました。国民に声掛けなどの責務があるからといって、事業者が利用者任せにして安全対策やバリアフリー対策怠るようなことがあってはならないと思います。
もう一点、都市鉄道の利用者ニーズの高度化等に対応した施設整備促進に関する検討会での議論について伺います。
今年二月の中間取りまとめは、バリアフリー化の投資は必ずしも事業者の収益につながらない、国や地方公共団体の財政事情もあるとして、受益者負担の観点から新たな費用負担の在り方について検討を行うこととしたというものです。
これは、委員十一名のうち七名が鉄道事業者とその関係者、二名が国交省で、藤井局長と次長がおられます。負担する側の利用者側の代表がいないわけですね。これでは、費用負担を抑えたい事業者と国が利用者にいかに払わせるかを議論しているだけだということに形式上なってしまいます。消費者団体が提供したアンケートについても、我田引水な評価で、あたかも利用者負担を望む声が多いかのように記載をしておりました。
大臣は、衆議院で、今後、利用者等の意見を幅広く聴取すると答弁されたわけですが、本来は、中間取りまとめに当たって利用者の意見を聞くのが当然ではないでしょうか。これ、そもそもなぜ聞かれなかったんですか。大臣、いかがですか。
○政府参考人(藤井直樹君) 先ほど、この委員会についての構成員についての御指摘がございましたけれども、こういった料金設定ができるかということについて鉄道事業者の側でも様々な意見があり、それを正確に把握しようということで鉄道事業者の方々が入っておられたということであります。その上で、東京圏が一番鉄道について稠密でありますので、そういった東京都の自治体の方もおられたということ、さらには消費者団体の代表の方々もおられたということであります。
そういった消費者団体の方がある意味自主的に、せっかくこの会議にも入っているので周りにもいろいろ聞いてみましょうといって、ある意味で母数の限られたアンケートをやっていただいた、そういった結果もこの中で議論をさせていただいたところでございます。
だから、そういったことにつきましては、やはりそういった母数が少ないという問題、当然ございますし、そういうことを踏まえて、中間取りまとめで利用者等に幅広く意見聴取を行うべきであると、そういった御指摘もいただいていますので、そういったことを今後しっかりと踏まえた上で更に検討を深めていきたいと考えているところでございます。
○山添拓君 消費者団体はオブザーバーですから、やっぱり元々そうした形で利用者や、あるいは高齢者、障害者、意見聞く気がなかったということなんですよね。
最終取りまとめは夏にも発表する予定だと伺いましたが、これは、これから意見聴取をされると、それを踏まえて議論が必要ですので、期限ありきではなく慎重に検討するべきだということをお伝えしておきたいと思います。
次に、駅のホームドアについて伺います。
ホームからの転落事故は年間三千件近くに上り、東視協、東京視覚障害者協議会の調査によれば、一九九四年以来、六十七人の視覚障害者が死亡ないし重傷事故に遭っているといいます。まさに欄干のない橋を歩く危険が現実化をしているわけです。現在、全国約九千五百駅のうち六百八十六駅に設置済みとされています。
鉄道局に伺いますが、この六百八十六駅というのは、その駅の全てのホームにホームドアが整備されているという意味なんでしょうか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今委員御指摘ありました平成二十八年度時点でホームドア設置済みの駅数が六百八十六駅と、こう言っておりますのは、駅の少なくとも一つのホームにホームドアが設置されている駅数を述べておるものでございます。
○山添拓君 資料をお配りしておりますが、例えばJR池袋駅では、山手線は五番線から八番線まで発着するんですが、ホームドアがあるのは六番線と七番線のみで、七番線にはあるが反対側の八番線にはありません。同じく池袋駅を発着する埼京線のホームにもありません。あるいは、委員の皆さんも御利用になるかもしれませんが、秋葉原駅などは、ホームの山手線側には今ホームドアはありますが、反対側の京浜東北線側にはありません。
視覚障害者の方はちょっとしたときに方向を見失うときがあるとおっしゃいます。そのため、一方だけにホームドアがあるような駅では、これは危険は余り変わらないんだということも伺います。ですから、こういうケースを、確かに設置された駅なんですが、整備済みの駅とは言わないんではないかと。少なくとも、全てが整備済みなのかそうでないのかということを把握していくことも必要ではないかと指摘をさせていただきたいと思います。
ホームドアの設置は一日の利用者十万人以上の駅を優先して、そうでない駅は事業者の判断に任せています。私は、昨年三月、視覚障害者の皆さんと京成電鉄の日暮里駅を訪れました。成田空港を利用する人などがJRと京成を乗り継ぐ駅で、外国人旅行者も多い駅です。当時、京成電鉄は、下りの二つのホーム、特急ホームと普通ホームがありますが、この二つのホームにはホームドアを付けるが、上りのホームには付けない、固定柵を設置する計画でした。資料の二ページにそのときのプレスリリースを載せております。
国交省に伺いますが、二〇一六年十二月の駅ホームにおける安全性向上のための検討会中間取りまとめでは固定柵の設置を推奨するものとなっておりますか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今御指摘のありました駅ホームにおける安全性向上のための検討会の中間取りまとめの中におきましては、駅のホームにおける固定柵については、列車への乗降部分が開口部として残ることに対する視覚障害のある人からの不安の声があるということについて記載をしているというところがございます。
○山添拓君 ですから、固定柵の設置をこれから進めていきましょうと推奨しているわけではありませんね。
○政府参考人(藤井直樹君) この駅の安全対策についての、この今申し上げました中間取りまとめのその一つ前の段階での取りまとめ、かつてでありますけれども、そういった場合には、ホームドア等の整備が困難な場合、内方線付き点状ブロックと併設する固定柵等の対策を実施することが望ましいとかつてされていたところでございますけど、この記載が今申し上げた中間取りまとめではなくなっているということでありますので、そういったことを踏まえた対応が求められると考えているところでございます。
○山添拓君 視覚障害者団体からも、固定柵はやめてほしいと要望がなされておりました。ただ、京成電鉄はあくまで固定柵だとして、ホームが狭くてドアを設置できない、あるいは、上りホームは特急と普通列車が同じホームを使うのでドアの位置が異なると、こういう理由を挙げておりました。
資料の三ページ、今年の三月、ようやく方針を転換しまして、ホームドアを設置することにいたしました。なぜだと言っていますでしょうか。また、設置できない理由としてきた二点はどう解消したと説明しておりますか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今委員からも御紹介ありましたけれども、この京成の日暮里駅の上りホームにつきましては、一つは、ホームが狭隘でありまして、ホームドアの設置によってホームの通路幅が確保できないといった問題、さらには、特急専用ホームと一般列車ホームが分かれている下りホームと違って、全ての列車がこの上りホームに入ってきますので車両の扉位置に違いがあると、こういった問題があるので、当初京成電鉄においては固定柵の設置を予定していたということと聞いております。
その中で、更なる安全性向上のためにその後も京成電鉄においてホームドア設置の検討を継続して行い、その結果、先ほど申し上げた問題点のうちの第一点目のホームの狭さへの対応という点につきましては、列車の停車位置をずらして、通路幅が最も狭くなるエスカレーター前に厚みを持つホームドアの戸袋が来ないように整備をすると、そういった解決策を見出しております。
さらには、二つ目の問題点の扉位置の違いにつきましては、これは、ホーム柵について大開口、いわゆるドアの部分が広い、そういった形のホームドアを整備する、こういったことで今の課題を解消する、克服すると、そういったことを検討の結果、最終的にホームドアを整備することになったと聞いているところでございます。
○山添拓君 はっきりおっしゃらないんですけど、端的に、利用者が十万人を超えたからじゃないんですか。
○政府参考人(藤井直樹君) ホームドアの整備は、先ほど申し上げました中間取りまとめの中で十万人以上ということを念頭に置いたところでありますけれども、これについては一つの目安でありますので、そういった人数が十万を超える、超えないということがこの整備、整備をしないということの判断基準のメーンになったというふうには考えておりません。
○山添拓君 なぜはっきりおっしゃらないのか分からないんですけど、日暮里駅はその前年までは九万八千人だったんですよ。そのときは断っていて、十万人を超えたのでホームドア整備しますということになったんですね、これ、レクのときちゃんとおっしゃっていたんですけれども。
京成が当事者の皆さんの要望も踏まえて対応したことは大事なんですが、結局、その基準を少しでも下回ると、ホームドア設置に消極的になる、クリアできる課題を挙げて、クリアできるはずの課題を挙げて断るということが起こっているわけです。
ですから、基準は下回っていても、要望があり、必要な駅では設置するように指導すべきだと思います。そのためには、ホームドアを事業者によるサービスとするのではなくて、安全対策として鉄道事業法の整備基準にするべきではないかと思います。
大臣は、本会議での私の質問に対して、一定の条件を満たす場合にはバリアフリー法によって駅の新設又は大規模改良を行う際に整備を義務付けていると答弁されました。そうすると、既存の駅ではそのままでよいということになりかねないんですが、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) ホームドアは、列車との接触、ホームからの転落防止のための設備として非常に効果が高く、その整備を推進していくことは重要と認識をしております。一方、ホームドア整備は、新たな収益を生むものではなく、整備に多額の費用が掛かることを踏まえ、その整備を義務付けする対象は駅の新設又は大規模な改良を行う場合に限ることとしているところであります。
なお、それ以外の既設の駅の場合には、利用者十万人以上の駅について、整備条件を満たしている場合、原則として平成三十二年度までにホームドアを整備する等の整備目標を定めた上で、公的な支援措置を講じること等によりましてホームドアの整備を促進をしているところであります。
○山添拓君 ですから、なかなかそれでは全体進んでいくということにならないかと思うんです。
ホームドアを設置するまでの間は、ホームに人員を配置して対策を取るべきです。国交省は、事業者の判断によって、警備員を増配置したり通勤通学時間帯に新たに職員を配置するなど対応を取っているとおっしゃいますが、最近、地方だけでなく、首都圏の駅でも無人化がむしろ進んでおります。
資料の四ページに、四月十日付け東京新聞の記事を載せておきました。JR東日本では、駅の遠隔操作システムにより、始発から午前七時前頃まで無人として、インターホンで対応する駅が増えているといいます。埼玉県では、宇都宮線、高崎線、川越線、二十八駅が無人化をされ、県がJRに再配置を求めて要望しています。
今年二月から三月にかけては、千葉県の総武線、下総中山、東船橋、幕張本郷の三駅が早朝無人となりましたが、これホームページに記載はされず、県にも事前の連絡はなかったといいます。我が党の丸山慎一県議らが今年の二月、JR東日本に新たな無人化は撤回するよう求めた際に、聴覚障害者が知らずに来たらどうするのか、こう聞きますと、担当者は答えられなくて絶句をしてしまったといいます。
鉄道局、伺いますが、このシステムは何駅で導入されているんでしょうか。そして、これは、駅員の増配置や新たな職員配置どころかバリアフリーと逆行するような事態ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(藤井直樹君) 今委員御指摘の駅遠隔操作システム、これは、自動券売機、自動改札機、自動精算機等の操作、監視を遠隔で行うシステムでございます。JR東日本は二〇一四年以降導入を進めておりまして、昨年十月一日現在、導入駅は百七十七駅であると聞いております。
車椅子の使用者など駅係員の対応が必要な利用者がこういった駅を利用する場合、こういった駅が無人駅になっている場合もあるわけでありますけれども、これについては、事前に連絡を受けた上で、近隣の管理駅や駅のバックオフィス等に常駐する駅係員を派遣することによって不便が生じないように対応を行っているものと聞いております。
○山添拓君 時間が来ましたので終わりますが、心のバリアフリーといっても、人がいないのでは対応のしようがありません。秋山参考人からも、無人化というのはゆゆしき事態だという発言がありました。
JR東日本は経営合理化のためだと言っておりますが、連結決算の経常利益が四千億円を超える会社の、しかも首都圏でこれが許されるのであれば、地方では更に無人化に拍車が掛かってしまいます。ソフト対策を充実させるという法改正を踏まえて適切な対応を取るべきだということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。