山添 拓 参議院議員 日本共産党

国会質問

2018年・第197臨時国会

入管法案-外国人労働者受入れ拡大法案について質問

要約
  • 国交委員会で、現行の「外国人建設就労者受入事業」では受入れ企業への監査制度が適正に行われていない実態があることを明らかにし、また、国交省の建設産業政策会議の提言では、担い手確保策として外国人労働者受入れは示されていないことを指摘。外国人労働者受入れ法案は拙速だと質しました。

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 外国人労働者の受入れ拡大に関わって伺います。
 建設業と造船業について、オリンピックに向けた人材不足に対応するための特例として、外国人就労者受入事業が二〇一五年度から行われております。建設業では、今年の九月時点で四千十一人を数えています。全員が技能実習の修了者であります。先ほど野田委員からも御紹介のあった中身です。この特例制度について、十一月二十二日、菅官房長官は、入管法改定案に言う特定技能一号、新しい在留資格に移行させる方針だと記者会見で述べました。
 大臣に伺いますが、来年四月で現在の特例を廃止するということですか。
○国務大臣(石井啓一君) 御指摘の外国人建設就労者受入事業は、元々、二〇二〇年度末に新規受入れを終了することとなっております。今回の法案の施行後は、恒久措置といたしまして建設分野での外国人技能労働者を受け入れる仕組みが整うことから、これまでの時限的措置を継続する必要はなくなるという趣旨で官房長官は発言されたと理解をしております。
 いずれにいたしましても、特定技能一号での受入れの枠組みにつきましては現在詳細を検討中でありますが、既に特定活動の在留資格によって一定期間在留、就労が認められた外国人建設就労者についてどのように受入れを行っていくか、その方法についても検討していく必要があると考えております。
○山添拓君 ですから、併存する期間があるということであります。
 私が説明を受けた段階では、技能実習から現在の特例に行き、そして特定技能に行くということも否定をされませんでしたので、技能実習で最大五年間、そして特例制度の下で二年ないし三年、そして特定技能一号で五年、最大十三年間にわたって家族の帯同を許さず日本で働かせる、もはや、途上国への技能移転、こういう建前をかなぐり捨てて、技能実習と一体での労働力の確保ということが仕組みとして検討されているということであります。技能実習後の雇用という点で、現在の特例制度は、これから新設しようとしている特定技能一号の先取りとも言えます。ですから、その実態は極めて重要であろうと考えます。
 資料をお配りしておりますが、この制度は、国交省が特定監理団体と適正監理計画を認定をして、制度推進事業実施機関に委託して巡回指導を行う仕組みが取られています。ここにありますように、二〇一七年度、受入れ企業五百十八社に行われた巡回指導では、賃金支払状況に関して二百四社、四割で改善指導が行われたとされています。ただ、四割だけなのかというと、そういうわけではないんですね。
 資料二ページ目、これは先週開示されました報告書の三十二ページでありますが、賃金支払の状況というところを御覧いただきますと、改善指導百三十七件、注意喚起八十二件、助言九十一件、合計三百十件、これは全体の六割近くに上ります。こうした受入れ企業の不正は、本来は特定監理団体が訪問指導や監査を行うという立て付けになっております。ところが、監査を行うべき、その主体となるべき特定監理団体の方がむしろ指導の対象ともなっているわけです。
 資料の三枚目を御覧ください。報告書の続きですが、これ、いろいろありますけれども、中ほどには、例えば、失踪事案が発生している企業への対策を講じるよう指導したとか、あるいは一番下、三か月ごとの監査報告記載内容が全く同じ、あるいは四ページ目、その中ほどですが、特定監理団体の受入れ建設企業に対する監査報告書ではおおむね良好と記載されているにもかかわらず、制度推進事業実施機関の受入れ建設企業に対する巡回指導では賃金の計算ミスによる一部不払等のケースが散見されていると。
 受入れ企業における様々な不正を特定監理団体が監査、是正できていない、これはなぜだと大臣はお考えですか。
○国務大臣(石井啓一君) 特定監理団体は、受入れ企業に対しての指導監督を始め、外国人建設就労者のあっせん、送り出し機関との調整、外国人からの相談対応等を行う能力を有するものであるかどうか国土交通省において認定をしており、基本的には適切に業務を実施する体制等を備えているものと認識をしております。
 他方、特定監理団体が受入れ企業による適正な賃金支払や労働条件の確認、指導等を的確に行うためには、給与、手当、社会保険その他の複雑な労働基準関係法令への十分な理解が必要であります。このため、国といたしましても、専門的知識を備えました制度推進事業実施機関に委託をいたしまして、受入れ企業に加え特定監理団体にも巡回指導を行い、適正さを欠く場合にはそれぞれに対して改善指導等を行っております。
 こうした取組を通じまして特定監理団体がその役割を遂行できるよう取り組みますとともに、受入れ企業に対しましても改善指導等を行いながら、外国人建設就労者の適正な受入れを図ってまいりたいと存じます。
○山添拓君 特定監理団体は能力があるということを国交省が確認するんだというお話でした。
 確かに、特定監理団体というのは、過去五年間に建設分野の技能実習を監理した実績があって、不正行為を行ったことがない、これが認定の要件にもなっているわけです。にもかかわらず、適正な監理が行われずに、特定監理団体そのものについても不正が発覚するような事態です。
 先ほど、推進機関が行ってきた報告書、一五年度、一六年度の分を開示できる部分は開示する、こうおっしゃっておりましたが、これいつ開示するんですか。
○政府参考人(野村正史君) お答え申し上げます。
 先ほど野田委員の質問にお答え申し上げたとおり、中に個人又は法人の営業に関する情報が含まれておりますので、それを精査した上で、所要の措置を施して、開示できる部分については開示をしたいということで、その作業が整い次第、できるだけ早くに開示したいと思います。
○山添拓君 衆議院で採決まで行おうとしている段階なんですよ。これ直ちに出すべきだということを指摘したいと思いますが。
 特例制度に関する国交省の告示によれば、特定監理団体は、受入れ企業による暴行、脅迫、人権侵害、賃金の不払など不正行為を知った場合には、直ちに監査を行い、国交省に報告することとされております。不正行為を知ったとして特定監理団体から国交省が報告を受けた件数とその内容を明らかにしてください。
○政府参考人(野村正史君) ただいま委員御指摘の外国人建設就労者受入事業に関する告示というものがあって、その第八の四に基づく特定監理団体からの報告は平成二十九年度に一件発生しておりまして、内容は、受入れ企業における外国人建設就労者の人権を著しく侵害する行為が疑われる事実についてとなっております。
○山添拓君 その一件というのは、元々はホットラインに通報があった件を、これ国交省の側から特定監理団体に確認を求めたと、こういう件ですね。
○政府参考人(野村正史君) 今委員御指摘のとおり、本件については、ホットライン窓口を設置している制度推進事業実施機関に寄せられた相談を契機として始まった手続の一環です。
○山添拓君 先ほどの推進機関の巡回指導では、四割の企業で改善指導を要する不正、これ多くは違法です、が発覚するような状況であったにもかかわらず、特定監理団体というのは、自らの監査では三年間通じて一件も不正を見抜けていないということであります。
 告示によれば、国土交通大臣は、特定監理団体に不正があった場合、その認定を取り消すことができるとされており、先ほど、認定件数は百七十件ということで御紹介ありました。今年度に入ってからも認定取消しあったと伺っております。今年度までの間で取り消された総合計は幾つですか。
○政府参考人(野村正史君) 本年九月末時点での数字を申し上げれば、平成二十七年度以降の累計認定百八十件のうち十六件の認定を取り消しております。
○山添拓君 要するに、一割近く認定を取り消されているわけです。
 特定監理団体というのは、本質的には、海外の送り出し機関と調整をして受入れ企業に外国人をあっせんするという機関であります。かつ、受入れ企業から費用を受け取って監理を行う、そのために適正な監理ができない、こういう構造的な問題があるわけです。
 国交省は、建設業における特定技能一号の受入れについて、今議論されている入管法改定案の中で行われようとしている新しい受入れについて、これ、どういう仕組みを検討されているんですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 新たな在留資格であります特定技能一号におきましては、監理団体等を介さず特定技能外国人を受け入れる等、外国人建設就労者受入事業とは制度の仕組みが異なっている部分もございます。
 他方、現行制度におきましては、外国人に対して適正な賃金が支払われること等を確保するため、国土交通省におきまして、受入れ企業が作成する外国人の報酬予定額等を明記した計画の審査、認定及び当該計画が適正に履行されることを継続的に確認するための巡回指導等を実施をしておりまして、これにより、全体として適正な事業遂行が図られていると認識をしております。
 新しい特定技能制度におきましても、現行の巡回指導等の制度の仕組み等も参考としつつ、外国人の適切な就労環境を確保する方策について検討しているところであります。
○山添拓君 参考にしつつとおっしゃったんですけど、今の仕組みと同様の、同程度の監理体制あるいは巡回指導の体制、これで仕組みを構築していくと、こういうことですか。
○政府参考人(野村正史君) 今大臣から御答弁申し上げたとおり、現在行っております巡回制度等の制度の仕組みも参考にしながら、その方策については現在検討しているところでございまして、適切な方法をしっかりと考案してまいりたいと考えております。
○山添拓君 現在検討していて、どのようなものにするかは明らかにできないと。
 参考にするというお話がありましたけれども、特例制度、現在の制度の下で特定監理団体の機能不全、はっきりしているわけです、一件も自ら見抜いていないわけですから。同じスキームでは同じ問題を繰り返すだけだということを指摘しておきたいと思います。
 なお、国交省は、この特例についての受入れ状況実態把握調査を行っています。資料の一枚目の右上にも出典として明示されておりますけれども、これ、調査の中身が開示されていないんですね。これは開示するべきじゃありませんか。
○政府参考人(野村正史君) 今、お尋ねを頂戴をいたしました。内容をしっかり精査をして、その開示の是非等については判断してまいりたいと思いますけれども、今お尋ねいただきましたものですから、そこは、しっかり持ち帰って検討をしたいと思います。
○山添拓君 いやいや、国交省が資料の中でデータの根拠として示しているものですから、それ、中身を私たち検証できないと、ここに示されている水準、賃金水準が示されていますけど、正しいのかどうかの議論もできないということですので、これは直ちに開示をいただきたいと思っております。
 先ほど来お話もありますけれども、建設業における担い手確保の必要性、これはかねてから指摘をされ、対策も検討されてきたとおりであります。国交省の中央建設審議会・社会資本整備審議会基本問題小委員会が今年の六月、中間取りまとめを発表しております。ここでは担い手確保策として何を示しておりますか。
○政府参考人(野村正史君) 今委員御指摘の中間取りまとめ、建設産業が十年後においても生産性を高めながら現場力を維持するという観点から具体的な提言がなされていて、その中では、担い手確保の取組を強化するために当面講ずべき措置として大きく四項目、長時間労働の是正、処遇改善、生産性向上、地域建設業の持続性確保の四つが掲げられているところでございます。
○山添拓君 外国人労働者の受入れ拡大ということは書かれていないんですよね。
 今、少なくとも現在の建設業に改善すべき課題が山積しているというのはもう皆さん承知のとおりであろうと思いますし、その対策として、事業者を含めた検討の中で、今述べられたような課題を解決することで十年後も維持できるようにと方向付けたばかりなんですね。それを進めるのが先決ではないかと指摘をしたいと思います。
 例えば賃金単価です。政府は、公共事業の設計労務単価を引き上げてきた、これをもう自慢げに語るわけですけれども、それが下請各層に適切に行き渡っているのかどうか、これ確認できているんですか。
○政府参考人(野村正史君) 今御指摘のとおり、私ども、六年連続で設計労務単価を引き上げてまいりました。ただ、その効果が現場の技能労働者まで十分に行き渡っていないのではないかという声があることは、私どもにおきましても承知をしております。
 したがいまして、こうした状況を踏まえて、国土交通省におきましては、本年十月から、労務費等の見直し効果が現場の技能労働者まで適切に行き渡っているか確認するモニタリング調査、これに着手をしておって、年度内を目途に結果を取りまとめる予定でございます。
○山添拓君 時間ですので終わりますけれども、要するに、把握はこれから、対策の本格化もこれからだということです。働きがいのある職場にする努力こそが求められております。
 こういう現状や技能実習生特例事業における課題も解消しないままにやみくもに新たな外国人労働者の受入れ拡大へと進めば、更なる価格のダンピング、労働条件の悪化につながるということは、これは誰が見ても明らかだろうと思います。
 拙速審議などもってのほかだと、このことを政府に対して指摘をして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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