2018年・第197臨時国会
- 2018年11月20日
- 国土交通委員会
相次ぐ豪雨災害の教訓から、ダム偏重の治水対策のあり方を質す
- 要約
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- 国交委員会で大臣所信に対して質問。辺野古の埋立承認撤回についての行政不服審査請求と執行停止申し立てを認めた国交省の問題点を追及。また豪雨災害で明らかになった河川整備の遅れはダム偏重の予算によるものであることを質すとともに、堤防強化のための技術的知見を確立するよう求めました。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
八月三十日、沖縄県が辺野古の埋立承認を撤回し、九月三十日の県知事選では辺野古新基地建設反対を掲げた玉城デニー氏が当選をし、民意は明確に示されました。デニー知事が安倍首相と面会し、対話による解決を求めた直後、沖縄防衛局は、埋立承認撤回が不服だとして国土交通大臣に審査請求と撤回の効力の執行停止を申し立てました。
しかし、行政不服審査法七条二項では、国が固有の資格に基づきされた処分には不服申立てができないとされています。固有の資格というのは、これ一般人が立ち得ない立場をいうものだとされています。埋立承認の撤回という処分が国の固有の資格に基づいて行われた処分かどうか、これが問題であります。
海上を埋め立てるには公有水面埋立法に基づき許可を受ける必要があります。一般人の場合には免許で、国の場合には承認です。両者はどのように違うのですか。
○政府参考人(塚原浩一君) お答え申し上げます。
公有水面埋立法第二条におきまして、埋立てをなさんとする者は都道府県知事の免許を受くべしと定められております。国におきまして公有水面を埋め立てようとする場合は、同法第四十二条におきまして、都道府県知事の承認を受くべしと定められております。公有水面埋立法第四十二条第三項におきまして、承認について準用する免許の規定が定められているところでございますけれども、免許では適用があり、承認では適用のない規定として、例えば免許料や罰則等に係る規定がございます。
○山添拓君 資料の一枚目に、お配りしておりますが、ほかにもいっぱいあるんですよね。竣功の認可が不要だとか、埋立地の使用についての制限がないなど、承認の場合に適用されない規制が多数あります。
承認と免許の違いは、これ、形式上、名前だけのものではなく、国が事業者となる場合を特別扱いをして規制を緩くしているものです。これこそ固有の資格に基づく処分と言うべきではないですか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 行政不服審査法第二条におきまして、審査請求をすることができる者につきましては、行政庁の処分に不服がある者と規定をしております。沖縄防衛局のような国の機関でありましても、ここで言うところの処分を受けた者と言える場合には一般私人と同様の立場で処分を受けたものであり、固有の資格、すなわち、一般私人が立ち得ないような立場で撤回を受けたものではないと認められることから、審査請求をすることができると解釈をされます。
この点、前回、これは翁長知事の時代でありますが、承認取消しの違法性が判断をされた平成二十八年の最高裁判決におきましては、承認の取消しが行政不服審査法第二条の処分であることを踏まえた判断を行っております。
今回の承認の撤回も、埋立てをなし得る法的地位を失わせる点で承認の取消しと何ら変わらないことなどから、沖縄防衛局は行政不服審査法第二条の処分を受けた者と言えます。したがいまして、沖縄防衛局は、一般私人と同様に今回の承認の撤回について審査請求ができると判断をしたところであります。
○山添拓君 これ答えになっていないわけですね、副大臣もうなずいていらしたけれども。
処分を受けた者であっても、固有の資格に基づいて処分を受けた場合には不服申立て請求できないというのが法律なんですよ。国交省は、これ、ずっと、ほかの委員会も含めて同じ答弁を繰り返されているんですが、もう全く答えになっておりません。答弁不能に陥っているとしか言いようがない。
そもそも、キャンプ・シュワブの沿岸から沖合というのは、米軍の排他的使用のために制限される海域で、一般人は立入りすら制限をされます。ここを埋め立てできるのは、米軍基地を建設する、その建設を進める国だけであります。国は、国しかできない埋立てのために国しかできない承認という手続を行い、申請をし、撤回されたら途端に、一般人と変わらないんだといって不服審査を申し立てたわけです。こんな御都合主義はありません。工事再開を急ぐ余りに自作自演の執行停止を認めた国交大臣の責任は重大であります。執行停止を取り消し、審査請求とともに国の申立て自体を却下するべきだと指摘したいと思います。
審査請求というのは、国民の権利利益の救済を目的とする制度です。二〇一六年度に国土交通省に係属していた不服申立ての件数、請求認容件数、執行停止の件数を明らかにしてください。
○政府参考人(藤井直樹君) お答えをいたします。
平成二十八年度に国土交通省に係属しておりました不服申立ての件数は、まず平成二十七年度の未処理件数である一万二千百十六件、さらに平成二十八年度に行われました不服申立て件数である二百五十九件を合わせ、合計で一万二千三百七十五件でございます。また、平成二十八年度に国土交通大臣が行った認容裁決の件数は五十四件、執行停止の件数は〇件となっております。
○山添拓君 認容率、僅か〇・四%です。一万一千九百九十五件を翌年度に持ち越し、三年以上未処理の案件が二千三十一件。国民からの請求の大半を長期間たなざらしにして、しかも、ほとんど認めない一方で沖縄防衛局の執行停止の申立ては十三日で早々に認めてしまいました。
沖縄県の謝花副知事は、翁長前知事が命懸けで進めてきた承認撤回を数ページの決定書きで覆す、国はこんなことを全国どこでもやるつもりなのか、これでは地方自治は成り立たなくなると憤っておられました。私も、法治主義、地方自治、そして民主主義の否定だと考えます。この政治には民意が必ず審判を下すであろうということを強調しておきたいと思います。
それでは、今日は、テーマを変えまして、西日本豪雨、その中でもとりわけ、五十一名が亡くなり、四千六百戸が浸水被害に遭った倉敷市真備のことについて伺います。
私は、被災から一週間後に現地を訪れました。確かに尋常でない雨が降ったわけですが、現地では人災だという声を伺います。河川敷がまるでジャングルのように木々で覆われており、これは国管理区間も含めてです、市民や我が党の県議団、市議団など、かねてから整備局に対して伐採を求めておりました。
被災前の河川整備計画では、河道掘削の未実施や河道内の樹林化による河積不足が原因で流下能力が大幅に不足しているとしていました。樹林化ですよ。樹木の伐採や掘削、河川整備が遅れていた、これは明らかであり、対策は急務だと思います。しかし、結果としては堤防の高さを超える洪水が現に起きたわけです。
したがって、堤防の強化を進めるということも同時に必要ではないかと考えますが、どのように検討をされていますか。
○政府参考人(塚原浩一君) お答えいたします。
平成三十年七月豪雨におきましては、御指摘のとおり、高梁川水系小田川やその支川の末政川等におきまして堤防が決壊し、大規模な浸水により多くの尊い命が奪われるなど甚大な被害が発生したところでございます。
現在、これらの河川につきまして、九月に真備緊急治水対策というふうに銘打ちまして対策に着手をしたところでございます。決壊した小田川堤防の本格復旧や小田川と高梁川の合流点を下流側へ付け替え、小田川の水位を下げる事業などを進めているところでございます。その際、高梁川水系の小田川堤防調査委員会の結果等も踏まえながら、地域の安全性が十分に確保できるよう、堤防の断面の拡大など必要となる強化対策についても検討しているところでございます。
今後、地元の倉敷市が策定中でございます復興ビジョンとも調和を図りながら、必要な堤防強化対策も進めてまいりたいというふうに思っております。
○山添拓君 堤防の強化が必要だという認識だということですので、是非行うべきだと思います。
甚大な被害がなぜもたらされたのかと。深夜、短時間で一気に水かさが増し、逃げ遅れた人が多かったわけです。これは堤防が決壊したからにほかなりません。決壊しなければ、あるいは決壊がもう少し遅ければ、被害は随分小さくできたはずであります。
今お話にもありましたが、小田川堤防調査委員会は堤防決壊の原因についてどのように分析をしていますか。
○政府参考人(塚原浩一君) お答え申し上げます。
今回の七月豪雨におきましては、高梁川水系小田川及びその支川、末政川等におきまして八か所の堤防決壊が発生をしております。
高梁川水系の小田川堤防調査委員会におきましては、決壊原因について、前後区間に比較し相対的に堤防高、堤防の高さが低い箇所から越水が発生し、その越流水が集中することにより、時間の経過とともに堤防ののり尻部の洗掘等が発生したこと等であるというふうに推定をしております。
○山添拓君 堤防を越えた水、越流水が堤防の裏側を削っていったということであります。堤防調査委員会は、越水の危険性がある場所で危機管理型ハード対策を実施し、決壊までの時間を引き延ばしています。資料の三ページにもございます。
堤防の高さを超える越水の対策、これ小田川でやるべきだというのはもちろんですけれども、全国で、堤防、高さを整備を終えた区間も含めて十分な越水対策を行っていくべきではないかと考えますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(石井啓一君) 河川の改修におきましては、堤防整備などによりまして河道の流下断面を大きくする対策ですとか、あるいは河床を掘削することなどによりまして洪水時の水位を下げる対策などを組み合わせながら、確実に洪水を安全に流すことが重要でありまして、まずはそのための対策を推進をしているところであります。
一方で、平成二十七年の鬼怒川の水害を踏まえまして、越水の危険性があって当面整備の予定がない場所等において、越水しても決壊までの時間を少しでも引き延ばすこと等を目的といたしまして、堤防天端や堤防裏のり尻の補強を行う危機管理型のハード対策を実施をしているところでございます。
今回の平成三十年七月豪雨等での被害を受けまして、現在、防災関係インフラ等の重要インフラの緊急点検を実施をしておりまして、堤防が洪水時に防災・減災機能を発揮できるよう、点検結果を踏まえて必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
○山添拓君 今、二つのことをおっしゃったんですね。ハード対策、堤防の強化を行うのは当面整備の予定のない場所であると。さらに、今、重要インフラ点検を行っている、その結果によって必要なところは行っていくと、こういうお話であったかと思います。つまり、今、現に整備を進めているところは、堤防の整備を進めているところは、それで流下能力を確保するので、水は流れるので越水はしないのだと、越水対策はやらないのだと言っています。
インフラ点検で調査をしているのは、氾濫時の水深が五メートル以上、二階までつかるような場所ですので、相当危険な場所ということになります。それ以外はやらないと。ですから、今、水防災意識社会の再構築という中で、ソフト対策だといって、越水が起こるような、大洪水が起こるような場合には逃げてくれということを国交省は言っているわけです。
ですから、高さを超えるような洪水が来たときには、これはもう逃げるしかないのだと、家や家財道具は残念ながら諦めてくれと、運悪く逃げ遅れれば命も助からないかもしれない、こう言っているに等しいということではないかと思います。これは、国民の生命、財産を守ると、こう日頃豪語されている安倍首相の姿勢とも矛盾するものだと言わなければなりません。
今大臣の答弁にもありました二〇一五年九月の関東・東北豪雨では、鬼怒川で堤防が決壊いたしました。鬼怒川堤防調査委員会の報告書は、越水により川裏側で洗掘が生じ、川裏のり尻の洗掘が進行、拡大し堤防の決壊に至ったと。これは、私、昨年五月のこの委員会で水防法の審議の中でも指摘をいたしましたが、小田川と同じです。破堤のメカニズムというのは共通しているわけです。
そこで、資料の四ページを御覧いただきますが、越水の対策というのは、一番弱い堤防の裏側ののり尻、それから斜面裏のり、堤防の一番高い部分、天端、この三点を補強する形で行うことが求められます。
常総水害の後、国交省は危機管理型ハード対策をすると言い、二〇二〇年度までに全国一千八百キロで進めることといたしました。ところがその内容というのは、天端の舗装とのり尻の補強のみ、鬼怒川に至っては天端の舗装だけです。三つ穴が空いたバケツの一つしか塞がない、こういうような状況であります。
越流水による決壊は、堤防裏側の斜面を削った、のり尻を削った、これが原因だということが鬼怒川でも小田川でも経験上はっきりしているのに、なぜその対策をしないんですか。
○国務大臣(石井啓一君) ちょっと御質問の確認ですが、裏のり尻の対策をなぜやらないのかという御質問でしょうか。
○山添拓君 裏のりの対策です。
○国務大臣(石井啓一君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、今の危機管理型ハード対策というのは、越水しても決壊までの時間を少しでも引き延ばすことを目的としまして、堤防天端や堤防裏のり尻の補強を行っているわけであります。委員が先ほどこれをやれば堤防が破堤をしないというような趣旨のことをおっしゃいましたが、そうではなくて、あくまでも時間を延ばすための対策ということでございます。
○山添拓君 答えになっていないんですよ。裏のりについて対策をしないのはなぜかという質問です。
○国務大臣(石井啓一君) 堤防裏のり面の対策につきましては、実は、裏のり面にシートを置くようなことをかつて試験的にやった事例はございます、委員の五ページ目の資料にも幾つか挙げていただいていますが。これはあくまでも試験的にやった事例なのですが、実物大の大型堤防を用いて越流の実験を行ったところ、大型模型実験を行ったところ、遮水シートを裏のりに敷きまして、継ぎ部を接着しない場合には、継ぎ部への越流水の集中に伴って裏のり面の浸食が急激に進行すると、そういう実験の結果もございまして、そういった懸念があるということで、現時点では堤防裏のり面の対策を実施をしておりません。
なお、参考に申し上げれば、そのシートを、じゃ、溶着すればいいんではないかという御指摘を受けるかと思いますが、施工の難易度が上がる上、シートを溶着しますと維持管理上劣化しやすくなると、こういう課題もございます。そういった点から、現在、堤防裏のり面のシートの対策は行っていないという状況であります。
○山添拓君 要するに、技術的な知見が確立をされていないということが言いたいということであろうと思います。
しかし、二〇〇〇年六月に河川局治水課が策定をした河川堤防設計指針第三稿というものでは、越水に対する難破堤防の設計を示しておりました。その二年後、二〇〇二年七月十二日付け、河川堤防の設計における河川堤防設計指針では、越水に関する記述がなくなったんですね。
本当に技術的な知見がないのかということでありますが、例えば、今大臣も指摘をされましたが、資料の五ページにフロンティア堤防、アーマーレビーの一覧、幾つかの河川の実施された例を挙げておりますが、その中で、一九八八年三月の土木研究所、加古川堤防質的強化対策調査報告書では、アーマーレビーは堤防の質的強化工法の有力な一つだとして、浸水、浸透、越水双方について実験を行って分析をしています。ここでは、耐越水工法として、裏のり尻の保護工や裏のり保護工が十分な耐越水能力を持つことが確認されたと指摘しているんですね。その後、実際に工事も行われて、このように、二〇〇三年にかけて全国九つの河川、計二十六キロの区間で実施をされました。
資料の六ページ、石井大臣は、近畿地方建設局姫路工事事務所調査第一課長として、加古川の堤防強化調査の事務方の責任者でもありました。これ、一定の知見があったからこそ、実験的であったとはいえ、施工に至ったのだと思います。
ですから、今改めて、これ、当時の知見を検証して見直していくべきだと思いますし、それでも知見が確立されていないというのなら、改めて研究開発に踏み出し、堤防強化を全国的に進めるべきだと考えます。
そもそも河川行政の姿勢に大きな問題があります。
資料七ページを御覧ください。安倍政権になってからの河川事業とダム事業の直轄、補助、その当初予算での合計額の推移を表にしました。一番下です。
河川事業の合計は、二〇一四年度の四千五百三十一億円余りをピークに毎年減り続けて、今年度は四千五十八億円。五百億円近く減らされました。一方、ダムは、二〇一三年度一千八百三十三億円から毎年増え続けて、今年度二千三百四十六億円余りです。五百億円以上増えているんですね。
河川事業の予算を減らし続けたのは、大臣、なぜですか。
○国務大臣(石井啓一君) 治水事業の予算は近年ほぼ同額で推移をしておりますが、予算の集中投資が必要となるダムの本体工事が多くなっていることなどから、結果的にダム事業の予算が増え、河川事業の予算が減少している状況にあります。
治水事業の実施に当たりましては、堤防の整備や補強、河道の掘削、ダムや遊水地の整備など、様々な治水手段をそれぞれの河川の特性や流域の状況に応じて講じてきております。
堤防整備等の河川改修は、整備効果を順次発現するなどの長所があり、喫緊の河川改修については優先的に実施していますけれども、下流から実施しなければならないなど事業進捗に一定の年数が掛かるという場合もございます。
一方で、ダムは、一時的に予算の集中投資が必要となりますが、下流の河川改修を待つことなく、上流で洪水を貯留することにより長い区間にわたって効果を発揮することができる、そういう効果の大きい事業であると認識をしております。
この河川改修とダム建設につきましては、適切な役割分担の下で整備を実施しているところであります。今後とも、河川ごとの特性を踏まえながら、河川改修とダム建設双方の適切な役割分担の下、着実に治水対策を進めてまいりたいと考えております。
○委員長(羽田雄一郎君) 山添君、時間が来ております。
○山添拓君 もう時間ですので終わりますけれども、結局、ダムを優先しているということであります。
愛媛県の肱川では、ダムが満杯になったといって異常放流を行って、犠牲をもたらしました。ダムを偏重し、河川整備は後回しにしたことが失敗に至ったと、このことは明らかであります。
全国各地で今、五十年に一度、百年に一度の豪雨が頻発しています。堤防の高さを超えるような洪水が起こり得ることを前提に、住民の生命と財産をいかに守るか、従来の延長でない抜本的な対策を行うべきだと。予算の制約が理由だと安倍政権がおっしゃるのであれば、その政治の姿勢そのものを変えるべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございます。