2019年・第198通常国会 2019年2月13日 資源エネルギー調査会 気候変動と資源エネルギーについて 国会報告資源エネルギー調査会 要約 資源エネルギー調査会で「気候変動と資源エネルギー」をテーマに参考人にお聞きしました。脱炭素に逆行して日本が石炭火力発電の新増設を進めていること、原発輸出の破たんなどについて質問。平田参考人は「原発の新増設は極めて高コスト。再エネ中心に転換することが最善のオプション」と述べました。 ○山添拓君 日本共産党の山添拓です。 今日は、三人の参考人の皆さん、大変貴重な御意見をありがとうございました。 パリ協定で合意をされた脱炭素化、CO2の排出削減目標について、いずれの参考人からも目標と現実とのギャップがあるということが指摘されているかと思います。しかし、温暖化による海面上昇、気候変動による大災害の多発など、事は地球上の人類の生存に関わる問題だ、そのために各締結国がギャップをいかに埋めていくか、これが課題であろうと思います。 そこで伺いたいのですが、一方で、私、今日お話も伺って気になりましたのは、平田参考人からも御指摘がありましたように、日本は、国内では石炭火力の新増設を進めて、国外に対しても石炭火力発電所への公的融資を行い、しかもこれは、最新型ではなくCO2の排出量も多い旧式のものを建設していくという計画だと伺っています。有馬参考人からも、日本の技術を通じて国境を越えた削減に貢献をするべきだ、こういう御指摘がありまして、私もそのとおりだと思いますが、しかし、現実にはそうではないという実態もあると。 この点は、二月一日に国連の児童の権利委員会が日本政府に対して、海外の石炭火力発電所への政府の公的融資を見直し、持続可能なエネルギーへの転換を確保することを要求するという事態にもなっています。 パリ協定と相反する国内外での態度というのは、これは自ら掲げた目標とも反するようなものであり、パリ協定に合意した以上は、その約束をした以上は改めるべきだと考えますけれども、この点、有馬参考人はいかがでしょうか。 ○参考人(有馬純君) ありがとうございます。 まず、日本で石炭火力の新設計画があるということの背景を考える必要があると思います。 やはり日本のエネルギーミックスを考えるに当たって、温室効果ガスの削減ということと、それから電力コストの抑制ということと、自給率の回復という三つを目標として掲げてエネルギーミックスを作りました。 それで、石炭火力の新設プログラムがある一つの大きな背景というのは、原子力の再稼働の見通しが全然立っていないというところが一つ大きな要因としてあるのではないかと思います。したがいまして、日本での石炭火力の新設というものを最小限に抑えるという意味で最も効果が高いのは、原子力の再稼働というものを着々と進めていくということではないかというふうに私は考えております。 それからあと、海外への技術移転ということでございますけれども、要はベースラインをどう考えるかということだと思います。要するに、日本が高効率石炭あるいは効率の高い石炭火力技術を輸出しなければ、じゃ海外は、発展途上国は石炭を使わないのかというと、やはり石炭が一番安いエネルギー源である以上、彼らはどっちにしても使ってしまう。その場合には、恐らく中国の更に質の悪い石炭火力技術を使うことになるでしょうし、あるいは今ある効率の悪い石炭火力を引き続き使うということになると。それと比較して、日本が輸出した技術によってどれだけCO2の削減が図れるかということで考える必要があると考えております。 ○山添拓君 次に、平田参考人に伺いますが、例えばヨーロッパの脱石炭連盟に見られるように、国内では石炭火力の新規建設を停止をして、そして既存の石炭火力も段階的に全廃を目指していく、また対外的には途上国への支援も停止するという合意がされると。これは日本とは、今、有馬参考人からもお話あったような日本の国内の動きとは異なる動きがあるかと思います。これは、温暖化対策を一段上に置いたようなエネルギー政策の転換を進めている、そういう姿勢ではないかと思います。 日本が、パリ協定を締結し、国際社会に対して脱炭素化目標を約束しながら、これとは逆行しかねないような姿勢を示し続けている、その最大の要因は平田参考人は何だとお考えでしょうか。また、その解消には何が必要だとお考えでしょうか。 ○参考人(平田仁子君) 最大の要因は、エネルギー基本計画で原子力と石炭火力発電所をベースロード電源と位置付け、引き続き石炭火力を使い続けることができる、それが重要だという政策方針が発表されている、それが市場にシグナルを送っているということが最大の問題だと思います。 ○山添拓君 ありがとうございます。 パリ協定に締結した国の中には、その目標と現実とのギャップを埋めるために、様々困難がありながらも努力を重ねている国もあるかと思います。 先ほども平田参考人から御指摘ありましたが、今年の一月二十六日にドイツ政府の諮問委員会が二〇三八年までの脱石炭を宣言したと報じられております。その内容と、また平田参考人の評価、また日本の脱炭素化目標との関係などについて、御意見ありましたら是非お聞かせください。 ○参考人(平田仁子君) ドイツは、褐炭が掘れる石炭の産出国でありまして、現在、電力の三八%を石炭火力に依存しているということで、日本よりも石炭への依存度が高い国であります。しかし、二〇三八年までに段階的に石炭火力発電をゼロにすると。もう脱原発を決めているドイツが脱石炭も決めるということは、これがパリ協定に基づいて取るべきドイツの選択としてほかに取りようがなかったということを示していると思います。 この二〇三八年という時間はパリ協定に比べればまだ遅過ぎるということで、既にドイツ、ヨーロッパではこの方針に対しても大きな批判が上がっているほどでありまして、これに比べると、日本の計画、現在ある計画は、政府の二六%削減もエネルギー基本計画も上回る勢いで計画が進んでおりまして、環境大臣も環境アセスメントの中で日本の目標と整合しないということを言っている、それぐらいの勢いで進んでおり、しかし、それにもかかわらず何らかの政策的な抑止が働かないということは極めて問題だと思っております。 ○山添拓君 私もその矛盾があるだろうと思っています。 今、ドイツが脱原発を掲げ、かつ脱石炭にも大きく踏み出した、その点の評価がありました。原発は、世論調査で、国内では再稼働反対が六割に達しています。この世論は、福島第一原発事故によるふるさととなりわいの喪失あるいは放射能汚染の危険という、ほかのどの公害とも質的に異なる深刻な被害が国民的な経験となっているからにほかならないと考えます。 一方で、原発が必要だというときのその主張の主な論拠はコストとされます。政府も、原発が低コストであることを前提に、再稼働で電気料金は下がると、こう主張しています。 しかし、果たしてこの原発というのは低コストなのかと。この間、政府を挙げて推進をしてきた原発の海外輸出が相次いで破綻をしております。安全対策費の増大による建設費の高騰がその背景にあるとされ、日立製作所は、イギリスの原発建設プロジェクトについて、経済合理性の観点から凍結だと決定をしています。 二〇三〇年エネルギーミックスで原発二〇から二二%という目標は再稼働どころかリプレースや新増設を前提としますけれども、福島事故以後の新設原発というのは、これはメーカーの想定をはるかに上回るようなコストが掛かり、したがって民間事業として成り立たないということがこの海外の事例からも明らかになっていると思います。もちろん、事故対応費やバックエンドコストも未知数です。コスト面でさえ今原発の優位性は乏しくなっており、補助金に依存するような状況です。 私は、温暖化、気候変動への対応というのは、コストが著しく下がっている再エネを政策の柱にすることが世界的な趨勢でもあり、また、日本もその方向へ思い切って転換するべきだと考えますけれども、この原発の海外輸出の破綻を踏まえて、この点についての御意見を有馬参考人と平田参考人にお伺いいたします。 ○参考人(有馬純君) 海外で日本の原発輸出プロジェクトが次々に頓挫しているというのは、私は個人的には非常に残念だというふうに思っております。私は、日本にとって日本が営々と築いてきた原子力技術というものを維持するということは大事だと思っておりますし、そのために、海外での原発輸出プロジェクトというのは、国内で当面新増設が難しいという中で一つの方法としてあり得るんではないかというふうに思っておりました。 今回、イギリスその他でうまくいっていない一つの理由というのは、特にイギリスの場合にはやはり過去三十年にわたって全く原発の新設をしてこなかったと、したがって計画とか工程管理についてのノウハウというものがもうイギリスの方でほとんど消滅をしていたというところがあり、それで非常に時間が掛かってしまったというところも大きな要因としてあるというふうに承知をしております。また、これは日本の事例とは違いますが、例えばEPRとかAP1000とか新しい炉型ということになりますと、運転実績がないので予定よりもコストオーバーラン、長期に掛かってしまうというふうなところがあるんではないかと思います。 それで、原子力は確かに安全対策によってコストがアドオンされたところはございますが、やはりその発電する量の膨大さということを考えますと、追加的なコストがキロワットアワー当たりのコストの上昇分ということになると小さくなります。 再生可能エネルギーについては、その発電コストが下がっているのは事実でありますが、そのための系統安定費用というものも併せて考える必要があるというふうに考えております。 ○参考人(平田仁子君) 原子力の新規の建設がコストがかさむということは、もはや、気候変動の問題で原子力が一つの重要なオプションになるのではないかという議論が出たときに、全く相手にされない議論になっていると思います。新規の原子力発電所は極めて高コストである、山添先生がおっしゃった論点に尽きると思います。 また、既存の再稼働でございますけれども、現在においては、先ほど私がお示ししました石炭火力と同じように、再生可能エネルギーよりもコスト面で優位にあるのが現状だと思います。しかし、これから二〇五〇年に向かって、更に太陽光や風力は五割から七割コストが下がっていく、もうキロワットアワー五円をはるかに下回るような規模で発電ができるようになると。 そういったときに、原子力発電が幾らコストが安いといってもそれに打ち勝つことはもちろんできませんし、先生がおっしゃったように、バックエンド対策ですとか様々なコストで十分に検討ができていないことでコストがかさみ得る原子力発電と比べれば、今、再生可能エネルギーに転換することが最善のオプションでありまして、原子力発電の再稼働という回り道をすることが日本の脱炭素化の実現を遅らせるのではないかと思っております。 ○山添拓君 ありがとうございました。 前の質問 次の質問