2019年・第198通常国会 2019年3月15日 予算委員会 医師の長時間勤務、最低賃金引き上げについて質問 国会報告 要約 予算委員会で、過労死ラインの2倍を超える医師の残業代規制をゆるす厚労省の提案を質し、命と健康を守るべき医師が命を脅かされながら働くことは許されないと強調。また最賃では生計費が満たされない現状を確認すると、根本厚労大臣は否定せず。全国一律最賃1500円までの引き上げを求めました。 ○山添拓君 日本共産党の山添拓です。 医師の働き方改革についての検討会が今日も開かれ、次回にも報告書が取りまとめられようとしています。 厚労省に伺いますが、どのような時間外労働規制を提案するものですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 医師の働き方改革に関する検討会におきましては、平成二十九年八月以来の議論を踏まえまして、医師の診療業務には特殊性があるということを踏まえて、時間外労働規制について、一般労働者とは異なる上限時間数の水準案を事務局から提案をさせていただいております。 具体的には、二〇二四年四月以降、診療に従事する勤務医に適用される一般的な時間外上限時間の水準を原則月百時間未満、年九百六十時間以内とする一方で、地域医療確保の観点からやむを得ず医療機関を限定して暫定的に設定する地域医療確保暫定特例水準及び集中的に自らの技能を向上させたい医師について対象医療機関を限定した上で設定する集中的技能向上水準、それぞれ年千八百六十時間とするという案を事務局から御提案し、御議論をいただいているところでございます。 あわせて、この暫定特例水準、技能向上水準が適用される医師につきましては、二十八時間の連続勤務時間制限、あるいは九時間の勤務間インターバルの確保を義務化する、さらに同様に、一般労働者とは異なる水準が適用される勤務医全員については、医師による面接指導を通じて個人ごとの健康状況をチェックし、その結果、必要と認められる場合には労働時間や当直回数を制限する就業上の措置を実施することをこの上限規制と併せて義務付けるということを提案させていただいております。 なお、この暫定特例水準につきましては、都道府県単位での医師偏在を解消する目標であります二〇三五年度末を終了目標年限として提案をしてございます。 こうした取組により、医師の健康を確実に確保することと地域で必要な医療提供体制の確保をすることという二つを両立させる方策を検討しているところでございまして、働き方改革実行計画に基づき、今月末目途に取りまとめができるよう、引き続き検討会での御議論をお願いしているところでございます。 ○山添拓君 年間千八百六十時間、月平均百五十五時間もの時間外労働は、過労死ラインの二倍の水準です。 大臣、なぜこの時間数なんですか。 〔委員長退席、理事二之湯武史君着席〕 ○国務大臣(根本匠君) 現在、医師の働き方改革に関する検討会、ここにおいては、今局長からお話がありましたが、二〇二四年度以降、医療機関で患者に対する診療に従事する勤務医に適用される水準として、臨時的な、臨時的な必要がある場合の時間外労働時間上限は今説明がありました。 そして、お尋ねの時間数、お尋ねの時間数は、二〇一六年に実施した医師の勤務実態における勤務時間の分布を基に、まず確実に分布の上位一割に該当する時間の医師の労働時間を短縮するということで設定しております。 根拠ですね。(発言する者あり) ○理事(二之湯武史君) もう一度、大臣、どうぞ。 ○国務大臣(根本匠君) 医師の診察業務には、公共性や不確実性、高度の専門性等の特殊性があるので、一般労働者とは異なる水準が必要であり、その水準について検討会で議論をされてきました。 そして、先ほど申し上げましたが、お尋ねの時間数、これは二〇一六年に、繰り返しになりますけど、実施した医師の勤務実態調査における勤務時間の分布を基に、まずは確実に分布の上位一割に該当する医師の労働時間を短縮することとして設定をいたしました。 ○山添拓君 なぜ上位一〇%を対象とするんですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 今大臣からもお話ございましたように、まずは一割に相当する労働時間を確実に実施をするということを私どもとして、これまでの議論の中の集約としてやっております。 この時間数は、現在、年間三千時間近い時間外労働をしているお医者さんもいる中で、その労働時間を週に二十時間分、基礎的な項目からいろいろな形で削減して初めてできるものということでありまして、確実に医師の労働時間の短縮を図るということを踏まえて、これまでの検討会による議論を踏まえた上で提案をさせていただいているところでございます。 ○山添拓君 大臣、伺いたいんですけど、一〇%というのはなぜなのかということなんです。 ○国務大臣(根本匠君) 繰り返しになりますが、勤務医の一割に当たる約二万人の方が時間外労働が年千八百六十時間を超える勤務、そのうち約三千二百人の方が時間外労働が年三千時間近い水準を超える勤務、このような極めて長時間労働の実態にある医師について、労働時間を削減していくことが必須であります。 一方で、現状では、年間三千時間近い時間外労働をしている医師もいるので、それらの方々により支えられている地域医療を崩壊させないということも重要だと考えております。 そして、年間の労働時間千八百六十時間という水準は、これらを踏まえて、例えば約週百時間労働を、幅広い他の医療従事者との役割分担等によって週に二十時間削減して初めて実現できる水準として、医師の勤務時間の分布の上位一割に該当する医師の労働時間を確実に短縮するために設定するということを提案したものであります。 ○山添拓君 三千時間を削減しなくちゃいけないというのは当たり前なんですけれども、じゃ、逆に聞きますけれども、千八百六十時間であれば過労死しないということなんですか。 ○国務大臣(根本匠君) 今般の事務局の提案は、労働者としての医師の健康の確保と地域医療を崩壊させないことの双方を成り立たせるためのぎりぎりの案であります。 そして、医師の業務は患者の生命や健康の確保のために不可欠な業務でありますので、直ちに一般の労働者と同じ時間外労働の上限規制を適用した場合に患者の生命や健康の確保に支障を来すおそれがある措置であって、必要かつ最小限のものであります。 そして、過労死をしないように、この特例水準が適用される病院については、勤務時間インターバル、連続勤務時間制限など、一般労働者にはない健康確保措置をとる、講じることが義務付けられております。 ○政府参考人(吉田学君) 大臣の御答弁に事実関係を若干補足させていただきます。 時間外労働時間のその上限水準、今御指摘ございました千八百六十時間という提案をさせていただいてございますけれども、この医師につきましても、健康を確実にお一人お一人について確保するということを併せて提案させていただいております。そのために、先ほども御答弁申し上げましたように、健康確保措置、あまたの項目について一般の労働者よりも厳しい水準の健康確保措置を求めるということを併せて提案してございます。 繰り返しになりますので改めては申しませんが、先ほど申しましたような上限措置と併せて行う健康確保措置、これにより医師の確保の万全を図ってまいりたいという提案をさせていただいております。 ○山添拓君 厳しい健康確保措置って何ですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 先ほどの答弁と繰り返しになることをお許しいただきたいと思いますけれども、千八百六十という形で提案をさせていただいております暫定特例水準の適用される医師につきましては、二十八時間の連続勤務時間制限あるいは九時間の勤務間インターバルの確保を義務化いたします。 これは、一般の労働者につきましては努力義務ということになってございまして、このような形での義務化による健康確保措置の上積みをさせていただいておりますし、医師による面接指導、それに伴う就業上の措置というものも一般労働者に上乗せをした形で今提案させていただいているところでございます。 ○山添拓君 その基準は、医師は何時間眠れるという時間なんですか、規制なんですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 〔理事二之湯武史君退席、委員長着席〕 先ほど申しました九時間のインターバルというものにつきましては、この検討会においても、エビデンスとして提出されました医師の健康確保のために睡眠時間は六時間というものが必要だということと、その前後の生活時間を合わせて九時間という提案をさせていただいているところでございます。 ○山添拓君 全国医師ユニオンの調査では、医師の最も強い要求は完全休日を増やすということであって、六時間睡眠で満たされるものではないんですね。 資料の二ページを御覧ください。 この上限水準の働き方のイメージ、右側ですが、日勤の日は十二時間以上働いて、当直に入る日は二十八時間の連続勤務になります。休みは週一日です。これがほぼ一年間続いて、休日は年間八十日程度です。 大臣、これで健康を確保できるんですか。 ○国務大臣(根本匠君) 健康を確実に確保することが必要であります。そして、繰り返しになりますが、労働者としての医師の健康の確保と地域医療を崩壊させないとの双方を成り立たせるためのぎりぎりの案で、その観点から、健康確保という観点から健康確保措置の実施を医療機関に義務付けるということを併せて提案をしています。そして、今、具体的な義務付けについてはもう既に局長から答弁したとおりであります。 ○山添拓君 大臣、高度プロフェッショナルでは、健康確保措置の第一に年間百四日の休日確保ということをうたっていたんですよ。それより休日少ないじゃないですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 高度プロフェッショナル制度との間では、現在御提案、御議論いただいておりますその医師の働き方、種々条件が違うというふうに思います。 医師につきまして、今お触れいただきました検討会における議論では、先ほども御答弁申し上げましたように、医師の業務の特殊性あるいは現在における地域医療の状態などを総合的に議論した上で、医師として必要な健康確保措置を今よりも強めて、どのような形で健康確保と地域医療の両立が図られるかという観点から御議論をいただき、事務局として提案させていただいているところでございます。 ○山添拓君 医師だけは健康だと、過労死しないとでも言いたいかのようなお話です。 資料の三ページを御覧ください。 特例以外の勤務医の水準も看過できません。臨時的な必要がある場合の年間上限を九百六十時間と定めた根拠は、大臣、何ですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 今御質問ございました上限九百六十時間という時間につきましては、一か月の当たりの時間外労働、原則百時間未満という形になってございまして、合わせて一年当たり九百六十ということでございます。 九百六十という水準は、脳・心臓疾患の労災認定基準における複数月の時間外労働の水準、これは複数月平均八十時間以下であり、休日労働込みでございますが、を考慮し、その十二か月分として提案させていただいているところでございます。 ○山添拓君 これ、大臣に質問通告していますので、大臣、お答えください。 労災の基準というのは、単なる複数月平均ではないんですね。発症前二から六か月の平均八十時間です。なぜこれを勝手に延ばして一年中八十時間としたんですか。 ○国務大臣(根本匠君) まず、一か月当たり原則百時間という水準は、脳・心臓疾患の労災認定基準における単月の時間外労働時間の水準、これ単月百時間未満、休日労働込みを考慮したものであります。 また、年九百六十時間という水準は、脳・心臓疾患の労災認定基準における複数月の時間外労働の水準を考慮して、その十二か月分として提案したもので、これは、一般労働者の休日労働込み時間外労働についての上限である複数月平均八十時間以下と同様の水準であります。 ○山添拓君 ちょっとお答えいただいていないんですけど。 これ、そもそも臨時的な必要がある場合に限る上限なんですけれども、なぜ一年間通してオーケーなんですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 医師の場合には、臨時的な必要性が生じる時期あるいは頻度というものがなかなか予見不可能、それぞれの地域における医療の状況というものがございますのか、その適用を年六か月に限らないというのがこれまでの検討会における議論の経過でございます。 ○山添拓君 つまり、ずっと繁忙期だということなんですよね。臨時的な必要ではなくて恒常的な必要であって、これは医師不足の問題にほかなりません。 大臣、改めて伺いますけど、一か月の上限を百時間としたのはなぜですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 一か月当たり原則百時間という水準につきましては、脳・心臓疾患の労災認定基準における単月の時間外労働の水準、これは単月百時間未満であり、休日労働込みということになってございますが、これを考慮して御提案させていただいております。 ○山添拓君 単月のというふうに今おっしゃいましたけれども、毎月百時間でも違法とならない水準ですね。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 先ほど医師についてのその状況について申し上げたという意味では、そのとおりでございます。 ○山添拓君 これ百時間というのも、単月っておっしゃったんですけど、これ発症前一か月、それだけで業務と発症との関連性が強いとされる基準なんですよ。毎月百時間でいいという話じゃないんですよね。 しかも、この月百時間は絶対の上限時間でもなく、例外があります。例外の上限ありますか。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) お静かに。お静かに。 ○政府参考人(吉田学君) 質問を聞き取り損ないまして申し訳ございませんでした。 お答え申し上げます。 例外というのにつきましては、医師については、患者数が多い、あるいは緊急手術が重なった場合などの対応を要するという事例を想定してございます。 ○山添拓君 そうじゃなくて、百時間を超えた例外の上限時間です。百時間を超えた場合に上限時間がありますかということです。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 先ほどもお話ございましたように、単月の基準と一年当たりの基準という形になりますので、今、単月について、単月の基準ではないという形になれば、一年当たり九百六十時間、休日労働時間込みということかと思います。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) 速記を止めてください。 〔速記中止〕 ○委員長(金子原二郎君) 速記を起こしてください。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 単月の時間を超えた場合には、次は年間の労働時間ということで、単月としての百時間の、次の基準にはございません。 ○山添拓君 つまり、ないということなんですね。 百時間を超える場合には医師の面接指導を行うことにされています。その医師は、医療機関の管理者は認めないとされています。管理者というのは具体的には誰ですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 これまでの検討会における議論におきましては、当該病院の、言わば雇主である院長先生を念頭に考えておるわけでございますが、その具体的な内容につきましては、よりその医師の面接指導については技術的な問題も含めて検討する必要があるというのが現在における検討会における議論でございます。 ○山添拓君 これ、病院長でなければ同じ職場の上司や同僚が面接指導を行ってもよいと、そういう可能性があるということなんですね。部下や同僚を面接して、これ以上働かせるべきではないと判断して残業をストップさせれば、穴が空いた分は面接した方が受けなければならないと。これでは、ドクターストップというのは、これ期待できないんじゃないですか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 今のような御懸念も検討会の中において議論が出ております。その意味で、先ほど申し上げましたように、面接指導する医師をどのように技術的な面も含めて考えるか、あるいは今回提案しております規制が実効性のあるように、この面接指導がどのように実効性のあるところか、医師の偏在、医師確保の対策なども含めて総合的に対策を取るべきという御意見を検討会においてはいただいているところでございます。 ○山添拓君 これ、現在の報告書の案というのは規制の体を成していないと私は思います。 一か月のみで労災認定される月百時間を単月と言い換えて毎月オーケーにいたしました。二から六か月平均で労災認定される八十時間を複数月と言い換えて年九百六十時間までオーケーだとしようとしています。一般則では臨時的な必要がある場合ゆえに四十五時間以上の時間外労働を認めるとしたのに、これ臨時的でなくてもいいといいます。結局、これは、八十時間や百時間の根拠を都合よくつまみ食いし、年間九百六十時間、千八百六十時間という途方もない長時間労働にお墨付きを与えようとするものであります。 今日の新聞各紙では、一日十一時間以上働くと心筋梗塞のリスクが一・六倍になるという研究結果が報じられています。これ、二十年間追跡調査を行った国内で初めての調査ということであります。 大臣、こういう成果も参考に、やっぱり見直すべきじゃないでしょうか。 ○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。 まさに、今、検討会において御提案させていただいています一八六〇、千八百六十時間という問題、また、今御指摘、御懸念ありますように、その下で、これは上限でありますので、全ての医師が全てここに張り付いて働くということではございませんが、そのような形で、どのように健康確保措置が実行できるかということについては医療政策全体と併せて対応するということで議論を進めさせていただいているところでございます。 ○山添拓君 こういう認識も大臣に御答弁いただけない。 昨年、予算委員会に公述人として来られた中原のり子さんの夫の中原利郎さんは、小児科医として勤務されていた二十年前に四十四歳で自ら命を絶ちました。労災を認めた東京地裁の二〇〇七年三月十四日の判決は、中原医師が亡くなる前の業務の過重性についてどのように認定をしていますか。 ○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。 御指摘の判決でございますけれども、約一か月間に八回にわたり宿直勤務を担当したことにより十分な睡眠が取れなかったこと、宿直日明けに連続勤務が組まれている日が三日あったこと、約一か月の時間外労働時間数が八十三時間超あったこと、全く勤務から解放された日が約一か月で二日であったことなどの勤務の状況につきまして、社会通念に照らして、当該業務は労働者の心身に対する負荷となる危険性のある業務であると評価するとともに、部下である医師が退職の意思を示したということであったり、それに伴います宿直当番の調整などによる心理的負荷を総合的に判断して、当該業務と自殺との間の業務起因性を肯定したものでございます。 ○山添拓君 現在出されている案では、この中原医師のような働き方を防げないと思います。 この遺族が病院を訴えた民事裁判は、最高裁で和解が成立いたしました。資料の四ページに和解条項を記しておりますが、医師不足や医師の過重負担を生じさせないことが国民の健康を守るために不可欠であることを相互に確認して和解するとあります。 大臣も、昨日、我が党の倉林委員の質問に答えて、中原のり子さんの話を間接的には聞いたんだと、こう伺いました。医師の働き方改革というなら、この認識に立った規制とするべきではありませんか。 ○国務大臣(根本匠君) 中原さんのヒアリングの内容は私も報告を受けております。 医師の健康を確保し、過労死を起こさないようにすること、これは何よりも重要であると考えています。このため、年間千八百六十時間という水準が適用される一定の医師については、医師の健康を確実に確保するための措置の実施を義務付けることを併せて提案しています。インターバルの確保、あるいは面接指導による個別の健康管理とその結果に応じた就業制限などであります。特に、長時間労働となる医師に対する面接指導の結果、いわゆる就業制限が必要と判断された場合には、医療機関の管理者は、仮に一時的な診療体制の縮小を伴うことになっても、医師の健康確保のために必要な就業上の措置を最優先で講じることとしております。 ○山添拓君 命と健康を守るべき医師が命を脅かされる状態を放置するということは、私は許されないと思います。このまま厚労省令にしていくなどもってのほかだということを強調しておきたいと思います。 続いて、最低賃金について伺います。 時給千五百円を掲げて運動するエキタスなど、最賃引上げが強い要求となっています。なぜ今、最低賃金が注目されるのか。その位置付けの変化が背景にあります。 日本の最賃第一号は、一九五六年、静岡県の労働基準局長が指導して作られたものです。これは誰を対象として作られたものでしたか。 ○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。 御指摘の賃金でございますけれども、昭和三十一年に静岡県の一部の缶詰業者の方が自主的に賃金協定という名称で初給賃金に関する業者間協定を結ばれたものでございます。 協定の内容は、主に満十五歳缶詰調理工の初給賃金を対象としているものでございます。 ○山添拓君 女工と呼ばれた非正規の女性労働者です。家計の主たる担い手ではなく家計補助労働だといって、非正規は低くて当たり前、男女の著しい賃金格差が公然と存在してきました。 それ自体が大問題ですが、その上、今日では状況が一変しております。非正規のフルタイム化が進んでいます。賃金構造基本調査では、フルタイムで働く非正規、正規、それぞれの労働時間とその人数はどうなっていますか。 ○政府参考人(藤澤勝博君) 平成二十九年の賃金構造基本統計調査では、平成二十九年六月分の賃金等を調査しておりますが、一般労働者、フルタイム労働者の一か月当たりの所定内労働時間は、正社員、正職員が百六十六時間、また、正社員、正職員以外の労働者が百六十三時間でございます。 ○山添拓君 その人数もお尋ねしたんですが。 ○政府参考人(藤澤勝博君) 済みません、失礼いたしました。 また、一般労働者、フルタイム労働者の推計労働者数でございますが、正社員、正職員が千九百十七万人、また、正社員、正職員以外の労働者が三百五十六万人となってございます。 ○山添拓君 今ありましたように、フルタイムの非正規と正規の労働時間数はほとんど変わらないんですね。 一方で、就業構造基本調査によれば、三十歳代後半の男性労働者のうち年収が五百万円以上の割合は、一九九七年に五五%だったのが二〇一七年は三九%に下がり、物価上昇を考慮すると更に下がります。結婚したり子育てをしたりできないと考えるのももっともな状況です。 非正規が増えて、正規労働者を含めて低賃金で働く労働者が増える中で、最賃で暮らせる処遇の確保が大事なことになってきています。そういう要求が切実なものになっています。 大臣、そのことをどう認識されていますか。 ○国務大臣(根本匠君) 地域別最低賃金額の決定に当たっては、最低賃金法第九条で、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならないこととされております。 また、平成十九年の法改正によって、労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされたことを受けて、計画的に最低賃金の引上げが行われ、平成二十六年までに全ての都道府県で逆転現象が解消しております。 最低賃金の引上げには、特に中小・小規模事業者の生産性向上が重要ですから、例えば生産性向上に向けた設備投資やコンサルティングなどの助成、費用助成などをやっておりますが、要は今、年率三%程度をめどとして全国加重平均が千円となることを目指していることを踏まえて、今後とも最低賃金の引上げに取り組んでいきたいと思います。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) 速記を止めてください。 〔速記中止〕 ○委員長(金子原二郎君) 速記を起こしてください。 ○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。 御指摘のとおり、最低賃金は、最低賃金法によりまして、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働者の生活の安定等を図るということがその目的でございまして、その点につきましては、雇用情勢等々、置かれている状況の変化も含めまして、そういった目的に沿って最低賃金の制度を運営していくというものでございます。 ○山添拓君 大臣に改めて伺いますけど、最賃で暮らせる処遇の確保が切実な要求になっていると、こういうことを認識されていますかと、私の質問です。 ○国務大臣(根本匠君) それは認識しています。 ○山添拓君 だからこそ、暮らしていけるだけの最賃が重要です。 最賃法の九条二項は、地域別最低賃金の考慮要素をどのように定めていますか。 ○政府参考人(坂口卓君) 最賃法の九条二項では、地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならないと定めております。 ○山添拓君 生計費というのは、労働者の生活のために必要な費用を言います。 二〇一八年度の中央最賃審議会、その小委員会で提出された資料の中で、生計費、その議論のために出された資料というのはどれですか。 ○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。 審議会の目安の審議におきましては、生計費に関します資料としまして、都道府県別の県庁所在地におけます四人世帯、月額の標準生計費、それと最低賃金と生活保護を比較した資料を提出しております。 ○山添拓君 標準生計費の額を上回るような最賃に設定しているんですか。 ○政府参考人(坂口卓君) その点につきましては、先ほども大臣からも御答弁させていただきましたとおり、生計費という観点からは、平成二十年度以降、審議会におきましても最低賃金と生活保護の逆転現象が生じていないかという確認を行って、そういう観点で、その生活保護につきまして、最低賃金は上回っているということを確認しながら設定をしておるものでございます。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) 止めてください、速記を。 〔速記中止〕 ○委員長(金子原二郎君) 速記を起こしてください。 ○政府参考人(坂口卓君) 先ほども申し上げましたとおり、標準生計費につきましては、審議会の生計費に関する資料としてはお出ししておりますけれども、その生計費の数字を必ず上回るという形での目安額ということにはなっていないという状況でございます。 ○山添拓君 必ず上回るどころじゃないんですよ。東京都の標準生計費は、月二十七万九千三百円です。東京都の最賃九百八十五円で割りますと、二百八十三時間分のということになるんですね。月百時間以上の残業をせよということなんですか。そうじゃないんですよ。 結局、生計費などほとんど考慮されずに、企業の支払能力を前提にした現状の賃金水準から決められております。しかし、支払能力を基準にしている国は、ヨーロッパではリトアニア一国のみです。生計費に即した最賃の議論が必要です。 労働組合の全労連などは、この間、全国で最低生計費の試算調査を行ってきました。生活に必要な物やサービスを一つずつ積み上げて割り出すというもので、資料の五ページにお配りしています。二十五歳の単身者、賃貸ワンルームマンションに居住する条件での試算です。 最低生計費の税込みの月額は、例えば、札幌市の男性は二十二万五千円、福島市の男性は二十二万二千円、さいたま市の男性で二十四万二千円、静岡市、女性で二十四万五千円、福岡市、男性で二十二万七千円。最賃ランクAからD、このどこでも大きくは違わないんですね。これを祝日にも休みが取れるような月百五十時間で時給換算をしますと、札幌、千五百円、福島、千四百八十円、さいたま、千六百十三円、静岡、千六百三十七円、福岡、千五百十七円。 大臣、これに遠く及ばない現在の最賃額が生計費を満たしていない、こういう認識ありますか。 ○国務大臣(根本匠君) 現在の最低賃金額というのは、いずれにしても、働く方の賃金や生計費、企業の賃金支払能力の地域差などの実情を考慮して、今都道府県ごとの数字をお示しいただいたけど、都道府県ごとに経済状況が異なる現状を踏まえて決定されております。この三つの要素で決定されています。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) 速記を止めて。 〔速記中止〕 ○委員長(金子原二郎君) 速記を起こしてください。 ○国務大臣(根本匠君) 要は生計費の判断ですけど、要は、審議でも、審議でもですよ、公労使の委員に御議論いただいてやっているわけですから、そこは、その生計費についてどういう判断をするかというお話でしたけれども、これはそういうことも考慮して、支払能力の地域差なども考慮して審議会でそこは議論していただいて、そして最低賃金を設定していると思っております。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) 速記止めて。 〔速記中止〕 ○委員長(金子原二郎君) 速記を起こしてください。 ○山添拓君 現在の最賃額では必要な生計費を満たしていないと、こういう認識ですか。 ○国務大臣(根本匠君) 満たしているかいないかというお話ですが、これは公労使の委員で、審議の中でこういう最低賃金になっていますから、その生計費をどう判断するのかということについて、私はこの審議会の中で議論されるべきものだと考えています。(発言する者あり) ○委員長(金子原二郎君) 速記を止めてください。 〔速記中止〕 ○委員長(金子原二郎君) 速記を起こしてください。 ○政府参考人(坂口卓君) お答え申し上げます。 今の点につきましてでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、現在の最低賃金につきましては、働く方の賃金、生計費、企業の賃金支払能力という地域差などの実情も考慮した上で審議会で御議論していただき、都道府県ごとに経済状況が異なる現状を踏まえて決定されたものでございます。 先ほども申し上げましたけれども、生計費という観点からは、しっかり、最低賃金と生活保護の逆転現象ということについてもしっかり御議論いただき、確認を行っていただいたもので策定がされているというものでございます。 ○山添拓君 大臣にもう一度伺いますけれども、現在の最賃額、そうしたいろんな考慮要素があってもなお生計費、必要とされる生活費を満たしていない、いないのではないかと、この認識。 ○国務大臣(根本匠君) 制度は制度としてありますが、事実関係でいえば、それは標準、その生計費を満たしているかどうかという話でいえば、私はそこはちょっと厳しいのかなと思います。 ○山添拓君 おまけに地域間格差があるんですね。地域別最賃の原則を定めた最賃法九条一項、その決定について定めた十条一項は何と定めていますか。 ○政府参考人(坂口卓君) 九条一項かと思いますけれども、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金、一定地域ごとの最低賃金をいう、は、あまねく全国各地域について決定されなければならないと規定されております。 ○山添拓君 十条一項は。 ○政府参考人(坂口卓君) 最低賃金法の第十条の一項でございますか。第十条の一項は、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金を決定しなければならないということでございます。 ○山添拓君 大臣は先日、小池晃議員の質問に対して、日本の場合には法律で定められているから都道府県別に定めると答弁しました。どこに都道府県別と書かれているんですか。 ○国務大臣(根本匠君) 私があのとき答弁させていただいたのは、最低賃金法九条一項で、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金は、あまねく全国各地域について決定されなければならないと、こういうこと、この九条一項を踏まえて、法律では地域別に定めるものとなっていることとした上で、都道府県ごとに経済状況が異なる実情を踏まえて、その実情に応じて決定されるべきであるとの考え方を述べたものであります。 ○山添拓君 つまり、法律上は都道府県別とまでは書かれていないということですね。 ○国務大臣(根本匠君) これは、地域別最低賃金は、あまねく全国各地域について決定されなければならないというのが法律上の定めであります。 ○山添拓君 つまり、都道府県別に根拠はないということなんですよ。 都道府県別最賃がいかに不合理な事態を招いているか、法務省法務局の乙号事務を例に実態を明らかにしたいと思います。 法務省に伺いますが、乙号事務とはいかなる業務なのか、元々法務局が行っていた業務が民間に委託されるに至った経緯を説明してください。 ○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。 乙号事務といいますのは、登記簿等の公開に関する事務のことをいうものでございまして、具体的には、登記所の事務のうち、不動産登記法等に基づく登記事項証明書の作成、交付、地図等の写しや印鑑証明書の作成、交付等の事務のことを申します。 この乙号事務でございますけれども、元々、昭和四十五年度から、事務の繁忙な登記所におきまして、登記官の指示に基づく登記簿のコピーの作成等、その事務の一部を外部委託するようになっておりましたが、その後、いわゆる行政改革推進法に基づきまして、平成十八年六月に閣議決定されました国の行政機関の定員の純減についてにおきまして、この乙号事務について包括的民間委託を行うこととされました。そして、これを受けまして、平成十九年に競争の導入による公共サービスの改革に関する法律が改正されまして、乙号事務について包括的民間委託の対象とすることができるようになりました。 そこで、平成十九年度から包括的民間委託の対象登記所を順次拡大し、現在では、一部の小規模登記所を除く全国全ての登記所において包括的民間委託を実施しているという状況でございます。 ○山添拓君 四十年にわたってサービスを担ってきた民事法務協会では、多くの職場で落札をできずに、経験のある約千四百名の正職員が職場を失いました。現在、正規は僅か三人、ほとんどが三か月から一年の有期雇用に置き換えられています。直近の二〇一五年度の競争入札で、日本郵便オフィスサポート株式会社が全国五十二法務局のうち二十三で落札をいたしました。最大の受託事業者です。 各地で求人票に記している時給を民事法務労働組合が調べました。資料の六ページです。 東京は千十円、旭川は八百四十円から八百五十円、大阪は九百三十六円、和歌山、八百三円、広島、八百四十五円、佐賀、熊本、鹿児島、七百六十五円。法務大臣、なぜこうなっているとお考えですか。 ○国務大臣(山下貴司君) お答えします。 乙号事務の委託に当たっては、入札実施要領において、最低賃金法を含む労働社会保険諸法令の遵守を入札手続における審査項目としているところでございますが、受託事業者が賃金額などの雇用条件をどのように設定するかといった具体的な事業の状況については、労働社会保険諸法令を遵守している限り、受託事業者の判断に委ねられるべきものであると考えております。 ○山添拓君 最賃で張り付いているからなんですよ。団体交渉で会社側もそのように言っているんですね。 法務局に直接雇用される国家公務員の非常勤であれば、常勤の高卒初任給と同じ給与になりますので、二〇一八年でいえば、時給は八百八十五円です。これに地域手当が付きます。全国どこでも同じ内容、同じ質で提供される公共サービスです。国の非常勤職員であれば、水準は低くても、全国一律です。ところが、民間委託をされると、多くの地域で最賃とほとんど同じ、熊本と東京で時給の差が二百四十五円もあります。 大臣、不当だと思いませんか。 ○国務大臣(山下貴司君) これ、民間委託の是非を問うておられるのかというふうなことにも感じますが、これは、受託事務の法的な賃金額に差異がある点に関して申し上げると、これは先ほども申し上げたとおり、労働社会保険諸令を遵守することを担保することが必要でありますが、これが遵守されている限り、どのような賃金で雇用するかというのは受託事業者の判断に委ねられるべきものであると考えております。 ○山添拓君 職員のある方は、利用者からは同じ法務局の人間だと思われると、何だ、高い給料をもらっているくせにと言われるんですね。 登記や、建物、法人登記に関わって、責任が重い仕事です。ところが、低賃金、不安定雇用で熟練者がいなくなり、総務省の官民競争入札等監理委員会では、国が実施していたときより過誤処理の発生件数が多くなったと、こういう報告もされています。 大臣、このままでいいんですか。 ○国務大臣(山下貴司君) これにつきましては、この乙号事務につきまして、これは行政改革推進法に基づき閣議決定された方針に基づいて包括的民間委託を行うこととされたというのは、局長、答弁したとおりでございます。 そして、この包括的民間委託ということが、これがこの法律を是認されるものである以上、これはもちろん労働社会保険諸法令を遵守しなければならないことは当然であります。しかしながら、それを遵守している限りは受託事業者の判断に委ねるべきものであると考えております。 ○山添拓君 キャリアを重ねて責任も重くなるのに、入札するために労働条件が悪くなる、仕事内容に見合った給料ではないと、こういう声が組合に多数寄せられております。 市場化テストと銘打った民間委託が官製ワーキングプアをつくり出し、都道府県別の最賃の下で、公務職場でも不当な地域格差が生じています。これ、落札した事業者自身からも法務省に引上げの要請があったんじゃありませんか。 ○国務大臣(山下貴司君) その点について、ちょっと私に通告がありませんでしたので、詳細については事務方でちょっと答えさせます。 ○政府参考人(小野瀬厚君) 事業者の方から、賃金についてということで、賃金の額が非常に苦しいといったような声があるということは聞いております。 ○山添拓君 大臣、今のような話ですので、やっぱりこれ、改めてこういう現場の実態も含めて在り方そのものを見直す、こういうことも必要じゃないでしょうか。 ○国務大臣(山下貴司君) これは包括的民間委託の実施の是非ということをお尋ねのようにも思えますが、それは所管を超える部分がございます。私どもとしては、これは委員が、その労働社会保険諸法令に反するという御指摘であればこれはまた答弁の仕方もありますが、我々としては、この法令を遵守している限り受託事業者の判断に委ねられるべきものであるというふうにお答えせざるを得ないというところでございます。 ○山添拓君 これは今の枠組みの中ではやむを得ないんだと、こういうことなんですか。 ○国務大臣(山下貴司君) これ、私が所管でお答えしていいのかどうかという問題もございます。ただ、私が、これは法務省の委託でございますので、その部分で答えることができるとすれば、これは労働社会保険諸法令を遵守している限り受託事業者の判断に委ねられるべきものであるというふうなことでございます。 ○山添拓君 いろいろ実態もお示しし、労働組合やあるいは肝腎の事業者側からもそういう声が出されているにもかかわらず、これ制度の枠組みの中だからということで前向きな答弁もされないと。 厚労大臣、改めて伺いますが、明確な法的根拠がないにもかかわらず、地域別最賃が都道府県別になっているために公務の場にまで格差が広がっています。やはり全国一律への転換が必要ではないですか。 ○国務大臣(根本匠君) 法律には九条一項でしっかり書かれております。 そして、最低賃金の全国一律化については、賃金だけでなく、県民所得や企業の付加価値生産性など経済指標に大きな地域間格差があること、最低賃金額を地域ごとの物価水準の差を反映せずに一律に定めることは、中小企業を中心として労働コストが増加することにより経営が圧迫され、かえって雇用が失われる面があるなどの課題があり、慎重な対応が必要であると考えています。 ○山添拓君 いや、それは全然具体的な話じゃないんですよ。近年、全国一律最賃を導入したイギリスやドイツ、あるいは連邦最賃を引き上げたアメリカなど…… ○委員長(金子原二郎君) 時間が来ております。 ○山添拓君 失業率が下がったケースの方が多いんですね。 経済対策としても、全国一律最賃、最賃大幅引上げが必要だということを強調して、質問を終わります。 ありがとうございました。 前の質問 次の質問