2018年・第196通常国会
- 2018年6月6日
- 消費者特別委員会
消費者契約法改正案 若年層の契約被害対策求める
- 要約
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- 消費者特別委員会で消費者契約法の改正案が可決、成立。 山添議員は若年者の不当な契約の取消権について、同法案は不十分な類型に限られていることを指摘。成人年齢の引き下げられる2020年までに、若年層の保護に向けた更なる対策を大臣に求めました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
今回の消費者契約法改正は、二〇一四年八月に内閣総理大臣から消費者委員会に対してされた諮問が発端です。情報通信技術の発達や高齢化の進展など、社会経済状況の変化に対応するために、契約締結過程や契約内容について在り方を検討することとされました。ですから、元々は成年年齢引下げとは関係なかったわけですが、その後、この点が立法事実として加えられたものかと思います。本法案で問題となっております社会生活上の経験が乏しいという要件は、この成年年齢引下げとリンクさせるために追加をされ、消費者庁が今なお固執するに至っているものかと思われます。
私は、今日は、その成年年齢引下げにより、未成年者取消し権が奪われるということが重大な問題だという観点から質問させていただきたいと思います。
五月二十五日の本会議で、私は、本法案による新たな契約取消し権は、限られた類型にとどまるもので、若年層の保護として全く不十分だと指摘をいたしました。これに対して上川法務大臣は、今般追加する取消し権は、消費者教育の充実等の他の施策と相まって十分な消費者被害への対策となる、こう答弁をされました。
まず、消費者教育について伺いたいと思います。二〇一二年十二月に消費者教育の推進に関する法律が施行をされ、一三年の六月、二〇一七年度までの五年間を対象とする消費者教育の推進に関する基本的な方針が閣議決定されました。消費者の特性に対する配慮として、若年層についてどのような消費者教育が必要だとしていたものでしょうか。
○政府参考人(井内正敏君) お答え申し上げます。
委員御指摘の消費者教育の推進に関する基本的な方針におきましては、消費者教育の推進の基本的な方向として、消費者教育を効果的に進めるために、消費者の特性に対する配慮が重要であるというふうに指摘しております。この中で、消費者の年齢に着目し、若年層に対しては、スマートフォン等の情報通信機器やインターネットの利用による契約トラブルが増加しているという消費者の被害等の状況や成年年齢の引下げに向けた環境整備の観点等から、高等学校段階までに契約に関する基本的な考え方や契約に伴う責任、消費者市民社会の形成に参画することの重要性などについて理解させ、社会において消費者として主体的に判断し、責任を持って行動するような能力を育む、そういうふうに指摘してあります。
○山添拓君 基本方針に基づいて五年間でどのような消費者教育を進め、その結果どのような効果が生じたものか、消費者庁において評価をしたものがあるでしょうか。
○政府参考人(井内正敏君) お答え申し上げます。
一般的に、教育の効果を客観的、定量的に測定することは難しいと考えております。しかしながら、消費者教育推進地域協議会の設置が進んだことや、消費者教育推進計画が全都道府県で作成されたという状況、また、学校、地方公共団体、事業者などにより実施されたそれぞれの消費者教育事業を踏まえますと、全国で着実に取組が進められたというふうに考えております。
消費者教育の推進に関する法律に基づく今の基本的な方針、平成二十四年十二月施行の法律と、あと、平成二十五年六月閣議決定されました基本的な方針が作成されたことによりまして、国、地方公共団体等の様々な主体が体系的、総合的に消費者教育の推進を図ることが求められているという意識が形成され、共有されたものと思っております。
こういうことから、消費者教育を受ける機会が与えられるという消費者の権利の実現ということから、一定の成果を上げてきたというふうに評価しております。
○山添拓君 なかなか効果を評価するということは難しいんだというお話が冒頭ありました。
今年三月、基本方針が改定をされまして、これによりますと、民法の成年年齢引下げに向けた検討が進められていることから、若年者の消費者教育については、これを念頭に置いた消費者教育を考える必要があるなどとしています。
これは、私はおかしいと思うんですね。二〇一三年の段階では、成年年齢の引下げに向けた環境整備が必要だと、こうしていたわけですけれども、その間の効果についての評価、これはされていないわけです。今年はもう成年年齢引下げを前提にした議論に変わっているわけです。
消費者庁、文科省、法務省、金融庁は、今年二月、若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラムを決定し、消費者教育を推進するとしています。これ二〇一八年度から二〇二〇年度まで三年間が集中強化期間とされています。資料の一枚目に、先ほど矢田委員からもお示しありましたけれども、二〇一七年度に徳島県内の高校で「社会への扉」を活用した授業を実施したとされています。
消費者庁は、この一七年度の授業の実施について、効果、何らかの評価を行ったものがあるでしょうか。
○政府参考人(井内正敏君) お答え申し上げます。
「社会への扉」は、成人として消費生活を送る上で最低限必要な知識を習得し、自分自身の行動を考えるきっかけとなるよう、また、仮に消費者トラブルに遭った場合には消費生活センターに相談できるよう、実践的な能力を身に付けるために作成した教材でございます。徳島県から、この授業の効果として、生徒の意識、行動の変容や消費者トラブルに遭った際に取るべき適切な行動についての知識が身に付いたということを伺っております。
消費者教育の効果が上がっているかどうか、先ほども申しましたように、定量的に測定することは難しいものでございますけれども、このように、「社会への扉」を活用した授業が消費者として社会で生きるための実践的な能力の向上につながっているというふうに評価しております。
○山添拓君 一七年度の実施ですから、恐らくその効果について何らかの評価ができるのはこれからだということになろうかと思います。
中学校で消費者被害の背景とその対応、あるいは高校では新教科の公共に消費者教育を位置付けるなど、消費者教育の充実を内容とする学習指導要領の改訂が行われています。
文科省に伺いますが、その全面実施は小学校、中学校、高校でそれぞれ何年度と予定されていますか。
○政府参考人(下間康行君) お答え申し上げます。
御指摘の新学習指導要領については、小学校は平成三十二年度から、中学校は平成三十三年度から全面実施、高等学校は平成三十四年度の入学生から年次進行で実施することになっております。
しかしながら、学校における消費者教育につきましては、平成十六年に制定された消費者基本法や平成十七年に決定された消費者基本計画を踏まえ、平成二十、二十一年度に改訂した現行の学習指導要領におきまして消費者教育に関する内容の充実を既に図っているところでございまして、現在の小中高校生はこの充実が図られた現行の学習指導要領に基づく消費者教育を受けているところでございます。
○山添拓君 成年年齢の引下げが予定される二〇二二年度にようやく完全実施をされるということでありました。
それで、確かにそれはずっとやっているわけですから、いろいろ効果があったり、教育上これまでされていなかった消費者教育がされているということ自体は確かなんだと思うんです。しかし、それが少なくとも、現段階で現在行われているような内容やあるいはその程度で若年者の消費者被害を防止するために十分だと言えるのか、その効果についてはいまだ検証されていないのではないかと私は思います。
消費者委員会のワーキンググループが二〇一七年一月に行った報告書でも、小中高において消費者教育に割かれている授業時間が少ないとの指摘があるとか、あるいは消費者教育に関してどの程度効果があったのか効果測定は行われていないという指摘がありますし、学校における消費者教育の効果測定を行うための必要な調査を行うべきだと、こういう指摘がされています。
そこで、むしろ本格的な消費者教育の充実というのはこれからではないかと私は思うのですが、今日は法務省の副大臣においでいただいておりますが、二〇〇九年法制審議会の意見では、成年年齢引下げのための三つのハードルがあるとされてきました。一つが、若年者の自立を促すような施策、消費者被害の拡大のおそれを解決する施策が実現されること。二つ目に、これらの施策の効果が十分に発揮をされること。そして三つ目に、その効果が国民の意識として現れることだと。
こう考えると、少なくとも消費者教育に関して、消費者教育も含む現在の消費者行政、あるいは消費者契約法の改正も含めて考えるべきかと思いますが、これらはまだ十八歳、十九歳から未成年者取消し権を奪うような手当てとして十分と言える状況にないんではないかと思いますが、葉梨副大臣、見解いかがでしょうか。
○副大臣(葉梨康弘君) 山添委員御指摘のとおりでございます。
法制審議会民法成年年齢部会の最終報告書、成年年齢の引下げの法整備を行うには、成年年齢引下げに伴う問題点の解決に資する施策が実現されていること、その効果が十分に発揮されること、それが国民の意識として現れることが必要であるというふうに、御指摘のとおり指摘されているところでございます。
それについての評価ということでございますけれども、政府としましては、成年年齢の引下げに伴う問題点を解消するため、消費者教育の充実を含め消費者被害の拡大を防止するための施策などの実施に努めております。
法務省としては、これまで実施された各種の施策が着実に効果を上げ、国民にも浸透していると考えており、法制審議会の最終報告書に示された条件を満たしているのではないかと考えています。
もっとも、環境整備のための施策については、今後も省庁横断的に取り組んでまいります。更なる充実強化を図る必要があります。
そこで、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を開催し、平成三十四年四月一日の施行日までの四年間を活用して工程表を作成した上、全体的な進捗管理を行っていくこととしております。施行日までにこれらの施策が十分な効果を発揮し、国民の理解が得られるよう、引き続き努力をしてまいります。
○山添拓君 片や、消費者教育については効果を測定するのは難しいというお話がありながら、法務省においては効果がもう着実に現れているというお話なんですが、法務大臣は今度の消費者契約法の改正によって十分な消費者被害への対策となると答弁をされたのですが、これとは異なって福井大臣は、消費者契約法について、付け込み型勧誘による被害の救済を広く図ることは重要な課題であり、引き続き検討していく、あるいはできる限り速やかに検討する、こう答弁をされました。
福井大臣としては、本法案による改正のみでは十八歳、十九歳の未成年者取消し権を奪うその代償としては不十分だと認識されているということでしょうか。
○国務大臣(福井照君) 根元から御答弁を整理をさせていただきますと、この改正案では、主として若年者に発生している被害事例を念頭に置いて、消費者の不安をあおる告知でありますとか恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用でありますとかといった不当勧誘行為に対しての取消し権を追加することを規定しております。また、事業者の努力義務として、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で必要な情報を提供することを明示をしております。
更に言えば、若年者の被害の発生拡大を防止するためには、法制度の見直しのみならず消費者教育の充実が重要と考えており、具体には、被害事例の傾向や特徴を紹介するとともに、消費者が活用できる被害救済手段や被害に遭った場合の対応等を周知啓発するなどの取組にも万全を期してまいりたいというふうに思っておりますと同時に、今先生御指摘のとおり、これまで御答弁させていただきましたとおり、いわゆる付け込み型勧誘による被害の救済を図ることは重要な課題であるというふうに考えておりまして、被害事例や裁判例の分析等を進め、できる限り速やかに検討をしてまいりたいというふうに思っております。
○山添拓君 重大な課題というだけではなくて、消費者委員会のワーキンググループが、事業者が、若年成人、これ十八歳から二十二歳まで含めて、その知識、経験等の不足その他の合理的な判断をすることができない事情に付け込んで締結した不当な契約を取り消すことができる規定の創設が望ましい対応だとしています。ところが、本法案の取消し権はこのような包括的な規定にはなっておりません。
消費者契約法というのは、民法との関係では特別法ですが、特定の取引だけを対象とするものではなく、包括的で一般的な民事のルールであろうと思います。ところが、今般の改正案を見ますと、細分化された類型にこだわった規定とその解釈が目立つように思います。より一般的な消費者保護のルールが求められますし、その中で、とりわけ未成年者、十八歳、十九歳から未成年者取消し権を奪うという中で、付け込み型勧誘への取消し権の創設、こうしたものが必要であろうと思います。
法務大臣の答弁の中には、未成年者取消し権と同等の保護を与えた場合には、若年者の社会参加を促し、その自立を促すという成年年齢の引下げの意義を大きく減殺するという答弁もあったんですが、取消し権を創設するということは決して社会参加や自立の促進を妨げるものではないと思います。一旦締結した契約についても自らの判断で存続させるか取消しかを決めることができるという仕組みであろうと。ですから、むしろ自立的な判断を可能とするものであって、未成年者取消し権に匹敵するような包括的な取消し権の創設が成年年齢引下げの代償としては欠かせないと思います。それがない下での成年年齢の引下げというのは時期尚早であろうと思います。
大臣に最後に伺いたいのですが、消費者契約法の更なる改正やあるいは特商法の改正など、十八歳、十九歳を保護するための更なる法改正を、成年年齢の引下げが予定されている二〇二二年に間に合うように行うということを是非お約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(福井照君) 消費者庁といたしましては、成年年齢の引下げに伴う若年者の消費者被害の拡大を防止する、これはもう共通する課題認識だと思います。
本法律案による制度整備に加えまして、アクションプログラムに基づく消費者教育の充実、消費生活相談窓口の充実、周知、厳正な法執行など、総合的な対応に全力で取り組んでまいりたいと存じておりますと同時に、成年年齢の引下げを見据えた更なる対策につきましては、先生御指摘のような何か特定の対応が今現在念頭にあるわけではございませんけれども、引き続き若年者の消費者被害の状況等を継続的に把握しながら、必要に応じて、法整備も含めて、適切な対応を講じてまいりたいと存じております。
○山添拓君 終わります。ありがとうございました。